流星のロックマン Arrange The Original 3   作:悲傷

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 次回更新日は7月21日(金)です。


第27話.裏方職人、浦方マモロウ

 オクダマスタジオの中は色々とごちゃごちゃしていた。収録室に、編集室にといろいろある。そんな所を抜けると屋外に出た。広い平地で学校のグランドくらいはあるだろう。

 その中央にマンホールのようなものがある。丸くて黒い。

 

「これがプロジェクター!? 大きい!!」

 

 リアルウェーブを生成する機械だ。ウェーブライナーの駅にもあるが、それよりもずっと大きい。直径はスバルの身長くらいあるだろう。

 

「で、肝心のリアルウェーブはどこなんだ?」

 

 ウォーロックが出てきた。心なしかくたびれているように見える。

 

「どうしたの、さっきは全然しゃべらなかったのに」

「いや、女が多い空間って苦手なんだよ」

「あ~」

 

 ミソラとハープに、ルナとモードに、スズカにアイス。確かに女性が多くいた。

 

「ロックって意外と繊細?」

「あのな、俺にも苦手なもんくらいあるからな」

 

 その最たるものがハープなのかもしれない。スバルから見たら仲良いようにしか見えないのだが。

 

「ところで、リアルウェーブだけれど……このプロジェクターが動けば見れるはずなんだけれどな」

「中に入れねえか?」

 

 ハンターVGを操作して、エアディスプレイを開いた。

 

「……無理っぽい、アクセス権限が必要みたい」

「なら諦めるしかねえな」

 

 こうなるとウィザードでもお手上げだ。

 

「あ~、見たかったな……」

「仕方ねえよ、他のところに……おい、誰か来たぞ?」

「え?」

 

 ウォーロックが指さした先には一人の男性がいた。上へ下へと伸びた八本の髪が真っ先に目に入る。ドレッドヘアーというやつだろうか。オレンジ色の作業ベルトを両肩にかけている。作業着はズボンのみ。上半身は水色のシャツだ。いや、よく見たら作業着の上着は腰に巻き付けている。年齢は30代だろうか。

 

「よう、プロジェクターに興味があるみたいだな?」

 

 気さくというか慣れ慣れしいというか、距離感が近いタイプの人らしい。だが悪い気はしなかった。

 

「はい。凄く大きいですよね」

「製作期間も費用も、目ん玉が飛び出すほどかかってるぜ」

「へ~、ミソラちゃんすごいな……」

「ああ、ほんとな。で、ちょっと退いてもらって良いか。今から作業するからよ」

「あ、はい。見学してもいいですか?」

「ああ良いぜ」

 

 男性はプロジェクターの前に座ると、エアディスプレイを展開した。両手の十指を軽く折り曲げすると、素早く画面を叩くようにタイピングを始めた。プログラムコードの羅列が見る見るうちに出来上がっていく。

 

「す、すごい!」

「へ~、こんな早いタイピング? 見たことねえぜ。職人技ってやつか?」

 

 二人の賛辞の言葉にも、彼は特に反応することなく、淡々と仕事をこなしている。

 

「あの、リアルウェーブ技師さんですか?」

「ああ」

「もしかして、これ全部ひとりで」

「う~ん……プロジェクターの作成はさすがに外注だけれど、ライブ会場の設計は俺がメインで担当してるよ」

「こ、これは本物だ。本物だよロック!」

「あ~、はいはい」

 

 オタクスイッチが入ったことに気づいて、ウォーロックはめんどくさそうな顔をした。

 

「ロック……なるほど、君が星河スバルくん。そしてウィザードのウォーロックか」

「え?」

 

 男性はスバルの方を見ずに語り掛けた。初対面の人に名前を呼ばれるとは思ってもみなかった。

 

「知ってるんですか、僕のこと?」

「ああ。ミソラからよく話を聞いてるんでな。自慢のブラザーだって」

「そ、そうですか……。ミソラちゃんと仲いいんですね」

「つっても、仕事の関係だけれどな。っと、忘れてた」

 

 男性は作業の手を止めて、スバルとウォーロックに手を差し出した。

 

「俺は浦方(うらかた)マモロウ。ミソラのライブスタッフをまとめる現場責任者だ。よろしくな」

「はい、星河スバルです」

「ウォーロックだ」

 

 スバルたちは握手に応えた。ゴツゴツとした指の感触。職人として生きてきた者の手だった。

 

「後ついでだ。こっちも紹介しておこう」

 

 浦方はエアディスプレイをもう一つ展開した。そこにはレゾンが書かれている。

 

「レゾンチーム名……ミソラサポーターズ?」

「ああ、俺たちスタッフは皆ブラザーでな。今回の、ミソラの久々のライブを成功させるというレゾンを掲げてるんだ」

「マモロウさんみたいな方がスタッフなら、ミソラちゃんも心強いですね」

「そう言ってくれると嬉しいぜ」

 

 この時、初めて浦方は笑ってみせた。

 

「裏方の職人ってのは、いちいちそんなレゾンを掲げるものなのか?」

 

 ウォーロックの質問は的を得ている。仕事とはいえ、こんなレゾンなどといちいち立ち上げるのだろうか。

 

「いや、俺たちが自主的にやってることだ。ミソラのやつを応援してやりたいんだよ」

「ファンなんですか?」

「う~ん……」

 

 どうやらゴン太やキザマロとは路線が違うらしい。

 

「いや、あの子さ……家族を亡くしてるだろ」

「……はい」

 

 ミソラは天涯孤独の身だ。母親は去年亡くなったと聞いている。そのショックは大きく、アイドルを一時期引退したほどだ。父親については話を聞いたことはないが、似たようなものだろう。

 

「あれだけ辛い過去背負ってるのにさ、あの子はいつも明るく振舞ってるだろ。自分と同じように、辛い目にあってる人たちにも笑顔を届けたい……って理由で」

「ですね……」

 

 分かる。スバルも同じ気持ちになる。

 

「あの子な、いつも俺たち裏方のやつらにも丁寧に対応してくれるんだ。この前は、ミスしちまった新人を励ましてたな」

「目に浮かびます」

「浮かぶな……」

 

 ウォーロックも頷いた。

 

「まあ、そんな理由だ。俺たちはスタッフとしてミソラを支えるから、お前は友達として側にいてやってくれ」

「……はい!」

「頼もしいな」

 

 浦方は作業を再開した。エアディスプレイをタイピングし始める。

 

「完成にはもう少し時間がかかる。そろそろ収録現場に行ったらどうだ。エキストラで参加するんだろ?」

「それもミソラちゃんから?」

「ああ」

「そうですね。分かりました」

 

 浦方と別れて、スバルは元来た道を戻った。遅れると、また委員長がうるさくなりそうだ。

 

 

 スバルと浦方が話していた場所から少し離れたところ。物陰にジャックはいた。

 

「……嫌な話聞いちまったな」

 

 エアディスプレイを展開し、検索する。ミソラのプロフィールが表示される。母親を亡くしてることが書かれていた。

 

「……そうか。あいつ、俺たちと……」




〇金田金太郎
 ミソラちゃんの元マネージャー。
 母親を亡くしたばかりのミソラちゃんを無理やり歌わせようとしました。その後事故に巻き込まれて病院へ。ミソラちゃんの引退と共に、マネージャーから外れました。
 正直言って良い気味です。
 でも……これには、当時のミソラちゃんの気持ちを考えていなかった、僕たちファンにも問題はあると思います。


 参照.マロ辞典より抜粋
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