流星のロックマン Arrange The Original 3 作:悲傷
ウェーブライナーから降りたスバルたち。目の前には大きな建物がある。
「ここがオクダマスタジオか!」
「そうですよ、ここでソングオブドリームが撮影されているんです!」
目を輝かせるゴン太とキザマロと異なり、スバルの反応は希薄なものだった。
「なんか、普通の建物だね」
「ここで『危ない暴れん坊ウルトラ将軍様』も撮影されてるのか。実感わかねえな」
ウォーロックも同様という感じだった。
四角い建物。という感想以外何も出てこない。あとは撮影に使う屋外の敷地が多いことくらいだろうか。有名なドラマで使われた池や、壊れた車なんかが置いてある。
「おいスバル、反応薄いぞ!」
「オクダマスタジオって凄いんですよ。今はミソラちゃん専用のライブ会場まで作られているとか!」
「へ~」
スバルの反応はやっぱり薄かった。ミソラの人気を考えたらそんなものだろうというのが、彼の考えだった。
「キザマロ、こう言わないとスバルくんは反応しないわよ」
ルナが呆れたように口をはさんだ。
「その会場、ものすごく大きなリアルウェーブで作ってるらしいわよ」
「えっ、リアルウェーブで!? それ本当なの。見てみたい!」
「ね?」とルナトリオの目があった。ウォーロックがやれやれと首を振った。
そんなやり取りをしながらオクダマスタジオの入り口へと向かうと、途中に黒い服を着た少年がいた。どうやらすっぽかすことなく来てくれたらしい。
「ジャック!」
「……おう」
相変わらず不機嫌そうだ。だがこうして来てくれたということは、ミソラや撮影現場に興味があるのかもしれない。
「今日は来てくれてありがとう」
「……ああ……」
「僕が提案して誘ったんだけれどさ、本当に来てくれると嬉しいよ」
「……そうか」
どうもそっけない。スバルが対応を模索していると、ルナがスッと隣に立った。
「どうかしらジャックくん。私の服装は。ウィザードにコーディネートして貰ったんだけれど?」
ツインドリルの片方を優雅にかき上げながら見せびらかしに行く。ジャックは目を細くした。
「……お前、あたまおかしくなったか?」
「ちょっと、昨日今日の関係で随分な言い草じゃないかしら!」
そのツインドリルが重力に逆らって持ち上がった。般若のような顔に、ジャックが思わずビクリと肩をすくめた。
「え、あ……おう、悪かったって……いいと思うぜ」
「そう? 分かってくれたのなら良いのよ」
ケロッと笑みに戻った。ほめられたのが嬉しいのか、ルンルンとスキップするように建物へと向かっていく。
「……お前ら、よくあんなのと一緒にいられるな?」
ジャックの言いたいことは一理ある。確かにあれはルナの欠点かもしれないが、スバルたちにとっては大きな問題ではないのだ。
「まあ、委員長と一緒にいたら分かるよ」
「そうそう、委員長と一緒にいると楽しいぜ」
「あれが委員長の良いところでもあるんです」
「……お前ら、全員頭おかしいのか?」
とりあえずルナの後を追いかけることにした。
◇
そして彼らの進行は突然止まることになる。オクダマスタジオの入り口でだ。
「入館証を拝見しますバウ!」
犬型の警備ウィザードが陣取っていたのだ。
「入館証? スバルくん、知ってるかしら?」
「いや、そんな話聞いてないけれど……」
「ならば通せないバウ!」
これは困った。ゴン太とキザマロが「そんな~」と涙を流している。
「ぼ、僕たちミソラちゃんのお誘いで……」
「そうそう」
「ミソラちゃんが君たちみたいなのを? ありえないバウ!」
これは聞く耳持たないらしい。
「入れねえんじゃ仕方ねえな」
ジャックが早々に踵を返そうとした。これはよくない。今日の目的の一つは「ジャックに楽しい時間を過ごしてもらう」だ。彼の手を慌てて掴んだ。
「ちょ、ちょっと待っててジャック!」
「な、なんだよ!」
「お願い、もう少し時間を頂戴。なんとかするから!」
「……あ、ああ。分かったから、そんな必死になんなって」
「ありがとう。けど必死になるよ」
ルナたちにここで待っているようにお願いすると、人目のないところへ移動した。
『電波変換だな?』
「うん、お願いしていいかな?」
たぶん、ミソラが入館証を渡すのを忘れていたのだろう。直接会いに行ってもらってくるしかない。
「トランスコード!」
ロックマンになって、ウェーブロードを通じて、オクダマスタジオの中へと入った。
◇
途中、デンパちゃんに道を尋ねて、ミソラの楽屋へと向かった。中に入った最初の感想は「高そうなカーペットが敷かれているな」だった。鏡は横にとても大きく、ハンガーラックにはたくさんの服が吊り下げられている。テーブルとふかふかしてそうなソファまで置いてある。それとシャワー室。
これ全てがミソラのために用意されているのだ。
ミソラが鏡の前にいるのを確認して、電波変換を解いた。
「ミソラちゃん!」
「え、スバルくん!?」
飛び跳ねるようにミソラが振り返った。
「なんでいきなり楽屋に?」
「なんでって……」
そこでスバルは昨日のことを思い出した。そういえば、目隠しされていたずらされたのだ。ここは仕返しといこう。
「ミソラちゃん、な・に・か! 忘れてない?」
「え? ……………………あっ、入館証!?」
「正解~」
「ご~め~ん、忘れてた!」
両手を合わせて謝罪してくる。スバルはちょっと調子に乗った。
「良いけれどさ、ちょっと焦っちゃったかな~」
「お? ひょっとして今のスバルくんは意地悪モードかな?」
「そんなことないよ。いや、ちょっとだけそうかも」
ここは別にとりつくろわなくてもいいだろう。
「ふふ、正直だね。はい、それじゃ入館証」
といっても入館証も電子データだ。スバルのハンターVGに送られる。
「よし。それじゃあ僕からは……」
スバルはカバンからあるものを取り出した。
「昨日、渡すって約束したやつ」
「あ、持ってきてくれたんだ!」
スバルは中身を取り出した。小さな箱だった。と言っても装飾もない武骨で安っぽいものだ。受け取ったミソラはそれを開く。
「わあ……本当に作ってくれたんだ。ありがとう!」
「ミソラちゃんのお願いだからね」
中に入っていたのはペンダントだ。それもスバルが首から下げているものと同じ、流星型だ。色はスバルの金色と対になる銀色だ。ちなみに天地さんに頼んで、天研の施設を借りて作ったのだ。
「でも本当にこの形で良かったの? 新しいのくらい買ってあげるよ」
以前、スバルはミソラにハート型のペンダントをプレゼントしたことがあった。だがそれはムー大陸復活事件の際に、なくしてしまったのだ。新しいのを買ってあげるといったが、その代わりにとミソラが求めてきたのがこれである。
「これじゃ僕のと……」
「良いの、これが欲しかったの……」
ミソラはスバルの方を見ずに言った。だからスバルは気づかない。ミソラの顔が赤くなっていることに。
「あの……これ、ブラザーバンド機能が入ってるんだよね?」
「そうだよ。ミソラちゃんのギターに入ってた部品を流用したんだ」
ミソラが背負っているギターは通信端末でもある。といっても二世代前のトランサーだ。スターキャリアー、ハンターVGと機種が変わったため、もうトランサーとしての機能は使われていない。スバルはその部品を預かって、この銀色の流星型ペンダントに組み込んだのだ。
「あのさスバルくん……」
「何?」
「こ、こっちの方でもブラザーバンド結んでいいかな?」
「……ああ、ペンダント同士でってことだね?」
スバルのペンダントにもブラザー機能は備わっている。そもそも、これはスバルの父である大吾が、AM三賢者と通信をするために作った物なのだから。
スバルとミソラは互いのペンダントを向けた。二つのペンダントは淡い光を灯した。ブラザーバンドが結ばれたのだ。
「フフ、二人だけの秘密って感じだね?」
「な、なにか照れくさいね……」
「そ、そうかな? うん、そうだね……」
互いに互いの顔が見れない。なんだろう、すごくソワソワしてくる。
「そそそ、そ、それじゃあ、戻るね!」
「う、うん! また後でね!」
スバルは足早に楽屋の入り口へと向かった。その肩をウォーロックの手がガシリと掴んだ。
「スバル、そっから出ると芸能スキャンダルになるぜ」
「へ? ……あ!」
するとどうだろう、ミソラがしゃがみ込むように悶絶した。
「す、スバルくん! 昨日の私と同じことしてるよ」
「本当だ。ミソラちゃんのこと言えないね」
「もう、おっちょこちょいなんだから」
「あはは、かもね」
少しだけ笑うと、ミソラは改めて銀色のペンダントに触れた。
「ペンダント、本当にありがとう。宝物にするね」
「うん、喜んでくれてよかった。じゃ、後で!」
そして、電波変換をしてスバルは楽屋から退出した。途中、一度だけ振り返ると、急いでルナたちの元へと向かった。
〇ペンダント
星河スバルが所持しているペンダントについて記す。
形状は流星を思わせる。ブラザー機能がついており、簡単な通信ならば可能。
元NAXA職員の星河大吾が使用していた。
地球に来訪していた強力なAM星人……AM三賢者と通信するために使用していたらしい。
WAXAも現在の緊急事態下の中で、元職員たちへの情報開示権限を拡大。星河大吾が残したシークレット情報を開封して、把握した。
〇AM三賢者(ペガサス・マジック、レオ・キングダム、ドラゴン・スカイ)
星河大吾が残したシークレット情報より抜粋。
AM星より来訪した三体のAM星人……
ペガサス・マジック
レオ・キングダム
ドラゴン・スカイ
のことを指す。彼らは星河大吾に様々な技術と知恵を与え、ブラザーバンドシステムの基礎作りに貢献したとされる。
また、ブラザーバンドシステムの円滑化のために、サテライトステーションの管理人も勤めたらしい。
〇サテライト
ブラザーバンドシステムの運営に使用された、三つの宇宙ステーション……
ペガサス
レオ
ドラゴン
のことを指す。現在は役目を終え、地上に降ろされている。
これらがもつ超高性能処理能力を再利用し、サテライトサーバーの運営に使用している。
このサテライトサーバーは我々の切り札になる可能性が高い。三つのサテライトの性能に期待するものである。
参照.ヨイリーレポートより抜粋