流星のロックマン Arrange The Original 3 作:悲傷
どうにか3話ほど完成したので、投稿します。
このまま執筆が続けられればいいな……
その日は晴天だった。コダマタウンには、いつもとは少しだけ違う光景があった。日曜日だというのに、コダマ小学校へと向かう人々の姿が見られたのだ。子どものみならず、もう小学校を卒業したであろう少年や、中年の男女たち、はてはつえをついた老人までいた。
なぜ彼らが小学校へと足を運ぶのだろうか。その理由は案内所のウィザード、コダマタロウくんが説明してくれていた。
「ぼくコダマタロウくん! 今日は嬉しいお知らせがある……わん! なんとコダマ小学校でロケットが打ち上げられるわん! 作ったのは6年生の生徒だわん! もう間すぐ打ち上げが始まるから、見たい人は急いでほしい……わん!」
学校へと向かう者たちの目的は、一様にこれを見るためである。それもあってか、コダマ小学校の校庭には大勢の人々が屯していた。校庭の真ん中には大きなロケット。その周りには今回の主役の木野マナブ部長と、科学部の二人。そして傍らに控えているルナルナ団の面々。
ちなみに、今学期からの新校長として雇われた、こうちようすけ先生がなんか演説している。観客たちを退屈させないようにとの配慮だろうが、そんなものは騒音でしかない。ウォーロックがめんどくさそうな顔をしている。
「ったく、うるせえなあの校長も」
「校長先生なんて、皆あんなものらしいよ」
前任のおおごえねっしょう元校長先生よりかはマシだと願いたい。理事長のクルスガワカオリ先生が採用したのだから、悪い人ではないと思うのだが。
そんなことよりもと、スバルはパソコンをにらんでいるマナブに尋ねた。
「部長さん、もうそろそろ打ち上げ予定時間ですけれど、どうですか?」
「う~ん、大丈夫だと思うんだけれどね……」
マナブの返答はどうも歯切れの悪いものだった。
「ロケットの電脳内にいるマグネッツに、交信を試みてるんだ。けど、声だけしか返ってこないんだ」
スバルは横からパソコンを覗き込んだ。「SOUND ONLY」と書かれていた。マグネッツの顔は見えない。確かにこれは気になる。
「ねえ兄さん、どうしたッチ?」
マナブのもう一人のウィザード、コイルがハンターVGから出てくると、兄のマグネッツに呼びかけた。すると……
『……ウイッスウウ……大丈夫、だよマナブくん。心配しないで』
マグネッツの声だった。だが何だろう、違和感を覚える。
「おい、なんかおかしくねえか?」
「部長さん、もう一度チェックしたほうが……」
「そうだね……昨日の隅々までやったから、大丈夫だと思うけれど、念のため……」
だがそれは叶わなかった。彼らの耳に、こうちようすけ校長の声が届いた。
「では、そろそろ打ち上げ予定時刻となります。今回の主役、科学部の部長、木野マナブくんに登場してもらいましょう!」
歓声が上がった。こうなると、マナブが出ていかないわけにはいかない。
「どうしよう、部長さん。時間が……」
「今からでも中止にすべきかな?」
『大丈夫だよ、マナブくん……』
戸惑っている2人にマグネッツの声が届いた。
『昨日、フルスキャンしてもらったからね。僕の体は万全さ。それより、早く打ち上げようよ。君の夢の第一歩だよ。レゾンを達成しようよ』
「……うん、そうだね!」
ウィザードは人間のパートナーである。そこにはシステムやプログラムを超えた、信頼と友情がある。マナブがパイロットとも言えるマグネッツを信用したのは、ある意味当然だったのかもしれない。
彼らの間に、スバルが入る隙間はない。
マナブは立ち上がると、手招きしている校長先生の隣に立ち、観客への感謝と、今回の打ち上げの目的を簡潔に話した。そして今回の協力者としてルナたちを紹介してくれた。「ルナルナ団の皆様です」と、トンチキな名前を大勢の人たちに紹介されて、ルナは満足げに胸を張った。
ルナたちの少し後ろの方では、ゴン太とキザマロがペディアと共に飛び跳ねていた。
「凄いよキザマロくん。委員長の支持率がうなぎ上りだ!」
「打ち上げが成功すれば、支持率40%越えは間違いなしです!」
「よっしゃあ。これもう委員長の勝ちじゃねえか?」
「呑気すぎじゃないかな?」という感想が浮かんだ。先ほどのマナブと、現在の科学部の二人を見ているからだろうか。
科学部の二人は、打ち上げ直前となった今でもパソコンのデータとにらめっこをしている。打ち上げ中の、データ確認のやり方などをおさらいしているらしい。
少し悩んだ結果、スバルはもう一度だけマグネッツに話しかけた。
「ねえマグネッツ、昨日帰宅する前に言ったこと、覚えてる?」
『……なんだっけ?』
「ほら、宇宙に行く君が一人で寂しいだろうからって、お守り渡すって……」
「ちゃんと考えてきてやったぞ」
ウォーロックがハンターVGのディスプレイ画面に手を突っ込み、何かを操作しようとした。
『ああ、言ってたね。けどもう大丈夫だよ、ありがとう』
「あ?」
「……そう?」
本人がいらないと言うのなら、無理に渡すのは違うだろう。ちょうどマナブが戻ってきたので、スバルも下がることにした。
そしてとうとうこの時が来た。スバルたちは科学部と共に、必要な備品を回収して、観客たちとは反対側となる安全テープの後ろにまで下がった。ロケットの周囲から人がいなくなる。
「では、カウントダウン開始!」
「はい! カウントダウン、10……9……」
科学部のリカが秒読みを始める。もう一人のポン太はパソコンでデータを見ている。スバルたちは観客たちと共に固唾を飲んで見守っている。隣のマナブがハンターVGへと話しかけた。
「マグネッツ……しばらくの間お別れだ。行くよ!」
『うん、任せてね……ククク』
リカの声があたりに響く。
「3……2……1……」
「発射!」
マナブの掛け声。ゴゴゴという爆音。噴射口から吹き出る熱とエネルギー。見守る人々の……中でもマナブの胸は最高潮に達していただろう。
それを引き裂くように、雷のような音が鳴った。ロケットの周りに、バリバリと稲妻が走り出す。そして何かが爆発するような音が周囲に響いた。
「ぶ、部長さん。なんかおかしくない!?」
言い切る前に、スバルは事態をあらかた理解した。マナブはとっくにハンターVGを必死にタップしていたのだ。
「どういうことだ、コントロールを受け付けない!」
「え?」
顔面蒼白となった彼は叫ぶように呼びかけた。
「マグネッツ。応答してマグネッツ。どうしたんだ!?」
だがそれは必要なかった。ロケットの中から、とうのマグネッツが出てきたのだから。
「ウィッスウウウ。俺は無敵だああああ!」
真っ先に目に入ったのは剣だった。データ通信に性能を割いているウィザードには似つかわしくない、赤と青の二振りの長剣。隆起した物々しい肩の装甲。下半身は紫色の禍々しいエネルギーの球体。そして獰猛さに満ちた目と口。
あれがマグネッツなのか。違うと思いたいが、スバルは現実をちゃんと見つめていた。あれはマグネッツだ。なにがどういう理由でああなってしまっているのかは分からないが、あれはマグネッツなのだ。
「昨日からずっと待っていたんだ。壊す。全部全部全部、ぶっ壊すううううう!」
言葉を失うスバルたち。おびえる先生と観客たち。そんな中、ポン太が声を絞り出した。
「大変です、ぶちょー!」
「え、エネルギーの膨張が止まりません!」
リカの言葉に、マナブの手が一瞬震えたのをスバルは見た。
「それってつまり……」
「爆発する!」
この時のマナブの行動は早かった。
「先生、皆さんを逃がして!」
校長先生が即座に指示を飛ばす。教師たちは迅速に配置につき、観客たちを避難誘導した。だが、何人かがその場に立ち尽くしている。ロケットに背を向けてだ。
「何をしているのです、早く!」
育田先生が気づいて一人の女性に駆け寄った。
「ち、違うの。引っ張られてるの!」
女性の首飾りが、ロケットに向かって真っすぐに伸びていた。育田は「失礼!」と言って彼女の背中を押した。少しずつだが離れていく。他の先生たちも協力して、引っ張られている人たちの救出にあたった。
「ウィッスウウウ。見ていけ人間たち。今から起きるのは打ち上げじゃない。大爆発だあああ!」
変貌したマグネッツは、ロケットの電脳内へと姿を消した。周りに走っていた電流が勢いを増していく。
「部長さん、これは!?」
「マグネッツの磁力だ。あの人たち、金属のアクセサリーをつけてるから、引っ張られてるんだ!」
「それよりどうすんだよ。爆発したら、どうなっちまうんだよ!」
ゴン太の質問はもっともだった。彼は昨日聞いているのだから。スピカモールで、スバルが暁シドウからもらったギガエナジーカード。これには、あたり一面を吹き飛ばすだけのエネルギーが詰まっているのだと。
そして最悪の予想をペディアが口にした。
「キザマロくん、被害予想の統計解析完了。コダマ小学校は100%消滅。コダマタウンも壊滅的な被害を受けるよ!」
「だ、大惨事じゃないですか!」
「そ、そんな……なんでこんなことに……」
今度こそ、マナブは頭を抱えた。レゾンを達成できる直前から、生まれ育った町の危機だ。いくら彼がしっかり者であろうとも……いや、だからこそこの現実が受け止めきれないのかもしれない。
「スバル!」
ウォーロックがハンターVGから飛び出してきた。
「原因はあれだ。昨日のスピカモールのやつだ!」
「あれか!」
昨日起きた、ウィザードの暴走事件。直前までは、ウィザード自身になんの問題も起きていなかったという共通点。原因は一緒とみていいだろう。
なら解決する方法も同じだ。暁シドウとアシッドがやったのと同じように、暴走ウィザードを力づくで倒す。昨日のウィザードは倒れこそしたものの、消滅することはなかった。なら今回のマグネッツも消滅することはないだろう。彼の暴走をとめ、かつ救出するにはこれしかない。
単純にして明快。だが危険な作業であることには変わりない。そしてこの場でそれができるのは、スバルとウォーロック……そう、ロックマンしかいないのだ。
ハンターVGを手に取るスバル。だがその肩を白い手が掴んだ。
「駄目よ!」
ルナだった。
「危険過ぎるわよ!」
「委員長……でも、僕にしか止められそうにないし。学校や町がふっとんじゃうのも嫌だし……それに……」
マナブを見た。ハンターVGに向かって必死に呼び掛けている。二日前の夜、彼と展望台で話したのだ。夢と宇宙について語っていた彼が、今は絶望に打ちのめされそうになっている。似た夢を持つ仲間として、動かないわけにはいかない。
スバルの様子を見て、ルナは大きく息を吐いた。
「あなたはいつもそうやって……分かったわ」
「ありがとう。さあ、委員長と部長さんたちは避難を……」
「残るわよ」
「え?」
さっきまでの勇ましい姿勢はどこへやら。高い声が漏れた。
「あなたが戻るまで、ここで待ってるわ」
「な、何言って……」
「汗くせえこと言うなよ」
「水くさい。ですよ」
ゴン太とキザマロがルナの後ろに立つ。
「同じレゾンを持つ仲間です」
「待ってるぜスバル!」
「二人とも……」
そんな彼らの隣に、マナブが並んだ。
「……あの、よく分からないけれど、スバルくんはどうにかできるの?」
「ええ、任せてください」
「……分かった、信じるよ。僕たちも残って、最後までマグネッツに呼び掛けてみる。製作者としての責任もあるしね」
「同じレゾンチームだし」と付け加えた。彼の中では、ギガエナジーカードを手に入れてきたスバルのことは、万全の信頼をおける相手となっているのだろう。科学部の二人も力強く頷いた。
「ヘヘっ、さっさと済ませちまおうぜ、スバル」
「うん、行こう!」
マナブたちはスバルに背を向けて、再びマグネッツに呼び掛けた。その隙に、スバルはハンターVGを掲げた。そしていつもよりかは小さい声で、合言葉を口にした。
「トランスコード! シューティングスターロックマン!!」
青い電波戦士へと姿を変え、人には見えない周波数となって、二人はロケットの電脳へと飛び込んだ。
◇
学校の校門から逃げ出す人々。それを眺めている人影があった。学校近くの、民家の屋根の上。髪の長い女性と、目つきの悪い少年だ。恐怖に陥れられた人々を見て、少年は心地よさそうに笑っていた。
「スペード・マグネッツのやつ、それなりに面白いことしてくれるじゃねえか」
「三つしかない称号の一つを与えたのよ、これぐらいしてもらわないと困るわ」
髪をかき上げながら、女性はカバンから筒状のものを取り出した。
「あとは、クリムゾンがどれだけ手に入るか……ね」
「町一つふっとぶんだから、きっとたくさん手に入るぜ、姉ちゃん」
「それは期待しないほうがいいわね」
「え?」
意外そうな顔をする弟に、姉は尋ねた。
「忘れたのかしら?」
「……あ、ロックマンか!」
このちっぽけな町には、地球の危機を二度救った英雄、ロックマンとやらがいるのだ。この一大事に駆けつけないわけがない。いや、自分たちには姿が見えていなかっただけで、もうロケットの中にいるかもしれない。
「スペード・マグネッツ程度では勝てないでしょうね」
ロケットの大爆発は確かに良い見物だ。だが、マグネッツの元の戦闘能力はかなり低い。いくらあのカードで強化しているといっても、たかが知れている。そんなスペード・マグネッツごときが、FM星人を退け、ムー大陸の復活を阻止した英雄様に勝てるとは思えない。
今回の目的はあくまで実験。ボスから渡された、あのスペードのカードの性能実験なのだ。スペード・マグネッツが倒されるのは予想の範囲内。いや確定事項と言っても良い。
「そっか、ならクリムゾンはそんなに取れねえな」
つぶやくと、少年はにやりと笑った。
「ええ、だから後は様子見だけに……」
ふと気づいて隣を見た。この数秒の間に、弟の姿は忽然と消えていた。
「まさか……」
弟のことは熟知している。彼がどこに向かったのか。考えるまでもなかった。
「ほんと、勝手なことをする弟ね……」
〇属性
ウィザードと、バトルカードと、電波ウイルスには属性があります。
炎、水、電気、木、無の五種類です。それぞれに相性があり、有利属性は、不利属性に対して大きなダメージを与えることができます。不利から有利へのデメリットはありません。
例えば、木属性のバトルカードで、電気属性の電波ウイルスに攻撃すると、大きなダメージとなります。
電気属性のバトルカードで、木属性の電波ウイルスに攻撃しても、ダメージが小さくなるとかはありません。
相性関係は有利→不利という順で表すと、炎→木→電気→水→炎となります。
無は有利不利がないです。
ちなみに、ロックマンは無属性です。
ゴン太くんが以前に電波変換してしまったオックス・ファイアは炎、委員長のオヒュカス・クイーンは木属性でした。
属性相性を理解することが、バトルを制することらしいです。
参照.マロ辞典より抜粋