プロット『加藤家にて、ヒロイン集合』③
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英梨々が改めて恵の部屋を見渡して、深くため息をついた。
「正直、あたし、あんたのことバカにしてた」
「英梨々がわたしを?なんで」
「そうね、私も加藤さんのこと、ちょっとこれは・・・ないなって思ってたわよ」
詩羽と英梨々が指摘しているのは、第三章の恵の行動についてだった。
せっかくなので再掲しよう。
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恵は落ち着いてから、起き上がって机に座った。引き出しからフラグを取り出す。手製のフラグはつまようじと紙の旗を練り消しの土台に立てている。
これはモブ時代からの隠れた趣味で、ヒロインになりきってフラグ管理をするというちょっと痛い行動だった。
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詩羽と英梨々が見ているもの。それは恵の机が埋まるほどに積み上げられた白フラグの山だった。
「・・・確かにここまでやられると・・・ヤンデレっぽくなるわね」
「そんなつもりはぜんぜん、これっぽっちもないのだけど?」
「なんでこんなになっているのよ?」
英梨々が恵を見る。恵の目はうるんでいる。
「だって、倫也くんの一言が、倫也くんの行動が、倫也くんと過ごす時間のすべてが・・・わたしにとってのフラグだもん。わかんないよ。どれが正しいフラグなのかなんて・・・」
「そのあざといセリフを・・・笑ってやるつもりだったのよ!」
英梨々が息をのむ。
鼻で笑うつもりだった。もっと前なら笑えただろう。
机の上に綺麗に並べてあったなら、あざといマネでくだらないと。
でも、この恵はガチだ。白フラグを作り続けてきた。
英梨々ルートの恵なら、倫也との間に大事なフラグは立たない。立てられない。
「で、恵・・・どうやって『ヤンデレ化』するつもりなのよ」
「えっと・・・」
恵がゴミ袋を広げる。そこに白フラグを捨てていく。
ゴミ袋の山が一つ、二つ、三つっと増えていった。
「こうしてみると、バカげた行動もやり通せばそれなりに見えるものなのね・・・」
詩羽がひきつった顔で見ている。
もう少しスマートな演出もあるだろうに、と思いながら・・・
英梨々は恵を手伝ってゴミ袋をもっている。恵がそこに旗を両手ですくっては捨てていく。
机の上に金色のフラグが一本だけ残った。
「これは何よ?恵」
「それは・・・昨日、電車の中でわたしを『可愛い』っていってくれたから・・・」
「なによそれ?あんた『可愛い』って言われただけで、好きになるの?それだけを頼りに倫也と・・・」
「ううん。違うよ英梨々。それはね・・・『チョロイン』のフラグだよ」
「・・・恵、あんたやっぱりバカでしょ?」
「そうかもしれない。でもね英梨々。わたしは何もたくさんのフラグなんていらない。その後に『メインヒロインになってくれ』って言ってくれたら・・・そしたら、わたしは倫也くんを好きになって、そのことをバレないようにフラットにふるまって、そしていつか倫也くんに『好きだ』って告白してもらえるようにがんばるだけだよ?」
詩羽が頭を抱える。英梨々ルートがまったくみえない。
「捨てなさいよ、その金フラグも」
「・・・英梨々、これ純金なんだけど」
「あんたねぇ!そうやって、余計なところに経費をかけないでよ!」
「経費じゃないよ。純金積み立てだよ!」
コツッコツッ
タンスの上で美智留が音を立てた。
「ふぅ・・・長いよ!加藤ちゃん、澤村ちゃん!」
「あっ、いたの氷堂美智留」
「ずっといたよ!瞑想してたよ、この話が迷走している間も!」
「上手いこといったつもりかしら?氷堂さん」
「だいたい、こんなつまらないオチのためだけにあたしを呼ばないで!」
美智留がタンスから降りてくる。足がしびれて動けない。
英梨々が座って楽しそうに足をつんつんする。
「やめてよ!澤村ちゃん」
「えっ、氷堂美智留。このオチのためだけにいたの?」
「元々出番なんてなかったなかったんだけどー」
美智留は笑顔だ。これくらいくだらないのが気楽でいい。もう少しヒロイン同士でくだらない会話をして楽しく過ごしてもいいのではないかと思う。
「お疲れ様、氷堂さん。帰っていいわよ」
詩羽が冷静にいう。茶番もそろそろ終わるころだ。
「冷たっ!」
しかし、足がしびれていて動けないので、イベントを進めるように美智留が言う。
恵はうなずくと、金フラグをさりげなくポケットにしまって、用意していた『黒いフラグ』を机の上に立てた。
3人の目が点になる。
・・・恵は恥ずかしそうに顔をうつむいた。
・・・それから、堪えきれなくなって4人で一斉に笑った。ヤンデレフラグってなんだよって思いながら。
(つづく)