負け犬ヒロインの育て方 6 (ラスト)   作:きりぼー

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プロット『雨。恵と伊織』

そしてプロットの外

 

※※※

 

 雨の中に飛び出してみたものの、台風のような豪雨で雷鳴が遠くで鳴っている。恵は頭の上に学生鞄を持って走っていたが、すぐに全身がずぶ濡れになって、諦めてそのまま歩いていた。それも嫌になって、マンションの軒下で雨宿りすると、そのまま座り込む。気が付けばルームウェアのままで、この格好のまま電車になんて恥ずかしくて乗れない。歩いて帰るにはあまりにも豪雨で、何もかも投げ出したいと思った。

 

「こんなに都合よく雨なんて降らなくていいのに」

 

指を弾くが、別に天候は変わらない。

 

きっと、倫也くんが追いかけてきているに違いない。あるいは氷堂さんかもしれないけど。恵が歩いてきた道を見るが誰もこない。視界が悪いので、その先にいるのかもしれないとぼんやり考えていた。

 

 暗く鉛のような空。

 

 道路にタクシーが止まった。中から赤い髪の男が降りてきて、恵に近づいてきた。

 

「伊織くん?」

 

恵が体育座りをしたまま見上げいう。

 

「ずいぶんと安っぽい演出だね、加藤さん」

 

その言い方は冷淡で、視線はさらに冷たい。

 

「豪雨の中、傘を投げ捨てて飛び出すなんてチープで笑えるよ。ほんとに君は・・・」

 

恵は驚く。この作品での伊織はずっといい人だったから。

 

「・・・伊織くん・・・だよね?」

 

伊織がビニール傘をポンッと恵の前に放った。

 

「そんな名前の時もある。別に僕が誰かなんて・・・君には関係のないことだろう?」

「・・・」

「その恰好じゃ、電車を使って帰るのも嫌かい?」

 

恵がうなずく。

 

「くだらないプライドを持てただけでも褒めておくべきかな?できそこないのヒロインになれただけでも・・・。自分で雨に濡れて、今度は雨に濡れるのが嫌?ほんとあきれるよ。君には」

 

伊織が腕を大きく上へ伸ばして、掌を開いた。、

黒い空間がそこに広がった。

 

「どこでもドアよりも少しだけかっこいいだろ?ここをくぐれば君の家。厳密にいえば、君のイデアが君の家だと感じる場所。わかるかい?加藤さん?」

 

恵は首をふる。イデア。わたしがわたしであるということ。

 

「今日はもう余計なことはしなくていい、余計なフラグを立てなくていいし、回収しなくていい。君の安っぽい『ヤンデレ』フラグも、『自殺』フラグもいらない。おとなしく帰って風邪をひかないようにして、寝る。それだけだ。わかったかい?」

 

恵が伊織をにらむ。

 

「そうしなかったら・・・どうなるの?わたしがあなたの言う『余計なこと』をしたら、どうなるというの?」

 

伊織は氷のように冷ややかなまま答える。

 

「そうだね・・・今までの負け犬シリーズのように荒唐無稽になっていくだけさ。ラブコメなんて君にはできないからね。」

「・・・そう」

「さぁ、話は終わりだ」

 

 闇が恵を包み込む。そして恵はそこから消えた。

 

 伊織は恵に冷たく当たった。こんなひどい状況で優しくするわけにはいかないからだ。

英梨々ルートの加藤恵は悲劇のヒロインを選ぶしかない、救済ルートは存在しない。

 

※※※

 

伊織が次回は『控室⑤』を提案する。

詩羽が承諾した。物語の立て直しを図りたいからだ。

しかし、倫也は拒否。美智留も倫也に同調して拒否。

しばらくたって、出海も拒否を示した。

 

英梨々はすやすやと眠っている。あるいは眠ったふりをしている。

 

※※※

 

「出海、どこにいる?」

「わたしはどこにでもいるよ。今は赤モブだから」

「お前が拒否ってことは成算があるんだな?」

「うん。だいぶ・・・わかってきたよ」

「なら、静観しよう」

「そうだよ。お兄ちゃんはもっと優しくないと・・・荒唐無稽な物語になっても、恵先輩にとっては英梨々ルートの物語よりもずっといいでしょう・・・?」

「まったく。出海の言う通りだ」

 

※※※

 

「霞ヶ丘先輩。だから次回は『倫也と美智留』その次が『波島出海①』でお願いします。それから・・・もし恵先輩が独断でフラグを立てていくなら・・・ほっといていいですよ」

「大丈夫かしら?」

「大丈夫です」

「そう・・・なら、お願い。私は少し休ませてもらうわ」

「いえ、お仕事があります」

「なにかしら?」

「9月から3月までのプロット作成です」

「冗談でしょう?この物語は8月で終わりよ」

「『霞ヶ丘シナリオ』も『フィーネ』 も・・・『英梨々ルートのハッピーエンド』のために通るべき道筋なだけですから」

「あなたは何かを知ったのね?」

「そうですね。ではお願いします」

 

(つづく)

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