流星のロックマン Arrange The Original 3   作:悲傷

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 ミソラ生誕祭2023!
 カウントダウン!
 残り3日!

 あとがきネタは、ボツネタ解説です。


第34話.ライブ開始

 オクダマスタジオには熱気が集まっていた。ミソラのライブ目当ての観客たちが、入館手続きを終えて入場してきたのだ。その様子を、スバルは浦方と共に見ていた。

 

「脅迫状に『爆弾を仕掛けた』って書かれていた時は驚きましたけれど、嘘で良かったですね」

 

 その現場に駆けつけて、電脳を探索したがそんなことはなかった。嘘で中止に追い込みたかったのだろうか。

 

「とりあえず、ありがとうよスバル。おかげで起きたトラブルは全部解決出来たぜ」

「いえ、ミソラちゃんのライブを守れて、僕も嬉しいです」

 

 今のスバルは『ミソラサポーターズ』の一員だ。その一翼を担えるなど、名誉でしかない。

 

「お前さんは凄いやつだな」

「え、そうですか? あんなプログラミングができる浦方さんのほうが……」

「そうじゃない。友達のためにそこまでできるってことがだ」

 

 浦方の言っていることが、スバルには理解できなかった。彼にとっては当然のことなのだ。

 

「普通じゃないんですか?」

「ああ、大人になったら分かるぜ」

「そうですか……?」

「ところで」

 

 浦方は話題を変えることにしたらしい。

 

「お礼に何かしたいんだが、俺にできることはないか?」

「いいですよそんなの。けれど……もし良かったら、ブラザーになってください」

「そんなの、こっちからお願いしたいくらいだ」

 

 リアルウェーブのプログラム技術。あれを見た時から、スバルにとって浦方は尊敬の対象だ。そんな人とブラザーになれる。胸躍る話だ。

 二人はハンターVGを向け合って、ブラザー登録を済ませた。スバルのブラザー一覧では、木野マナブの下に浦方マモロウが登録された。

 

「よろしくお願いします」

「ああ、よろしくな。というわけで、記念というわけではないが、見せてやろう」

「なんですか?」

 

 浦方に手招きされてついていくと、ライブ会場だった。例の、あのでっかいプロジェクターの元までくる。

 

「じゃあ、最終チェック……うん、問題ないな。じゃあ行くぞ!」

「はい!」

 

 鼻息荒くするスバルに微笑んで、浦方はエアディスプレイを操作した。

 

「リアライズ、ライブ会場!」

 

 プロジェクターが音を立てると、ピンク色の電波粒子を吐き出した。するとどうだろう。まるで空中要塞のようなライブ会場が出来上がったではないか。

 プロジェクターからは、一本のぶっとい柱が伸びている。大きく見上げると、そこにはピンク色の直方体の塊……あれがライブ会場だ。

 

「ちなみに、上の様子はこんな感じだ」

 

 浦方がエアディスプレイを見せてくれた。ここからでは見れない、ライブ会場の様子が見れる。ピンク一色の大きなステージ、お客さんをたくさん入れれるスペース、超大型のスピーカーが四つ。ミソラを照らす照明。

 

「ライブに必要なものが全部そろってる……すごい、全部リアルウェーブなんですね!」

「ああ、そうだ。つっても、機材が少し足りないから、今から持ち込むんだけれどな」

 

 つまり、まだ仕事が残っているということだ。ここからのスバルはお邪魔でしかないだろう。

 

「分かりました。じゃあ僕は近くで待機しています」

「ああ、また妨害が起きたら連絡するぜ」

 

 浦方が踵を返す。と思ったら、また180度方向転換した。

 

「おっと、忘れてた。スバル、ミソラのライブなんだが、最後に新曲を発表するんだ。何が起きても、それだけは絶対に聞いてやってくれ」

「新曲を? 分かりました」

 

 スバルが頷くと、浦方は忙しそうに走っていった。ほんとうに大変そうな仕事だ。

 

『妨害が起きたら、それどころじゃねえと思うがな』

「だよね。なにか理由があるのかな?」

 

 ウォーロックの言うとおりだ。できれば全部聞いていきたい。だが妨害が起きてしまえば話は変わる。何を差し置いても、皆の安全が第一優先事項となる。ミソラと浦方には悪いが、新曲は聞けないだろう。その覚悟は決めておいた。

 

 

 それからは平穏な時間だった。お客さんたちはリアルウェーブのエレベーターで、高い場所にある会場へと入場。ルナたちとも合流し、スバルたちも中へ入る。

 一つだけ残念だったのは、アイスが見つからなかったことだろう。キザマロとペディアの力をもってしても、見つけることは叶わなかった。ペディア曰く、いくつもの監視カメラが動作不良を起こしていたらしい。きっと犯人の仕業だろう。いくらペディアの分析能力が優れていても、分析すべきデータが無いのならどうしようもない。

 スズカは引き続き探すらしいが、キザマロは気持ちを切り替えてライブに来たのだ。終わったら、改めて一緒に探そうと四人で約束した。

 

「スズカちゃんには悪いのですが、ミソラちゃんのライブは外せませんからね」

「これが一番の目的だもんな!」

 

 キザマロとゴン太はリュックからたくさんのミソラ応援グッズを取り出した。鉢巻きにメガホンにサイリウムと、色々と出てくる。スバルもミソラの曲は好きだが、このノリだけは共感できない。

 ミソラが用意してくれた特等席は、人込みから少し離れたところに区切られていた。ミソラが立つステージにも近いので、迫力満点だ。

 そして、とうとうその時が来た。

 ライブ会場の照明が落とされる。ピンク色のステージの上に一つのスポットライト。そこに走り出てくる一人の少女。会場が沸騰した。

 

「皆~、今日は来てくれてありがとう!」

「うおおおおおおお!」

「ミソラちゃあああああん!!」

 

 ちなみに、スバルの隣ではゴン太とキザマロが似たようなことをしている。スバルとルナも楽しくはあるが、間近でされるとちょっと辛い。

 

「オックス、このノリ分かるか?」

「ブルル、分からん。俺は牛丼の方が良い」

「僕もです。あ、牛丼がじゃないですよ」

 

 男ウィザード三人衆は冷めたようだった。モードはルナの隣でキャッキャと飛び回っている。

 そしてミソラのライブが始まった。

 

「じゃあ、さっそく飛ばしていくよ!」

 

 ミソラがギターを弾く、声を弾ませる。激しさで空気が揺れる。スバルもゴン太から無理やり渡されたうちわを振った。胸が高鳴って、汗が滴ってくる。こんな時間が続けばいい。脅迫状を送ってきた犯人も諦めて、このまま何事もなく終わればいい。

 しかし残念なことに、この時間は長くは続かなかった。

 

「あの、皆」

「あ、スズカちゃん?」

 

 ミソラの曲の途中だが、スバルはすぐに振り返った。

 

「アイスは見つかった?」

「それがまだなの。で、その話じゃなくて……なんか変じゃない?」

「変?」

 

 会場を見る。皆が盛り上がっていて、なにもおかしいことは起きていない。ルナたちも同じように客席を観察した。

 

「何か変かしら?」

「その、寒くない?」

「え?」

 

 狙ったかのように風が吹いてきた。この会場はそれなりに高い場所にある。その分、周りには遮るものが無く、風が吹きつける。それは構わないのだ。問題は、ひどく冷たく感じられたことだ。

 

「うわ、なんだこれ。寒いぞっ!」

「ぺ、ペディア、これは!?」

「温度が下がってる! この会場の温度がものすごく下がってるよ!」

「さ、さっきと同じです!」

 

 モードが言っているのは、ミソラとルナが閉じ込められた件だ。同じ方法で妨害に来たらしい。さらにたちが悪いのは、大勢のお客さんを巻き込んでることと、ライブで汗をかいていることと、高いところにいるという三点だ。

 

「スバルくん、浦方さんに連絡して。お客さんたちをすぐにエレベーターで下に降ろすようにって!」

「止まっちゃったよ、エレベーター」

「止まった?」

 

 スズカは残酷な現実を告げた。

 

「さっき私が使って来た時に、止まっちゃって……。なんとか這い上がれたんだれど」

「よく昇れたね」

「会場の床が、私のお腹当たりの高さで止まったから……ってそれは良いんだった。どうしよう?」

 

 これはまずい。お客さんを逃がすことができない。高い場所に閉じ込められれば、必ずパニックになる人が出てくる。その後に起きるのは惨事だ。

 

「お客さんに知られないように……」

 

 だが遅かった。風がより一層冷たくなった。その風がきっかけだったのだろうか、ライブ会場に変化が起きた。ピンク一色だったそれが、突然水色に変わったのだ。リアルウェーブの色彩設定が書き換わったのだろう。

 突然の変化にどよめく会場。ここからでも、ミソラが目を見張ったのが分かる。

 

「やばい!」

 

 客が異変に気付いてしまった。風が異様に冷たいことに気づくのに、数秒とかからないはずだ。次の瞬間にはパニックが始まる。

 

「皆、大丈夫だよ!」

 

 身構えるスバルたちに届いたのは、ミソラの明るい声だった。

 

「シチュエーションを変えてみたの。ね、水色も合うでしょ?」

 

 これで観客たちは納得した。曲に合わせてライトを変えるなど常套手段。これはリアルウェーブの会場なのだ。ライトではなく、会場の色を変えてしまおうという試みなのだ。と、勝手に解釈したみたいである。

 

「さあ、続けて盛り上がっていくよ。今日はノンストップで歌い続けるから、ついてきてね!」

 

 客たちは各々雄たけびを上げて、ミソラの曲に合わせて手でリズムを取り出した。たくさんのサイリウムが一斉に揺れる。

 

「ミソラ、お客さんたちを守るために……すごい、本当にすごいよ、ミソラは……」

「うん、そうだね……」

 

 だがこれも長くはもたない。早く根本的な原因を解決しなくては。スバルがここでやるべきことは一つだ。

 それを後押しするように、スバルのハンターVGが鳴った。

 

「浦方からだぜ、スバル」

「ちょうどよかった!」

 

 電話に出ると、浦方の顔がエアディスプレイに映った。

 

『スバル、ライブの途中で悪いんだが……』

「マモロウさん、プロジェクターにアクセスさせてください!」

『状況を把握していたか。ああ、頼む。そのために電話したんだ。アクセス権限は渡したままだったな』

「はい。任せてください」

 

 そうして電話は切れた。

 

「あの、スバルくん……」

 

 スズカは申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「もしかしたら今回の事件、アイスが関係してるかもしれないの」

「アイスがか……」

 

 実は、スバルもその可能性は考えていた。ミソラに恨みがある、氷を使う者。そしてウィザード。アイスの可能性が高い。

 

「アイスってそんなに強いの?」

「ううん、正直言ってバトルはそんなに……」

 

 となると、マグネッツと同じパターンかもしれない。ノイズによる暴走だろうか。

 

「任せておいて、もしアイスが犯人だったとしても、無事に連れて帰ってくるから」

「うん。ありがとう」

 

 頷くスズカの手に、ルナがそっとサイリウムを持たせた。

 

「スズカちゃんはここで、ミソラちゃんのライブが盛り上がるように努めましょう」

「おう、皆が寒さに気づけないくらいにな」

「なんか、僕たちがやってることは変わってないですね」

 

 ルナはスズカの肩を叩いて、ステージの方を指さした。スズカがスバルに背を向けた。スバルとスズカの間に、体の大きなゴン太と、オックスとペディアが入る。スバルを隠すようにだ。

 その間に、スバルはステージの端っこへと駆け出した。

 

「行くよロック!」

「おう、やってやろうぜ!」

 

 ハンターVGにウォーロックが入る。それを手にとり、スバルは一度だけステージに振り返った。汗を流して歌っているミソラを見た。

 

「待っててね、ミソラちゃん。君は僕が守るから」

 

 そして、スバルはライブ会場から飛び降りた。風を見に受け、空中で身をひるがえしながら、ハンターVGを掲げた。

 

「電波変換!」




〇ボツネタ①
 スペード・マグネッツとの戦いでは「ノイズドカードがあるところを攻撃しなくては助けられない」という条件を設定しようと考えました。そうしなくては、今のロックマンが苦戦することはなく、何一つ盛り上がることのない戦闘になってしまうと考えたからです。
 ですが、原作にはない設定を用意してまで苦戦させる必要性があるだろうか。いや、そんなの面白くない。必要性がない上に、この設定を入れてしまうと、3章のあのボス戦ではより面倒になってしまう。
 そう考えて、ボツにしました。
 なくてもそれなりに面白く描けたし、最後にジャックを乱入させて盛り上げて、因縁も作れたので、これで良かったと今は思っています。
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