流星のロックマン Arrange The Original 3   作:悲傷

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 ミソラ生誕祭2023!
 カウントダウン!
 残り4日!


第33話.密室の二人

 スバルが浦方と事件解決に赴いているころ、ルナはオクダマスタジオの中を移動していた。ゴン太とキザマロはいない。

 キザマロはスズカと一緒だ。スバルと別れた後、アイスを探しているスズカと再度遭遇。この状況下で見つからないとなると、事件に巻き込まれた可能性が出てくる。キザマロはペディアの統計力を利用しての捜索に名乗り出た。

 ゴン太はというと、ジャックが見つからないことが気になって、一人行動中である。

 ルナもどちらかに加わろうかと思ったのだが、スズカに頼まれたのだ。ミソラの側にいてあげてほしいと。ルナはすぐに察した。本当にミソラの側にいてあげたいのはスズカのはずだ。ブラザーに脅迫状が届いているのだから。だが彼女は自分のウィザードを探さなくてはならない。きっと断腸の思いだろう。

 それにルナも気にはしていたのだ。ただ、ライブ前に訪問するのは邪魔かもしれないと考えて、二の足を踏んでいた。だがスズカに頼まれたというのなら、話は別だ。ためらう理由などない。

 そしてミソラの個室の前に来るに至る。

 

「ミソラちゃん、入って良いかしら?」

「ルナちゃん? 良いよ入って!」

 

 自動ドアが開いて、中に踏み入れる。ミソラはとっくに着替えており、いつものパーカー服だった。

 

「よく来てくれたね。ゆっくりして行ってよ」

 

 明るく振舞っているが、ルナにはすぐに分かった。

 

「ミソラちゃん、無理しなくていいのよ」

「……そっか、ルナちゃんには分かっちゃうか」

「当たり前でしょ」

 

 脅迫状が来ているのだ。ライブを見に来るファンたちに危害が及ぶかもしれない。スタッフたちが懸命に対応している。

 

「なにより、スバルくんもいるものね」

「うん……」

 

 この状況下で、ミソラが心中穏やかでいられるわけがないのだ。それに気づかないようなルナではない。ただ、それでもルナは言いたいことが一つだけあった。

 

「皆の心配するのも良いけれど、心が疲れちゃうわよ。今は自分の心配だけしておきなさい」

「あ、それはね……クシュン!」

 

 ミソラがくしゃみをした。小さく体を震わせる。

 

「なんか、冷えてきたかな?」

「変ね、今日はそんな予報なかったと思うけれど」

 

 ルナはハンターVGを開いて、今の気温を確認した。天候制御システムの予定通りで、秋に相応しいものだった。

 

『ルナちゃん、室温はどうですか?』

「室温……」

 

 モードに促されて室温を見た。そして目を見開いた。

 

「え……待って、なにこれ!」

 

 室温が低い。そして秒単位で下がっていく。見上げる。エアコンがうねる様な音を立てている。冷房が全力で稼働しているのだ。ルナも足から寒気が走ってきた。

 

「で、出ましょうミソラちゃん!」

「そうしよう!」

 

 ルナにも分かる。これは脅迫状を送ってきた犯人の仕業だ。室温を下げる嫌がらせか何かだろう。だがルナの読みは甘かった。

 自動ドアの前に立つ。だが何も反応がない。センサーの前にルナが立っているのに、なにも作動しない。開錠されない。ドアが開かない。

 

「ちょ、どういうこと!?」

『きっと犯人の仕業よ』

 

 ミソラのハンターVGからハープが声を出した。

 

『ミソラをここに閉じ込めて、寒さで苦しめるつもりなのよ』

「嘘っ。そこまでするの!?」

 

 ルナが思っていた以上にこの犯人は凶悪らしい。このままでは自分とミソラの命にかかわる。

 

「ルナちゃん、これ!」

 

 ミソラはある物に手を伸ばした。先ほどミソラが来ていたセーラー服だ。ハンガーラックには他にもたくさんのステージ衣装が吊り下げられている。一つ一つがかわいらしく、ミソラが着るためにデザインされて、オーダーメイドされた一品ものだ。それを無造作にルナに被せた。

 

「これで少しはマシになるはずだよ」

「ありがとう、ミソラちゃん。モード、スバルくんに連絡して!」

『分かったよ!』

 

 そうしている間にも、どんどん室温は下がっていく。床にうっすらと白い靄がかかった気がしたのは、きっと見間違いだろう。

 確かに体は少し暖かくなったが、気休めだ。エアコンからは強風が吹き荒れて、部屋の空気をかき混ぜる。冷たい風がルナの体温を奪っていく。

 ロックマン様が来てくれるまでの辛抱だ。すぐに来てくれるはずだ。だがその期待は裏切られた。

 

『た、大変だよルナちゃん。この部屋の通信も壊れてる!』

「え、そんな!」

 

 人間のルナには分からないことだが、電波世界には異変が起きていた。ミソラの部屋につながっているウエーブロードの入り口。そこには巨大な氷塊ができあがっていた。デンパくんたちでは通ること叶わず、外に連絡ができなくなっていたのだ。念を入れたのだろう、氷塊の隣では一体のデンパくんが氷漬けにされていた。

 

「どうしたらいいかしら……このままじゃ……」

 

 助けが来るのを待つしかない。外の人が、この状態を察知してくれるのを祈るしかない。だがいつまでこうして耐えていられるだろう。時間の問題だ。

 こんな時にロックマン様は何をしているのだろう。来てくれるとしたらいつだろう。何分後だろうか。何十分とかかるだろうか。もしかしたら……。

 唇を震わせるルナの肩に、手が置かれた。温かみを感じた。

 

「大丈夫だよ、ルナちゃん」

 

 ルナと同様に、ミソラは服を羽織っている。その下から覗いた表情に、不安の色はなかった。

 

「必ず助けに来てくれるよ。スバルくんがいるから、大丈夫」

「ミソラちゃん……」

 

 でも、知らないことには対処できない。それはロックマン様だって同じはずだ。耐えて待つしかない。

 そう思った時だった。部屋の外に人の気配を覚えた。何かピッピッと機械音が聞こえる。誰かいるのだろうか。ドアに手を伸ばそうとする。そのドアが横に開いた。部屋の冷たい空気が漏れ出し、入れ替わりに暖かい空気がルナたちを包んだ。

 ドアの前には、一人の少年。

 

「ミソラちゃん、大丈夫!?」

「スバルくん!」

 

 ミソラが立ち上がった。可愛い衣装を放り投げ、スバルに駆け寄る。

 

「ありがとう、助けてもらっちゃって」

「良いよ。それより、大丈夫みたいだね」

「そういうスバルくんは大丈夫なの。私、お客さんやスタッフさんたちもだけれど、スバルくんが怪我してないかって……」

 

 今もかがんでいるルナの前で、ミソラは何事もなかったかのように話していた。今さっきまで、寒さで震えていたはずなのにだ。ドアが開く少し前に、ミソラが言った言葉。それがルナの頭で反芻した。

 

「必ず……か」

「……え、委員長!?」

 

 呟きが聞こえていたらしい。スバルは足元を見て、ようやくかがんでいたルナに気づいたらしい。こうなるとルナも何か一言言ってやりたくなる。勢いよく仁王立ちした。

 

「な、なんでここに委員長が!?」

「あら、私に対して言うことがそれかしら?」

「あ、えっと……大丈夫?」

「おかげ様で、この通りピンピンしてるわよ。お・か・げ・さ・ま・で!」

「はい……」

 

 そうしている間に、エアコンからウォーロックとオックスが出てきた。エアコンからは暖かい空気が出てきていた。

 

「スバル、ウイルスは退治しておいたぜ」

「ブルル、エアコンとウェーブロードの氷も溶かしておいたぜ。デンパくんも無事だぞ」

「ありがとう、二人とも」

 

 オックスの言葉を聞いて、ルナはふと疑問に思った。

 

「そういえばスバルくん、私たちが閉じ込められているって、なんで気づいたのかしら?」

「ああえっと……たまたまだよ」

 

 スバルはごまかしたが、理由はちゃんとあった。犯人のウィザードを探すために、ウォーロックにはウェーブロードを探索してもらったのだ。その途中、ウォーロックは右往左往しているデンパくんとデンパちゃんを発見。事情を聞くと、ミソラの部屋に繋がる道に、氷塊ができていることを知った。すぐにスバルの元へと取って返すウォーロック。スバルは全速力でここへ駆けつけた。というわけである。

 スバルにとってはややこしい話を省いたつもりだった。

 

「そう……」

「委員長?」

「なんでもないわよ」

 

 ルナは平然を装った。すると、ずっとスバルの後ろにいた浦方が声をかけてきた。ミソラにだ。

 

「ミソラ、大変な目にあったばかりで悪いが、そろそろライブ準備だ。会場に行った方が良いと思うぞ」

「あ、そうですね。じゃあねスバルくん気を付けてね」

「うん、ありがとう」

「ルナちゃん。また後でね」

「ええ。ライブ、楽しみにしているわ」

 

 先ほどまで凍えていたのがウソかのように、ミソラは別のスタッフに連れられて走っていった。

 

「っと、スバル。新しい脅迫が来た!」

 

 浦方がスバルにエアディスプレイを見せた。スバルの顔色が変わる。

 

「急ぎましょう。じゃあね、委員長!」

「良いから、さっさと行きなさい。ミソラちゃんを必ず守るのよ!」

「了解!」

 

 スバルと浦方も、慌ただしく走り去っていった。後には、ルナだけがぽつんと残された。モードが出てくる。

 

「ルナちゃん、かっこよかったですよ」

「……ありがとう。モードにはお見通しなのね」

「はい。だって、ルナちゃんのパートナーですから」




〇天候制御システム
 天候を制御しているシステム。晴れにしたり、雨にしたり、気温を変えたりできます。
 ただ、悪用されると危険です。200年ほど前には、震度10の地震が起きかけたこともあるらしいです。

 参照.マロ辞典より抜粋
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