流星のロックマン Arrange The Original 3 作:悲傷
追跡を振り切って、何とかコダマ小学校の屋上についたスバルとミソラ。ルナたちにメールを送ると、数分と経たずに来てくれた。
「うおおおお、ミソラちゃあああん!」
「ミソラちゃん、会いたかったですううう!」
「ありがとう、ゴン太くん、キザマロくん」
ミソラちゃんファンクラブの二人をいないものとして扱って、ルナは普段通りの対応だった。
「ミソラちゃんの方から来てくれるなんて、珍しいわね」
「それそれ、今日はルナちゃんたちを招待しに来たの」
「招待?」
これはスバルも聞いてない話だった。あいさつも早々に、さっそく本題に入るらしい。
「皆、オクダマスタジオは知ってる?」
「知ってるわよ」
「え、なにそれ?」
スバル一人だけが分かってなかったらしい。スバルの質問に、ゴン太とキザマロがあからさまに不機嫌な顔になった。
「お前知らねえのかよ」
「ミソラちゃんの主演ドラマ、ソングオブドリームが収録されているところですよ」
「あ、そうなんだ」
「やれやれ」「これだから素人は困るんです」とでかい溜息をしている2人は無視することにした。
「そこでやってるんだ?」
「そうだよ。で、皆にも出演してもらいたいの」
3秒ほど時間が止まった。
「え?」
「だから、ソングオブドリームに出てほしいの。背景のエキストラで」
さらっと発言されたとんでもない内容。スバルたちが理解するのに、さらに5秒ほどかかった。
「な……!」
「なっ……!」
「なんですってええええええ!?」
ルナの一番でかい声が、3人の声をかき消した。
「で、出れるの? 私が!? ドラマに?」
「そうだよ。ルナちゃんは可愛いから、そのままスカウト来るかもね?」
「なななななな何言ってるのよ。私は学級委員長で生徒会長でルナルナ団のリーダーなのだからそんな全国デビューなんて……」
「委員長、色々すっ飛ばしてるよ」
でも、とうのルナはまんざらでもない顔をしていた。
「というわけで、収録日が明日っていう急な話なんだけれど……出演してもらっていいかな? あ、その後はライブもあるから、特等席用意するよ」
「もちろん!」
これはルナのみならず全員の回答だった。大人気ドラマに出られるだけでなく、ライブに招待されるだなんて、断る理由などない。
「よし! じゃあ来たばかりで悪いけれど、私はそろそろ行かないとだから」
どうやら、相当忙しいらしい。
「皆明日ね」
「うん、また明日」
そういってミソラは屋上のエレベーターの前へと進んだ。違和感を覚えるのに1秒ほどかかって、スバルは慌てて止めた。
「ミソラちゃん、ストップ! そこから降りたら、学校がパニックになる!」
「え……あ、そっか!」
「もう、おっちょこちょいだなミソラちゃんは」
「あはは……」
ルナも呆れて首を横に振った。
「もう、ミソラちゃんったら……大人気アイドルって自覚あるのかしら?」
『ポロロン。その通りよ。ルナちゃん、もっと言ってあげてくれるかしら。私もマネージャーとして大変なんだから』
「あはは、ごめんごめん。じゃあね、電波へ……トランスコード!」
ミソラは電波変換して去っていった。
「そっか、僕たちがドラマに……」
「今日は早く寝ないとな」
寝坊魔のゴン太も、明日ばかりは遅刻しないつもりらしい。台風が来ないか心配だ。
ふとスバルは思い出した。
「あ、ちょっと追いかけてくる!」
スバルは電波変換すると、慌ててウェーブロードへと飛びあがった。あたりを見渡すと、それなりに離れたところにピンク色の姿が見えた。
「ハープ・ノート!」
気づいて振り返ってくれた。向こうも駆け寄ってくる。
「どうしたのスバルくん」
「明日なんだけれどさ、もう一人……ジャックって子も連れて行っていいかな?」
「新しいお友達?」
「になりたい人かな」
スバルは今日のことを話した。転校生と教育実習生の姉弟のことをだ。ジャックが他人を寄せ付けず、皆と距離を置いてることも話した。
「そっか……ほっとけないんだね」
これだけでスバルの気持ちをおおよそ理解してくれたらしい。
「いいよ。ぜひ来てよ!」
「やった。きっとミソラちゃんのライブも見たら喜んでくれるよ。皆ミソラちゃんのこと好きだもの」
スバルとしては至極当然の発言のつもりだった。少なくとも、ミソラのことを嫌いと言っている者を見たことがない。ミソラも笑って頷いてくれると思った。
「……うん、そうかな!」
「え?」
「い、いやなんでもないよ!」
なんだろう、少し変な間があった気がする。心なしか、笑みに影があるように見えた。
「……あ、それともう一つ」
「なあに?」
もういつものミソラに戻っていた。ジャックのことも本題だが、実はこっちの方が大事だったりする。
「前にミソラちゃんに頼まれた物、用意できてるよ」
「ほんと?」
ミソラが目を輝かせた。待望していたらしい。
「うん、直接手渡した方が良いかなって……」
「もちろんだよ。宅配で送られたら、私すねちゃうよ」
「それはまずいな。フジヤマパフェ何杯おごらされるか……」
以前、フジヤマのようにでっかいパフェをおごらされた時のことを思い出した。ミソラはペロリと食べていたが、スバルはかなり限界だった。
「3杯行っていい?」
「勘弁してよ~。ってかさすがに無理でしょ」
「チャレンジは大事でしょ」
「方向性も大事にしてね?」
軽く雑談を交わして、ミソラと手を振って別れた。明日は絶対忘れないようにしよう。フジヤマパフェ3杯はさすがに子供の財布には重すぎる。
◇
屋上で待っていたルナたちと合流して、スバルたちは5-Aの教室がある二階に戻ってきた。もう放課後だが、まだ生徒たちはだいぶ残っている。
「キザマロ、いつも通り……」
「はい委員長。オクダマスタジオまでのウェーブライナーの時刻表を調べておきます」
「よろしくお願いするわ」
と、そんな会話をしていると、通りかかった女生徒がスバルたちに突撃してきた。
「ちょっと白金さんたち! 今、オクダマスタジオって言った?」
「あら、マスミさんじゃない」
「確か、5ーBの?」
隣のクラス所属のマスミは「そうそう」と頷き終わるが早いか、まくし立てるように詰め寄ってきた。
「お願い、スズカちゃんのサインもらってきて!」
「スズカ?」
スバルたち4人は顔を合わせた。スズカなんて名前、聞いたことがない。
「あ~、知らないか……」
「ペディア」
『了解だよ、キザマロくん。検索……えっと……ひじょうに申し上げにくいんだけれど……』
どうやら芳しくない検索結果だったらしい。
「良いのよ。残念だけれど、今は知名度すごく低いから。けどね、あの子は将来絶対大物になるわよ。演技力ではミソラちゃんを凌ぐレベルなんだから!」
「それは凄いね!」
大人気ドラマの主演を務めるミソラを超えるという。なぜそんな逸材が埋もれているのだろう。
「というわけで、これお願い。あ、選挙は白金さんに投票するから」
「引き受けたわ」
ルナはサイン色紙を受け取ると、流れるようにスバルに押し付けた。まあマスミが上機嫌で帰っていったので、良しとしよう。
『また面倒押し付けられたな』
「まあ、運よく会えたらの話だし。人もたくさんいるだろうから、会えない可能性だってあるしね」
そのスズカと深く関わることになるなど、この時のスバルは知る由もなかった。
◇
「はぁ? なんだこりゃ……」
ジャックは心から呆れた声を出した。先ほどルナから届いたメールをエアディスプレイで開いて、中身を見たところだ。
「ドラマのエキストラに参加して、おまけに夜はライブだ? ふざけんな。誰が行くかよ」
行かないと送ろうとすると、エアディスプレイがひょいと取り上げられた。
「私が返信しておくわ」
「え、ちょ待って姉ちゃん!」
「……はい、行ってきなさい」
「はあっ!?」
クインティアからエアディスプレイをひったくる。だがすでに返信は送信済みになっている。
「な、なんてことすんだよ姉ちゃん!」
「良いじゃない。行きなさい。星河スバルと仲良いふりをしておいて、損はないわよ」
ジャックはギギギと歯をかみしめた。
「俺がああいう騒がしいの、嫌いって知って……」
そこで言葉を止めた。クインティアは相変わらず無表情だ。だが分かる。付き合いの長い弟だから分かる。今の姉は怒っている。
ロケットの打ち上げ、今日攻撃しようとしたこと。任務違反を二回もしている。三回目となるとどうなるだろうか。
「畜生、分かったよ……」
観念した弟に、クインティアは静かにうなずいた。
「そう。それでいいのよ」
そしてねぎらうように言った。
「私だって、好きでこんな任務をしているわけではないわ。あんなレベルの低い連中と一日中一緒だなんて、うんざりよ」
きっと、彼女の頭の中では育田や5-Aの生徒たちの顔にバツ印でもつけているのだろう。
「けれどこれはミスター・キングの命令なのよ。今はまだ我慢しなさい」
そう、今は耐える時なのだ。自分たちの目的を果たすためにも……。
〇ハープ・ノート
響ミソラと、FM星人のハープが電波変換した姿。
トランスコードは004。
響ミソラのハンターVGのデータを傍受したところ、星河スバルとウォーロックが電波変換した姿、ロックマンと共に戦ってきた記録を確認。
来たる作戦の戦力候補に抜擢するか見極める必要あり。
今後、接触を図ることを検討中。
参照.ヨイリーレポートより抜粋