こちらが本来の⑥になります。
前回投稿した⑥は⑦になります。
抜けても問題ない内容となっておりますが・・・
せっかくの英梨々なんで愛でてやってください・・・
日を改めて初夏。今日はそこまで蒸し暑くなく、からりとした夏らしい日だった。英梨々は白のワンピースから水色を基調とした衣装に変えた。倫也も普通の服装に戻った。
駅で待ち合わせた2人は軽く挨拶してから電車に乗った。
「なるほど・・・」
英梨々は言った。
「なにこれ?頭の中でずっとデートしていたわね!?」
「そうだな」
「いくつかのエンディングも見てきたんだけど」
「ふむ、それから好きなように進んで選べばいいさ」
「そんな適当なの!?」
「そうみたいだな」
「どういうこと?」
「元々、作者の頭の中で騒いでいる俺らを文章に起こしたSSが始まりだからな。それを無理やりストーリーにしているだけで」
「へぇ・・・」
「紆余曲折をへて、ここに到っているというわけだ」
英梨々がバックから飴玉を出して、倫也に無言で渡す。
倫也が包みから飴を出して口に放り込む。英梨々が包みを回収してバックにしまった。
「そうね。まずはあたしのルーツからお願い」
「ルーツというかベースだな。この物語を通してさんざん英梨々論はしてきた気がするが、さまざまな属性があるため、本質が見えにくかった。こうしたら英梨々っぽいというのがなかなか見つけられない」
「そうね。時にはキャラが弱いとまで言われたわ」
倫也がうなずく。
電車は空いていて、2人は端の席にゆったり座っている。
英梨々の左側が倫也だ。それはペンダコを気にしないで手をつなぐための2人の暗黙の約束になっていた。
「アニメ2期7話。倫也が英梨々からチョコをもらった後に歩いている会話シーンあるだろ」
「うん。それがベースなのね?」
「おそらくはそうだ。会話サンプルを置いてみる」
※※※
「で、あとは恵の義理チョコかぁ。あんた今年は大収穫ね」
「ううぅ」
「何その反応? まだ仲直りしてないのぉ?」
「うるせぇ」
(省略)
「そんなに気にしてるんなら、あたしから恵に連絡してみようか?」
「いやぁ・・・大丈夫だ。こればっかりは俺が自分で解決しないとならない問題だから」
※※※
「ん~。よくわからないんだけど、これは友達を気遣っているだけじゃないの?」
「もちろん、そう表面的には読み取れるだろうさ。だとすると映画で倫也に手伝ってもらうやりとりの時点でもまだ自分に脈があると思っている子ってことになるぞ・・・?」
「・・・いけないのかしら?」
「詩羽先輩の発言が一番多いけれど、俺らって劇中劇のメタ発言してるよな」
「そうね」
「だとすると、英梨々はサブヒロインの自覚があったってことになるよな?」
「で?」
「それを踏まえて上の抜粋を読んでみると・・・『やばい、バカ倫也といい感じでこのままだと英梨々ルートにはいってしまう。恵ルートに戻さないと・・・』って、いうようなモノローグがつけられるのでは?」
「考えすぎでしょ」
「しかも、倫也は分岐点である自覚があるよな」
「・・・」
英梨々はつまらなそうに向かいの窓から流れる景色を見ている。
「さらに深読みするとな」
「はい?」
「英梨々ってケンカ状態が苦手なんだと思う」
「そりゃそうよね。誰だってそうじゃないの?」
「自分自身のことでなくて、倫也と恵がケンカ状態なのが辛いんじゃないか?自分と重ねてしまって」
「いやいや、そこまで考えてない・・・うーん・・・」
眉間にしわを寄せて考え込む。
しばらく無言で2人は電車に揺られている。
「なんであたし達は、あたし達の考察をしているの?」
「そうすることで、このおかしな物語の側面を読み解けるからじゃない?」
「あー、まためんどくさい展開になってきた」
「まったくだ」
英梨々が倫也の顔をのぞきこむように見る。
「あたしのこと好き?」
「もちろん」
「でも、恵といるときのあんたは、もっとこう・・・ハートがあふれ出すような感じじゃない?」
「そりゃどうも」
「あたしといる時は少し淡々としているのよね。その理由はわかるのかしら?」
「前もいったけれど、俺らは10年間関係がこじれた。だから修復にも同じ年月がかかっても不思議じゃないだろ?何も熱々の相思相愛なのが理想とは限らないわけだし」
「そうかしらね・・・?」
「ちょっと小話を挟みつつ、このデートを進めようと思うのだけどさ。確認しておきたいのは、英梨々は英梨々ルートをちゃんと進もうと思ってる?」
「もちろん。がんばるつもりよ。無数のボツの山を踏み越えて」
「そのボツの中には無数の恵がいるだろう?」
「そうね・・・なんども怒られたり、泣かれたりしているわ」
「・・・つらいだろ?お前が」
英梨々は口を堅く結ぶ。それから上を見上げる。空調の音が聴こえる。
「うん」
倫也が英梨々の手をそっと握る。
「バレタインイベント分岐が『負け犬3』の本題だったんだけどなぁ・・・」
「でもこうして、倫也と過ごせているし、必要だったのよ・・・」
「英梨々?」
倫也が英梨々の顔を見つめる。
「大丈夫そうだな」
「何がよ」
「この物語のエピローグ」
「何よそれ」
英梨々と倫也が無数のデートをする。たくさんの会話をする。
その中で文章になり、物語として紡がれるのを選ぶのは、英梨々だ。
英梨々がおかしそうに笑った。八重歯がそっと覗いてみえる。
今日も英梨々が可愛い。倫也はそれだけで十分な気がした。
(つづく)
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