負け犬ヒロインの育て方 6 (ラスト)   作:きりぼー

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四一

 

プロット『加藤家にて、ヒロイン集合』⑦

 

※※※

 

 出海はもしかしてワンチャンあるのではないかと・・・お兄ちゃんはヒロインの道もないと言われたけれど・・・

 

「恵先輩、ケーキごちそうさまでした!おいしかったです!」

「ありがと、出海ちゃん」

「そこで提案があるのですが・・・」

 

みんなが出海に注目する。どうせ、ろくなことでないんだろうなって予想しながら。

 

「恵先輩が恋愛のサポートにまわるなら、乗り気でない澤村先輩もサポートにまわって、わたしを倫也先輩とくっつけるというのはどうでしょう」

 

4人の視線が元に戻る。聞かなかったことにしよう。

 

「加藤さんの態度がはっきりしたところで、私から提案があるのだけど、いいかしら?」

「なんですか霞ヶ丘先輩」

「精神的重圧からとはいえ、倫理君が風邪をひいているのは事実だわ。ここはやっぱり『お見舞いイベント』をすべきじゃないかしら?」

「さすがセンパイだなぁ」

「それに、このチーズケーキも倫理君に届けましょうよ。作ったものを食べないのも、食べてもらえないのも・・・やっぱり、気分がいいものじゃないでしょう?」

 

恵は考える。倫也くんのために作ったチーズケーキ。倫也くんのために作る予定のケーキは難しくて今は練習中だった。

 

「あの・・・先輩方・・・わたしの提案については議論されないのですか?」

 

詩羽があえて無視をする。

 

「それで誰がイベントに参加すべきかしらね?」

「わたしはあの部屋に行きたくない」

恵は拗ねていった。

「あたしはカップ焼きそばしか作れないし、お見舞い向けじゃないかも・・・」

「困ったわね。かといって私は倫理君とはイベント行わないし、やっぱり美智留さんかしらね?」

「うーん。あたしは別に構わないけど・・・あたしがやるぐらいなら、すっとばしても同じじゃないの?」

 

出海が不思議そうに首をかしげる。

 

「・・・あのぉ・・・わたしではダメなのですか?」

 

恵がため息をつく。

詩羽と英梨々は躊躇する。

しかたないので美智留が言う。ときどき変な役回りがくる。

 

「出海ちゃん・・・トモにふられてみる?」

 

出海が固まる。

 

「うーん、今の倫也くんは機嫌悪いし、雑にふるからやめたほうがいいよ」

 

恵が忠告した。その声には抑揚がない。

 

「あのぉ・・・わたしはそんな段階でなくて、少しずつわたしに・・・」

 

美智留が机を強く叩いた。全員が固まる。

 

「出海ちゃん!トモは苦しんでいるって話をしたよね?それなのにさらに悩みを増やすことをしたいって提案はどうなの?温厚なあたしもちょっとイラッとした」

「温厚かどうかは置いておいて、確かに氷堂さんの言うとおりね。それでもあなたが『ヒロイン』として舞台に上がるなら・・・ふられる権利は確かにあるわよね」

 

英梨々は『ふられる権利』とは詩羽らしい表現だと思った。

けじめをつけるサブヒロインになるか、モブに近いサブヒロインになるか・・・

 

恵が考える無数のシミュレーション。波島出海の可能性は0%だった。

『ふられる』のは確かに権利かもしれない。しかし、ふられるにはフラグを立てないといけない。そのフラグを立てるイベント消化が今の倫也には負担になっている。だから・・・『波島出海①』から、倫也とからむイベントはボツになっている。冬の時間軸でも接触をつぶした。『赤モブ』でいてもらっても困る。かといって『ヒロイン』になられても困る。出海ちゃんには『明るく元気な後輩ヒロイン』をしてもらわないといけない。それはこの物語の都合であって、出海ちゃんの意思ではない。

結局、波島伊織に頼るしかない。恵は伊織が苦手だ、物語の面白さを優先して、どこか人の気持ちをないがしろにしている気がするからだ。

 

※※※

 

呼び鈴がなった。

恵は美智留に頼んでインタホーンを出てもらった。

 

そして波島伊織がきて、出海を連れて帰った。

無言のままだった。

 

美智留はそんな伊織を見て、どこか無機質なものを感じた。『自殺』イベントを回避し、次へ進む。そのための仕事をこなしただけで感情が見当たらなかった。

それでもいろいろと骨を折ってくれる。本音は優しい人のはずだ。

みんなが感情的に勝手に振る舞うから、伊織が苦労しているのだと美智留は思っていた。

かろうじてストーリーになっているのは彼のおかげだろう。

 

※※※

 

 恵が考え込む。波島兄妹への扱いがひどい。あの雨の日にちゃんと倫也くんと話合っていたら・・・物語は別な方向へ進んだのかもしれない。こんなくだらないことで物語を進めずに、もっと恵と英梨々で描けたはずだ。でも、自分にはそれができない。

 

「なにも、加藤さんがなにもかも背負うことはないじゃない?」

「そうだよー。出海ちゃんには波島兄ちゃんがいる。それが一つの正解なんだと思うよ」

「ありがと、氷堂さん」

 

詩羽も美智留も恵の辛さがわかる。

少し沈黙が流れた。

 

「・・・で、誰がお見舞いにいくの?」

英梨々が言った。

 

「行くなら澤村ちゃんしかいないよ。やっぱり彼女の澤村ちゃんがいくのが道理だよ。それか従姉妹のあたしだろうけどさ」

「でも、あたしは料理が作れないわよ?」

「英梨々、作ってみたらいいんじゃないかな?」

「むりよ、むり」

「そうでなくって、わたしと一緒に今から作ろう?おかゆでいいじゃない?それで英梨々が作ったものを倫也くんに食べてもらいなよ」

「チーズケーキは?」

「・・・あげないよ」

 

倫也くんのために焼いたケーキ。倫也くんが食べてくれなかったケーキ。

 

(つづく)

 

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