プロット『7月のクラスメートB』⑤
※※※
「じゃあ、はじめよっか」
窓を閉めてカーテンも閉める。それからエアコンを弱くつける。
とても静かな教室になった。
「次は英梨々と『観覧車デート』なんだよね?」
「ベタなところでそうらしい」
「で、どっちにいくの?」
「どっち?」
「この辺だと、臨海公園かパレットタウンあたりだと思うのだけど」
「ドームシティもあるぞ」
「それだと遊園地に近いから、そこにいったら出海ちゃんが可哀想だよ」
「それはなんの縄張り!?」
恵が紙に観覧車と書いて丸で囲う。
「ねぇ、安芸くん。わたし達が下見の名目で観覧車に乗るというのはどうなのかな?」
「ダメだ」
「そこまでばっさりだと、ショックなんだけど?」
「逆なんだよ」
「逆って?」
「わからないならそれでいい」
「その言い方、頭くるんだけど」
「とにかくダメだ」
恵がムッとした顔をする。
「どうせわたしは地縛霊ですよ」
「それ、伏線として回収しないからな?」
「ただの嫌味ですから、気にしないでいいよ」
「うん。それに相合傘イベントしたろ?」
「あれは学校の延長じゃないの?」
「うーん」
倫也が考える。
「考え方を変えたらどうだろう?」
「考え方?」
「学校内での楽しいイベントを探して、2人でする」
「例えば?」
「そこがやっぱり加藤の演出で考えるところじゃないかな?」
「なんか誤魔化されている気がする」
「何も授業だけじゃなくって、体育祭や文化祭もあるわけだし」
「そういえばキャンプファイヤー囲って踊ったねぇ・・・あの頃は幸せだったなぁ・・・メインヒロインとして大切に扱われて・・・たっけ?」
「さぁ・・・俺はどうこう言えないよ」
「なかったことにしてくれる?」
「お好きにどうぞ」
恵が紙にお台場と葛西と書く。どちらも観覧車で有名な場所。
「まずはお台場から検討してみよっか」
「ああ、そういえばレインボーブリッジって歩いて渡れるんだぞ」
「へぇ・・・?」
「最寄り駅から少し歩くけどな」
「じゃあ歩いていくの?」
「たぶんタクシーじゃないか?」
「タクシー!? それはおかしいよ」
「そうだな。でもどこがおかしいかわかる?」
「ん~、まず高校生だしお金ないよね。それに待ち合わせしたり、移動したりする時間もデートの内だよ」
「ふむ。お金に関して、あいつはよく稼いでいるからなぁ」
「なるほど。でも無駄使いはよくないんじゃないの?」
「ちょっとそこらへんの論争は横においておきましょうか」
「じゃあ、ゆりかもめで」
恵がケータイで路線図を調べて紙に書いていく。
倫也はそれを何もいわずに眺める。わかることは、英梨々は従わないだろうということだけだ。もちろん口には出さない。
「お台場だとショップも多いし、散策する分には問題ないよね。そしたらあれかな、クレープとか食べたりする?」
「クレープ?どうして?」
「カップルってクレープ食べない?」
「そんなイメージあるよな」
「あれ、『クレープイベント』ってやってないよね?」
「うん。やった記憶はないけど・・・ボツにあったような・・・」
「出海ちゃんと食べてない?」
「チュロスなイメージしかないな」
「うーん」
恵が考える。あれ?自分のイベントかなっとボツを調べ始める。
「負け犬シリーズもけっこう長いねぇ・・・」
「『も』っていうけど、他のやってないけどな」
「そうだね・・・ああ、わかった。わたしのロクテンバ?モールのイベントが消えているんだ」
「原作の?」
「ううん。これの」
「ほう・・・」
「ほら、わたしがフラグ管理ごっこをやっていて、まだウブなクラスメートBだったころなんだけど・・・」
「自分でいうか・・・」
「なによー」
「いや、どうぞ」
「モールに行きたくて、安芸くんにさりげなく情報をリークして・・・失敗するんだよ」
「ほうほう?」
「それで落ち込んでいるんだけど、なんやかんやで安芸くんに気が付いてもらってモールにいくの」
「健気だなぁ・・・」
「今も健気なつもりなんだけど?」
倫也固まる。健気ってなんだっけ?
「なぁ加藤・・・三限目はお台場デートのプロットが完成したってことでいいかな?」
「そろそろ時間かぁ・・・」
三限目終了のチャイムが鳴った。
倫也はこんだけしゃべっても、ゆりかもめで行くぐらいしかわからなかったよな?っと振り返る。
それから未来が変わっていたことに驚く。確かに健気なクラスメートBが自分に頼るようなストーリーがあった。
そういえば2パターンあるっていってたな。あと怒るんだっけか。
考えても仕方ない。恵が過ごしたいように過ごせばいい。今までの負け犬シリーズがあまりにもおかしかったのだから。
(つづく)