プロット『倫也と恵』④
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倫也の家の最寄りの駅。日は沈み、街灯が灯っている。駅前の商店は少なく、すぐに閑静な住宅街になる。
倫也と恵がぼんやりと立っている。
「ねぇ、安芸くん?ちょっといろいろ確認しようか」
「そうだな。一度、確認したほうがいいだろう」
「この駅で合ってる?」
「ああ大丈夫だ。学校に近い方が加藤の最寄りの駅。今回は学校から乗って終点までいったろ、だから復路で先に着くのは俺の駅で間違いないはずだ」
「う・・うん。次に確認したいんだけど、今、傘は何本?」
「一本。赤い傘。元は英梨々ので、今はいろいろあって恵のものだな」
「OK。で、ここが大事なんだけど、どこからどこへ相合傘をするのかな?」
2人が目を合わせる。ため息をつく。
「危なかったね・・・」
「そう・・・だな」
「だからさー、こんないい加減な物語で、さらにいい加減なフラグ管理なんかするから、こんなことになるんだよ」
「そう・・・だな」
「でも、ギリギリセーフだろ?」
「そうなのかなぁ・・・」
恵の最寄り駅から恵の家まで『相合傘』をした回数20回。すべてボツになったとはいえ、その間、二人は本質的な不条理に気が付いていなかった。
すなわち、なんで恵の傘で恵の家までいくのに、倫也がいるのだ?という問題。
「一応聞いておくけれど、安芸くん・・・気が付いてなかったよね?」
「ああ、まったく」
「それで20回もリテイク繰り返すなんてさ、わたし達ってバカップルっていうよりも、ただのバカなんじゃないの?」
「それはあれだよ、どんな天才キャラも作者以上に賢くなれないってやつと同じだな」
「ああ、ならしょうがないなー」
恵がため息をつく。よそで普通のヒロインやりたい。
「で、一番の問題は・・・なんで、わたしもこの駅で降りたの?って、ことなんだけど」
「外は雨が降っている。傘は一本。2人で行動を一緒にしているのはおかしくないと思うぞ?」
「その開きなおりかたはどうかと思うよ?」
「もういいよ・・・加藤の『相合傘』イベントにはこだわりもあるみたいだし、俺、走って帰るから」
「安芸くんが雨に濡れて帰るとどうなるんだっけ?」
「お見舞いイベントが発生する」
「ん~」
「まっ、とにかく話しているよりは歩こうか」
恵が赤い傘をさした。綺麗な柄の赤い傘は2人で入るには少し小さい。
倫也がその傘を持つ。恵が倫也の右側に入る。そして2人で歩き始めた。
「もう、文章化されたものはリテイクできないからね?」
「ああ、わかってる」
「どんな結末になっても知らないよ?」
「受け入れる」
「あと・・・家にあげたくないかもしれないけど、トイレは貸してね」
「わかった」
倫也は駅のトイレの方をチラッと見たが、もう無駄なことはいわない。
恵が相合傘イベントの本番を始めた。この物語が決定稿になっていく。
2人は歩き始めたが傘が小さいので、倫也の左側が濡れていった。
恵は倫也に腕が接触するぐらい近寄っていた。
「お見舞いイベントを回避できたからさ、ご飯作ってあげられないね」
「そうだな」
「風邪ひいているのに英梨々のカップ焼きそば食べなくて済むね」
「その悪意のある言い方でどうかと思うぞ?」
「ボツでは、わたしがお見舞いに行くのを阻止しようとして、霞ヶ丘先輩が自衛隊を配備したんだよ?」
「ほう?」
「角を曲がったら、戦車で撃ってくるの」
「AKIRAか」
「わたしはさ、普通のヒロインがやりたいんだけどなっ」
雨が少し強い。倫也の左側が濡れていく。
恵は倫也の腕につかまる。倫也を離したくない。
「そんなに、近寄らなくても大丈夫だよ」
「・・・いいの」
雨が傘に強く当たる音がする。
「もう遅い時間だし、ご飯一緒に食べていい?」
「好きにしろよ・・・」
「彼女がいるからって断らないの?20回もいろんなフラグを回避したのに」
倫也がため息をつく。
「その質問に対する分岐が多すぎるから・・・」
「そうだね、(つづく)にしようか」
「雨の中ごめんな」
「倫也くんと一緒なら雨の中でも一晩一緒に過ごすよ」
「そりゃどうも」
(つづく)