流星のロックマン Arrange The Original 3 作:悲傷
EXEの発売日は2001年3月21日。
今日は2021年3月21日。
20周年なのです。
というわけで、EXEの続編にあたる流星のロックマン。それの3を小説化した「流星のロックマン Arrange The Original 3」……略してアレオリ3の連載を開始します!
いやあ、このままズルズルと先延ばしにして一生書かないなんてことになりそうだったのでね、この機会に「やるかああ!」と重い腰を上げました。
ある程度まとまってから投降するので、不定期連載になると思います。
今回は「後書き」機能を利用してちょっとした遊び心を加えていこうと思います。お知らせはこの「前書き」に集中させていくと思います。
では、どうぞお茶でも飲みながら読んでいただければ幸いです。
第1話.電波ヒーロー、ロックマン
22XX年。電波技術の発展は目覚ましい物になっていた。自動車や空調の管理や、気候状態までもが電波によって遠隔自動操作されるようになり、人々の生活は豊かな物になっていた。
その一方で、犯罪は凶悪かつ多様化していった。機械の暴走一つで、大きな事故や事件へと変貌する。
それがこの電波社会が抱える問題点だった。
「だからこそ、僕たち一人ひとりの防犯意識が求められているんだよ」
『へ~……』
少年が説明すると、携帯端末から気だるげな声が上がった。その様子に気づかぬのか、少年は天に向かって反り立つ後ろ髪を揺らした。
「明日から二学期でしょ? 楽しみだな~」
公園で遊んでいる周囲の子供たちと異なり、少年はベンチに座ってウンチク語りをしている。赤い長そで服と紺色の半ズボン。特徴的な後ろ髪に、額には白いサングラス。首からは流星型のペンダントを下げている。
彼の名は星河スバル。どこにでもいる小学五年生だ。
『……そうか。終わりか、お前のウンチク話?』
「え、つまらなかった?」
スバルは携帯端末の液晶パネルを見た。ホーム画面には声の主がいた。それは一見すると青い犬のような、だがそうではない。そして足ではなく緑色の粒子を漂わせている。
彼の名はウォーロック。電波の体を持った宇宙人だ。彼は眠そうに垂れ下がっていた目を鋭くし、相棒のスバルを睨んだ。
『あのな……世の中お前みたいなオタクばかりと思うなよ?』
「ごめんごめん、許してよロック」
『ったく……そんなことより、バトルしねえか?』
「嫌だよ」
太い腕と鋭い爪を乱暴に振り回すウォーロックと違い、スバルは澄み切った空を見上げた。
「こんなに良い天気なんだし。事件なんて起きなくて良……」
彼の言葉を吹き飛ばすように、大きな音が鳴った。公園の子供たちも一斉にそちらを見た。公園内にあるカードショップから火が出ていた。店長が中から飛び出し「救急車……じゃなくって、消防車的な!」と騒いでいる。
スバルは立ち上がって目を凝らし、火の出どころを探った。室外機だ。室外機が爆発したのだ。壊れたまま激しく回っており、どんどん火が大きくなっている。まだ店には燃え移っていないが、時間の問題だ。至急止める必要がある。
『スバル!』
ウォーロックに言われて、スバルは額にかけていたサングラスを素早くかけた。室外機の周りに、先ほどは見えなかったものが見えるようになった。
黄色いヘルメットに、黒い体。甲しかない足に、手が無いのになぜかツルハシを振り下ろしている。
「やっぱり、電波ウイルスの仕業か!」
電波ウイルス。この電波社会で悪事を働くお邪魔虫だ。
この室外機は電波で制御、および使用頻度や効率、損傷具合などの情報管理を行っている。これも立派な、電波ウイルスの獲物だ。
スバルは子供たちの群れから離れて近くの木陰に隠れ、携帯端末を手に取った。
「準備は良いね、ロック?」
『良いに決まってんだろ。待たせんなよ』
「了解!」
ウズウズしているウォーロックに急かされるように、スバルは携帯端末を頭上に掲げた。そして、その言葉を口にした。
「電波変換 星河スバル オン・エア!」
端末の画面からウォーロックの姿が消えた。同時に青い電波粒子がスバルの体を包む。次の瞬間にはそれがはじけ飛び、彼らの姿を変えていた。
青を基調とした服と、肩と足の装甲。左手にはウォーロックの顔。頭にはヘルメットと赤いバイザー。少年は一人の戦士としてそこに立っていた。
「しゃあ、行くぜ!」
左手のウォーロックの叫びに合わせて、スバルは木陰から飛び出し、子供たちの群れに突っ込んだ。スバルの体は最後尾の子供の背中にふれると、するりとすり抜けた。特別おかしなことではない。今のスバルは電波の体なのだから。
他の子供たちの体も同様にすり抜けて、一直線に電波ウイルスの元へと駆け付けた。走る姿勢のまま、左手のウォーロックの顔をウイルスに向ける。
「ロックバスター!」
ウォーロックの口から緑色のエネルギー弾が発射され、電波ウイルスを撃ち抜いた。電波ウイルスのヘルメットや黒い体に穴が穿たれ、「メット~」と高い声を上げながら消滅した。
同時に、暴れ狂っていた室外機がみるみるうちに動きを止め、火は小さく燻る程度に治まっていった。
「後は消防隊に任せたら良いね」
「おう、歯ごたえが無かったな」
事後処理までスバルが出しゃばる必要はない。店に燃え移らなくて良かったと安堵して、ふと視線に気づいた。振り向くと、子供たちの目が一斉に自分に注がれていた。
「あ……やば……」
慌てて逃げようとしたが、遅かった。
「ロックマンだ!」
一人が指を刺すと、連鎖的に爆発が起きた。
「ロックマンが来てくれた!」
「本当だ、前に動画で見たとおりだ!」
「世界を救ってくれたヒーローだ!」
「やったー! ロックマンが助けてくれた的な!」
子供たちに続いて、店長までもが喜びで飛び上がった。あっという間にスバルは取り囲まれた。
「ちょ、あ……あの……そんな、また見えていただなんて……」
電波は人には見えない。今のスバルも同様だ。だがたまに見えてしまう時がある。今回は運悪くその時だったらしい。
「ど、どうしよう……」
「良いから胸張ってろ。お前は英雄なんだぜ?」
「そ、そんなこと言われても……」
握手を求める声を断れず、スバルはおずおずと沢山の手を順に取っていった。
スバルとウォーロックが電波変換したこの姿を、人々はこう呼ぶ。世界の危機に流星のごとく現れ、人々を救ったヒーロー……ロックマンと。
◇
人々に囲まれるロックマン。その様子を遠くから窺っている者たちがいた。
「あれがロックマンか……試しに電波ウイルスを撒いてみたけれど、本当にこの町に現れやがったな」
一人は小柄な少年だった。黒い髪は全て後ろへと流しており、紫色の上着を羽織っている。目は鋭く吊り上がり、常に何かを睨んでいるようだった。年齢はスバルと同じくらいだろう。
「ちやほやされて英雄気取りか……気に食わねえ。姉ちゃん、やっちまおうぜ?」
もう1人は女性だ。紫色の服と特徴的な髪型が印象的だ。長い紺色のそれは、下ろすのではなく翼のように横へと広がっている。成人……というにはまだ幾ばくか幼さが残っている。
「ダメよ。まだ様子見だと言ったはずよ」
姉の忠告に少年は舌打ちをした。
「あんなの、大して強くもねえだろ。俺一人でも余裕なのに……」
そう言いながら、少年は屋根を蹴った。そう、2人がいるのは民家の上だ。それも3階建ての。
「まだロックマンの戦闘データは不十分。そう決めつけるのは早計よ」
「でもよ」
「同じことを言わせる気かしら?」
「……分かったよ」
少年が承諾すると、姉は腕組みを解いて、片手を腰に当てた。
「ロックマン……せいぜい束の間の平穏を謳歌すると良いわ」
「ヘッ、ようやく準備が整ったんだ。俺たちが動いたら、こんな世界あっという間だ……」
少年の目に映るロックマンは、ようやく人の包囲網から逃れたようで、ホッと息をついていた。実に間抜けな面だった。
姉はそんなロックマンに目を細めた。
「あなたに止められるかしら? 私たちが、この世界を赤く染めるのを……」
一陣の風が吹く。それは僅か数秒の事。民家の上にあったはずの姉弟の姿は、跡形もなく消えていた。
◇
星河スバルとウォーロック。
ロックマンとしての新たな戦いが迫っていることを、2人はまだ知らない。
○ロックマン
謎のヒーロー。
「FM星人の襲来」と「ムー大陸の復活」から世界を救った英雄。
事件現場に颯爽と駆け付け、多くの人々を救っていくその姿から、青い流星とも呼称されている。
だが彼についての明確な情報はほとんどなく、我々WAXAですら謎のヒーローと呼称している有様である。
現在は予測を立てるにとどまっている。その内の一部を下記に記す。
1.年齢と性別
半透明の赤いバイザーで目元を隠しているため、明確な顔が判明してない。だが声と体の大きさからして10代前半の少年と思われる。
2.FM星人との融合
FM星人とは電波の体を持った宇宙人である。彼らは地球人と融合することで力を増し、電波ネットワークのみならず、現実世界にも介入する力を得ることが判明している。
ロックマンがまだ少年であるにもかかわらず、これほどの力を持っているのはこれが理由であると予測している。
また、FM星人とほぼ同一種であるAM星人という者たちもいるらしい。力の正体はそちらである可能性もあるが、現状はFM星人と予測しておく。
他にも多数の予測などがあるが、長くなるため割愛する。
前述したとおり、ロックマンについては謎の部分が多い。だが地球や多くの人々の為に戦ってくれるのは確かなようである。
我々WAXAは彼の正体を迅速に解明する必要がある。
現在ニホン国では、最新型OS「ハンターVG」の配布が行われている。これが彼の正体を突き止める一手になることを祈るものである。
参照.ヨイリーレポートより抜粋