流星のロックマン Arrange The Original 3 作:悲傷
今回のあとがきは未収録シーンです。ネタとして思いついたけれど、本編に入れる内容ではないなと判断したけれど、書きたかったシーンです。けど、思ったよりも面白くならなかったな~。
次回更新なのですが、9月くらいになるかもしれません。現在、執筆中です。しばらくお待ちください。
スバルとミソラはオクダマスタジオの入り口近く、人気のない場所で電波変換を解いた。何が起きているのかはすぐに分かった。
『こいつは確かにやべえな』
『サテラポリスが来ているじゃない!』
考えてみれば当然だ。爆破予告までされていたのだ。オクダマスタジオとしては通報しないわけにはいかない。しかも来ているのはサテラポリスの特殊部隊だ。
「なんで特殊部隊が?」
彼らはとても危険な任務や、凶悪犯罪が担当のはずだ。いくらミソラが全国区の有名アイドルだからと言っても、起きた事件はオクダマスタジオの運営妨害程度だ。彼らが出てくるような大事には程遠い。
「考えている暇はないよ!」
ミソラが駆け出した。スバルも後に続く。
サテラポリスに対応している浦方の声が聞こえてきた。
「ですから、爆破予告はこちらの勘違いでした。トラブルこそありましたけれど、全部解決しましたし……」
サテラポリス特殊部隊は二名いた。男性と女性が一人ずづだ。男性は浦方の事情説明に首を横に振った。
「いえ、事件性がある以上は調査させていただきます」
「また、大量のクリムゾンの発生も感知しました。ここは引き下がれません」
治安を守る者として当然の対応だろう。だが「はいそうですか」というわけにはいかない。浦方やスタッフたちの後ろには、スズカとアイスがいるのだから。事件当事者として、浦方たちにお任せして帰るわけにもいかず、成り行きを見守っているのだろう。ルナたちも一緒だ。ジャックだけはいないようだ。
アイスが前に進み出ようとして、スズカが止める様子が見えた。アイスは自首しようとしているらしい。
何とかしてあの二人を助けなくては。だがこうして走ってはいるものの、どうすればいいのだろうか。
「ちょっと待った~!」
悩むスバルをよそに、ミソラが叫びながら浦方とサテラポリスの間に滑り込んだ。
「あの私、響ミソラと言います」
「はい、知っています」
「毎週、ソングオブドリームを録画していますから」
「あ、どうもです」
ミソラとサテラポリス隊員二人がそろって頭を下げた。何を見せられているのだろう。それにしても、さすがミソラだ。ドラマに出演しているだけあって、アドリブ力が鍛えられているようだ。彼女の中ではちゃんと言い訳が出来上がっているらしい。
「それで、あの……トラブルというのは、私のライブのときで……えっと、ほら! あれです! ステージの演出で……雪! 雪を降らせようとしたんですよ。ね、浦方さん!」
そんなことはなかった。めっちゃくちゃ目が泳いでいた。右へ左へとバタフライしている。
「……あ、ああそうそう! その装置が故障してしまってね。いや~、ちょっと寒くなっちまって……ノイズはその時に出たんじゃねえのかな?」
「というわけなんです。お仕事ご苦労様でした!」
「……いや、今の考えながら話していましたよね」
さすがに無理がある。女性隊員が、咳払いして自分のサングラスを少し持ち上げた。
「響ミソラさん。私たちはプロです。嘘はすぐに見抜けます。そして……」
女性隊員は素早く、ある人物を指をさした。
「隠し事をしている人もです」
指先にいたのはスズカだった。ビクリと怯えるスズカ。側にいたルナたちは素早くスズカを後ろに隠そうとした。だがもう遅い。スズカに歩み寄ろうとする二人の隊員。その間にミソラが割り込んだ。
「だから、なにもなかったんです!」
こうなるとなりふり構ってなどいられない。スバルはミソラの隣に並んだ。
「僕はライブの客です。何も問題なんて起きていませんでした!」
続いて、ゴン太とキザマロだ。
「そうだ、何もなかったぜ!」
「ミソラちゃんの熱唱で、むしろホットなステージでした!」
だがそれでも動じないのがサテラポリスというものだ。
「一般市民の証言は確かに参考にしよう。だが証拠にはならない」
「取り調べには応じてもらいます」
不動。それが今の二人に相応しい言葉なのだろう。このままではアイスは連れていかれる。最悪の場合はヒール認定を受けて、廃棄処分されるだろう。
ここで引けない。どう追い返せばいいのだろうか。
「オホン」
その空気を消し飛ばす咳払いが一つ。スバルたちのみならず、隊員二人も足を止めてしまった。
「よろしいでしょうか」
悠々と歩みだしてきたのはルナだった。
「被害を訴えている人がいない以上、事件として成立していないのではないでしょうか」
「あ……」とスバルは声を漏らした。そうだ。サテラポリスは事件を解決する組織だ。そして事件とは被害が出て初めて認定される。ルナの言葉はたったの一文。それだけで、この隊員二人の勢いを完全に止めた。
「ううむ……」
初めて隊員たちが唸った。これは相当効いたらしい。ルナがもう一歩前に進み出た。
「わざわざ来ていただいて恐縮ですが、どうぞお引き取りください」
そして丁寧に頭を下げた。まるで仕事ができるOLだ。ちなみに迫力が強すぎて、スバルもミソラも、ゴン太もキザマロも、そしてスズカも身を寄せて固まっていた。
それでも、隊員二人は未だに渋っていた。
「だが、ノイズが発生したのは事実だしな」
「それを理由に、上に申請して、より強力な捜査権限を所得するしか……」
どうやらまだ粘るらしい。その時だった。サクサクサクという軽快な音が聞こえてきた。
「あれ、この音……」
最近聞いた、忘れたいが耳に焼き付いていしまった音だ。サテラポリスの隊員二人の後ろから、藍色の髪をした青年が近づいてくるところだった。
「もういいんじゃないですか?」
隊員二人は振り返ると、姿勢を正して敬礼した。青年も、うまい棒をポケットにしまって同じく敬礼をした。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です。で、暁……もう良いとは?」
「ここは俺に任せていただけないでしょうか。サテラポリスの一員として、間違ったことはしませんから」
隊員二人は顔を見合わせると、頷いた。
「いいわ、暁がそういうのなら任せましょう」
「我々は先に本部に戻る」
あれほどスズカに執着していた二人が、あっさりと引き下がった。暁に再度敬礼をすると、何事もなかったかのように去っていった。
暁シドウも二度目の敬礼を終えると、さっそくうまい棒の続きを食べ始めた。
「久しぶりだな、星河スバル」
「あ、暁さん……サテラポリスだったんですか!?」
呆気に取られてポカンと口を開いていたスバルが言えたのは、それだった。
「うん、そうだよ」
「本当に?」
「ほら、隊員証」
ハンターVGを取り出し、エアディスプレイを展開した。間違いなく、サテラポリスのマークだった。
「普通の人ではないと思っていたけれど……まさかサテラポリスだったんですね」
ルナも心から驚いた顔をしていた。ギガエナジーカードをあっさりと提供してくれたのだ。WAXAあたりにでも伝手があるとは思っていたが、提携しているサテラポリスだというのなら納得だ。
ゴン太とキザマロは「すげえ~!」と目を輝かせている。
そんな中、きょろきょろとしているのがミソラだった。
「スバルくん、知り合い?」
「うん、暁シドウさん。前に会ったことがあるんだ。アシッドっていうすごく強いウィザードを連れていて……」
『チッ!』
ハンターVGから、ウォーロックの舌打ちが聞こえた。
『おやおやウォーロック、不機嫌そうですね』
すると暁シドウのハンターVGから白い電波粒子が飛び出してきた。すぐにアシッドの姿へと変える。
「そんなに、私に負けたのが悔しいのですか?」
『んだとこら!』
ウォーロックが颯爽と飛び出した。
「いつ俺がてめえに負けた!?」
「スピカモールで。私があの暴走ウィザードを倒しましたよね」
「あれは倒して良いか分からなかっただけだ。今ここでウィザードバトルして、俺が強いって証明してやボドウ!?」
そんなウォーロックの口が弦で固く結ばれた。
「ポロロン、サテラポリス相手に喧嘩売ってどうすんのよ。オックスみたいに脳筋なんだから」
「おや、これは助かりましたレディ。美しいだけでなく、優しいのですね」
「ポロロロン! いやねえ、口がうまいじゃない。誰かさんと違って」
「ハープ、てめえどっちの味方だこら!」
ウィザードたちが勝手に喧嘩し始めた。長くなりそうなので、無視することにした。
「あの、暁シドウさん……? 先ほどはありがとうございました」
ミソラが暁にお礼を告げた。すると、暁はカバンから何かを取り出した。
「これ、良いかな?」
「え?」
「君のアルバム。サインしてくれたら嬉しいんだけれど」
「あ、はい!」
「それとこっちのサイン色紙にも、さっきの二人の分ね」
「は、はい!」
サラサラとかき上げた。すごくなれているらしい。
「ありがとう。あ、事件の方は何も問題なかったって報告しておくから」
「良いんですか、それで……」
大変ありがたいことだが、さすがに突っ込んだ。
「良いんだよ。誰も困らないんだから、ハッピーエンドだろ?」
暁シドウは親しみやすそうな笑顔で、スバルとミソラの肩に手を回した。スバルたちは彼の胸元に引き寄せられる形だ。そんな二人の耳元で、暁シドウは小声でつぶやいた。
「ハープ・ノート」
背中に悪寒が走った気がした。ミソラの顔を見る。顔が少し青くなっているように見えた。
「君の力を貸してもらうときが来るかもしれない。もちろん、ロックマンと一緒にね」
暁シドウは柔らかくスバルたちを解放した。
「サインありがとう。それじゃあね」
いつもの笑みを浮かべて、暁シドウは軽く手を振って去っていった。サクサクサクという音が聞こえる。
ちなみに、アシッドはハープと親しげに手を振って後を追った。頬を赤くしているハープと、物凄く不機嫌そうなウォーロックがいた。オックスが「あいつそんなに強いのか!?」と余計なことを言って、ウォーロックとリアルファイトをしそうになっていた。
「あの、ありがとうミソラ!」
「ごめんなさい。いえ、ありがとう」
スズカと一緒にアイスもお礼を告げた。彼女も完全に反省したらしい。
「ってミソラ、どうしたの。なんか顔色が……」
「え、そんなこと……いや、ちょっと疲れちゃったかな~。なんて!」
「ミソラちゃん、休んだ方が良いよ」
スバルも横から補助を入れておいた。とにかく、スズカとアイスは守れたのだ。暁シドウの言う通り、ハッピーエンドなのだろう。
◇
サクサクサクと歩きうまい棒をしながら、暁シドウはエアディスプレイを見ていた。
「シドウ、食べ歩きのみならず、歩きハンターVGは感心しませんね。サテラポリスとして特に」
「いやあ、うまいしなこれ」
「どちらかというとエアディスプレイを見ることをやめていただきたいのですが」
「そうか」
立ち止まり、近くにあったベンチに座った。まあこれは悪いことではないかとアシッドは目をつぶった。
「それにしても、この短期間で3人か」
エアディスプレイには3人の電波人間が映っていた。
トランスコード:003 シューティングスター・ロックマン
トランスコード:004 ハープ・ノート
トランスコード:005 オックス・ファイア
「うん、順調順調。これで長官から言われていた、バトルチーム増員の充てができたな」
「後は、彼が間に合うかどうかですね」
「……難しいだろうな。まだ電波変換の許可すら降りていないからな。彼には特別枠で、トランコードナンバーは用意しているが……使うことになるかどうか……」
「高い戦力になることは確証が取れています。シドウ、あなたの采配次第ですよ」
「そうだな、一応師匠のようなものだしな」
エアディスプレイに映る3人。下から順番に見ていき、そして003の顔を見た。
「期待しているよ、特に君には……」
エアディスプレイを閉じて立ち上がった。手には新しいうまい棒がある。
「じゃあ帰るか」
「シドウ、だから食べ歩きはやめてください」
サクサクサクという軽快な音が響いた。
〇未収録シーン
「う~ん……」
「なに見てんだスバル?」
ウォーロックはエアディスプレイを覗いた。
「スズカのホームページか?」
「うん」
大きく映っているスズカを見て、スバルは首を傾げた。
「いや、スズカちゃんて演技力はあるんだよね。それに……」
「それに?」
「普通に可愛いと思うんだよね。なんで人気でないんだろう?」
「あ……」
これをばっちり聞いていた人が二人。
「……ふ~ん」
「そうなの……」
「え、あ!?」
振り返ると、ミソラとルナが仁王立ちしていた。
「そっか、スバルくんはスズカちゃんが好みなんだ~?」
「どう思うミソラちゃん?」
「いやあ、スズカが可愛いのは認めるけれどさ、あの反応はないよね~」
「ね~」
頷きあう少女二人。
「いや、えっと……ロック?」
「俺知らね」
ウォーロックはふっと消えた。ウェーブロードに逃げたらしい。
「ちょ、どうにかしてよ!?」
その後、ネチネチと聞かされることになるのだが、それはまた別の話。