プロット「6月イベントを事前申請する」
※※※
5月の終わり頃。まだ明るい放課後の教室で、恵とクラスメートAの2人が会話していた。
「はやいものね、もう5月も終わりなんて」
「桃鉄みたいだね」
クラスメートAが『6月イベント申請書』に書き込む準備をしている。
「えっと・・・、これ提出しないといけないの?」
「数少ない名前付きキャラなのだから、やらないわけにもいかないと思うけれど・・・嫌なら『日直』がいいわよ?」
「そう・・・」
「で、この申請書ってどこに提出するの?」
「さぁ?」
「5月はメールだけだったよね?」
「そうなの?」
「なんで、こんないい加減なの?」
「そんなこと私に聞かれても・・・」
「・・・ごめん」
恵は天井を見上げて考える。そもそも目的がいまいちわからない・・・。
「6月なら梅雨時だし、相合傘イベントなんてどうかな?」
「相合傘イベントは気のある相手にすることだから、ヒロイン申請してからになるけど」
「ヒロインは申請すればなれるの?」
「誰でもじゃないけど、加藤さんは可愛いし、すでに名前持ちキャラだし、申請すれば通ると思うけど」
「どこに申請するの?」
「さぁ?私は受け付けるだけだから」
「そう・・・」
このクラスメートAは真面目に役をこなす。信用もできる。相談もできる。フォローもしてくれる。でも・・・何かが違う。
「ヒロインになると、イベントの種類が増えるの?」
「そうじゃない?」
「知らないの?」
「うん。私はクラスメートAとして、クラスメートBのイベントを受け付けているだけだから」
「そう・・・」
「この物語は主人公の安芸くんと澤村さんはすでに付き合っているみたいだし、順調にデート重ねているし、今からサブヒロインになるのはしんどいとは思うけど」
「ちょっとまって、今なんて言った?」
「何?」
「安芸くんと澤村さんって付き合っているの?」
「そうみたいだけど」
「・・・聞いてない」
「それはクラスメートBには関係ない話じゃないの?」
「それに、デートしたなんて・・・」
「どうしたの?」
「ううん。なんでもない」
恵は立ち上がる。少し険しい顔つきになる。やっぱり何かがおかしい。
「明日・・・安芸くんに聞いてみる」
「何を?」
「澤村さんとのこと」
「なんで?」
「なんでってなんで?」
「だから、なんでクラスメートBの加藤さんが主人公とヒロインの恋話に首をつっこむの?」
「・・・」
「そんなに気になるなら、ヒロインやったらいいじゃない?情報も増えるみたいだし」
「ううん。絶対やらない」
「どうして?チャンスなんじゃないの?サブヒロインは振られるけど、注目集まれば他の大手に移籍できるかもしれないし・・・」
「そんなの・・・どうでもいいよ・・・」
恵がまた座る。
「わかった。じゃあ『相合傘イベントを主人公くんに相談する』っていうのはどうかな?実際に傘に入るわけじゃないから、申請通らないかな?」
「ん~わからないけど、申請しておくね。通らなかったときは・・・」
「日直でいい」
「あのね加藤さん・・・『でいい』って言い方はどうかと思うよ?セリフのないモブも大勢いて、『日直』だって立派なイベントだよ。やりたくてもできない人もいる」
「・・・うん。ごめん。日直がんばるよ」
「うん。じゃあ、申請してくるね」
「どこに・・・」
「さぁ?」
「・・・」
※※※
同じく放課後の屋上。詩羽と英梨々が並んで座っている。
「だいぶ焦れてきたわね・・・加藤さん」
「で、恵のイベントは何になったの?」
「あなたと同じね、『相合傘』を相談するってことらしいけど」
「ふーん」
「あら、何かずいぶん余裕そうね?」
「うん。恵が同一イベントを仕掛けてきたなら、墓穴を掘ったんじゃないかしら?」
「あなたとは思えない自信ね」
「あたしはあまり関係ないのよ。墓穴を掘るって自分で穴ほって自分で埋まることなんでしょ?」
「まぁそうね。そういう結末になると?」
「最後までは、わからないけど、このイベントに関していえばそうなるはずよ」
「あまり怖いから、そんなに澤村さんが負けるフラグ立てないで!」
「大丈夫よ詩羽。完勝するわ」
「・・・」
(つづく)