負け犬ヒロインの育て方 6 (ラスト)   作:きりぼー

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四九

 

プロット『7月の微笑む英梨々は今日も可愛い』

 

※※※

 

「で、倫也。あんた、ア・バオア・クーにでも行くの?」

「ああ、それも悪くないな」

 

2人がガンダムを見上げている。

妙にリアルだ。フォルム、可動部、ランプ、塗装、質感・・・どうみてもガンダムである。

 

「こんな導入でいいかしらね?」

「・・・英梨々。これは・・・まずいぞ・・・」

 

微笑む英梨々は今日も可愛い。八重歯が少し見える、それがまた可愛い。どうしよう、困った可愛い。

英梨々は正装の装いだ。赤いワンピースのドレスは中央に大きな黒いリボンが結んである。髪を結ぶリボンもハイヒールも深紅だ。手には真っ白なオペラグローブをしている。

一方の倫也は夏用のジャケットを着ているものの、そこまでフォーマルではない。

 

「この衣装でいいのかしらね?」

「夏だと、このイベントでしか着る機会ないし問題ない」

「このヒールだとたくさんは歩けないのだけど」

「心配するな。そんなに歩かなくてもいい」

「ずいぶん頼もしいわね」

「任せろ」

 

倫也は言葉とは違って、態度は自信なさげだった。

 

「正直、くじけそうだった」

「それ、あたしにだけは言っちゃだめなセリフなんじゃないの?」

「それでも、俺は・・・今、英梨々に会えてよかったよ」

「せいぜい詩羽に感謝しなさいよ。こういうのはあたしの機転じゃないから」

 

倫也が苦笑いする。

詩羽が恵のイベントの途中に割り込みをした。それがこの英梨々イベント。

 

※※※

 

「少しガンダムを眺めていていいか?」

「好きなだけ見てればいいじゃない。別にあせることなんて何もないんだし」

 

英梨々がケータイでガンダムを背景に倫也を映す。

倫也は男の子らしい目でガンダムを見つめていた。

 

こうして2人でいると英梨々はやっぱり倫也が好きだ。

でも、倫也と恵の物語を読んでいると辛い気持ちになる。

 

「ねぇ倫也・・・あなたが恵のことが好きなら・・・」

 

倫也が振り返る。英梨々を見て困った顔をした。

 

「なぁ・・・英梨々」

 

英梨々は迷ったが思ったことを言うことにする。

 

「あたしは・・・ふられてもいいからね?倫也と恵が結ばれるのが一番自然なんだからね?」

 

英梨々は微笑む。でも目元は涙で濡れている。

 

「怒ってごめんな。英梨々。ずっと、そのお前の態度を怒ってきた。『おまえはどうしたいんだ?』って責任をなすりつけてた。ほんと、ごめん」

 

倫也が頭を下げる。それから英梨々に近寄っていく。

それから英梨々の手をとって引き寄せる。

英梨々の頭が倫也の胸にぶつかる。

 

「お前はやさしい」

 

英梨々が倫也のジャケットを両手で握り、顔を見られないように下を向いた。

 

※※※

 

この負け犬シリーズの英梨々のキャラは迷走していた。それもそのはずで原作のセリフの改変などは行っていない。その点が加藤恵とは大きく違う。物語の都合でパチモンとしてひどい役を演じてきた。恵に倫也を譲ってしまう英梨々がいる。物語に殉ずるサブヒロインの優しい英梨々がいる。

負け犬シリーズの英梨々としては不本意のようだが、原作英梨々の力を借りることにしたようだ。

 

※※※

 

 

英梨々が上を向く。手袋で涙をぬぐう。

 

それから、倫也の胸に右手を軽くパンチした。

 

「・・・なる」

 

「・・・えっ」

 

「・・・あたし、あんたの一番になってやる!」

 

ガンダムが動き出した。

 

「だから・・・それまで、あたしは絶対に恵にあんたを譲らない!」

 

倫也がガンダムを見ている。

 

「・・・」

 

英梨々が倫也の首をもって激しく揺らす。

 

「あんたねぇ!!」

「ゴホッゴホッ」

 

倫也が笑う。

 

「いや・・・ごめん。でも、お前までシリアスになるなよ・・・俺、もたねぇよ・・・」

「・・・倫也。それでよく、恵とあたしが取り合うハーレム型主人公になれると思うわね?」

「そんなの望んでねぇよ」

「はぁ?あんたバカなの?死ぬの?」

「死んだほうがマシなんだよ・・・」

「うわぁ・・・ダメだ。この主人公が一番ダメだ」

 

英梨々が笑う。どうしよう。英梨々可愛い。誰からちゃんと小説書ける人、英梨々を幸せにしてあげて。

 

「今一度言うわよ?いい?倫也」

「なんだよ?」

 

英梨々は息を大きく吸って怒鳴った。

 

「物語に相応しい男に成長しなさいよ!」

 

(つづく)

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