プロット『倫也と恵』③
※※※
電車に揺られている。
「恋人になる前の『相合傘』イベントもいいけどさ、恋人同士の『相合傘』イベントもいいよな」
「ん~」
恵が上を向いて考える。
「例えば?」
「一緒にコンビニいくとか」
「雨の中、わざわざ2人で?」
「うん」
「そんなことするかなぁ」
「しないの?」
「・・・ん~、するかなぁ」
「だろ?晴れた日に手をつなぐように、雨の日は同じ傘に入るんだよ」
「それって最初のラブラブなうちだけだよねぇ?結局濡れたくなくて、自分の傘をさすようになるよ」
「加藤、ドライだな」
「安芸くんが夢みがちなだけだよ」
恵がカバンからペットボトルのお茶を出して、一口飲む。
「お前、なんでも持っているな・・・」
「なんでもは持ってないよ、持っているものだけ」
「・・・」
「・・・」
恵がそのペットボトルを倫也に渡す。
「飲む?」
「・・・いい」
「・・・そう・・・かたくなだね」
「しょうがないでしょ??」
「どうせ、わたしの間接kissは汚いもんねー、安芸くんはしたくないんだよねー」
「そういう方向で攻める?」
「たまには手段をかえないと。さすがに泣きまねまではできないけど」
倫也が受け取って、一口飲んでから返す。
「英梨々に言ってやろー」
「ごふっ!ゴホッゴホッ」
倫也がむせる。まわりのモブが怪訝そうな顔をしていた。
「恋人同士なら銭湯行く時なんかは傘一本かもしれないね」
「どうして?」
「だって、着替えや洗面道具なんかで荷物を持っていて手がふさがってるもん」
「なるほどぁ」
「銭湯に『相合傘』イベントだと、なんだか貧乏学生の同棲って感じがする」
「うん。歌謡曲の世界観が強いからじゃない?」
「そうだね」
恵がペットボトルのキャップをしめて、かばんに戻す。
倫也がそれをじっとみている。
「次は何を取り出すの?」
「ん~どこでもドアかな」
「あっそ」
倫也の降りる駅が近づいてきた。
「夫婦になると流石に『相合傘』とは無縁になるのかな?」
「どうかな。雨が降りそうな微妙な曇り空なんかの時にさ、折り畳み傘を一本だけもっていくんじゃないかな」
「それは・・・いつもの倫也くんでしょ」
「そうでもしないと、恵と『相合傘』ができないだろ」
「ふーん。上手い言い訳に聞こえるけど、ただ自分の傘をもつのが面倒くさいだけだよね?」
「えっと、クラスメート同士の立場に戻りましょうか?加藤さん」
「そうですね、安芸さん」
倫也の降りる駅に電車が止まる。
「降りようか?それとももう一往復する?」
恵が立ち上がる。
「降りよっかな。疲れたし」
(つづく)