流星のロックマン Arrange The Original 3 作:悲傷
私はドラゴンで、最終章で、ウォーロックがスバルを”見限って”出て行ったところです。
時間無いよ~……
「夏休み中に、ヤエバリゾートに行ったのだけれど、その時はバスだったの。今回はウェーブライナーだから、早いわよ」
「へ~、そうなのか……」
場所はウェーブライナーの中。ドリル女の話を、ジャックは聞き流しながら頷いていた。以前よりも時間がかからなくなったという点には感謝しておこう。まあ、そもそも行ったことがないし、行きたくすらないのだが。
ウェーブライナーはトンネルに入ったらしい。窓の外は街並みから黒へと変わった。
「その時、私はいなかったので、どんなところか楽しみです!」
とはしゃいでいるのは、ドリル女のウィザードのモードだ。
「そうね、私もあなたと行くの、楽しみよ」
よくも観光地に行くというだけで、ここまでテンションを上げられるものだ。……いや、もしかしたらルナルナ団の活動なのかもしれない。コダマ小学校の生徒の誰かから、依頼を受けたのだろう。生徒会長選挙の一票の獲得のために、ここまでするだなんて……物凄い執念だ。
「今日はスバルたちはいないのか?」
「スバルくんは、別の友達から相談を受けてて、欠席よ。キザマロは学校で起きた謎の事件を追ってもらってるの。だから、今日は私たちと、先に行っているゴン太の3人だけよ」
ああ、やっぱり選挙活動らしい。またつまらない物に付き合わされるのだろう。それが顔に出ていたらしい。ドリル女は微妙な表情をした。
「ジャックくん。ヤエバリゾートは良いところだから、きっとあなたも楽しんでくれると思うわ」
「ふん、どうだかな……」
観光地。それは平和ボケした連中が、わざわざ遠くに出向いて、よりボケて呆ける場所だ。そんなところに、なんの魅力があるというのだろう。バカバカしい。
「どうせつまんねんところだろ」
「あら、そんな事言っていいのかしら? あ、ちょうどいいわ。見なさい!」
「あ?」
ドリル女が指さす方を見る。窓の方だ。何が見えるというのだろう。ちょうどトンネルを出たようで、黒い世界は終わった。代わりに広がった光景に、ジャックは思わず声を漏らした。
「うわ……」
銀景色。これは雪だ。一面に雪が降り積もっている。立ち並ぶ細い木々に、透き通る青空。遠くに見える真っ白な山々。太陽の光を反射しているのだろう、目がチカチカする。
「あら~?」
ハッと気づいて振り返ると、勝ち誇った笑みを浮かべるドリル女がいた。
「どうせつまらない、なんて言ってなかったかしら?」
「べ、別に! み、見慣れない景色だったから、見ちまっただけだし!」
「そうね、それも観光の良いところよね」
もっとからかってくるのかと思ったが、案外すんなりと引いてきた。
「さあ、降りるわよ」
そうこうしているうちに、駅に着いた。ドリル女はさっさと降りていく。
「お、おう」
続いて降りようとして、少しだけ足を引いた。怖がるものでもないと考え、すぐに足を下した。シャクッと足の下で音が鳴った。
「……へ~。これが雪ってやつか……」
シャクッ、シャクッとジャックが歩くたびに、音が鳴る。何だろう、この雪を踏み潰す感触は。
「珍しい?」
「え、うわ!」
いつの間にか、ジャックの隣に少女がいた。日焼けした顔に、青い目。髪は茶色で、上の方でひとまとめにしている。服装は黄色いバンダナに、黄色いスキーウェア。
なんかすっごい気さくに話しかけてくるが、どう考えても初対面だ。
「だ、誰だお前!」
ジャックの当然すぎる質問。だが、必要なかったらしい。
「久しぶりね、アイちゃん!」
「ルナちゃん、久しぶり!」
ドリル女が、アイと呼ばれた少女とハイタッチをした。あ~、そういえば「ヤエバリゾートにいる友達が困ってる」と言っていた。この少女の事か。
「ジャック、紹介するわ。この子は滑田アイちゃん。私たちと同い年なんだけど……国際大会にも出場している、スキーのニホン代表選手よ」
「ニホン代表だと?」
「えへへ、まだまだ未熟だけどね」
これには素直に驚いた。とんでもない天才少女だということは、ジャックにも分かる。
「で、こっちがジャック。私たちルナルナ団の新しい一員よ」
「いや、勝手に決めるな!」
「ルナルナ……団?」
滑田アイがものすっごく反応に困った顔をした。まあ、まともな人間はこんな反応になるよな……と少し同情した。
「よろしくね、ジャックくん!」
「あ、ああ……」
握手を求められて、素直に応じておいた。正直仲良くする気はないが、ルナルナ団とかいう珍名からは話題を逸らしたい。
「そういえば、ゴン太が先に来てるって聞いたけれど……」
実はゴン太なんてどうでも良いのだが、ルナルナ団について熱く語ろうとしているドリル女に、話題の権利を渡すわけにはいかなかった。なんとか思いついたのが、あのゴン太しかなかったのである。
「あ、ゴン太くんなら、うちのグルメタウンで牛丼カレー食べてるよ。戦前の腹ごしらえだって……」
「牛丼なのかカレーなのか、はっきりしろよ」
「うん、ゴン太くんに喜んで欲しくて、私が考えたんだけれど……やっぱり変だったかな?」
その時、ジャックは見た。滑田アイの頬が赤いことに。
「え……?」
いや、まさかね。
〇滑田アイ
ニホン代表のスキー選手。僕たちと同じ11歳です。
普段はヤエバリゾートで練習をしています。最近は新技を開発したらしいです。
ゴン太くんには、二回ほど危なかったところを助けてもらったことがあります。それもあってか、ゴン太くんとはとても仲が良いです。怪しいですよね~、応援していますよ。
〇滑田オサム
アイちゃんのお父さん。ヤエバリゾートのオーナー。
ゴン太くんがアイちゃんを助けた時、お礼にとスイートルームを無償で貸してくれた、太っ腹な人です。
〇ヤエバリゾート
観光名所。マテリアルウェーブ……今はリアルウェーブを使った人工雪のおかげで、いつでもスキーが楽しめます。料理も美味しいです。
営業妨害を受けて廃業危機に陥っていましたが、ロックマンの活躍によって無事に解決。今は、元通りの大繁盛らしいです。
参照.マロ辞典より抜粋