流星のロックマン Arrange The Original 3   作:悲傷

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 次回更新日は7月19日(水)です。


第26話.スズカとアイス

 入館証を見せると、警備ウィザードは謝罪と共に中へと入れてくれた。玄関ホールの壁には、ここオクダマスタジオで撮影された、番組のパンフレットが飾られている。

 

「見ろよキザマロ。ソングオブドリームのパンフレットだぜ!」

「持ち帰り自由ですって、布教用に10冊ぐらい……」

「あなたたち、さすがにそれはやめなさい」

 

 それは独占というものだ。ルナに怒られる二人を見て、ジャックはあからさまにため息をついた。

 

「何が面白いんだ、あいつら?」

「ジャックは見てないの、ミソラちゃんのドラマ?」

「見てねえよ……」

 

 スバルの方を見ることもなく答えた。

 

「もしかして、ミソラちゃんの曲も?」

「ああ」

「そっか……」

 

 ミソラを知らないなんて……とは思わなかった。自分も半年前までは知らなかったのだから。

 

「今日はミソラちゃんのライブもあるしさ、聞いていくといいよ。凄いよ!」

「……煩いのは苦手だ」

 

 今日もずっとテンションが低い。今回の企画は楽しんでくれるだろうか。そんなことを考えていると、廊下の方から声が聞こえた。

 

「お~い、皆~!」

 

 ミソラだ。わざわざ出迎えに来てくれたらしい。手を振り返そうとして、スバルは言葉を失った。

 ミソラはいつものピンク色のパーカーではなく、学生服を着ていた。中学生が着るようなやつだ。セーラー服だろうか? 彼女にしては珍しくスカートを履いている。

 

「来てくれてありが……」

「うおおおおおおおおおおおお!」

 

 突然ゴン太が吼えた。

 

「ど、どうしたのゴン太くん?」

「ミソラちゃん、可愛すぎるぜその衣装!」

「す、素晴らしいです!」

「キザマロくんまで? そう……かな?」

 

 ミソラは両手を広げて、体を少しだけ左右へと揺らして見せた。短いスカートがふわりと揺れる。ゴン太とキザマロから歓喜の声が上がった。

 

「ど、どうかな……スバルくん?」

「ふえっ!? あ、え……えっと……い、いいんじゃないかな!?」

「そ、そっか。ウフフ……」

 

 照れくさそうに笑うミソラをみて、スバルは胸を締め付けられた気がした。

 

「す、すごいわね……さすがアイドル……」

『ルナちゃんも負けていませんよ』

 

 ミソラがようやくルナを見た。というより、ゴン太の後ろにいたので気づくのが遅れた。

 

「うわっ、ルナちゃん! その恰好どうしたの? すっっっごく可愛い!」

「そ、そうかしら?」

 

 ルナは調子に乗って、その場で一回転して見せた。長いスカートがゆったりと揺れる。

 

「うんうん、ルナちゃんの大人っぽさがすごく出てると思うよ」

「ほんと? あ、紹介するわ。私のウィザードよ」

 

 モードが出てきた。

 

「こんにちは、モードです」

「うわ、こっちも可愛い!」

「ポロロン、よろしくね」

 

 ハープも出てきて自己紹介をしている。男四人は完全に蚊帳の外だ。

 

「にしても、さっすがミソラちゃん。男どもとは言うことが違うわね。見習いなさいよ。特にジャックはね」

「なんで俺ピンポイントだよ!」

 

 頭おかしいとか言ったからだろうとスバルは予測した。

 

「君がジャックくん? スバルくんから話は聞いてるよ。今日は楽しんで行ってね」

 

 ミソラはスッとジャックに手を差し出した。握手券が高値で取引されていることを考えたら、とんでもない機会だろう。

 だがジャックはその手を払った。パシッと軽い音が鳴る。

 

「あ……」

「ちょっと!」

「おい。ミソラちゃんになんてことすんだよ!」

 

 ハープに続いて、ゴン太が珍しく怒りの声を上げた。

 

「ジャックくん、今のはないんじゃないですか?」

 

 キザマロもだ。ルナも目を吊り上げている。スバルも同じ気持ちだが、気持ちを抑えた。

 

「待って皆!」

 

 ここは皆を落ち着かせる側に回った。

 

「ジャック。なんで、こんなことをしたの?」

 

 ハープと同じくミソラの隣に立ちつつも、ジャックに尋ねた。ここはミソラの味方をすべきだが、ジャックにだって理由があるはずだ。そこは訊いておきたい。

 

「……むかつくんだよ」

「え?」

 

 ミソラが面食らった顔をした。

 

「お前みたいに、誰にでもいい顔をしてるような奴が、俺は嫌いなんだよ」

 

 ジャックは鋭い目でミソラを見ていた。

 

「やい、ミソラちゃんになんてこと言うんだ!」

「良いじゃないですか、アイドルは皆に笑顔を与える者なんですよ!」

「そこがミソラちゃんの良いところだと、私は思うわよ」

 

 ルナはジャックにというよりは、ミソラを励ますように言った。

 

「そういうのはな、どうせ大した苦労もしてないやつがするんだよ。辛い目にあって、嫌なことされて、そこから這い上がったやつには絶対できねえよ。むかつくんだよ、お前……」

 

 スバルはミソラを横目で見た。悲しんでいるのが一目で分かった。拳を握りしめて、それは違うと言おうとした。

 

「そうそう。優しさを、大人気アイドル様の貫禄と間違えているのよね~」

 

 スタジオの奥から聞き覚えのない声がした。見ると、一体のウィザードが近づいてくるところだった。青色の女性型。オーダーメイド型らしい。頭には氷柱を思わせる青い塊、目には黄色のバイザー。手には緑色の本を持っている。あれは彼女が管理している情報データだろうか。顔が丸いこともあってか、30前後の女性という印象を受ける。

 

「ミソラは表向きニコニコして、本当は他人を見下しているのよ。よく化けの皮を見破ったわね、あなた」

 

 このウィザードはジャックの味方らしい。

 

「……誰だお前?」

 

 ジャックが眉をしかめた。するとそのウィザードの後ろからバタバタと走ってくる少女がいた。

 

「アイス、なにしてるの!」

 

 この青いウィザード……アイスの持ち主らしい。ウィザードの隣に立つと、深々と頭を下げた。横に伸びたでっかいサイドテールが床に触れそうになる。

 

「ごめんなさい、私のウィザードが迷惑を……」

 

 それを決めるのはスバルたちではない。ミソラだ。そのミソラはというと、顔を輝かせていた。

 

「スズカ。大丈夫だよ、気にしてないから」

「ほんと、ありがとうミソラ……」

「何言ってるの、これくらい気にしないよ」

 

 ミソラはスズカと呼ばれた少女の隣に立ち、スバルたちに紹介した。

 

「この子はスズカ。私のブラザーなの」

「こんにちは。いまいち売れてない俳優のスズカです」

 

 どう考えても首が斜めに傾いて痛めそうな髪型だ。ただ、クリっとした目をしていてかわいらしい顔立ちをしている。

 スバルは、ミソラとスズカを交互に見た。

 

「スズカ? この子がスズカちゃん? え、ミソラちゃんはスズカちゃんとブラザーなの?」

 

 スバルの発言に、スズカは目を見開いた。

 

「え、私のこと知ってるの?」

「いや、知ってるっていうか……君のファンの子から、サイン頼まれてて……」

 

 スバルはカバンからサイン色紙を取り出した。昨日預かったやつだ。

 

「さ、サイン!? 私の……? そっか……私のこと、見てくれてる人がいるんだ……初めてだよ、サイン書くの……」

 

 スズカは両手を合わせると、一筋の涙を流した。ファンの子のフルネームを伝えると、いそいそと書き出した。ペンが全然走ってない。どうやらサインを書くのは本当に初めてらしい。

 

「あの、これからもよろしくお願いします。って伝えてもらって良いかな?」

「いいよ、任せて」

 

 受け取って、大事にカバンにしまっておいた。と、一連のやり取りが終わると煩くなるウィザードがいる。

 

「もう、スズカったら……この程度で喜んでどうするの。あなたは大女優になれる子なのよ。それこそ、そこにいるミソラなんかと違って!」

 

 妙にミソラにケンカを売るやつだ。ここまであからさまにされると、スバルとしても機嫌が悪くなってくる。

 

「あのさ、ミソラちゃんになんの恨みがあって、そんなこと言うんだよ」

 

 すると、アイスは悲鳴のような声を上げた。

 

「キー! あるに決まってるわ。ソングオブドリームの主演は、本当はスズカがなるはずだったのよ。なのに、アイドルだからって理由でかすめ取って……演技力なら、スズカの方がずっと上なのに!」

 

 これは逆恨みにもほどがある。それは監督の決定で会って、ミソラに責任はない。そのミソラはというと、当然という顔をした。

 

「そんなの知ってるよ。スズカが一流の俳優だってことは、ブラザーの私がよく知ってるもの」

「そうやってまたいい子ぶるのが腹立つのよ!」

 

 スバルには分かる。ミソラは悪意一つなく、ただスズカを素直に称賛しているのだ。ただ、アイスには調子に乗ってるように見えるらしい。そんなアイスをスズカが宥める。

 

「それはアイスの考えすぎだよ。ソングオブドリームは、元々ミソラを主演にすることで企画が始まったんだから。それに、私の知名度で主演は絶対に無理だよ」

「そんなことないわ。皆見る目がないのよ!」

 

 これは会話にならない。相手にしない方が良いタイプだ。スズカはスバルたちに頭を下げた。

 

「ごめんなさい。アイスに悪気はないんです。私のマネージャーだから必死になってくれてるだけで……。あ、今日の撮影、私もミソラの友人役で出るんです。よろしくお願いします」

 

 もう一度深々と頭を下げると、未だにヒステリーを起こしてるアイスを連れて廊下へ。そしてある部屋へと入っていった。スバルからもかろうじて部屋の名前が見えた。

 

「大部屋?」

「説明しましょう。ミソラちゃんのような大物には個室が、そうでもない人たちには共用の大部屋が与えられるんです。皆の荷物とかごちゃごちゃになって、大変らしいですよ。椅子もパイプ椅子だとか」

「そっか……」

 

 どうやら、結構苦労しているらしい。

 

「皆ごめんね。スズカはいい子なんだ」

「うん、そうだね」

 

 会った時間は短いが、それくらいは分かる。

 

「アイスも悪い人じゃないの。スズカのことが大切なだけなの」

「……だろうね」

 

 それでも、もう少し見境はつけてほしいところである。

 

「さてと皆!」

 

 ミソラは明るく振舞って見せた。

 

「撮影まで、まだ少し時間があるから見学していってよ。私、監督さんと打ち合わせがあるから」

「分かったわ。じゃあ皆、自由行動と行きましょう」

「おー!」

「了解です」

「……おう」

 

 皆それぞれの方角へと歩き出した。道案内板を見ようとしているスバルに、ミソラが声をかけた。

 

「スバルくん、この道真っすぐ行ったら、ライブ会場だよ」

「なんで、僕の行きたい場所が分かったの?」

「分かるよ、それくらい」

「あはは、お見通しか……」

 

 ミソラと別れて、スバルは小走りで駆け出した。物すっごく大きなリアルウェーブで作られたライブ会場。ぜひとも拝見しなくては。




〇危ない暴れん坊ウルトラ将軍様
 200年以上前から続く、超人気大河ドラマ。
 民に扮した将軍様が「この紋所(もんどころ)が目に入らぬか!」と言いながら『もんどころニウムレーザー』で宇宙から侵略してきたエイリアン達をズバババーン!となぎ払うシーンがお約束であり、大人気です。
 昔っから、こんな感じだったのでしょうかね。


 参照.マロ辞典より抜粋
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