流星のロックマン Arrange The Original 3 作:悲傷
彼のキャラクター性は、私の解釈100%の描写となりますので、ご了承ください。
ちなみに、YOを打ちすぎて、途中で面倒になりました。
本当に、これはどういう状況なのだろう。ジャックの周辺の人口密度が一気に上昇した。ただでさえ、ドリル女のドリルが無駄に幅を取るくせに、幽霊と少年に、FM星人が二人だ。
ドリル女は、クローヌと名乗る幽霊と挨拶を交わした後、挟見千代吉という少年に、ルナルナ団のアピールをしている。FM星人の方はクラウンとキャンサーというらしい。ハンターVG内のコーヴァス曰く、クラウンはそこそこ強いが、キャンサーの方はただの雑魚らしい。ロックマンの仲間のようだが、特に警戒する必要はなさそうだ。
そいつらの会話なんざどうでも良いので。せめて、今目の前で起きている戦いを眺めることにした。
「ムーンスピン!」
ムーン・ディザスターがロックマンに向けて攻撃を仕掛けているところだった。彼が足を軸にして回転すると、体から三日月型の刃が繰り出された。速度はかなりは早い。躱すには相当の反射神経と身体能力が必要だろう。だがそれをやってのけるのがロックマンだった。それも、右に体を逸らすという、最小限の動きでだ。
「YOYOYO! お前やるじゃないかYO! 俺様の攻撃が、さっきから一発も当たらねえとはYO!」
「へっ、さっきからその攻撃ばっかりじゃねえか。刃飛ばすしか能がねえのか!」
これはウォーロックの声だ。煽っているらしい。
「ならこいつでどうだYO!」
ムーン・ディザスターの体がふわりと宙に浮いた。まるで重力を操作しているかのようだ。だが最も見るべきは、その手に岩石が召喚されている点だ。
「ムーンバズーカー!」
岩石を投げつけてきた。空気との摩擦だろうか、表面には僅かだが火を纏っているようにも見える。だが真っすぐ飛んでくる攻撃だ。先ほどの刃と軌道は変わらない。ロックマンが避けるのは容易なことだった。一つ違う点があるとすれば、着弾点となった場所に穴が開いたことだろうか。雪は一瞬で溶けて蒸発し、下の茶色い土が焼け焦げている。
「凄い威力だね」
「YOYOYO! お前にこんな攻撃、できるかYO!」
確かに攻撃力はある。と言っても、当たらなければ意味がないが。
「てめえ、さっきから離れたところで、ちまちま攻撃してるだけじゃねえか。もっと踏み込んで来いよ!」
「言ってくれるじゃねえかYO! なら、お望み通りやってやるYO!」
ムーン・ディザスターが大きく踏み込んできた。どうやら接近戦をお望みらしい。ロックマンも迎え撃つ気なのだろう、腰を落として防御の姿勢だ。
「ムーンサルトキック!」
ムーン・ディザスターの体が少しだけ浮いた。片足を真横に広げ、もう片方の足を軸に高速で回転し、ロックマンに突っ込んできた。コマのような回転というには激しい、蹴りのサイクロンというところだろうか。何発もの蹴りがロックマンに襲い掛かった。
ロックマンはというと、シールドを展開して蹴りを防いでいる。ガンガンという音が鳴るたび、ロックマンが歯を食いしばっているのが伺えた。ダメージこそないが、腕への衝撃は相当なものだと窺える。
その顔が驚きに染まった。回転していたムーン・ディザスターが、何の前触れもなく跳躍したのだ。そして空中で横回転を縦回転に……片足を天へと振り上げている。かかと落としだ。
「とどめだYO!」
ムーン・ディザスターの渾身の一撃が振り下ろされた。ロックマンが初めて、大きく飛びのいた。雪の大しぶきが巻き上がる。
このムーン・ディザスターという電波体、細めの体躯に似合わず、なかなかのパワーの持ち主らしい。そんな彼は、悲鳴を上げたドリル女たちには目もくれず、正面にいるロックマンに声をかけた。
「YOYOYO! 今のを避けるとは、やるじゃないかYO! 今の動き、そうそう見切れるものじゃないと思っていたんだYO!」
「うん、そうだね。奇麗な蹴り技だったよ」
ムーン・ディザスター。月最強とかいう意味不明な称号には頭を悩ませたが、ジャックの想像以上に戦闘能力が高いらしい。スペード・マグネッツや、ダイヤ・アイスバーンだと負けていたかもしれない。
そんな彼に、スバルの隣に出てきたウォーロックは、少々酷なことを告げた。
「確かに強いが、あいつほどじゃねえな」
「……あいつってのが誰かは分からないが、俺様はそいつよりも弱いって言いたいのかYO?」
「ああ、そういうこった」
「そうかYO! なら、お前を倒して、そいつにも挑むとするYO!」
ウォーロックの挑発を受けて、特に不快になったわけではないようだ。強者と出会えて歓喜する戦士の顔つきだった。対してロックマンに興奮は見られなかった。
「悪いけれど、負ける気はしないし、時間をかける気もないんだ。そろそろ終わらせてもらうよ。エドギリブレード」
「エドギリブレードだと?」
ジャックは首を傾げた。
基本、ジャックはバトルカードを使わない。コーヴァスの戦闘能力ならば、大抵のウイルスは駆逐できるからだ。だがロックマン対策にとバトルカードについて知識は詰め込んできた。中でも、このカードについてはよく覚えている。
「確か、使い続けると強くなっていくカード……」
ロックマンがエドギリブレードを振った。最初は刀身も短く、攻撃範囲が狭い。ムーン・ディザスターに軽く躱された。だが二振り目で刀身が伸びた。飛びのくムーン・ディザスターの口は一の字になってた。そして三振り目。刀身が更に伸びた。切っ先が、後退していたムーン・ディザスターの腹をかすめた。
「くっ! YOYOYO! 凄いカード使ってくるじゃないかYO!」
ただ、このカードには制限がある。同じバトルカードを使い続けなくてはならないという点だ。ロックマン最大の強みである「状況に合わせて様々なバトルカードを使う」という臨機応変さが無くなってしまうのだ。
ここまでの戦いを見て、ジャックはようやく理解した。
「なるほど、接近戦はそれほどでもないって気づいたからか」
ムーン・ディザスターの蹴りは確かに強い。だが足を止めて戦う接近戦ではない。勢いをつけて押し切る感じだ。彼の得意分野は、三日月と隕石を使った中距離戦なのだろう。ロックマンは、接近戦に持ち込んでしまえば押し切れると考えたのだ。
「YOYOYO! ロックマンって言ったか? お前みたいな強いやつは初めてだYO! こうなったら、俺様の最強技を見せてやるYO!」
大きく距離を取ったムーン・ディザスターが両手を前に掲げた。すると体がふわりと浮いた。ロックマンも動きを止めた。
「追い詰めなくていいのかスバル」
「せっかくだから見せてもらおうよ。最強技っていうのを」
「YOYOYO! 随分な余裕だYO!」
「……何をするつもりだ?」
ジャックが見ている中で、ムーン・ディザスターの周囲に変化が起き始めた。彼を囲むように、8つの黄色い三日月が生成されたのだ。それはクルクルと高速に回転し始める。
「ムーンカッター!」
一つの三日月がロックマンめがけて飛んでいく。続いてももう一つ。後に続くように、合計8つの刃が襲い掛かってくる。なるほど、確かに弾速は早いし、全て当たれば大きなダメージが期待できるだろう。
「甘いな、それじゃロックマンには届かねえ」
そう、それは命中すればの話だ。8つの刃が飛んでくる様は、確かに圧力がある。だがそれらはお行儀よく、一つづつ襲い掛かってくるのだ。これではただの連続射撃でしかない。加えて弾道が真っすぐなのだ。
ロックマンは最初の二つを避けると、エドギリブレードを大きく振るった。数個の三日月が打ち払われた。ようやくロックマンの元に届いた刃も、ウィザード・オンしたウォーロックの爪で撃ち落された。
「YO!? YOYOYO!? ……まじかYO!」
「ムーン・ディザスター。もしかしてこれ、まだ開発途中の技だったりする?」
「YO……YO……そこまで分かるのかYO……」
どうやら、8つの刃が一斉に襲い掛かるようにしたかったらしい。そこまでいかなくとも、矢継ぎ早に撃ち込めば、かなり強力な技になっただろう。
「さあどうする、月最強さんよ」
ウォーロックが自慢の爪を見せつけた。ロックマンの手には、さらに切れ味を増したエドギリブレードがある。ムーン・ディザスターは肩をすくめた。
「参ったYO……ロックマン、お前の勝ちだ。おめでとうだYO!」
「うん、ありがとう」
戦いはあっさりと終った。ムーン・ディザスターは歩み寄ると、ロックマンに手を差し出した。二人の固い握手が交わされた。
これで事態は解決だろう。実に成果のない時間だった。いや、一つだけある。
ムーン・ディザスターは負けこそしたが、良いデータをジャックにもたらしてくれた。彼の戦い方は、ジャックたちと似ている部分があった。基本は中距離からの攻撃。空中である程度動けるという点。いざとなれば接近戦もできるという部分も……いや、接近戦ではムーン・ディザスターの方が強いかもしれない。あれだけ華麗な蹴り技は、ジャックたちにはできない。やはり、接近戦用のバトルカードは必要になりそうだ。
そんな思考を巡らせているジャックの隣で、ドリル女と幽霊たちが拍手をしていた。
「よくやってくれたのう、スバル」
「このクローヌ14世が勲章を授与してやろう」
「ありがとうチョキ!」
「これでこの場所は、ミソラちゃんファンクラブDの集会場プク!」
「駄目よ」
ドリル女が制止した。一斉に拍手が止む。
「そもそも、余所様の土地を勝手に使うなんて……」
お説教が始まった。ヤエバリゾートに迷惑が掛かっていることを説明すると、二人とFM星人……計4人は素直に反省したようだ。
だがムーン・ディザスターはと言うと。
「YOYOYO! 勝者が勝ち取った物を好きにして、何が悪いんだYO! けれど、負けたから素直に引くんだYO!」
聞き分けが良いのか悪いのか、よく分からない態度だった。とりあえず、これで事態は解決しただろう。
「もう終わりってことで良いんだよな?」
「ええ、そうね。アイちゃんに報告しましょう。というかジャック、電波人間を見たり、スバルくんの正体を知ったりしても、驚かないのね?」
「え、あ……いや、ほら、ゴン太!」
「ああ、見てたんだね。ジャックも」
ロックマンが納得と頷いた。そう、なんら不思議なことではない。オクダマスタジオで、ゴン太がオックス・ファイアになり、星河スバルがロックマンになって止めたあの事件。その場にいたのだから。というか、あれを引き起こした犯人なのだが……。
「そんな事より、そろそろ帰ろうぜ。滑田アイってやつからの依頼は終わったんだろ?」
「そうね。アイちゃんの近くにはゴン太がいるでしょうから、連絡しましょうか」
ドリル女は嬉しそうにハンターVGを手に取った。これで生徒会長選挙の票が一票増えるのだ。こいつにとっては嬉しいことこの上ないだろう。
ドリル女がハンターVGを操作しようとした時だった。彼女が指で触れる前に、エアディスプレイが開いた。
「ルナちゃん、大変!」
「モード。どうしたの?」
モードがウィザード・オンしてきた。エアディスプレイには周辺の地図と赤い点滅マーク。
「アイちゃんから連絡。助けてって!」
「え、どういうこと!?」
YOYOYO事件は解決したはずだ。なのに、一体何が起きているというのだろう。
「先に行くね!」
ロックマンの姿が消えた。ウェーブロードを通じて向かうのだろう。
「私たちも行くわよ、ジャック!」
「え、あ、ああ!」
ドリル女に促されるまま、ジャックは後に続いた。
「ったく、ゴン太のやつ。何やってんだよ」
と、そこで気づいた。なんで自分はこんなことをしているのだろう。なぜ必死にドリル女の後を追っているのだろう。別に、ゴン太とアイがどうなろうが、知ったことではないはずなのに。
〇挟見千代吉
コダマ小学校3年生。喧嘩っ早いの原因で、なかなか友達ができないのが悩み。けれど、最近はウィザードバトルが強いのを通じて、友達ができるようになったみたい。良かったわね。
〇キャンサー
かに座のFM星人。千代吉のウィザード。
一応はFM星の戦士なのか、量産型ウィザードと比べると、かなり強いみたいね。
人間側がまだ10歳にも満たないため、サテラポリス遊撃隊への勧誘対象外とする。
参照.ヨイリーレポートより抜粋