流星のロックマン Arrange The Original 3   作:悲傷

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第14話.レゾン共有

 スピカモールを後にしたスバルたちは、その足で学校の門をくぐった。科学部は土曜日の朝から実験やロケットの改良を試みていたようで、難しい顔で図面やエアディスプレイとにらめっこをしていた。

 だがそんな疲れた彼らの顔は、スバルが差し出した一枚のカードで一変した。

 

「こ、これ……ギガエナジーカード!?」

「はい、そうです」

「す、凄い! ほ、本当に手に入れてくれるだなんて!!」

 

 マナブ部長はスバルからカードを受け取ると、宝物を崇めるかのように頭上にかざした。部員2人もマナブの肩に抱き着くようにして見ている。

 ちなみにルナとゴン太は少しだけ出口の方へと後退した。

 

「だから大丈夫ですよ。よっぽど変な使い方をしない限りは」

『現状、ギガエナジーカードが爆発する可能性は0%』

「そ、そうなのか。なら大丈夫だな」

 

 キザマロとペディアの解説で、ゴン太はようやく安心して戻ってきた。ルナが遅れて少しだけ近づいてきた。

 

「ありがとう、皆さん」

 

 マナブはルナの顔を見てから、近くにいるスバルたちの顔を順番に見ていった。

 

「これがあればロケットはすぐに完成します」

「すぐにってことは、今から打ち上げが見られるのか!?」

「えっと……」

 

 ゴン太の質問に、マナブは目を上に向けた。

 

「取りつけて、試運転してエネルギー回路の負担に問題が無いか確認して、シミュレーター実験を行って……数時間あれば!」

「部長さん、すぐにやりましょう!」

「そうだね! やるよ2人とも!」

「「ラジャー!」」

 

 スバルの威勢に応えるように、マナブは部員2人ともにすぐに作業を開始した。

 

 

 それから数時間後のことだった。

 難しい顔をしていたマナブ部長たちの表情が、段々と希望に満ちたものになり、笑みに変わっていく。だが目は笑っておらず、エアディスプレイを凝視している。そして何度目になるであろうかという実験が終わった時、それは安堵に変わった。

 

「計測数値……全てが規定値以内です。ぶちょー」

「……模擬実験成功です! ぶちょー」

「ああ……」

 

 マナブの声が震えていた。ロケットの中からはマグネッツが、マナブのハンターVGからはコイルが出てくる。2人と2体、そしてスバルたちはマナブの次の言葉を待ち構えた。

 そして、マナブはゆっくりとその手を頭上に掲げて、力の限りに叫んだ。

 

「やった、やったぞ! 完成だ!!」

「「ぶちょー!」」

 

 部員2人が泣きながらマナブに抱き着いた。マナブも涙をこぼしながら、全力で彼らを抱きしめる。彼らの頭上では、マグネッツとコイルが手を取り合って飛び回っている。

 

「部長さん……ついにやり遂げたんだ……」

 

 スバルももらい泣きをしていた。ちなみに、なぜかゴン太が「うおおおん」と一番号泣していた。対して、ルナは感動するというよりは感心していた。

 

「ロケットて、こんなに早く完成するものなのね」

「部長さんたちの準備がそれだけしっかりできていたんだよ」

「そう言うものなのね」

 

 喜びをひとしきり共有したのだろう、マナブは涙をふきながらルナに歩み寄った。

 

「ルナルナ団の皆さん、本当にありがとうございました……おかげでロケットを飛ばせます」

「いえ、私たちは少し手伝っただけです。早く飛ばせると良いですね」

「そうですね……今から申請したら、明日にも飛ばせるかな?」

「え、明日? ま、また早いんですね」

「それはもちろん、早く飛ばしたいですから!」

 

 マナブの後ろにいる部員2人が「うんうん」と頷いた。

 

「……ところで部長さん、一つお願いしたいことがあるのです」

 

 ルナのお願いなど言うまでもない。選挙のことだ。清き一票をと言い出すのだろう。

 マナブ部長も分かっていますという顔をした。

 

「はい、生徒会選挙の際には僕ら3人、ルナさんに投票させていただきます」

「ありがとうございます。ただ、そちらとは別件ですの」

「別件……ですか?」

 

 これは予想外だった。これ以上、一体何を望むというのだろう。

 ルナの手はスバルの肩に置かれた。

 

「ギガエナジーカードを手に入れるために、一番奮闘してくれたのがこのスバルくんなんです。よろしければ、皆さんのレゾンにスバルくんも入れてあげてくれませんか?」

「委員長!?」

 

 予想外過ぎる発言だった。ゴン太とキザマロも同じく驚愕に満ちた顔をしていた。

 

「い、委員長。良いのかよそんな事して!?」

「それって、スバルくんがルナルナだんのレゾンから抜けるってことですよ!?」

 

 レゾンは一つしか設定できない。これはスバルがルナ達とは別の志を掲げるということになる。

 だがルナは平然とした顔で答えた。

 

「だってスバルくん、宇宙大好きでしょ?」

「……委員長……」

 

 スバルの手が加わったロケットが宇宙に行く。宇宙大好きオタクにとっては感無量だろう。

 そんなルナの提案に、マナブは快く答えた。

 

「良いですよ。というか、そちらさえよろしければ、僕たちのレゾンに加わって欲しいくらいです」

「え、私たちも?」

 

 ルナが驚いた顔をしたので、マナブは申し訳なさそうな顔をした。

 

「あ、流石に失礼でしたかね?」

「いえ、そんなことありません」

 

 ルナが手を横に振った。

 

「ルナルナ団と科学部の志を同じにするということですね?」

「はい。ギガエナジーカードを手に入れてくれた皆さんも、立派な一員と僕は思っています。なので、ロケットを飛ばす明日までの間だけ、レゾンを共有できないかと……」

「願っても無い事ですわ!」

 

 リーダー2人の間で、トントン拍子に事態が決まった。スバルにとっては大歓迎な話だ。

 

「ルナルナ団、一時レゾンを解散。科学部に加えてもらうわよ」

「了解。ロック」

「おうよ」

 

 ウォーロックが端末内で操作し、レゾンを変更した。

 

―― レゾン結成 ――

 

―― チーム名:科学部×ルナルナ団 ――

―― レゾン :ロケットを打ち上げる ――

 

 

 メンバーの中に、マナブ部長と部員2人に加えて、ルナルナ団のメンバーの顔が並ぶ。目的を共有する仲間がこんなにもいる。そう思うと胸が熱くなった。

 

「打ち上げ式には、皆さんはプロデューサーとして参加してください。ぜひとも紹介させていただきます」

「あら光栄ですわ」

 

 そうなればルナの支持率も爆上がりすること間違いないだろう。ありがたい申し出だった。

 

「皆さん、本当にありがとうッス! オイラ、これで宇宙に行けるッス……」

 

 マグネッツが泣き出した。コイルが兄の背中をさする。

 

「嬉しいんだったら、泣くことじゃないでしょ?」

「その通りッス。けれど、皆さんとお別れだと思うと……」

「あ、マグネッツは……」

 

 明日には宇宙に旅立ってしまう。こうして会うのは最後かもしれないのだ。

 スバルは彼の手を取った。

 

「マグネッツ、明日ロケットを飛ばす前に、一度会おう。何かプレゼントとか用意するよ」

「本当ッスか? 楽しみにしてるッス!」

 

 その後、マナブの言葉でスバルたちは解散した。明日はきっと思い出深い日になることだろう。

 




○トランサー
 二世代前の携帯端末。つい半年くらい前まで使われていました。
 腕に装着して使うタイプ。
 宇宙に浮かんでいる3つのサテライト「ペガサス」「レオ」「ドラゴン」のどれかによって管理されていました。
 現在は使われていません。

○スターキャリアー
 一世代前の携帯端末。つい一週間ほど前まで使われていました。
 ポケットに入るほどの小型。
 トランサーとの最大の違いはカードの情報を記録できる点です。このおかげで、電波ウイルスを退治する際に、バトルカードをいちいち読み込ませる必要性が無くなりました。


 参照.マロ辞典より抜粋
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