「寄り道ばかりして・・・出海ちゃんに申し訳ない気持ちもあるけれど・・・やっぱりこれも彼女自身の選択なのかしらね?」
「さぁ、どうせ這い上がってくる子は、ほっといても這い上がってくる。人の心配してる場合じゃないわよ、霞ヶ丘詩羽」
「あなたの言う通りね。じゃあ、私たちで『ノラ恵』でも捕獲しにいきましょうかね・・・」
「浴衣恵なんか狙い目なんじゃないかしら?」
「そのあたりがいいかしらね・・・あんまり気乗りがしないけれど・・・」
「これも恵のためと思えば・・・心を・・・存在を殺してでも成し遂げてみせるわよ」
「ずいぶんと強くなったわね?澤村さん」
※※※
詩羽と英梨々が垣根の影に隠れて、倫也と恵の様子を見ている。
浴衣姿の恵がうちわを壁に当てながら走り出す。それから倫也の方を振り向く。
「あと少しで完成だね、わたしたちの小説」
「ああ、もうすぐだ」
「ファンの人に読んでもらえるといいね、みんなに楽しんでもらえるといいね」
「できるさ、きっと」
二人が星空を見上げる。
詩羽と英梨々がこっそり後ろから近づく。
「今よ英梨々!」
英梨々がカプセルを投げつけると、恵がカプセルの中に納まる。
「倫也も・・・ごめん!」
英梨々が指を弾くと、倫也は気を失った。
二人は倫也を担いで、みんなが酔って寝ている部屋に放り込む。
「この恵は終わったら返すから、みんなはそこでそのまま寝ていなさい・・・」
英梨々は後ろを振り向かず、詩羽と一緒に元の世界に戻った。
※※※
カプセルから恵がでてくる。
「あれ、霞ヶ丘先輩と・・・英梨々。どうしたの?制服なんか着ちゃって」
「ごめん、恵・・・」
「澤村さん・・・事情を話しましょうか・・・了承なしも悪いから・・・」
「?」
「そうね、じゃあ・・・あんたから説明をお願い」
詩羽が負け犬シリーズとは関係なかった恵に事情を説明する。
「えっと・・・わたしに記憶を失えと?」
「まぁそういうことね」
「それがこの物語のためなの?英梨々」
「そう・・・あなたの為でもあるのよ」
「よくわからないけど、いいよ。でもちゃんと元に戻してね?」
「ずいぶんあっさりと了承したわね、加藤さん」
「了承というか・・・物語の『転』では『主人公が死んだり』、『記憶を失ったり』するんだよね?」
「そうね・・・まさか・・・加藤さん、そんな言葉を気にしていたの?」
「そうじゃないけど・・・抵抗しても無駄そうだし」
「・・・」
英梨々が恵の頭に機械を取り付けてスイッチを押す。
それから、スイッチを切ってから外す。
「恵?どう」
「ほよよ?」
「・・・」
「澤村さん、直後はわからないんじゃないかしら?家へ戻してらっしゃい」
英梨々はうなずくと、指を鳴らして恵の部屋へ移動し、恵をベッドに寝かせた。
一方で詩羽はすでに拉致して縛り上げている倫也を見下ろす。
「倫理君・・・あなたは恵に肩入れしすぎよ・・・もう少しハーレム型主人公のようにふるまってもらわないと・・・」
「んーんーんー」
倫也は口が布で塞がれていてしゃべれない。詩羽がそれをとる。
「やめるんだ!詩羽先輩・・・恵を返してやってくれ・・・これ以上はもう・・・」
「もう、始まってしまったことなのよ・・・それに今挫折したら・・・今までのことが無駄になるわ・・・それはあなたもわかっているでしょう?」
「そうだな・・・もう少しなんだよな・・・」
「つらいなんて感情は些細なことじゃない・・・今の私たちにできることは・・・為すべきことを為すだけよ・・・」
「わかった・・・やってくれ・・・詩羽先輩」
詩羽が倫也の頭に機械をつけてその記憶を消した。
「さよなら倫理君・・・必ず英梨々を選ぶのよ・・・もう「負け犬7」で完結しているのだから・・・」
(次回、本編スタート)
負け犬6もすべて完成しているので、現実にアクシデントでもない限りエタることはないのでその点は安心してください。
ちゃんと着地して完結します。