プロット『英梨々のお見舞いイベント』
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料理を作っているところとか、電車で移動しているところとかを省略し、英梨々は倫也の家の前にいる。
合鍵を使って家に入る。なんだかドキドキして入った頃がひどく懐かしい。今は当たり前のように入る。
家の電気をつけ、荷物をテーブルに置き、洗面所で手を洗う。
おかゆをタッパーから適当な器にうつす。まだ温かいのでレンジにかける必要はなさそうだ。冷蔵庫にあった梅干しを一つのせた。
チーズケーキは皿にのせてラップをかけて冷蔵庫にいれる。
妙に静かな家で英梨々の作業する音だけが聴こえる。
こうしてみると、確かに彼女っぽい。いや、彼女なのだ。
お盆の上におかゆの入った器とスプーンをのせて階段を静かに上がっていった。
倫也の部屋はカーテンが閉まっていたこともあり、日が暮れてすっかり暗い。空調の音だけが鳴っている。
電気をつける。じじっという音で蛍光灯が点滅し、部屋が明るくなった。
どこを見てもヲタクグッズが目に入る。恵が絶望した部屋。けれど恵がショックを受けたのはベッド上に枕がふたつ並んでいたことだろう。それが意味することぐらいわかる。
英梨々は倫也の部屋に泊まる。週末になると当たり前のように泊まり、朝を迎える。恵のように布団を別にしない。
英梨々と倫也の恋はすごく自然だ。無理するところがない。それはドラマがないということに近い。部屋で一緒に過ごす。漫画を描いて、並んでゲームをして、横を向いたら好きな人がいるからキスをする。当たり前のことを当たり前のようにするだけだ。
ボートに乗るような非日常的なイベントは心が揺れる。英梨々は照れるし、恋人の役の自分を演じる。7月イベントの観覧車でもそういった側面をみせることだろう。
しかし、本質的に英梨々は現実的だ。その幻想的な容姿と反してドライなところがある。
ゆえに問う。
『年頃の男女が部屋に2人きりで夜を過ごす。何もないほうがよほど不自然でしょう?』
っと。
もちろん小説の中では描かれない。倫也と英梨々は潔白だしキスもしていない。そうでなければならないよう制約されている。英梨々はそれに従う。でも内心嫌がる。
英梨々は倫也と2人きりの世界が好きだ。そこは誰にも邪魔をされたくない。
この部屋が恵を拒絶したように、美智留をもってしてもベッドの上にあがることができなくなった。それはだんだんと強くなってきて・・・
こうやって小説の中で描写されることすら、苛立ちを覚えるようになっていった。
「おきなさいよ。倫也」
英梨々はテーブルの上にトレイを置く。
「勝手に起きて、勝手に食べて。あと、冷蔵庫にケーキがあるから食べたいなら食べなさいよ」
倫也が顔をこすりながら起き上がる。
「ありがと、英梨々」
英梨々は答えない。
ここでおかゆをスプーンで食べさせるようなことはしない。そんなところは見られたくない。そんな演出は恵に任せておけばいい。
だから英梨々は部屋を出る。
それから階段を駆け下りて、玄関から出て家に帰った。
2人の世界がのぞかれないために。
(つづく)
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