詩羽が腕組みをして考え込んでいる。
「それにしても、まさかこの『負け犬6』よりも先に『負け犬7』が完成するなんてね・・・」
「そうなのよ!これで『負け犬6の初期プロット』は白紙じゃない。どうするのよ・・・詩羽」
「どうするもこうするもないわよ、自分の恵ルートだけ無理やり完成させてあとは放棄なんてね・・・」
「あの、先輩方、わたしにちょっと提案があるのですが・・・」
「あら出海さん、何かしら?」
「これなんですが・・・」
出海は赤と白の野球ボールほどのカプセルを渡す。
「これ、紅坂さんが前回の恵先輩を捕獲する際に準備してた物なんですけど、使えませんかね?」
「なるほど・・・」
「でも肝心の恵が『負け犬6』からいなくなってしまったら捕獲イベントが起こせないじゃない?」
「それなら澤村さん問題ないわ・・・、この『負け犬6』の話はいままでの変な能力をこじらせた物語とは違うものだから」
「そっか・・・この物語の恵なら・・・今までの成長した恵は必要ない・・・」
「そういうことよ・・・」
いずみは意気揚々と、ポ〇モンボールを手で転がしている。
「というわけで、どっかの時空の『ノラ加藤恵』を捕獲してきますね」
「あなた一人で?」
「はい!油断している恵先輩なら余裕ですよ」
出海が自信ありげに答える。
「なら任せたわ」
詩羽と英梨々が顔を見合わせて了承した。
※※※
「さて、まっている間に確認しておきたいことがあるわね。この『負け犬6』の舞台はもう『メインヒロインの呪い』は解決されているということでいいのかしら?」
「いいんじゃないの?『負け犬5』のあたしが過去『負け犬7の世界』へ行って解決したことで、『英梨々ルートになる未来が確定する』のがこの『負け犬6』なんでしょ?」
「あなた、矛盾しいていることわかってる?」
「そうなの?」
「いい?『負け犬5』で英梨々が過去へいって呪いを解いたから、あのエンディングでは呪いが発動していないの。これにより『英梨々が過去にいって解決する未来が確定された』ことになるわよね。これは同時に英梨々ルートが完成したことを示しているわ。主役の英梨々が『メインヒロインの呪い』に打ち勝ったわけだから」
「うんうん」
「そして、この『負け犬6』では『負け犬7』へとつながる、英梨々最終ルート『負け犬7』へ進むことが確定する話になるわけ。だとするとこの負け犬6ではまだ『呪い』は解かれていないことになる」
「そうね、なら呪いは解かれていない世界が正しいんじゃないの?」
「それだと、なぜ5の続きなのか?どこで分岐しているのかがわからないわ。それにこの6の冒頭にすでに5を完結させた加藤さんがでてきているじゃないの」
「って、ことは呪いはすでに解けているわね・・・」
「そういうことよ」
「で、どうするの?」
「だから違うのよ。英梨々はどうしたいの?どっちがいいの?が正解ね」
「どうして・・・」
「物語のストーリーや整合性よりも、『英梨々がどうしたいか』が根幹にあるからよ」
「・・・じゃあ、めんどくさい能力はなしで」
「わかったわ」
「でもそれだと物語や整合性を気にする人は・・・」
「まぁそんな人はここまで付き合っていない」
「ばっさりきたー」
「・・・か、どうかはわからないけれど、わざわざ物語を別な話として連載しているのはこういう矛盾を回避するためなのよ」
「どういうこと?」
「物語はそれぞれ独立している。だから死んでも次の物語に登場しているし、世界が消滅してもまた新しい物語が始まっている。パラレルワールドなわけよね。そもそも二次創作がそういう性質のものだけど」
「なるほどね・・・」
「だから読者にはお願いするわ。この『負け犬6』は今までとは異質なの。むしろ正統といっていいのかもしれないけれど・・・」
そう、負け犬6の『if』は、クラスメートBの加藤恵と英梨々との物語であり、世界観こそ異質だが、今までに比べてずっとラブコメよりな話になる予定なのである。
(つづく)
・・・うん。予定だけだった。