流星のロックマン Arrange The Original 3   作:悲傷

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第42話.喧嘩。それは子供の遊び

「この辺りのはずなんだよね~」

 

 リフトの昇降口から少し離れたところで、滑田アイが言った。

 

「よし、俺に任せてくれ!」

 

 彼女の前で良いところを見せたいのだろう、ゴン太は意気揚々と勝手に滑って行ってしまった。

 

「あ、待ってよゴン太くん!」

 

 アイも後を追って行ってしまった。呼び止める暇もなく、アッという間に姿が見えなくなった。

 

「これは別行動ね」

 

 なんて罰ゲームなのだろう。さっきの失言に加えて二人っきりである。

 

「あ~、えっと……」

「じゃあ行きましょ。手掛かりはヨヨヨという声よ。気合を入れなさい!」

「え、あ。ああ……」

 

 あまり気にしていないのだろうか。ドリル女はゴン太達とは逆方向へと滑り出した。

 

「おい、待てよ……」

『いや、待つのはお前だぜ、ジャック』

「な、なんだよ……」

 

 ハンターVGの中にいるコーヴァスに尋ねた。顔は見えないが、少々不満そうな口調だった。

 

『いつまで下らねえ遊びに付き合う気だ。さっさと帰っちまおうぜ』

「いや、まあ……そうなんだけれどよ」

 

 一応調べておこうかと思ったが、さほど重要なことでもない気もしてきた。

 ルナが滑って行った方を見た。雪の上には、二本の奇麗な軌跡。コースから外れた、木々の中へと続いている。見失うことはないだろうが、姿が見えないとなると、どこか気持ちが落ち着かない。

 

『おい、お前もしかして、さっきの発言を気にしてんのか?』

「……そんなわけねえだろ」

 

 そう、自分が正しいのだ。他人のために頑張るだなんて、間違っている。ドリル女たちの頭が緩いだけだ。コーヴァスの言う通り、ここで帰ってしまうのが一番楽だろう。ここで何が起ころうが、自分には関係なんて……。

 

「キャア!」

 

 悲鳴が聞こえた。ドリル女のだ。気づくと足を動かしていた。滑った後を追って、木々の合間を抜けていく。緑と白という自然の世界だからだろう、青いスキーウェアと金髪という目立つ色合いもあって、すぐに見つけられた。

 

「ドリル女!」

「変な呼び方しないでちょうだい! っていうか、ちゃんと私の側に居なさいよ!」

「いや、元気じゃねえか! お前らしくない声を上げたから、焦ったじゃねえか!」

「らしくないって何よ!」

 

 そこまで言うと、ドリル女は頭を左右へと振った。二振りのドリルが奇麗に跳ねる。

 

「って、喧嘩してる場合じゃなかったわ。見つけたわよ」

「え?」

 

 見つけた? どういうことだ。もしかして、アイの言っていた問題が見つかったというのだろうか。そんな疑問はすぐに解消された。

 

「YOYOYO! ま~た俺のファンが増えたのかYO!」

 

 不覚だった。ドリル女の後ろに、でっかくて怪しさの塊みたいなやつがいた。

 こいつを一言で言い表すとしたら、どんな言葉が似あうだろうか。おそらく、三日月人間という言葉が適切だろう。姿は人型……電波人間だろうか。普通の人と異なるところは、頭に三日月がついていることだ。加えて、胸から両肩にかけて大きな三日月がくっついていた。三日月の両先端が、肩パッドのように飛び出ており、胸辺りに三日月の広い部分がくっついている。両腕にも小さな三日月が二つずつくっついており、両足にも三日月が三つずつ。全身は金色に近い黄色。頭部は緑色で、お腹から足にかけては紫色だ。

 とりあえず三日月。全身に所狭しと三日月。己の存在を三日月で染め上げていた。

 

「おい、誰なんだよこいつ……」

「知らないわよ。突然、私の目の前に飛び降りてきたんですから!」

「YOYOYO! お前ら、俺様を知らねえのかYO! だったら教えてやるYO!」

 

 別に知らなくていいし、とりあえずめんどくさそうなやつだということだけは、会って数秒で理解した。多分、南国よりもうっとうしい。

 

「俺様の名はムーン・ディザスター! 月最強の男だYO!」

 

 とりあえず、どこから突っ込むべきだろうか。月最強というところから尋ねるべきだろうか。

 

「聞いたことがあるぜ」

「ちょ、ロック!」

 

 ジャックは振り返った。そして心の底から驚いた。近くの木陰からひょっこり出てきた人影。なんとそれは、ロックマンとウォーロックだったのだから。

 

「キャア、ロックマン様!」

「あ、うん……」

 

 ロックマン……いや、星河スバルはめんどくさそうな顔をしていた。理由はドリル女の反応を見たら分かる。

 

「なんでも、月に住む電波体で、最強の存在だとか……」

「YOYOYO! よく知ってるじゃないかYO!」

「ロック、そんな凄い人なの、この人!?」

 

 いや、月の電波体ってなんだよ。月には電波体が住み着いているのか。というか、電波人間っぽく見えるが、あくまで電波体であって、電波人間ではないのか。

 

「YOYOYO! お前がチャレンジャーかYO!」

 

 また何か変な単語が出てきた。ムーン・ディザスターとかいう月男と、ロックマンがここに居るというだけで情報量が飽和状態になっているというのにだ。願わくば、この状況はさっさと終わってほしい。ジャックの些細な願いは簡単に打ち砕かれた。

 

「その通ーり! ワシらの助っ人じゃ!」

「今日こそ俺っちたちが、この場所をいただくチョキ!」

 

 そこに現れたのは、王冠を被った骸骨と、蟹の電波人間だった。さらに情報量が二倍に増えた。そいつらが電波変換を解くと、蟹の方は少年と蟹のウィザードに。骸骨の方は王冠を被った雲のようなウィザードに……そして幽霊が出てきた。「ファ!?」と変な声を出してしまった。

 

「この土地は、オイラたちミソラちゃんファンクラブDの集会場にするプク!」

「YOYOYO! それは叶わないぜ、俺様のライブステージにするって決めてるんだからYO!」

「今までの戦績は21戦10勝10敗1引き分け! そこでロックマンという助っ人を呼ばしてもらった」

「このワシ、ハープ・ノートちゃんファンクラブ……改め、合流したミソラちゃんファンクラブDの会長、ジャン・クローヌ・ヴェルモンド・ジョルジョワーヌ14世からの正式な決定である! 頼むぞ、ロックマン!」

 

「あ……はい……」と、ロックマンが力尽きた顔で答えた。

 どうでも良いことが起きていた。ジャックの目の前では、とんでもなくどうでも良いことが、瞬く間に綴られていった。そしてとても残念なことに、ジャックの良質な脳みそは、このくだらない情報群を整理してしまった。

 

①ムーン・ディザスターは月の電波体

②ヤエバリゾートをライブステージにしようとしている

③骸骨たちはミソラ何とかクラブの集会場にするらしい

④両陣営は争っている

⑤骸骨たちはックマンの味方であり、助っ人に呼んだ

 

「しょうもねえ……」

 

 きっとこの状況を見た大多数の人が、自分と同じ感想を言うだろう。賭けてもいい。いや、何も賭ける気もないのだが……。

 とりあえず、自分の心配事は杞憂だったらしい。さっさと立ち去りたい。その気持ちでいっぱいになった。




〇ジャン・クローヌ・ヴェルモンド・ジョルジョワーヌ14世
 幽霊。過去に生きた人物らしい。詳細は不明。というか、調べるのが困難なのでやめていいかしら?

〇クラウン
 かんむり座のFM星人。クローヌ14世のウィザード。
 老練の戦士らしい。電気を操る力を持つ。
 人間側がイレギュラーすぎる存在のため、サテラポリス遊撃隊への勧誘対象外とする。

 参照.ヨイリーレポートより抜粋
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