プロット『加藤家にて、ヒロイン集合』②
※※※
赤モブが深呼吸をして、恵家のインタホーンを押した。
「・・・はい」
「こんにちわぁ!赤モブです」
「赤モブに用はないです。・・・ガチャ」
出海は少し考える。インタホーンにでたのは、あの恵ママだ。
であるなら多少のやり取りは想定済だ。
再度インタホーンを押す。
「・・・はい」
「こんにちわぁ!私、加藤先輩の後輩になる予定が未来で決定されている波島出海と申します」
「・・・あなた、『物語の神様』に赤モブに降格されたでしょ?嘘はいけないわ・・・ガチャ」
出海は考え込む。なるほど・・・
※※※
「・・・めんどくさっ!この家、めんどくさっ!」
もうイベントなんてどうでもいいわ!帰る!っと、出海は玄関から離れた。
目の前に伊織がスーツを着て立っている。
「お兄ちゃん・・・・」
「・・・出海、ラスボスからは逃げられない」
「知ってるよ、そんなこと」
「そうかい?」
「あのね、お兄ちゃん。これからお兄ちゃんが何度わたしの前で死に続けても、どんなに残酷でも、わたし無視するから」
次の瞬間、伊織が破裂して四散する。・・・が、出海は動じない。
物語がおかしくなっているのか・・・
「まずは・・・」
出海が指を弾く。
恵の家のリビングに転送される。
そこには恵ママがいた。
「こんにちわぁ!」
「・・・そう、あなた不正するのね?」
「お母さまに取引がございます」
「一応、言ってみなさい」
「お母さまの服装・・・変ですよ」
「・・・っ!」
出海の指摘に恵ママがたじろぐ。
「せっかくのイベントに着飾っていただいたのは良いと思いますが・・・その衣装・・・素足ですか?」
恵ママが足元を見る。素足だった。
「それに、『コクーンシルエット』なんていわれて、わかる読者少ないですよ?ここまで読んでいるのは重度の冴えカノファンだけです。偏見で言わせてもらいますけど、まずわからないはずです」
「それは確かに偏見ね。それに冴えカノファンならすでに切っているはずでしょ」
「・・・あと、首元の金ネックレスはオシャレというよりも、磁気ネックレスで肩こり対策しているおばちゃんにしかみえません」
恵ママがネックレスを外した。
けっこうショックを受けたようだ
「わたしが買い物行ってきます。先にイベント進めておいてもらえますか?こちらはこちらでフラグは回収してきますので」
「・・・そう、わかったわ」
出海が指を鳴らす。
次は倫也の家だ。
※※※
倫也の家の周りは死屍累々。たくさんの伊織が死んでいる。中には上半身のだけで動いているのものいる、まるでゾンビだった。
それでも出海はまるで動じない。くだらない話だ。
倫也の家のドアを開けた。鍵は出海の前では意味がない。指を弾けば都合よく展開して解錠された。出海は靴を脱いで倫也の部屋まであがっていく。
倫也がベッドの上で眠っていた。風邪のせいか呼吸が荒く辛そうにみえる。
「・・・倫也先輩、起きてください。わたしを赤モブから波島出海に戻してください」
しかし、倫也は起きない。
出海は、少し考えて、倫也の唇を奪おうとした。
『・・・リテイク』
どこからともなく声が聴こえて、出海は巻き戻された。
※※※
出海は恵家の前に立っている。
「なるほど・・・」
出海が再度指を鳴らして、倫也の部屋へ移動した。
倫也がベッドで寝ている。
出海は倫也の寝顔を見る。苦しそうにうなされている。悪夢で見ているのだろうか?
声をかけても起きる気配がない。出海は倫也をゆすって起こそうとした。
『リテイク!』
苛立ったような声が聴こえた。
※※※
出海は恵家の前に立っている。
「ふむふむ・・・」
出海は指を弾く。そしてデパートに移動する。
そこで、『シックな黒いシュシュ』と『ピンク系の短い五本指靴下』を買った。
それから、恵の家に戻って呼び鈴を鳴らす。
「・・・はい」
「買ってきました」
玄関が開く。
出海が恵ママに買ってきたものを渡した。
「ワンピースよりもベージュのロングパンツにカットソーが愛らしくてもお似合いかと思います」
「そうかしら」
「これでわたしも家にいれてもらえますか?」
「フラグが何も回収されてないもの、いれるわけにはいかないでしょう?。赤モブをヒロイン集合にまぜるのはおかしいでしょう?」
「そうですね。ではお願いします」
『・・・リテイク』
恵ママがため息をつきながら言った。
出海がまた巻き戻される。
いったいどっちがリテイクしているのか分からない。
※※※
恵と詩羽と英梨々が3人で『負け犬6』の今後の展開を話し合っていた。
突然、出番が回ってきたので現在の会話をはじめる。
「それにしても出海さん、だいぶ成長したわね」
「出海がこの物語では一番自由なのかしらね?もうキャラの不安定さすら飲み込みつつあるような・・・」
「出海ちゃんは『明るい元気な後輩キャラ』を演じようとはしていたけれど、『波島出海』を意識した演技はしてなかったよね?」
「そうね」
「それってどういう意味よ?恵」
「だから、英梨々が言ったように自由度が高いんじゃないかな」
英梨々が首をかしげる。
「なんにせよ、こっちはこっちでイベントを進めましょう。確か・・・恵の『ヤンデレ』と『自殺』なのよね?」
「そうね、もう彼女を待つ必要はなさそうね。こんだけぐだぐだになれば十分」
「ん~、やっぱり時間があくと、感情がはいらないからやりにくいなぁ」
「そういう狙いだし、あきらめなさい。加藤さん」
恵は考える。雨に濡れていた頃はラブコメヒロインらしかったと思う。その感情のままイベントを進めれば力も入る。でも伊織のわけのわからない登場や、現在のヒロイン集合をみるとまた荒唐無稽な物語になってしまった。
テーマが重いからだろうか?たぶんそうなのだろう。でもその歪はどこかにでていて、それはやっぱり伊織が引き受けているのだろうか?
ヒロインの一人して、諦めることができるなら・・・ちゃんとふられることができるなら・・・こんな茶番は必要なかったのだから。
(つづく)