プロット『7月のクラスメートB』②
※※※
「っと、いうわけでよろしくね。安芸くん」
「ん・・・ああ、よろしく」
教室の一番後ろの窓側の席に恵が座っている。倫也はその隣の右側に座っている。
これは恵が『席替えイベント』をリクエストした結果ではあり、その途中経過を全部省いている。
モブが大きなアクリル板を運んできて、2人の席を囲うようにして隔離した。別に現実に起こっている疫病とは関係がまったくない
「えっと、加藤・・・これ、どういうこと?」
「いろいろシミュレートした結果、2人で話をして授業の邪魔をするのはよくないかなって」
「えっ?」
「だから、話し声が大きくなったら迷惑でしょ?」
「どこからつっこんでいいのかわかんねぇな・・・」
「こんな風に席替えしないほうがよかった?なんか安芸くんがすごく遠い席だった気がするんだけど」
「いや、そうは言ってねぇよ・・・」
恵が満足そうに席に座っている。窓の外は他のクラスの体育の授業が行われている。
7月になり空は青く、日の光は強い。すっかり夏になっていた。
「安芸くん、机・・・くっつけてくれる?」
「ん、どうした?」
「教科書・・・見せて欲しいんだけど。だめかな?」
「いや、ダメなことはないけど、忘れたのか?」
「ううん。燃やした」
「えっ?」
「だから、これからずっと教科書見せてね?」
「えっと・・・」
「ほら、わたしヤンデレフラグ立てたし、これくらいわね?」
「へぇ・・・」
恵が机に頭をのせて倫也を見上げるように眺めている。
足をゆらゆらと振っている。
「・・・えへへ」
顔が完全に崩れて笑っている。フラットな恵はどこへいった。
倫也はその恵の笑顔を見て、顔を赤らめて照れる。
「そうだ、怒るんだった」
恵が気を取り直して椅子に座りなおす。顔を手で叩いてフラットに戻す。
授業は進んでいる。黒板に先生がチョークで文字を書いていく。
「まったくわかんねぇな・・・」
「今って国語?」
「ああ。そうだな」
「ふーん」
「まったく興味なしだな!?」
「うん」
「これ教室でやる意味あるの?」
「そういうこと言うんだ?・・・だって、クラスメートBとしては『席替え』は大事だよ?これぞ学園ラブコメって感じだと思うんだけどなぁ」
「だったら、もう少し普通にやりませんか加藤さん?」
「だってさー、わたしの7月のイベントはこれで終わりだよ?そしたら夏休みだよ?倫也くんはこれから英梨々とデートするんだよね?家の中で一緒に過ごすんだよね?わたしどうするの?一人ぼっちなの?」
「ちょっとまって、お前、いろいろ誤解しているぞ?」
「なによー」
「夏休みは合同イベントだよ?聞いてないの?」
「何も聞いてないけどなぁ・・・」
「じゃあ、まぁそうなんだろうな・・・」
「何それ・・・」
倫也がノートに黒板の文字を書く。
「・・・それ、意味ないと思う・・・」
「もう少し真面目に学生やりましょうか?加藤」
「じゃあ、夏休みは心配しなくていいの?」
「それがどういう方向性をもった心配なのかわからないけど・・・イベントはあるよ」
「でも40日間ずっとあるわけじゃないよね?」
「うん。まぁ・・・そうだな」
「それ以外の時は英梨々と家で過ごして、漫画描いたり、ゲームしたりして過ごすんだよね?」
「うーん・・・そういうことになるのかな?」
倫也が目をそらす。
「ふーん」
恵が窓の外を見る。校庭を走っている生徒の姿が見える。
「なんか、さっきまで楽しかった気がするけど、なんで英梨々の話をするかなぁ・・・?」
「それ、俺のせいじゃないよねぇ!?」
「そうだけどさぁー」
恵が足をそろえて前に伸ばす。それから倫也の方をじっと見る。
「あんまり怒りたい気分じゃないんだよね」
「なら、怒らなくてよくない!?」
「そうもいかないんだよ、安芸くん」
「とりあえず、一限目終わりにしよ?加藤」
恵は寂しそうにコクンッと首を小さく振ってうなずいた。
少し早い気がするが一限目終了の鐘がなった。
(つづく)