流星のロックマン Arrange The Original 3 作:悲傷
あ、再登場の予定はないです。
「暴走ウィザードの事件についてですか?」
登校の途中、スバルは偶然キザマロに出会った。おはようとあいさつを軽くかわすと、すぐに本題を切り出した。
「そう。ずっと調べてるんだけれど、全然分からなくってさ」
スピカモールに続いて、マグネッツの暴走。スバルの身近で二件も事件が起きているのだ。それも二日連続。このオタク少年が気になって調べるというのは、餌を前にした小動物が、わき目も振らずに突っ込んでいくのと同レベルの話である。
「う~ん、なるほど……」
キザマロは腕を組んで悩みだした。意識がそっちに取られるため、歩幅が狭くなる。小柄なキザマロの歩行速度がさらに遅くなった。スバルもそれに合わせる。
「あ、それってノイズかもしれませんよ」
「ノイズ?」
聞いたことのない言葉だった。
「なんだそりゃ?」
スバルのハンターVGからウォーロックが出てきて尋ねた。
「僕もあまり分かってないんですけれど、なんか悪い電波みたいなものらしいですよ」
「悪い電波?」
「電波に良いも悪いもあるのか?」
「えっと……僕が説明するよりも、この前見た動画の方が分かりやすいですね」
キザマロは少し首をひねると、エアディスプレイを出した。
「ペディア、シンさんの動画を開けてください」
『任せて』
「僕が見たのはこの人の動画です。確か……」
『これだね』
「そう、これです!」
ペディアが開いたのは動画配信サイトだった。さっそく動画が流れ出す。
『イッツ、レッジェエエエエエンド!!』
バカでかい声に、画面いっぱいに男性の顔がデカデカと映った。たぶん年齢は20前後。キラキラした目がやけに特徴的で、服も上着もズボンもほぼすべてが白だ。赤いネクタイと、アンテナがついた黄色いサングラスをつけている。髪は茶色っぽい。
「……誰、この……」
「変な奴だな、こいつ」
「うん、ロックにだけは言われたくないと思うよ」
自分も言いそうになったことを棚に上げておいた。
「この人はレジェンドマスター・シンさん。電波テクノロジーの研究者で、世界的に人気な動画配信者なんですよ?」
「え、この人が?」
世も末という言葉を飲み込んだ。そうしているうちに動画が本題に入っていく。シンの隣にウィザードが出てきた。おそらく彼のだろう。量産型のノーマルウィザードだ。
『シンさん、今日ん話題はなんね』
なんかすごい訛ってる。
『今日はノイズについて説明しようか』
『ノイズってなんか?』
『そうだね……一言でいうと!』
シンは画面手前に向かって指さすと、早口でまくし立てた。
『極限まで発達した電波テクノロジーが産んだメリットの代償として出現すべくして出現してしまったデメリットでありそして今我々が最も注目しそして立ち向かわなければならない人類に突き付けられた究極の課題なのさ!』
『いっちょん一言やなかなあ』
スバルの目が線になった。
「今なんて言ったの?」
「字幕つけます?」
「いや、なくていいと思う」
とりあえず続きを見よう。
『そうかい、じゃあ詳しく解説していこう』
シンとウィザードの姿が小さくなり、それぞれ画面の端に移動した。背景が黒くなり、そこにハンターVGがポツンと置かれている。
『まず大前提として……ノイズっていうのは最近出てきたものではないんだ』
『そうと?』
「そうなの!?」
スバルと、シンのウィザードの言葉が被った。
画面内のハンターVGの周りに、緑というか、黒というか、角ばった線のようなものが描かれた。
『僕たちが使っている様々な機械……例えば最も身近なのがハンターVG。他にも車やら自動販売機やらエアコンやら電灯やらモニターやら、それら全てからノイズは産まれているんだ。それも常にね』
「そうなのロック?」
「いや、俺も知らなかった」
「頼りないな……」
「お前にだけは言われたくねえよ!」
コンビ漫才など関係なく、シンの解説は続く。
『このノイズがウイルスを引き付けたり、機械や電脳に障害を起こしたりしてたんだよ』
『つまり、ノイズは昔から機械ば狂わしぇとったんやなあ』
『イッツ・その通り!』
『ばってん、なんで最近になって問題になってきたと?』
スバルもそれは疑問だった。人類が機械を使うようになって300年近く経とうとしている。なぜこの22XX年になってノイズが問題視されてきているのだろう。
『うん、当然の質問だね。最近になって変わったことって何かな?……そう、ウィザードの登場だ!』
シンがパチンと指を鳴らすと、画面に変化が起きた。ハンターVGに変わって、ウィザード……訛っているウィザードの写真が映った。彼の周りにも、黒緑いろの角ばった物が漂っている。
『僕らのパートナーなった新しき存在、ウィザード。君には言いづらいんだけれど、原因はここにあるんだ』
『僕に問題があると?』
『……最近の研究で分かったことなんだけれど、ウィザードは今までの機械とは比べ物にならないくらい、たくさんのノイズを生成していることが分かったんだ』
ウィザードの周りにある黒緑の線が多くなった。
『ぼ、僕らがノイズをば?』
シンの表情は真剣なものだった。かなりデリケートな部分だと分かっているのだろう。ふざけているようだが、根はしっかり者なのかもしれない。
『そして最初の話……ノイズは周りにある機械などに障害をもたらす。そう、ウィザード自身にも悪影響を与えてしまうんだ。その結果、暴走してしまうことだってある』
「暴走!?」
スピカモールのウィザードと、マグネッツを思い出した。
『その暴走が起きてしまうと……』
画面に映っていたウィザードの写真が赤くなった。暴走しているという表現なのだろう。その周りにあった黒緑色の角ばった物。それらの量が大幅に増えた。
『このように、とてつもない量のノイズが生まれてしまう』
『悪循環やなかと!?』
『そして大量に集まってしまったノイズは……』
緑色の角ばった物が集まりだし、赤色の塊に変わった。
『こうして塊……結晶となってしまうんだ。これを学者たちの間ではクリムゾンと呼んでいるんだ』
「クリムゾン……」
『クリムゾンがどんな害をもたらすのかはまだ分かっていないんだ。だけど、人類にとって良くないことだけは確かだね』
画面の背景が消えた。画面端で小さくなっていた二人が元の大きさに戻る。
『ウィザードは僕ら人類の新しいパートナーだ。電波テクノロジーが産んだ最高の発明品とっても過言ではないと思う。その一方で、ノイズやクリムゾンという新しい問題が生まれてしまったのも事実。僕たちは人類は、この問題としっかりと向き合っていかなくてはならないんだ』
最初の「イッツレジェンド」と騒いでいた時は、まるで別人のような振る舞いになっていた。となりの彼のウィザードは、しょんぼりと肩を落としていた。
『ごめんね、シンくん。僕らが生まれてこな、こげん問題は起きんやったとに……』
『それは違うよ!』
大きすぎる声に、スバルとウォーロックは思わず耳をふさいだ。
『良いかい、問題っていうのはね。消していくものじゃない。解決していくものなんだ。何かを解決したら、次に新しい問題が生まれていく。それの解決方法を探して、また新しい問題が生まれて……それを繰り返してきたからこそ、今の文明社会があるんだ』
シンは視聴者に顔を向けた。
『ウィザードはノイズを生み出す害なんかではない。僕らの大切なパートナーだ。僕たちがすべきことは、人間とウィザードが共に生き、ノイズやクリムゾンを克服した社会を築く。それが僕たちが目指すべき場所だ。だからこそ、君も僕に力を貸してほしい。相棒!』
そう言って、相棒のウィザードの肩を叩いた。
『シンくん……分かったばい。僕、頑張るばい』
『ありがとう』
シンとウィザードは笑みを浮かべて、固い握手を交わした。
『さて、今回の動画はここまで』
『高評価してくれると嬉しか』
『じゃあ皆……次の動画で会おう。イッツ、レッジェエエエエエンド!!』
そうして動画は終わった。それなりに良いっぽい話を聞いたはずなのに、なぜだろう。感想は「うるさかった」が半分を占める。
「ありがとう、キザマロ」
「いえいえ。お役に立てて何よりです」
ノイズ……スピカモールのウィザードとマグネッツの暴走の原因はおそらくこれだろう。
クリムゾン……マグネッツと戦ったときに出てきたあの赤い塊がそうだったのだろうか。
「まあ安心しろスバル。俺はノイズなんかにゃやられねえよ」
「いっつも暴走してるけれどね」
「んだとこら!」
「ほらね」
そうしているうちに学校についた。
「急ぎましょう、スバルくん!
「そうだね。なんたって今日はあの日だもんね!」
スバルとキザマロは教室へと向かった。意気揚々とだ。今日は特別なイベントがあるからだ。
〇レジェンドマスター・シン
電波テクノロジーの研究者。とりあえずレジェンドという言葉が好き見たいです。
他にも、バトルカードを立て続けに使って敵を鮮やかに倒すという、ベストコンボの紹介や収集なんかもしていたらしいです。
なんとういか、ユーモアと元気でいっぱいの人だと思います。
参照.マロ辞典より抜粋