負け犬ヒロインの育て方 6 (ラスト)   作:きりぼー

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第26章

 

プロット『倫也と恵』④

 

※※※

 

 倫也の家の最寄りの駅。日は沈み、街灯が灯っている。駅前の商店は少なく、すぐに閑静な住宅街になる。

 

 倫也と恵がぼんやりと立っている。

 

「ねぇ、安芸くん?ちょっといろいろ確認しようか」

「そうだな。一度、確認したほうがいいだろう」

「この駅で合ってる?」

「ああ大丈夫だ。学校に近い方が加藤の最寄りの駅。今回は学校から乗って終点までいったろ、だから復路で先に着くのは俺の駅で間違いないはずだ」

「う・・うん。次に確認したいんだけど、今、傘は何本?」

「一本。赤い傘。元は英梨々ので、今はいろいろあって恵のものだな」

「OK。で、ここが大事なんだけど、どこからどこへ相合傘をするのかな?」

 

 2人が目を合わせる。ため息をつく。

 

「危なかったね・・・」

「そう・・・だな」

「だからさー、こんないい加減な物語で、さらにいい加減なフラグ管理なんかするから、こんなことになるんだよ」

「そう・・・だな」

「でも、ギリギリセーフだろ?」

「そうなのかなぁ・・・」

 

 恵の最寄り駅から恵の家まで『相合傘』をした回数20回。すべてボツになったとはいえ、その間、二人は本質的な不条理に気が付いていなかった。

すなわち、なんで恵の傘で恵の家までいくのに、倫也がいるのだ?という問題。

 

「一応聞いておくけれど、安芸くん・・・気が付いてなかったよね?」

「ああ、まったく」

「それで20回もリテイク繰り返すなんてさ、わたし達ってバカップルっていうよりも、ただのバカなんじゃないの?」

「それはあれだよ、どんな天才キャラも作者以上に賢くなれないってやつと同じだな」

「ああ、ならしょうがないなー」

 

 恵がため息をつく。よそで普通のヒロインやりたい。

 

「で、一番の問題は・・・なんで、わたしもこの駅で降りたの?って、ことなんだけど」

「外は雨が降っている。傘は一本。2人で行動を一緒にしているのはおかしくないと思うぞ?」

「その開きなおりかたはどうかと思うよ?」

「もういいよ・・・加藤の『相合傘』イベントにはこだわりもあるみたいだし、俺、走って帰るから」

「安芸くんが雨に濡れて帰るとどうなるんだっけ?」

「お見舞いイベントが発生する」

「ん~」

「まっ、とにかく話しているよりは歩こうか」

 

 恵が赤い傘をさした。綺麗な柄の赤い傘は2人で入るには少し小さい。

倫也がその傘を持つ。恵が倫也の右側に入る。そして2人で歩き始めた。

 

「もう、文章化されたものはリテイクできないからね?」

「ああ、わかってる」

「どんな結末になっても知らないよ?」

「受け入れる」

「あと・・・家にあげたくないかもしれないけど、トイレは貸してね」

「わかった」

 

 倫也は駅のトイレの方をチラッと見たが、もう無駄なことはいわない。

恵が相合傘イベントの本番を始めた。この物語が決定稿になっていく。

 

 2人は歩き始めたが傘が小さいので、倫也の左側が濡れていった。

恵は倫也に腕が接触するぐらい近寄っていた。

 

「お見舞いイベントを回避できたからさ、ご飯作ってあげられないね」

「そうだな」

「風邪ひいているのに英梨々のカップ焼きそば食べなくて済むね」

「その悪意のある言い方でどうかと思うぞ?」

「ボツでは、わたしがお見舞いに行くのを阻止しようとして、霞ヶ丘先輩が自衛隊を配備したんだよ?」

「ほう?」

「角を曲がったら、戦車で撃ってくるの」

「AKIRAか」

「わたしはさ、普通のヒロインがやりたいんだけどなっ」

 

 雨が少し強い。倫也の左側が濡れていく。

恵は倫也の腕につかまる。倫也を離したくない。

 

「そんなに、近寄らなくても大丈夫だよ」

「・・・いいの」

 

 雨が傘に強く当たる音がする。

 

「もう遅い時間だし、ご飯一緒に食べていい?」

「好きにしろよ・・・」

「彼女がいるからって断らないの?20回もいろんなフラグを回避したのに」

 

 倫也がため息をつく。

 

「その質問に対する分岐が多すぎるから・・・」

「そうだね、(つづく)にしようか」

「雨の中ごめんな」

「倫也くんと一緒なら雨の中でも一晩一緒に過ごすよ」

「そりゃどうも」

 

(つづく)

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