流星のロックマン Arrange The Original 3   作:悲傷

39 / 39
皆さん、お久しぶりです。
いや、3年ぶりですね。もの凄く長い時間、投稿を止めてしまい、申し訳ございません。
この3年の間に、転職活動したり、資格勉強したり、同人誌に参加したり、流星のロックマン パーフェクトコレクションが発売されたり、色々とありました。
また、今回のオリジナルストーリーがどうやっても面白くならず、書いては時間を置いて、別の形で執筆してはやっぱり面白くならず……と悪戦苦闘しておりました。

この度、ようやく納得のいく出来上がりとなったため、投稿させていただきます。
毎週日曜日の0時更新となります。
どうぞお付き合いください。


断章:くだらない一日
39.BIGWAVE。それは面倒な奴がいるところ


『ジャック、ずらかろうぜ』

 

 ああ、相棒の言う通りだ。

 

『もう嫌なんだろ。俺もこんな面倒な事はごめんだぜ』

 

 そうだ、うんざりだこんな茶番。そして見るがいい。面倒事に巻き込んでくるドリル女の哀れな姿を。

 

『お前は別に、あいつらとお友達でも何でもないってのによ。助ける理由なんざねえしな。さっさと帰っちまおうぜ』

 

 その言葉に笑みが浮かんだ。そうだ、迷う理由など微塵もないのだ。ただ一言口にするだけで、このくだらない時間から解放されるのだ。

 

「そうしようぜ」

 

 意を決すると、ジャックはハンターVGを前方に掲げた。

 

 

 

 ミソラのライブが終わった次の日の朝。ジャックはコダマタウンの道を歩いていた。足を向ける先は公園。日曜日の朝ということもあり、のんびりとした空間になっていることだろう。だがそこに向かうジャックの足取りは重たいものだった。

 

「この町で一番良いバトルカードショップ……。それがあの店かよ……」

 

 エアディスプレイで開いているのは、お店のレビューサイトだ。最も高い評価を得ている店の名前はBIGWAVE。ジャックには少しばかり縁がある。

 この町に来た初日、ロックマンが来るかもとウイルスをけしかけた店であり、先日は屋根の上からスバルを襲撃しようかと考えた場所でもある。そう考えると、少々足を踏み入れづらくなった。

 

「やっぱり行きたくねえ……」

 

 そのつぶやきが聞こえていたらしい。ハンターVGからコーヴァスの声が聞こえてきた。

 

『ジャック、そもそも俺たちにはバトルカードなんて必要ねえんじゃねえのか?』

「俺もそう思ってたんだけれどな……」

 

 スペード・マグネッツ、ダイヤ・アイスバーン。この二体の捨て駒のおかげで、ロックマンの戦闘データはある程度取れた。奴の最大の長所は、戦いの幅広さと、状況対応能力にある。

 敵の特徴を理解し、瞬時に変わっていく戦況を把握し、多種多様なバトルカードの中から的確なものを選び、使い分けてくる。カードの組み合わせまで考えたら、戦い方は何万通りに広がる。奴の頭の中では、どれだけの思考パターンが形成されているのだろうか。それも敵の攻撃に身をさらしながらでだ。

 この離れ業をやってのけるのは、歴戦の強者だからだろう。強敵たちとの戦いの中で磨かれた戦闘スキル。流石はヒーロー様だ。

 だが、それがどうしたというのだ。戦闘経験ならこちらだって負けてはいない。スバルがウォーロックと共に戦いだしたのは、わずか半年前だという。それに比べて、自分は幼少の頃より戦闘訓練を受けてきた。相棒のコーヴァスも一流の戦士だ。

 あんなロックマンとかいう温室育ちの平和ボケには負けない。必ず勝てると言い切れる自信がある。いや、奴のデータが集まった今は確信へと昇華している。ロックマンなど、俺とコーヴァスの敵ではない。

 だがそれに反論してくるのが、あのおっかないお姉さまである。「念には念を入れて準備しなさい」という一言で、バトルカードショップに来ることになってしまった。

 

「戦い方の幅を広げるってなら、やっぱりバトルカードなんだろうな」

『その点はハンターVGに感謝だな。バトルカードが使いやすくなったからよ。ククク、サテラポリスのやつら、敵の戦力まで上げちまってることに、気づいてんのかね?』

「気づいてねえだろうよ、馬鹿だろうからな」

 

 もしくは、そんなことになりふり構っていられないくらい、戦力を求めているのかもしれない。まあ、こちらはありがたく利用させてもらうだけだ。

 

「しょうがねえ、行くか」

 

 コーヴァスと会話している間に、BIGWAVEに到着した。室外機を見ると、新しい物に買い替えたらしい。まあ気にすることではないだろう。店にかけた迷惑程度、自分と姉がやろうとしていることに比べたら些事というものだ。

 

「いらっしゃい的な!」

 

 中に入ると、サングラスをかけた陽気な店長がお出迎えしてくれた。確か、先ほどの情報レビューサイトによると、南国ケンというらしい。

 

「おや、この店は初めてかな?」

 

 この言葉に驚いた。つい聞き返してしまった。

 

「お前、客の顔をいちいち覚えてんのか?」

 

 この質問に、南国はニッコリと笑って答えた。

 

「もちろんさ。この店に来てくれる人は、皆顔を覚えているよ。大切なお客さんだからね」

 

 そう言えばレビューには「客のバトルスタイルに合わせて、有用なバトルカードを進めてくれるなど、相談にも乗ってくれる」と書いてあった。どうやら、店の評判は本物らしい。

 だがこの距離感が近い接客姿勢。親しい人を作りたくないジャックとの相性は、あまりよくなさそうだ。

 そんな彼に追い打ちをかけるように、南国ケンのハンターVGから声がした。

 

『ハ~イ、君もこの店の波に乗っていくか~い?』

 

 言い終わるが早いか、そいつはハンターVGから出てきて姿を現した。太陽に胴体が生えたような見た目だ。

 

「俺の名はサーフ。アイボー、南国ケンのウィザードさ! 今後ともヨロシクね~! チュぱっ!」

 

 っと投げキッスをしてきた。「うわっ……」という声が出そうになった。

 

「さあさ、お客さんは何をお求めかな? 僕らが力になる的な?」

 

 あ、この店は駄目だ。このコダマタウンにとっては凄く良い店なのだろうが、自分には合わない。致命的に合わない。これは退散するのが良さそうだ。

 踵を返そうとしたジャックの足を、別の声が止めた。

 

「あらジャックじゃない」

 

 女の子の声だった。ジャックは飛び上がって振り返った。

 

「ゲッ、ドリル女!」

「誰がドリルよ!」

 

 学級委員長にして、ルナルナ団とかいうお笑い集団のリーダーで、星河スバルの親分で、ジャックにとっては害悪の塊のような存在である、白金ルナがそこにいた。ご自慢のツインドリルは、今日も後頭部で元気に跳ねている。

 

「なんでお前がここにいるんだよ」

「そんなの、バトルカードを買うために決まってるじゃない」

 

 するとルナのハンターVGからモードが出てきた。

 

「私、バトルは苦手なんです。ウイルスと戦うの、凄く怖くて……それで、ウイルスたちの動きを止めるようなバトルカードがあれば、私でも戦えるんじゃないかなって!」

 

 途端に、南国ケンのサングラスが光った。

 

「オッケー、それならこれ……パニッククラウドなんてどう的な?」

「こいつは便利だぜ。複数の敵のプログラムに干渉して、一時的に混乱状態にできるって代物さ」

 

 サーフの補足説明に、ルナとモードはすぐに頷いた。

 

「分かりました。それをください」

「まいどあり!」

 

 瞬く間に取引が成立した。どうやらこの店長、結構なやり手らしい。

 

「ところで、ジャックくんはどんなカードをお求め的な?」

「あ、いや……接近戦用のバトルカードが欲しかったんだけれど……今日は良いや」

 

 さっさと立ち去ろう。ドリル女もこの店長とウィザードも苦手だ。だが逃がしてはくれなかった。

 

「っていうか、ちょうど良かったわ。ジャック、今から付き合いなさい」

「……は?」

 

 なにを、さも当然とばかりに言ってくるのだ、このドリルは。

 

「いや、なんで……」

「ヤエバリゾートにいる友達が困ってるらしくって、今から行くところなの。さ、エスコートしなさい」

「いや、だからなんで俺まで!?」

「まあまあ、良いじゃない的な?」

 

 文句を言ってやりたいのに、南国ケンが横から口を出してきた。

 

「ン~、いいねえ! ヤエバリゾートっていや、有名な観光地さ。海は無いが、別の波に乗れるぜ!」

「そんなところに友達と行くなんて、きっと楽しいよ」

 

 サーフもケンも、完全に他人事だ。一発殴ってやりたいが、後で姉がうるさそうだから、やめておこう。

 

「それに、こうして誘って貰えるって、青春的なものだよ」

「そうそう、大人になるにつれて、かけがえのない思い出になっていくものさ」

 

 いや、ウィザードが言うなよ。ついこの間生まれたばかりだろうが。という文句を言う気力もなかった。

 行きたくないが、行くしかないだろう。姉に報告すれば、100%の確率で「行きなさい」と言われる。断れば「星河スバルたちに近づくチャンスだったじゃない。なぜ断ったの?」とおっかないモードになる姉が待っている。ジャックに選択肢はないのだ。

 結局、バトルカードを買う元気もなく、上機嫌のドリル女に連れられて店を後にした。その足取りは、重いというよりは引きずるようなものになっていた。




〇南国ケン
 バトルカードショップ『BIGWAVE』の店長さん。
 『的な』という語尾を使う、気さくで明るいお兄さんです。
 お酒が好きみたいで、ハードトロピカルという秘蔵のお酒があるのだとか。

〇サーフ
 南国さんのウィザード。
 こっちも負けずと明るいです。口癖は「ハ~イ」です。
 なんでも、ウェーブに隠された暗号を探す航海に憧れているのだとか。
 何のことなんでしょうね。 

〇BIGWAVE
 バトルカード専門ショップ。コダマタウンの公園にあります。子供からご高齢の方まで、多くの人に愛されています。
 
 参照.マロ辞典より抜粋
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

流星のロックマン Arrange The Original 2(作者:悲傷)(原作:流星のロックマン)

 少年にとって父はヒーローだった。憧れに背中を押されて、少年は相棒となった宇宙人と共に戦いに身を投じていく。▼ 未知の敵を相手に、少年はなけなしの勇気を絞り出し、大切な人たちとの絆を支えに立ち向かう。▼ そんな彼の前に立ちふさがる者がいた。彼は少年の全てを否定し、己の力を誇示して見せる。▼ 彼と対峙した少年が選ぶ道とは……?▼○流星のロックマン2の原作ストー…


総合評価:978/評価:8.71/完結:85話/更新日時:2016年10月02日(日) 00:00 小説情報

流星のロックマン Arrange The Original(作者:悲傷)(原作:流星のロックマン)

 他人と関わることを恐れてしまった一人の少年。彼は憎しみにとらわれ全てを捨てた一人の異星人と出会う。▼ その出会いは二人の運命を大きく変えていく。▼ これは、一人の少年が、見えない父の背中を追いかけ、仲間と大切な人との絆に支えられ、対照的な相棒と共に、ヒーローへと成長していく絆の物語。▼ 原作キャラに作者の脚色が加えられております。閲覧される方は、どうかご了…


総合評価:2043/評価:8.6/完結:144話/更新日時:2014年07月06日(日) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>