流星のロックマン Arrange The Original 3   作:悲傷

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今回はオリジナル展開です。
マナブには、原作にはない設定を追加しております。


第10話.マナブの夢

 ルナルナ団を結成した日の夜。夕飯も食べ終わってしばらくすると、スバルは外へ出た。夜空の下、見慣れた町並みを歩いていく。

 近くにある大きな公園の側を通り、中にある店を確認する。この前火事があった店だ。新しい室外機が置かれている。どうやら大事は無かったらしい。

 

「ロッポンドーヒルズとかは大分発展したけれど、この町はあまり変わらないね」

 

 ここは郊外なこともあり、あまり都市開発が行われることは無い。最近変わったことと言えば、案内所ができたことくらいだろう。

 その案内所が見えてきた。道の脇に灰色の装置が置かれている。その装置の前にはサラリーマン風の一人の男性がいた。

 

「もしもし、ちょっといいですか?」

 

 男性が装置に向かって話しかけると、台の上に電波体が召喚された。犬のような顔に、頭には青い帽子をかぶっている。

 

「ぼくコダマタロウくん! コダマタウンへようこそ! ……だわん!」

 

 このコダマタロウくんもウィザードだ。彼は道を尋ねられると、男性のハンターVGに目的地への道順データを送り、途中の道の特徴を細かに伝えている。

 

「電波世界は賑やかになったけれどね」

 

 ビジライザーをかければ空にはウェーブロードが見える。そこには灰色の体をしたデンパくんと、赤色の体をしたデンパちゃんたちが忙しそうに駆け回っていた。メールや画像、計算ファイルや測定結果など、電波でやり取りできる様々な情報を運ぶのが彼らの役目である。

 

『変わらねえっていや、お前もだよな』

「そんなに?」

『ああ。ほんと飽きねえよな、そのつまらねえ趣味』

「ロックも分からないかな、天体観測の面白さが」

 

 これからスバルは展望台に向かうのである。コダマ小学校の裏山にある寂れた場所で、一時間ほど星空を眺める予定である。

 

『分からねえよ。宇宙人の俺からしたら、町を散歩するのと大して変わらねえ。お前だって電波変換して、宇宙に行った事あるだろ?』

「それとこれとは別だよ。地球から見る宇宙って、また格別の面白さがあるんだよ」

『分からねえよ……』

 

 体を動かすのが好きなウォーロックからすれば、ほとんど止まっている星空を眺めることは暇でしかないのだろう。

 

『ったく、明日はあの暁てやつと戦うんだろ。早めに休めよ?』

「だからこそだよ……」

 

 先ほどまでとは打って変わって、スバルの目は闘士のものへと変わっていた。

 

「気が張っちゃって、少し眠れそうにないんだよ」

『そうか、お前なりの息抜きか』

 

 戦いの前に体調を整える。当たり前のことだ。星空でも見上げれば少しはリラックスできると考えたのだろう。

 学校の門が見えてきた。ここから少し離れたところに展望台へと繋がる階段がある。門の前を通り過ぎようとして、スバルは気づいた。門から校舎への間にある運動場。そこに誰かいる。

 思わず立ち止まると相手もこちらに気づいた。眼鏡をかけた大人しそうな顔つきに、スバルは軽く頭を下げた。

 

「あ、部長さん」

「スバルくんかい?」

 

 科学部部長の木野マナブだった。

 

「どうしたんだい、こんな時間に?」

「いや、こっちの台詞ですよ」

 

 マナブは校門に近付いてハンターVGをかざした。リアルウェーブでできた門が電波粒子となって消滅した。

 

「僕はあれ。ロケットを打ち上げるとしたら、やっぱり運動場しかないよなって、下見をね」

 

 マナブが外に出ると、再びリアルウェーブの門が出来上がった。

 

「そんなことまで……」

「まあ、これは気晴らしみたいなものだよ。ギガエナジーカードが手に入らないと、結局打ち上げられないからね」

 

 マナブが肩を竦めた。笑おうとしているようだったが、その顔は疲れ切ったと訴えるようなものだった。

 スバルに一つの提案が生まれた。

 

「部長さん。今から展望台に行きませんか?」

「展望台?」

 

 マナブはここから少し離れたところにある階段を見た。展望台への入口だ。

 

「そう言えば、行った事なかったな」

「僕のお気に入りの場所なんです。良かったら、一緒に天体観測をしませんか?」

「いいね。気分や思考を切り替えるのに丁度いい」

 

 やっぱりこの人はスバルと同じ毛色の人物らしい。こうしてスバルの同行者にマナブが加わった。早く帰りたそうにしているのはウォーロックだけだった。

 

 

「良いなあ、ここ。学校の屋上とは全然違う、星が近くに感じる……」

「そうでしょう。気に入ってもらえると思ったんです」

 

 思った通り、マナブは展望台を気に入ってくれた。スバルも隣に並んで空を見上げた。

 

「よくここに来るのかい?」

「はい、そうなんです。コダマタウンで一番宇宙に近い場所ですから」

 

 それはつまり、大吾と最も近い場所に居られるということだ。夜空には、秋の星座を代表するアンドロメダ座があった。スバルは目を細める。

 

「ねえ、スバルくん」

「なんですか?」

「その……君の苗字って、星河で合ってたよね?」

 

 マナブの言い出し辛そうな顔を見て、スバルは意図を察した。

 

「そうです。僕の父さんは星河大吾です」

 

 やっぱりとマナブは頷いた。

 

「よく知っていましたね?」

「知ってるよ。僕ら宇宙好きの間ではヒーローみたいな人だから」

「そうですか……」

 

 父親が偉大な事くらいスバルはよく知っている。だがその名前を他人から語られるのは初めての経験だった。

 

「父さんは僕の憧れなんです……」

 

 スバルは夜空を仰いだ。今日は月の光が強めで、星の数はさほど多くはない。

 

「ブラザーの開発に、キズナクルーの船長……凄い人だものね」

「はい。父さんを探しに行くのが、僕の夢なんです」

「信じているんだね?」

「もちろんです」

 

 マナブは知る由もないが、星河大吾は今も宇宙を彷徨っている。ウォーロック曰く、ゼット派の力で電波の体となり、宇宙で迷子になっている。どこにあるのかも分からない地球を探してだ。

 そんな彼を迎えに行く。それがスバルの夢だ。

 

「驚いたな。僕と同じような夢を持っている人がいただなんて」

「部長さんも、やっぱり宇宙の仕事に?」

「うん、僕はね……」

 

 マナブは星空を見上げた。

 

「君のお父さんが乗った、宇宙ステーション『キズナ』。あれに憧れてさ……」

「部長さんが……?」

 

 素直に驚いた。同じ学校に、同じものを見ている人がいたことに。

 

「今はまだ通信できる装置をロケットで飛ばすことしかできない。けれど将来は、色々な星に向かってロケットを飛ばしてみたいんだ。なんなら『キズナ』みたいな宇宙ステーションを作る部品や機材を運ぶのも面白そうだし。なにより……」

 

 スッと、遠い空に向かって手を伸ばした。

 

「僕は宇宙と通信がしたいんだ」

「通信?」

 

 マナブは隣のスバルを見た。

 

「改めて考えてみると、通信って凄くないかい? 遠く離れている人と、こうして隣にいるように会話ができるんだ」

 

「……そうですね!」

 

 スバルはそれが持つ力の大さをよく理解している。宇宙で迷子になった時、ルナたちとのブラザーバンドがスバルを見つけてくれたのだ。

 

「自分で作ったロケットを宇宙の遠くへ飛ばして……まだ僕たち地球人が見たことのない映像や、乗り込んでいるウィザードとの通信……ワクワクしないかい?」

 

 するとハンターVGからマグネッツが出てきた。

 

「オイラも宇宙に行ってみたいッス! そしてマナブくんとコイルに、オイラがみた宇宙の光景とかを教えてあげたいッス!」

 

 続いてコイルがマナブを挟んでマグネッツの反対側に出てきた。

 

「その通信を受け取るのが僕の役割ですッチ!」

「ありがとう、2人とも」

 

 ウィザード2体に挟まれて夢を語るマナブ。スバルは自然とはにかんでいた。

 

「凄いな、部長さんは……」

「それほどでもないよ」

「いえ、凄いですよ本当に」

 

 自分の夢を持ち、具体的に思い描き、それに向かって全力で進む。そうそうできることではない。

 だからこそだろう。スバルは心に決めた。

 

 

「今日は誘ってくれてありがとう」

「いえ、こちらこそ楽しかったです」

「それじゃあ」

 

 展望台を後にすると、マナブとマグネッツたちとは手を振って別れた。そしてスバルは帰路へとつく。走ってだ。

 

『おいおい、珍しく熱くなってるじゃねえか』

「なるよ、あんな話聞かされたら」

 

 自分と似たような夢を持ち、同じ人に憧れ、邁進している。そんなマナブを前にしたのだ。

 

「ロック!」

『なんだ?』

「明日、絶対に勝つよ!」

『おうよ!』

 

 決意を秘めて少年は走った。今日は明日に備えて、早く寝よう。




○デンパくんとデンパちゃん
 情報伝達を担う電波世界の住人。プログラムの一種である。
 丸みを帯びた形状をしており、手足は無い。デンパくんは灰色で、デンパちゃんは赤色。
 個体ごとに人格が設定されており、働き者も居れば迷子になるうっかり者や、仕事を覚えようと必死になっている新人もいる。これは設定されたプログラムの違いによる影響である。
 情報伝達に特化しているため、戦闘能力は無い。電波ウイルスに襲われるとひとたまりもないという弱点がある。

○ナビ
 電波世界の住人。デンパくんとは異なり、何かの作業に特化した者たちをさす。車の運転や機械の操作、学習の補佐など、多岐にわたる。
 200年前は1人1体のナビを持っていたらしい。その形が崩れて久しいが、人類は再びウィザードという新たなパートナーを得ることになった。
 デンパくんの発達とウィザードの登場により、彼らは役目を終えつつある。


 参照.ヨイリーレポートより抜粋
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