プロット『7月のクラスメートB』③
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「ふぅー」
休憩時間。恵は立ち上がって窓を開ける。外の空気が入ってきてベージュのカーテンが揺れる。前の席の方でもモブが空気を入れ替える。
「窓を開けたままのほうが夏っぽくていいかな?」
「ここは空調あるからなぁ・・・それに音が」
「そうなんだよねぇ、次の時間って校庭では何するんだろ?」
「それはクラスメートAが知ってるんじゃないか?」
「すっかり忘れていたよ!」
※※※
「比較的静かな体育の授業を行えばいいんですね?」
クラスメートAが静かに言った。信頼のおける落ち着いた声。
「うん。お願いできる?」
「そうですね、テニスなんてどうでしょうか。テンポのいいボールを打つ音が響くぐらいで」
「それで」
「じゃあ、ちょっと手配してきます」
※※※
「安芸くん!この世界観は便利だよ」
「・・・そうだな」
「なんで不服そうなの?」
「いや、別に裏方をわざわざ見せなくてもいいんじゃないかなっと」
「モブの演出と協力があってのわたし達だよ」
「おまえがそれでいいなら、それでいいよ」
※※※
二限目の鐘がなる。先生がはいってくる。もはや倫也と加藤はいない扱いになっている。2人にはふれないで授業が開始される。
「ねぇ安芸くん。わたし数学の教科書・・・」
「もういいよ。燃やしたんだろ?」
「・・・山羊にあげたとかにしようかと思ったのだけど」
「そういう小ネタはいらないんじゃない?」
「でも、全教科やったら、一個ぐらい面白いのが見つかるかもしれないし」
倫也がため息をつく。こいつはどういう方向に向かっているのだ。
つっこみをいれず、教科書を開く。
「で、わたしは怒らなきゃいけないんだっけ?」
「いや、頼んだ記憶はないぞ?」
外から涼しい風が吹いた。恵の髪が揺れる。微かな香りが倫也の鼻をくすぐる。
テニスの準備を始めている様子が見える。
「黒板みろよ・・・加藤」
「・・・つまんないなぁ」
「そういうところは真面目な原作に忠実になったほうがいいと思うぞ」
「原作に授業風景あった?」
「・・・」
倫也が黒板を見る。それからあくびをした。
「・・・つまんないな」
「うん。そろそろ怒ろうかな」
「そういう風に怒れるものなの??」
「ううん。なんかガス抜きされちゃってる」
「そりゃあ良かった」
「でも、そうは言ってらんないんだよ」
「あっ、その前にちょっといいか?」
「ん?」
倫也が頭を少しかく。照れくさい。
「こないだ、おかゆありがとうな」
「あっ!ああ・・・うん」
「上手かったよ。ごちそうさま」
「あれは・・・英梨々が作ったんだよ。わたしにお礼なんて・・・」
「そうかもしれないけど、でもやっぱり加藤がいたからだろ?嬉しかった」
「・・・そう」
「・・・あっ、どうぞ怒って」
「怒れないよ!」
教室がざわつき、みんなが2人の方をみる。
恵が頭を下げて謝る。みんなが声を殺しながら笑っていた。
「あとさ、チーズケーキもありがとな」
「うん」
「ごめんな」
「なんで・・・謝るのかなぁ」
「だって、最初に誘われたときに食べられなかったから」
「それ、ボツになった話だよねぇ」
「そうだけど。俺さ、フラグを立てないことばかり気にして、加藤のためだと思って、加藤の気持ちを無視していた・・・と思う」
「でも、それは倫也くんの優しさなんだよね?今、わたしのためって言ったもんね?英梨々のためじゃないんだよね?」
「あっ・・・」
倫也が天井を見上げる。
恵はその倫也の表情を見つめる。外からはボールを打つ心地良い音が聴こえていた。
(つづく)