お手数ですが、今日投稿したエピローグ⑥が本日投稿分になります。
ご迷惑おかけします。
倫也と英梨々の2人が電車を降りて改札から駅を出る。階段を上って地上にでると、そこは元町中華街。横浜だ。
英梨々は大きなロゴの入ったピンクのシャツにベージュの短パンという動きやすい恰好をしていた。リボンの色もピンク。
「あのなぁ・・・なんで、毎回衣装を変えるんだよ!」
「『負け犬7』では余裕がなかったからできなかったでしょ。あんな滅茶苦茶なプロットさせておいて、その言い草はないんじゃないの?」
「・・・うーん」
「やっとわかってきたのよ。この物語のいい加減さの良さが。あんまり細かいこと気にしないほうがいいわよ」
「あっそ」
倫也が地図を見ている。それから位置を確認すると歩きだした。まだ人が多いので手はつないでいない。
「で、どこにいくのよ?」
「物語がおかしな方向になる前に、できるだけ回収しておくんだよ」
「・・・おかしな方向になるの?」
「さんざんなってきただろ?ならないように願うけどな。お前がどんなルートを進むかまではこっちはわからねぇし」
「ふーん。でも大丈夫よ倫也。たぶん」
少し道が開けて、人通りが少なくなる。
倫也は英梨々の手を自然と握る。英梨々は満足そうに笑顔を作ってうなずいた。
「こうやって、恋人っぽいことをすると、恋人ごっこもだんだん本物になるのかしらね?」
「『ごっこ』じゃねぇーよ。ちゃんと『恋人だよ』、お前が彼女になってからずっとな」
「そうかしら、ずいぶんと恵と過ごしていたように思えたけど・・・」
「そこは、もうつっこむな・・・。ほんとに。いや。まじで・・・」
「わかったわよ、わかったから、落ち着きなさいよ」
「こっちはな、命がけなんだよ!」
そこで、たまらなくなって英梨々が手を離し、しゃがみ込んで笑った。
「あはは。バカじゃないの。確かにあんたは『負け犬7』で殺されるわね。でも、それって面白い冗談じゃないわよ?」
英梨々は笑いすぎて目元に涙が浮かぶ。
立ち上がって歩きだす。倫也も歩く。
「もういい・・・」
「ごめん倫也。でも、殺されないと結ばれないカップルって、ずいぶんな話よね。そこまであたしと結ばれるルートはなかったのかしら」
「他の条件が厳しかったろ」
「そうよね・・・でも、何も死ななくていいじゃない」
「別にお前のためなら何度でも死んでやるよ」
「うわぁ・・・」
英梨々が倫也の前を歩いている。
「ときどき言う、そういう主人公っぽいセリフはやめたほうがいいわね。倫也」
「なんでだよ。そこは顔を赤らめて惚れ直すところでしょ!?」
「だってあなた、恵を輝かせるために、恵の物語のために死ねるっていってたわよ?」
倫也の目が泳ぐ。
英梨々は立ち止まって倫也をじぃーと見ている。英梨々はいたって楽しそうだった。
「はぁ・・・俺の目の前にいじわるに成長した英梨々がいるよ・・・昔は可愛いただのポンコツだったのに」
「あのねぇ・・・」
※※※
2人が山下公園に着いた。
「あっちに、実物大で稼働するガンダムがある」
「へぇ・・・」
「それが、あの赤いドレスでの強いフラグの時のガンダムだ」
「なるほど」
「服装も違うし、ガンダムは近くでみないで物語を進めるぞ」
「どこに?」
「このまま右手に進むと、高台の公園がある」
「登るのかしら?」
「うむ」
「だったらここで、少し休みましょうよ」
「そうだな」
リテイクされたボツ原稿では、このまま港の見える丘公園に向かい、途中で喉が渇いて大変だった。だから、ここで英梨々は休憩することを選んだ。
倫也と英梨々が空いているベンチに並んで座る。
「こうしてみると、なんだか恋人みたいね」
「あのなぁ・・・」
「倫也。気分がいいから、そこの自販機のジュースをおごってあげるわ」
「どうも」
「何がいいかしら?」
「いろはす」
「水!?」
「ああ」
英梨々が少し小走りに自販機に行く。Suicaでいろはすを二本買った。
倫也はその様子を眺める。短パンからは細い華奢な足が見える。でも目立つのは輝いているツインテールだった。多くのモブが英梨々に見惚れている。それが倫也には少し自慢に思えた。
英梨々が嬉しそうに小走りで戻ってくる。
そして、ペットボトルを軽くなげ倫也に渡す。
「あんたのためなんだからねっ!」
倫也はきょとんとして英梨々を見る。
英梨々の顔がだんだん赤くなる。
「なんかいいなさいよ!恥ずかしいでしょ・・・」
今日はいい天気。とても平和。
倫也が腹を抱えて笑っている。
(つづく)