負け犬ヒロインの育て方 6 (ラスト)   作:きりぼー

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エピローグ①

 

 覚悟を決めた倫也が部屋からでてくる。

廊下に俯いて座っている美智留がいた。倫也はその肩をポンッと叩く。

 

「決定稿だ」

「そうみたいね」

「すまない・・・準備させるだけさせて・・・全部ボツだ」

「まさか、あたし達『ICY TAIL』のライブイベントが二つともボツになるなんて思わなかったよー」

「そうだな。お前にはここで白々しくボツプロットを読み上げ愚痴る権利がある!」

「トモ、そんな権利はいらないよ。欲しいのはちゃんとしたギャラを請求する権利だよ!」

「うーん、経理は恵だから、そこはお前が交渉しろよ・・・」

「そこで逃げるんだね・・・」

「ヘタレ主人公だからなっ!」

「開き直るな・・・」

 

2人が階段を降りてリビングに向かう。茶番をまぜないととてもじゃないがやっていけない。

 

リビングには英梨々と波島兄妹がいる。

 

伊織が手を上げて倫也を労わる。

 

「お疲れ、倫也君。まぁ煮詰まった感じだね」

「・・・そうだな」

「ちょっと、あんた達?何のんきに過ごしているのよ?恵が消えてしまったのよ!?」

 

英梨々が怒っている。

 

「もう、問題ないんだよ、澤村さん。この物語には澤村さんがいるからね」

「・・・だからあたしには無理だって・・・」

「それはそれでいいんじゃないかな?そういう結論だったってことで」

 

倫也と美智留がソファーに座る。出海が麦茶をグラスにいれて2人の前に置く。

 

「英梨々。今はちょっとそのことは置いておこうか。いくらなんでも投げすぎだからな。少し整理していこうと思う。それが『ボツになった話』だとしてもな」

 

英梨々はうなずく。

 

「トモ、やっぱりあたしのイベントで説明するのがわかりやすいんじゃないかな」

「そうだな。美智留はどういう依頼を受けていた?」

「一つは『フィーネ』のエンディングだよ。場所は池袋の駅前。『負け犬7』で予告された通り、加藤ちゃんの誕生日を祝うイベント」

「そうだな。その物語は原作の行われなかったデートを行うことを目的にしているようにみえて違う。デートを行えるように他のヒロインが協力して守る話だった。消滅する世界も英梨々が創生しなおすのがクライマックスだな」

「そんな見せ場があったのか・・・だからドイツ語の教材が・・・あたしに届いたのね」

「そうだな。アーデルハイトはドイツ語だしな」

「でも、トモ。どうして、フィーネのエンディングで『オープニングテーマ』をあたし達は演奏する予定だったの?」

「ああ、それは『俺たちの物語はこれからだ!』オチだったからだよ・・・」

「なるほど・・・」

 

伊織が声を殺して笑っている。

 

「いや、伊織?お前は笑うけれど、けっこう綺麗に終わったと思うぞ?」

「ん~、そうだね。まぁ嫌いじゃないよ。でも、加藤さんが選ばなかった。それがすべてじゃないのか?誕生日を祝いなおすようなオチを認めなかった」

「ああ・・・そうだな」

 

出海は静かにお茶を飲みながら話を聞いている。池袋のセッティングに関しては手伝っていた。また、『観測』イベントもした。それも全部ボツになり、伏線としては回収されないことを知った。いや、今がそうなのか。

 

「もう一つは、次の8月イベントだよ。なんで野外ライブイベントに招待して、みんなで疑似的な合宿イベントを行うことがボツになったの?楽しそうだったのにさー」

 

これに関して、美智留は不服だった。

 

「それはね、氷堂さん。8月の『霞ヶ丘シナリオ』がこの『負け犬6』の正統なオチだったからだよ」

「どういうこと?伊織ちゃん?」

「伊織ちゃん!?・・・まぁいいさ。『負け犬6』は勝負をつけないで『負け犬7』に引き継ぐ物語だった。加藤さんと澤村さんの板挟みになった倫也君が霞センセに泣きつく話さ」

「うわぁ・・・トモならやりそうだな」

「そこで仕様されるのが、ヘタレポイント」

「伊織、そこまで詳しく解説しないでくれ・・・」

 

倫也が焦り始める。

 

「そこで、足らないヘタレポイントを倫也君の発言で倍、倍、にしていくあたりが見所だった」

 

倫也が下を向いて頭を抱える。なんで、ボツ原稿で恥をかかないといけないのだ? と思いながら。

 

「なんか、その様子は目に浮かぶわね」

 

英梨々が笑った。

 

「で、結局、センパイはどうやって解決するの?」

「ん~、詳細はわからないけれど、5月の加藤さんのお土産覚えている?」

 

「ああ、あのボンボンな」

倫也が答える。違和感のあるイベントだった。

 

「そう、ボンボンは酒だからね、クラスメートAさんがいったように、少量でヒロインは酒乱になる。そこで仕掛けをしていた加藤さんが全員を眠らせることに成功する」

「へぇ・・・いろいろ考えているのね」

 

英梨々が感心する。

 

「この辺のやり取りが霞センセのいう『伏線勝負』なんだろうけどね。加藤さんなりの気の使い方なんじゃないかな」

「それでどうなるのさー?」

「加藤さんは倫也くんを連れ出して外にでる。浴衣姿で」

「あっ・・・」

 

英梨々がやっとそこで気が付く

 

「それがわたしの捕まえた『ノラ恵』の正体なのね?」

「そういうこと。このループオチがこの物語での『霞ヶ丘シナリオ』の正体だった」

 

英梨々が納得した。

それなら誰も傷つかない。

その後の『負け犬7』の倫也を自分からふる結論。倫也と恵が結ばれる話で綺麗に終わったはずだ。

『フィーネ』をボツにする必要はなかったはずだ。

恵がそれを選ばなかった?選べなかった?

 

(つづく)

 

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