流星のロックマン Arrange The Original 3   作:悲傷

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 マナブのキャラがなかなか掴めず、めちゃくちゃ書きづらいです…。


第5話.オタクは惹かれ合う

「おうらあ!」

 

 ウォーロックのビーストスイングが、刀を持ったウイルスを切り裂いた。

 

「これで全部だね」

 

 今のが最後の一体だ。スバルは残りがいないことを確認し、この電脳世界で最も大きな物体……ハンドルに近付いた。全長はロックマンの2倍はありそうだ。中枢プログラムとみて間違いないだろう。

 異常が無いことを確認してからそれを回す。閉まっていく音が鳴り、やがて力を加えても動かなくなった。これでスプリンクラーの散水は止まったはずだ。

 

「これでよしっと」

「あ~、大したことねえウイルスたちだったな。暴れ足りねえぜ」

「そう? 良い練習になったと思うけど」

「練習にもならねえよ」

 

 喧嘩好きとしては歯ごたえが無さ過ぎたらしい。その不完全燃焼はスバルへの意地悪として形を変えた。

 

「そうだスバル。あの科学部とかいう連中に正体を明かしたらどうだ? 僕がスプリンクラーを止めたロックマンです! ってよ」

 

 スバルの顔が一瞬で真っ赤に染まった。

 

「や、止めてよ恥ずかしい!」

 

 スバルは世界の危機を3度救ったヒーローだ。だがそんな彼にも弱点はある。その一つが人前に出ることが苦手という性分だ。

 

「今まで何度も世界中に姿を見せてきただろうが。今さら恥ずかしがるなって」

「無理!」

「ったく、しゃいなヒーローもいたもんだぜ」

 

 首を全力で横に振るスバルをからかうように笑うと、ウォーロックは天井を指さした。

 

「ほら、ウェーブアウトするぞ」

「あ、そうだね。じゃあ……ウェーブアウト!」

 

 スバルは意識を電脳世界の外へと向ける。するとロックマンの体が青い電波となって、外へと飛び立っていった。

 

 

 電脳の外に出て、ウェーブロードに足をつける。屋上を見ると、スプリンクラーは無事に止まっていた。近くにはびしょ濡れになった科学部たちがいる。屋上の昇降口の影に隠れて電波変換を解くと、彼らに駆け寄った。

 

「あの、大丈夫でしたか?」

 

 と声をかけたが、改めて彼らの悲惨さが目に入った。髪と服はもちろんのこと、ズボンからも水が滴っている。靴の中には水が溜まっているようだ。

 

「やあ、さっきの」

 

 ぶちょーと呼ばれていた眼鏡の少年は穏やかな笑みを浮かべ、水浸しの眼鏡をクイッと上げた。

 

「一時はどうなるかと思ったけれど、スプリンクラーは無事に止まったよ」

「凄い水浸しですね……」

「うん。でもいいんだ。小型ロケットが無事だったから」

 

 ぶちょーは自慢げにロケットを見せた。科学部3人と異なり水の一滴すらついていない。

 

『いや、良いのかよそれで……』

 

 ウォーロックの突込みは的を得ていた。ロケットよりも自分の体の方が大事だろう。だが彼の相棒は違った。

 

「身を挺してロケットを守るだなんて……科学者の鏡ですね!」

 

 こっちも超ハイレベルの変人オタクであると言うことを忘れていた。キラキラと目を輝かせている彼に、ぶちょーは満面の笑みになった。

 

「分かるかい、僕たちの気持ち?」

「もちろんですよ」

 

 部長は嬉しそうに右手を差し出してきたが、びしょ濡れであることに気づいて引っ込めようとした。スバルは顔色一つ変えずに、水だらけの手を掴んだ。

 

「僕は星河スバル。5年生です」

「星河……? あ、僕は木野マナブ。6年生だよ」

 

 会って数秒で固い握手。オタクとオタクが惹かれ合うのに時間はいらないらしい。

 だが体は別だった。マナブがクシュンとくしゃみをした。

 

「部長さん、このままだと風邪をひきますよ?」

「そうだね。これじゃあレゾンどころじゃない。2人とも、今日の実験は中止。部室に戻るよ」

「「了解です、ぶちょー!」」

「それでは失礼」

 

 彼らは慣れた手つきで、かつ慎重に小型ロケットを回収して去っていった。

 エレベーターが静かに降りていくのをスバルとウォーロックは見送った。

 

「科学部か……あんな凄い人たちがいただなんて……」

『お前、顔は狭いからな……』

 

 大人しくて目立つのが苦手なことに加えて、3年間も登校拒否をしていたのがスバルだ。残念ながら校内での交友関係はさほど広くはない。

 

『……ところで、スバル。お前何か大事な用事を忘れてねえか?』

「え、なにかあったっけ?」

『……はぁ……ちょうど来たぜ、メール』

 

 ハンターVGを開くと、ウォーロックがメールの中身を広げた。読むというよりかは見た瞬間、スバルの全身から血の気が退いた。

 

「委員長に呼び出されていたの、忘れてたあああああ!!」

 

 

 コダマタウン。緑豊かな住宅街で、川にはメダカが住んでいる。町の特徴らしいものと言えば、コダマ小学校とその裏山にある展望台。そして公園くらいなものだろう。

 その公園を歩いている少年がいた。黒い逆立った髪と、鋭く吊り上がった目。木の側にある機械にハンターVGを翳した。エアディスプレイが開き「樹木健康管理装置」と表示された。それの下に表示されたボタンをタップしていく。

 数分後にエアディスプレイを閉じて、近くにいる女性に声をかけた。長い髪を、横へ広げるように結っている。

 

「姉ちゃん、この機械にもウイルスは居なかった。そっちはどうだ?」

「ようやく見つけたわ。けれど予想通り、とても弱いわ。この町のウイルス脅威度は最低ランク……というところかしら」

 

 紫色の服を来た女性は表情一つ変えることなく答えた。呆れているのか冷たいのか、我が姉ながら時々読めないと少年は思う。

 

「つくづく平和な町だな……ちっ、ムカつくぜ」

 

 公園の外を見れば、下校中の子供たち……少年と同じくらいの年頃だろう。呑気で馬鹿な顔がずらりと並んでいる。

 

「あいつらは知らねえんだろうな……」

「これがこの国なのよ……」

 

 女性は懐から一枚のカードを取り出した。いやトランプだ。裏面にスペードのマークが描かれている。だが表は毒々しい色をしており、どこか不気味さを感じさせる。

 

「実験も兼ねて、強い力を持ったウィザードにこれを使ってみろと言われているけれど、相応しいウィザードが見つからないわね。強いウイルスが湧くポイントがあれば、そこで見つけられるかと思ったのだけれど……」

 

 姉の呟きに、少年は不機嫌さに任せて石ころを蹴飛ばした。

 

「なあ姉ちゃん。やっぱりさっさとやっちまおうぜ。戦闘データをとるとか、まどろっこしいんだよ!」

「計画に逆らうことはしない。任務を……いえ、私たちの目的を忘れたの?」

 

 姉の言葉に少年は黙った。

 女性は先ほどのトランプをしまうと、別のトランプを取り出した。

 

「こっちの弱いノイズドカードを使って、小さい実験から開始するわよ。と言ってもこの町はそこまで人が多くないから、ウィザードの数もたかが知れているわ」

「じゃあ人が多い場所を選べばいいんだな?」

「ええ、ホテルに戻って休んだら、場所の選定をしましょう。実験は明日にするわよ」

 

 女性が歩き出すと、少年もついていく。ふと立ち止まって、ここからでも見えるコダマ小学校を睨みつけた。あそこに自分と同じ歳ぐらいの子供たちが集まって、毎日を楽しく暮らしているらしい。

 

「気に食わねえ……」

 

 そしてこれを守っているのがロックマンだというのなら。

 

「俺たちがぶっ倒してやる……邪魔なんだよ、お前は……」

 

 悪態をつくと、姉を追いかけて走り出した。




○コダマタウン
 TKシティにある住宅街。自然豊かで川が綺麗。コダマ小学校と公園と展望台以外には特に何もないけれど、平和な町。
 町の外れには天地研究所などもある。最近はスピカモールというショッピングモールができた。
 主な公共交通手段はバス。最近はウェーブライナーが主流。

○TKシティ
 ニホン国の都市の名前。ヤシブタウン、ロッポンドーヒルズ、ドリームアイランドなどの町が含まれている。
 主な観光名所はTKタワー。

○ブラザー
 今の世界で最も大切なもの。心から信頼できる親友のことをブラザーと呼ぶ。ブラザーと認め合った二人は、互いのハンターVGにブラザーとして登録しあう。これを「ブラザーバンドを結ぶ」と言う。
 開発者はスバルくんのお父さん、星河大吾博士。
 20XX年に光熱斗博士が提唱した「ココロネットワーク」を元に開発されたらしい。


 参照.マロ辞典より抜粋
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