流星のロックマン Arrange The Original 3   作:悲傷

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第13話.サテラポリス特殊部隊

 暴走したウィザードは、すぐに駆け付けたサテラポリスに引き渡されていった。持ち主の男性と連れの女性が心配そうにそれを見送る。

 そんな現場から少し離れたところにスバルはいた。隣には暁シドウもいる。

 

「これじゃあ大会のスペシャルマッチは無理だな」

「そういえばそういう話でしたね……」

 

 こんな騒動が起きた後だというのに、試合を再開しますなどとお気楽な対応はできない。スピカモールは今日一日閉鎖されるだろう。

 シドウのハンターVGから白い電波体が姿を現した。先ほど、暴走ウィザードを一蹴したアシッドだ。

 

「残念です。今日はあなたと戦えるのを楽しみにしていたのですが……」

 

 どうやらこのアシッド、サッパリとしたシドウと異なり、物腰丁寧な人格のようだ。それがウォーロックの鼻に付いたらしい。

 

「楽しみだあ? テメエ、小さな大会で優勝したからって、調子に乗ってんじゃねえぞ!」

 

 品性のない恫喝。たいていの人はこれでビビるのだが、アシッドは変わることのない顔で平然と応えた。

 

「調子にはのっていません。私の素直な気持ちを伝えたまでです。まあ戦ったとしても、優勝は私だったでしょうが」

「よおおしっ! 表に出ろてめえええ!!」

「落ち着いてロック」

 

 行動も言動も完全なるチンピラである。

 

「すいません暁さん。ロックは喧嘩っぱやくって……」

「てめえは何落ち着き払ってんだああああ!!?」

 

 今度はウォーロックが暴走しそうな勢いだった。

 

「まあまあ、熱くならないでさ。アシッドも、戦いたい気持ちは分かるけど、挑発しちゃダメだ」

 

 シドウがそう言うと、アシッドは丁寧に頭を下げた。まるで執事のような、一片の無駄も無い完成された動作だった。

 

「すみません、シドウ。ウォーロックがあまりにもストレートな性格なので、ついからかってしまいました」

 

 だが言動は全く改まっていなかった。

 

「うおおおおお! いちいち癇に障るなぁテメエはーーーー!!」

 

 今にも爪を振り上げそうなウォーロックを、スバルはハンターVGの中に押し戻した。この2人は徹底的にかみ合わないだろう。

 

「あ、そうだ。これ渡しておくよ」

 

 思い出したようにシドウがカードを渡して来た。受け取ろうとして、手を止める。

 

「あの、これって……」

「ギガエナジーカードだ。約束のね」

「良いんですか!?」

 

 これを貰う条件は「シドウに勝ったら」だったはずだ。戦うことすらできなかったというのに、貰ってしまっていいのだろうか。

 

「良いよ。どっち道渡すつもりだったから。今日、ここに来てくれたお礼としてね」

「あ、ありがとうございます!」

 

 ここは素直に受け取っておいた。これでルナも喜んでくれるだろう。

 

「それじゃ、俺はこれで」

 

 シドウは軽く手を振って踵を返した。貰う物を貰ってさようならと言うのはなんだか悪い気がして、背中に声をかけた。

 

「あ、あの……」

「なんだい?」

 

 シドウが立ち止まる。ここで言葉に迷ってしまった。何を言えばいいのだろう。

 

「えっと……ま、また会いましょう。バトルはその時に……」

「ハハハ、嬉しいな。けど大丈夫、きっと近いうちにまた会うことになるよ」

「……そうですか?」

 

 なんだか意味深そうな言葉だった。理由を尋ねようと思ったが、そんな空気を消し飛ばす余計な一言が起きた。シドウの隣にアシッドが出てきた。

 

「再会を楽しみにしていますよ、ウォーロック」

「うるせえ! とっとと消えやがれ!」

 

 

 また喧嘩になりそうな雰囲気だった。シドウには会釈して別れておいた。

 

 

「スバルくん! 良かった、無事だったのね」

 

 会場に戻るとすぐにルナたちと合流できた。ギガエナジーカードを見せると、ルナが飛び上がって喜んでくれる。と思っていた。

 

「これがギガエナジーカード? 何の変哲もない見た目ね」

「いや委員長、これ珍しい物なんだよ?」

「と言われてもね……」

 

 どうもオタクでないルナには、希少品と出会えるという喜びは分からないらしい。

 

「とにかく、目的の物を手に入れたわね。スバルくん、ご苦労様」

「どういたしまして」

「……無事だったしね」

「約束したしね」

 

 ルナからするとそっちの方が心配だったのだろう。彼女はそう言う人だ。

 

「こんなちっこいので、本当にロケットが飛ぶのか?」

 

 ゴン太はスバルの手からギガエナジーカードを摘み上げ、天井の光に翳すようにした。別に光を通したからと言って中身が見えるわけではないのだが。

 この小さなカード一枚で、マナブ部長たちのロケットを宇宙にまで飛ばすとは、確かに想像し辛いだろう。

 

「ゴン太くん。確かに小さなカードですが、その中には物凄くたくさんのエネルギーが凝縮されているんです。下手したら辺り一帯ドッカーンですよ?」

「ひっ!」

 

 小さく飛び上がるゴン太。その手からギガエナジーカードがポロリと落ちた。爆弾レベルのエネルギーが詰まったそれは、あっという間に床に向かって落ち……華麗なヘッドスライディングをしたスバルの手に収まった。

 

「気を付けてよねゴン太。これ希少な物なんだから」

 

 服の埃を払いながら立ち上がる。ゴン太はルナと共に軽く5メートルほど離れていた。

 

「大丈夫だよ。これぐらいじゃ壊れないし、爆発なんてしないから」

「そ、そう……なのか?」

「ゴン太くんも委員長も、心配し過ぎですよ。扱いを間違えたら……ですから。めったなことじゃ爆発なんてしませんよ」

「……そうか……」

 

 キザマロの説明を受けてゴン太が胸をなでおろした。

 

「コホン。スバルくん、それはあなたが手に入れた物なのだから、あなたから部長さんに渡してあげてちょうだい」

 

 ルナは普段通りの振る舞いに戻ったが、声は若干震えていた。

 

「分かったよ」

 

 ギガエナジーカードは確かに膨大なエネルギーを持っているが、安全に使えるよう最先端の技術が施されている。落としてしまったら大爆発などいう繊細な爆弾ではないのだ。

 スバルはきちんとポケットに入れておいた。

 

『今現在、部長さんが科学部の部室にいる確率、99%』

「らしいですよ、委員長」

「分かったわ。じゃあ早速渡しに行きましょ」

 

 後は学校に戻ってマナブ部長にこのカードを渡すだけだ。長居は無用と4人はスピカモールを後にしようと決めた。

 そんな時、スバルがあるものを見つけてしまった。会場の入り口から数名の人影が入って来たのだ。目立つ服装をしていて、他の客たちからも視線を浴びていた。

 

「あ、あれは……」

 

 キザマロも気づいたようだ。六角形の眼鏡の奥では、小さな目が爛々と輝いていた。

 

「どうした、キザマロ?」

「どうしたもこうしたも無いですよ、ゴン太くん。あれ、サテラポリスの特殊部隊ですよ!」

「特殊部隊!?」

 

 カッコいいキーワードにゴン太が反応した。だがそれ以上に大興奮したのがスバルである。

 

「キザマロ、それ本当!?」

「間違いありませんよ。生ですよ。生特殊部隊ですよ!!」

 

 スバルとキザマロは齧りつくような目で、サテラポリスの特殊部隊を見ていた。

 第一印象は物々しいだった。紺色の防護服の上に、肩から腰にかけて灰色の装甲がついている。目にはオレンジ色のサングラス、帽子は濃い緑色で、ツバは黄色だ。腰には何らかの道具が入っているのだろう、白いポシェットがついている。

 男性の方は肩幅が広く、車一つくらいなら押して動かせそうだ。女性の方は細いが、スラッとしたかっこよさがある。

 多くの視線の中、黒いブーツで堂々と歩く様は、まさにエリート。

 

 

「凄い、凄い凄い凄いよ!」

「しゃ、写真を撮りたいです!」

 

 これを見て、オタク2人が落ち着いているわけがないのだ。ゴン太ですら「なんかカッコいい」と興奮してるくらいなのだから。

 

「はぁ、男の子って好きよね、こういうの」

 

 まったくついて行けないのが女の子のルナである。だが彼女は一つ失敗をしてしまった。そう言う事は、思っても口にしてはいけない。それがオタクの前だったらなおさらだ。

 

「分かってないな~、委員長は」

「特殊部隊ですよ? WAXA直属で、エリートだけが入隊を許される、正に最強の部隊!」

「おお、やっぱりなんか凄いんだな!?」

 

 ルナは思いっきり大きなため息を吐いた。

 

「だから、私にはよく分からないわ」

 

 これが止めだった。スバルとキザマロの目がキラリと光った。

 

「キザマロ、委員長は分からないなんて言ってるよ?」

「ならば、ぜひとも分かってもらわないといけませんね」

 

 ルナはようやく過ちに気づいたらしい。魂に火のついたオタクほど、めんどくさいものはない。

 

「い、いいわよ! 全力で遠慮するわ」

「いいえ、委員長に拒否権はありません」

「ルナルナ団のリーダーとして知ってもらわないと!」

「チーム関係ないじゃない!」

 

 全くの正論である。

 

『委員長、逃げた方が良いぜ。長いぞ、スバルのウンチク話は』

「そうさせて貰うわ!」

 

 珍しくルナとウォーロックの気が合った。

 全力疾走するルナ。慌ただしく追いかけるスバルとキザマロ。最後にゴン太が続いた。

 

 

 最後尾のゴン太が会場から去った頃、ウェーブバトル大会の会場だった場所に1人の人物がいた。スバルと戦う予定だった暁シドウだ。彼は会場の中央を、ただ黙して見つめていた。

 そんな彼の元に来訪者が一人。暁シドウは軍人のような回れ右をして、丁寧な敬礼をした。

 

「無事か、暁。すまない、到着が遅れてしまった」

 

 装甲服にオレンジ色のサングラスを付けた、肩幅の広い男性。先ほど、スバルたちが見たサテラポリス特殊部隊の隊員だった。彼も姿勢を正して暁に敬礼を返した。

 

「いえ、そんなことありません」

 

 スバル達と話していた時とはうって変わって、気さくな様は見うけられない。

 

「それよりも……」

 

 暁はポケットからある物を取り出した。うまい棒ではなく、一枚の薄っぺらいカードだった。

 

「鎮圧した暴走ウィザードから、こんなものが……」

「これは……!?」

 

 隊員の顔に緊張が走った。サングラスをかけていても分かるほどにだ。

 

「例のカードか?」

「はい、ノイズドカードです」

 

 苦味を噛みしめるように口を歪ませ、隊員はハンターVGの画面を見た。

 

「周囲のノイズ率が跳ねあがっているのは、これが原因か」

「ええ、これも奴らの狙いですよ。また、どこかで似たような事件を起こすでしょうね」

「……分かった。暁、君の方から長官に報告してくれ。ここの調査は我々が引き継ごう」

「ええ、よろしくお願いします」

 

 シドウは再度敬礼をして去ろうとしたが、ふと男性に呼び止められた。

 

「そう言えば、ロックマンとは戦えたのか?」

 

 シドウは振り返って両手を広げて見せた。

 

「いや、戦おうとしたら事件が起こったもんで……」

「そっちの任務は失敗か」

「面目ない」

「なに、お前のことだ。優先順位を履き違えなかっただけだろう。星河スバルのマークは引き続き行うとしよう」

 

 男性に頷くと、暁は会場の出入り口に目を移した。もうとっくにスバルたちは去っている。見えぬその背中に、シドウは一度だけニヤリと笑った。

 

「星河スバル……見せてくれよ、俺達に……」

『私はウォーロックに負ける気がしませんけれどね』

 

 相棒の頼もしい言葉。シドウはハンターVGをそっと撫でた。




○WAXA
 地球最大の組織。前身は世界最大企業のNAXA。
 最近の電波社会の治安の悪化から、サテラポリスと合併して今の形になった。
 他の企業や組織の追随を許さない技術力を持っている。
 日本のWAXAは支部であり、本部は別にある。
 スバルくんのお父さんが勤めていた組織でもあります。

○サテラポリス
 電波警察。世界警察とも呼べる組織。
 電波社会の治安を守っている。
 最近NAXAと合併した。
 FM星人が襲来したときは、侵攻して来た電波ウイルスを撃退しようと奮闘した。


 参照.マロ辞典より抜粋
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