流星のロックマン Arrange The Original 3   作:悲傷

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皆さん、お久しぶりです。
いや、3年ぶりですね。もの凄く長い時間、投稿を止めてしまい、申し訳ございません。
この3年の間に、転職活動したり、資格勉強したり、同人誌に参加したり、流星のロックマン パーフェクトコレクションが発売されたり、色々とありました。
また、今回のオリジナルストーリーがどうやっても面白くならず、書いては時間を置いて、別の形で執筆してはやっぱり面白くならず……と悪戦苦闘しておりました。

この度、ようやく納得のいく出来上がりとなったため、投稿させていただきます。
毎週日曜日の0時更新となります。
どうぞお付き合いください。


断章:くだらない一日
第39話.BIGWAVE。それは面倒な奴がいるところ


『ジャック、ずらかろうぜ』

 

 ああ、相棒の言う通りだ。

 

『もう嫌なんだろ。俺もこんな面倒な事はごめんだぜ』

 

 そうだ、うんざりだこんな茶番。そして見るがいい。面倒事に巻き込んでくるドリル女の哀れな姿を。

 

『お前は別に、あいつらとお友達でも何でもないってのによ。助ける理由なんざねえしな。さっさと帰っちまおうぜ』

 

 その言葉に笑みが浮かんだ。そうだ、迷う理由など微塵もないのだ。ただ一言口にするだけで、このくだらない時間から解放されるのだ。

 

「そうしようぜ」

 

 意を決すると、ジャックはハンターVGを前方に掲げた。

 

 

 

 ミソラのライブが終わった次の日の朝。ジャックはコダマタウンの道を歩いていた。足を向ける先は公園。日曜日の朝ということもあり、のんびりとした空間になっていることだろう。だがそこに向かうジャックの足取りは重たいものだった。

 

「この町で一番良いバトルカードショップ……。それがあの店かよ……」

 

 エアディスプレイで開いているのは、お店のレビューサイトだ。最も高い評価を得ている店の名前はBIGWAVE。ジャックには少しばかり縁がある。

 この町に来た初日、ロックマンが来るかもとウイルスをけしかけた店であり、先日は屋根の上からスバルを襲撃しようかと考えた場所でもある。そう考えると、少々足を踏み入れづらくなった。

 

「やっぱり行きたくねえ……」

 

 そのつぶやきが聞こえていたらしい。ハンターVGからコーヴァスの声が聞こえてきた。

 

『ジャック、そもそも俺たちにはバトルカードなんて必要ねえんじゃねえのか?』

「俺もそう思ってたんだけれどな……」

 

 スペード・マグネッツ、ダイヤ・アイスバーン。この二体の捨て駒のおかげで、ロックマンの戦闘データはある程度取れた。奴の最大の長所は、戦いの幅広さと、状況対応能力にある。

 敵の特徴を理解し、瞬時に変わっていく戦況を把握し、多種多様なバトルカードの中から的確なものを選び、使い分けてくる。カードの組み合わせまで考えたら、戦い方は何万通りに広がる。奴の頭の中では、どれだけの思考パターンが形成されているのだろうか。それも敵の攻撃に身をさらしながらでだ。

 この離れ業をやってのけるのは、歴戦の強者だからだろう。強敵たちとの戦いの中で磨かれた戦闘スキル。流石はヒーロー様だ。

 だが、それがどうしたというのだ。戦闘経験ならこちらだって負けてはいない。スバルがウォーロックと共に戦いだしたのは、わずか半年前だという。それに比べて、自分は幼少の頃より戦闘訓練を受けてきた。相棒のコーヴァスも一流の戦士だ。

 あんなロックマンとかいう温室育ちの平和ボケには負けない。必ず勝てると言い切れる自信がある。いや、奴のデータが集まった今は確信へと昇華している。ロックマンなど、俺とコーヴァスの敵ではない。

 だがそれに反論してくるのが、あのおっかないお姉さまである。「念には念を入れて準備しなさい」という一言で、バトルカードショップに来ることになってしまった。

 

「戦い方の幅を広げるってなら、やっぱりバトルカードなんだろうな」

『その点はハンターVGに感謝だな。バトルカードが使いやすくなったからよ。ククク、サテラポリスのやつら、敵の戦力まで上げちまってることに、気づいてんのかね?』

「気づいてねえだろうよ、馬鹿だろうからな」

 

 もしくは、そんなことになりふり構っていられないくらい、戦力を求めているのかもしれない。まあ、こちらはありがたく利用させてもらうだけだ。

 

「しょうがねえ、行くか」

 

 コーヴァスと会話している間に、BIGWAVEに到着した。室外機を見ると、新しい物に買い替えたらしい。まあ気にすることではないだろう。店にかけた迷惑程度、自分と姉がやろうとしていることに比べたら些事というものだ。

 

「いらっしゃい的な!」

 

 中に入ると、サングラスをかけた陽気な店長がお出迎えしてくれた。確か、先ほどの情報レビューサイトによると、南国ケンというらしい。

 

「おや、この店は初めてかな?」

 

 この言葉に驚いた。つい聞き返してしまった。

 

「お前、客の顔をいちいち覚えてんのか?」

 

 この質問に、南国はニッコリと笑って答えた。

 

「もちろんさ。この店に来てくれる人は、皆顔を覚えているよ。大切なお客さんだからね」

 

 そう言えばレビューには「客のバトルスタイルに合わせて、有用なバトルカードを進めてくれるなど、相談にも乗ってくれる」と書いてあった。どうやら、店の評判は本物らしい。

 だがこの距離感が近い接客姿勢。親しい人を作りたくないジャックとの相性は、あまりよくなさそうだ。

 そんな彼に追い打ちをかけるように、南国ケンのハンターVGから声がした。

 

『ハ~イ、君もこの店の波に乗っていくか~い?』

 

 言い終わるが早いか、そいつはハンターVGから出てきて姿を現した。太陽に胴体が生えたような見た目だ。

 

「俺の名はサーフ。アイボー、南国ケンのウィザードさ! 今後ともヨロシクね~! チュぱっ!」

 

 っと投げキッスをしてきた。「うわっ……」という声が出そうになった。

 

「さあさ、お客さんは何をお求めかな? 僕らが力になる的な?」

 

 あ、この店は駄目だ。このコダマタウンにとっては凄く良い店なのだろうが、自分には合わない。致命的に合わない。これは退散するのが良さそうだ。

 踵を返そうとしたジャックの足を、別の声が止めた。

 

「あらジャックじゃない」

 

 女の子の声だった。ジャックは飛び上がって振り返った。

 

「ゲッ、ドリル女!」

「誰がドリルよ!」

 

 学級委員長にして、ルナルナ団とかいうお笑い集団のリーダーで、星河スバルの親分で、ジャックにとっては害悪の塊のような存在である、白金ルナがそこにいた。ご自慢のツインドリルは、今日も後頭部で元気に跳ねている。

 

「なんでお前がここにいるんだよ」

「そんなの、バトルカードを買うために決まってるじゃない」

 

 するとルナのハンターVGからモードが出てきた。

 

「私、バトルは苦手なんです。ウイルスと戦うの、凄く怖くて……それで、ウイルスたちの動きを止めるようなバトルカードがあれば、私でも戦えるんじゃないかなって!」

 

 途端に、南国ケンのサングラスが光った。

 

「オッケー、それならこれ……パニッククラウドなんてどう的な?」

「こいつは便利だぜ。複数の敵のプログラムに干渉して、一時的に混乱状態にできるって代物さ」

 

 サーフの補足説明に、ルナとモードはすぐに頷いた。

 

「分かりました。それをください」

「まいどあり!」

 

 瞬く間に取引が成立した。どうやらこの店長、結構なやり手らしい。

 

「ところで、ジャックくんはどんなカードをお求め的な?」

「あ、いや……接近戦用のバトルカードが欲しかったんだけれど……今日は良いや」

 

 さっさと立ち去ろう。ドリル女もこの店長とウィザードも苦手だ。だが逃がしてはくれなかった。

 

「っていうか、ちょうど良かったわ。ジャック、今から付き合いなさい」

「……は?」

 

 なにを、さも当然とばかりに言ってくるのだ、このドリルは。

 

「いや、なんで……」

「ヤエバリゾートにいる友達が困ってるらしくって、今から行くところなの。さ、エスコートしなさい」

「いや、だからなんで俺まで!?」

「まあまあ、良いじゃない的な?」

 

 文句を言ってやりたいのに、南国ケンが横から口を出してきた。

 

「ン~、いいねえ! ヤエバリゾートっていや、有名な観光地さ。海は無いが、別の波に乗れるぜ!」

「そんなところに友達と行くなんて、きっと楽しいよ」

 

 サーフもケンも、完全に他人事だ。一発殴ってやりたいが、後で姉がうるさそうだから、やめておこう。

 

「それに、こうして誘って貰えるって、青春的なものだよ」

「そうそう、大人になるにつれて、かけがえのない思い出になっていくものさ」

 

 いや、ウィザードが言うなよ。ついこの間生まれたばかりだろうが。という文句を言う気力もなかった。

 行きたくないが、行くしかないだろう。姉に報告すれば、100%の確率で「行きなさい」と言われる。断れば「星河スバルたちに近づくチャンスだったじゃない。なぜ断ったの?」とおっかないモードになる姉が待っている。ジャックに選択肢はないのだ。

 結局、バトルカードを買う元気もなく、上機嫌のドリル女に連れられて店を後にした。その足取りは、重いというよりは引きずるようなものになっていた。




〇南国ケン
 バトルカードショップ『BIGWAVE』の店長さん。
 『的な』という語尾を使う、気さくで明るいお兄さんです。
 お酒が好きみたいで、ハードトロピカルという秘蔵のお酒があるのだとか。

〇サーフ
 南国さんのウィザード。
 こっちも負けずと明るいです。口癖は「ハ~イ」です。
 なんでも、ウェーブに隠された暗号を探す航海に憧れているのだとか。
 何のことなんでしょうね。 

〇BIGWAVE
 バトルカード専門ショップ。コダマタウンの公園にあります。子供からご高齢の方まで、多くの人に愛されています。
 
 参照.マロ辞典より抜粋
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