プロット『7月の微笑む英梨々は今日も可愛い』
※※※
「で、倫也。あんた、ア・バオア・クーにでも行くの?」
「ああ、それも悪くないな」
2人がガンダムを見上げている。
妙にリアルだ。フォルム、可動部、ランプ、塗装、質感・・・どうみてもガンダムである。
「こんな導入でいいかしらね?」
「・・・英梨々。これは・・・まずいぞ・・・」
微笑む英梨々は今日も可愛い。八重歯が少し見える、それがまた可愛い。どうしよう、困った可愛い。
英梨々は正装の装いだ。赤いワンピースのドレスは中央に大きな黒いリボンが結んである。髪を結ぶリボンもハイヒールも深紅だ。手には真っ白なオペラグローブをしている。
一方の倫也は夏用のジャケットを着ているものの、そこまでフォーマルではない。
「この衣装でいいのかしらね?」
「夏だと、このイベントでしか着る機会ないし問題ない」
「このヒールだとたくさんは歩けないのだけど」
「心配するな。そんなに歩かなくてもいい」
「ずいぶん頼もしいわね」
「任せろ」
倫也は言葉とは違って、態度は自信なさげだった。
「正直、くじけそうだった」
「それ、あたしにだけは言っちゃだめなセリフなんじゃないの?」
「それでも、俺は・・・今、英梨々に会えてよかったよ」
「せいぜい詩羽に感謝しなさいよ。こういうのはあたしの機転じゃないから」
倫也が苦笑いする。
詩羽が恵のイベントの途中に割り込みをした。それがこの英梨々イベント。
※※※
「少しガンダムを眺めていていいか?」
「好きなだけ見てればいいじゃない。別にあせることなんて何もないんだし」
英梨々がケータイでガンダムを背景に倫也を映す。
倫也は男の子らしい目でガンダムを見つめていた。
こうして2人でいると英梨々はやっぱり倫也が好きだ。
でも、倫也と恵の物語を読んでいると辛い気持ちになる。
「ねぇ倫也・・・あなたが恵のことが好きなら・・・」
倫也が振り返る。英梨々を見て困った顔をした。
「なぁ・・・英梨々」
英梨々は迷ったが思ったことを言うことにする。
「あたしは・・・ふられてもいいからね?倫也と恵が結ばれるのが一番自然なんだからね?」
英梨々は微笑む。でも目元は涙で濡れている。
「怒ってごめんな。英梨々。ずっと、そのお前の態度を怒ってきた。『おまえはどうしたいんだ?』って責任をなすりつけてた。ほんと、ごめん」
倫也が頭を下げる。それから英梨々に近寄っていく。
それから英梨々の手をとって引き寄せる。
英梨々の頭が倫也の胸にぶつかる。
「お前はやさしい」
英梨々が倫也のジャケットを両手で握り、顔を見られないように下を向いた。
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この負け犬シリーズの英梨々のキャラは迷走していた。それもそのはずで原作のセリフの改変などは行っていない。その点が加藤恵とは大きく違う。物語の都合でパチモンとしてひどい役を演じてきた。恵に倫也を譲ってしまう英梨々がいる。物語に殉ずるサブヒロインの優しい英梨々がいる。
負け犬シリーズの英梨々としては不本意のようだが、原作英梨々の力を借りることにしたようだ。
※※※
英梨々が上を向く。手袋で涙をぬぐう。
それから、倫也の胸に右手を軽くパンチした。
「・・・なる」
「・・・えっ」
「・・・あたし、あんたの一番になってやる!」
ガンダムが動き出した。
「だから・・・それまで、あたしは絶対に恵にあんたを譲らない!」
倫也がガンダムを見ている。
「・・・」
英梨々が倫也の首をもって激しく揺らす。
「あんたねぇ!!」
「ゴホッゴホッ」
倫也が笑う。
「いや・・・ごめん。でも、お前までシリアスになるなよ・・・俺、もたねぇよ・・・」
「・・・倫也。それでよく、恵とあたしが取り合うハーレム型主人公になれると思うわね?」
「そんなの望んでねぇよ」
「はぁ?あんたバカなの?死ぬの?」
「死んだほうがマシなんだよ・・・」
「うわぁ・・・ダメだ。この主人公が一番ダメだ」
英梨々が笑う。どうしよう。英梨々可愛い。誰からちゃんと小説書ける人、英梨々を幸せにしてあげて。
「今一度言うわよ?いい?倫也」
「なんだよ?」
英梨々は息を大きく吸って怒鳴った。
「物語に相応しい男に成長しなさいよ!」
(つづく)