流星のロックマン Arrange The Original 3   作:悲傷

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第7話.ウィザード

 ハンターVGの液晶画面には、ルナルナ団と書かれたオレンジ色の枠が表示された。

 

「これでレゾンを共有したことになるのか……初めてだから、なんだかドキドキするな……」

 

 パネルをタップすると、チーム名とレゾンの内容、そして参加者の顔と名前が表示された。リーダーにはルナが、その後ろにスバルたちが並んでいる。

 

「じゃあ皆、早速活動を開始するわよ」

 

 とルナは宣言したが、ここで呑気なゴン太が手を上げた。

 

「でもよ、委員長で決まりじゃね? 委員長に勝てる他の候補なんていねえだろ?」

 

 これにはスバルも同意したい。このコダマ小学校において、ルナほどリーダーが似合う人をスバルは知らない。だが選挙とはそんな生温いものではない。

 

「そうやって胡坐をかいていると負けるわよ。他の立候補者たちが一生懸命に活動をしているのに、自分は怠けてなんにもしない。そんな人を皆が選ぶと思う?」

「それもそう……か?」

 

 ゴン太はあまり分かっていないらしい。とりあえず活動をしなくてはならないということは理解してくれただろう。

 

「で、実際のところ支持率はどうなっているの?」

 

 尋ねながらスバルはキザマロを見た。眼鏡がキュピーンと光った気がした。

 

「フフフ、僕のウィザードの出番ですね」

 

 ハンターVGを取り出して、自分の隣に先端を向けた。

 

「ペディア、ウィザード・オン!」

 

 緑色の電波粒子と共に、一体の電波体が召喚された。角ばった体に、緑と黄の塗装。頭は開いた辞書のように横に広がっている。

 

「キザマロくんに呼ばれて飛び出た! 僕ペディア! 計算ならお任せあれ!」

 

 ペディアは両手を頭に当てて見せた。この頭脳に任せろと言いたいらしい。彼を隣に、キザマロは小さい体で胸を張って見せた。

 

「ペディアがいれば、あらゆるデータから統計を取り、数値化できます。これで委員長の支持率も大よそですが把握できますよ」

「なんかよく分からねえけれど、すげえな……」

 

 ゴン太は羨ましそうに言うと、口を尖らせた。

 

「良いよな、キザマロとスバルは。ウィザードを持っててよ……」

 

 ゴン太に釣られて廊下を見ると、何人かの生徒たちがそのウィザードを連れている様子がうかがえた。

 ウィザード。最近、急速に普及している電波体だ。

 電波技術の目覚ましい発展と共にその用途は複雑化し、管理が難しくなっていた。

 そんな折に開発されたのがウィザードだ。常に人の傍らにあり、ハンターVGの機能と連動し、機械の管理や操作を代行する。一人につき一体持つのが当たり前になるだろうと言われている、人類の新しいパートナー。それがウィザードだ。

 スバルには、ウィザードが開発される前からいた相棒のウォーロックがいる。キザマロにはペディアがいる。

 だがルナとゴン太にはまだいないというのが現状だ。

 

「そのうち私達にもピッタリのウィザードが手に入るわよ」

「そうだと良いけれど……」

 

 話もそこそこに、ルナはキザマロとペディアを見た。

 

「さてと、キザマロのペディアは情報処理が専門だったかしら?」

「そうだよ。大量のデータベースに一度にアクセスして、地球上のあらゆるランキングやパーセンテージを算出することができるんだ。僕に弾きだせない数値はない!」

「頼もしいわね。じゃあ早速、私の支持率を出してちょうだい」

「了解!」

 

 ペディアがそう答えた直後のことだった。

 

「算出完了!」

「はええ!?」

 

 ゴン太に同感だった。時間にして1秒もかかってない。

 

「コダマ小学校の生徒たちの会話記録などから算出。現状の支持率は5%」

「……ごっ!?」

 

 今度はスバルが驚きの声を上げた。

 

「え、低すぎない?」

「おかしいだろ、委員長がこんなに低いだなんて……」

 

 オロオロとしだすスバルとゴン太。そこに落ち着いた声が入った。

 

「いいえ、こんな物だと思うわ」

 

 ルナだった。当事者だというのに、2人と異なって落ち着いていた。

 

「キザマロ」

「はい。ペディア、支持者無しの割合はどれくらいです?」

「もう出してるよ。実に92%だね」

「あ~、そういうことか……」

 

 そもそもの話、生徒会選挙に興味を持っている生徒がもの凄く少ないのだ。今の彼等の興味と言えば、明日からの授業と、久々に会えた友人との会話や、来月の修学旅行と言ったところだろう。

 

「じゃあ、5%ってむしろ多い方じゃ……」

 

 残る3%は他の立候補者達の合計支持率となる。ルナが頭一つリードしているというところだろう。

 

「これで分かったと思うけれど……」

 

 3人を見渡すように、ゆっくりと首を動かした。

 

「この92%を少しでも取り込んだ人がこの選挙に勝てるわ。じっとなんてしていられない。すぐに行動を開始するわよ!」

「おう!」

 

 ゴン太が力強く答えた。そしてまたすぐに首を傾げた。

 

「って言っても、何をするんだ?」

 

 予想していたのだろう。ルナは動じることなく答えた。

 

「困っている生徒や、悩んでいる生徒を見つけて、助けるのよ。生徒の問題を解決するのも生徒会長の仕事ですもの」

 

 ご機嫌取りと言えば聞こえは悪いだろうが、それをしないような人はまず生徒会長には選ばれない。やらない善よりやる偽善だ。もっとも、ルナの場合は完全なる善意からだろうが。

 

「ペディア、すぐに困っている人の数を統計できます?」

「そうだね。困っているの定義にもよるけれど……バイタルが不調の人の統計を算出。うん、一定数いるね。もしかしたら困っているのかも。もちろん内容までは分からないけれど」

 

 ペディアはキザマロのハンターVGからエアディスプレイを展開すると、学校の地図を映し出した。

 

「バイタル不調の人の、現在地の割り出し完了。尋ねてみたらどうかな?」

『す、すげえな……』

 

 スバルのハンターVGからウォーロックが呟いた。ちょっとした捜査官である。

 

「じゃあ皆、手分けしてあたるわよ」

 

 そしてルナの号令がかかる。

 

「ルナルナ団、活動開始よ!」

 

 やっぱりこの名前だけはどうにかならないものだろうか。

 

 

 コダマ小学校の屋上にスバルはいた。ハンターVGにカードを読み込ませ、エアディスプレイのパネルをタップしていく。

 彼らの側には3人の生徒がいた。ペディアが見つけた、困っている生徒たちだ。

 

「準備完了。じゃあ行くよ!」

 

 スバルがハンターVGをタップして最後の操作を終える。するとどうだろ。屋上に植えられている一本の樹木が、一瞬で桜へと変わったのだから。

 

「うわあ、綺麗~!」

 

 3人のうち、真ん中に立っていた少女が、桜を見上げて手を叩いた。そんな彼女に、残る2人の少年が声をかける。

 

「マドカちゃん、今日誕生日でしょ?」

「だからさ、ハッピー・バースデー!」

「こいじくん、カタルくん……ありがとう! 最高の誕生日だよ!」

 

 そんな3人のやり取りを、スバルは少し離れたところで見守っていた。

 スバルが解決したのは誕生日プレゼントについての問題だった。先ほどの少年2人……こいじくんとカタルくんが、友人のマドカちゃんに誕生日プレゼントを用意したいと思っていた……という内容だった。

 

「このリアルウェーブの木を使って、季節外れの桜をか……素敵なプレゼントだな……」

 

 先ほどまで緑色だった木は、今は見事な桜に変わり、花びらを舞い散らしている。

 

『スバル、そのリアルウェーブってのは何だ?』

「文字通り、リアルな電波だよ」

 

 スバルが鼻息を荒くした。「あ、しまった」というウォーロックの声が聞こえた気がした。

 

「ウォーロックも知ってると思うけれど、AM星人と違って、地球人には電波が見えない。けれど技術の進歩によって、見えて、触れる電波が開発された。それがマテリアルウェーブ。そしてそれを更に改良して、細かい部分までリアルに再現できるようになったのが、このリアルウェーブさ!」

「……へ~」

 

 オタク特有の一人語りが始まってしまった。スバルはこうなると長いのだ。「ウォーロックたちウィザードもリアルウェーブだよね。他にもウェーブライナーって電車ができて……」と語っている時だった。

 

「おめでとう」

 

 後ろから声が聞こえてきた。振り返ると、ルナが優雅な足取りで近づいてくるところだった。

 

「素敵なお誕生日ね。私からもおめでとうと言わせてもらうわ」

「は、はい……」

 

 マドカちゃんたち3人は不思議そうな顔をしていた。

 

「あ、あの……」

「どちら様で……?」

 

 こいじくんとカタルくんが尋ねると、ルナは自慢の縦ロールをかきあげた。

 

「白金ルナ……そこにいるスバルくんと共に、ルナルナ団と言うレゾンを立ち上げている者よ」

「ルナルナ団?」

 

 3人の目が一斉にスバルを見た。痛い。凄く痛い。

 

「私、今度の生徒会選挙に立候補する気でいるの」

「あ……はい」

 

 それだけで3人は理解したらしく、顔を見合わせた。

 

「僕たちにこんなに協力してくれたんです」

「そんな人が生徒会長になったら、きっと素敵な学校になると思う」

「私達3人、ぜひとも白金さんに投票させていただきます」

「本当!? 嬉しいわ、ありがとう」

 

 一瞬だけ本音が出ると、また優雅な態度に戻った。

 

「それでは長居するのもあれなので。ごきげんよう……」

 

 そうしてルナは去っていった。

 

「なあ、スバル……」

 

 ウォーロックが顔だけをハンターVGから出した。

 

「なに?」

「良いとこ取りされたが、良いのか?」

「……まあ、良いんじゃない?」

 

 とりあえず3票手に入ったのだ。おそらくこれで良いのだろう。

 後は同じように人助けをして、票を一つでも多く獲得するだけだ。

 

「おっと、メールだぜ」

 

 ウォーロックがハンターVGに戻り、メールを開いた。キザマロからのメールで、困っている人がいるから来てほしいという内容だった。行き先にスバルの目が留まった。

 

「科学部?」

 

 屋上で会ったばかりのマナブ部長の顔が目に浮かんだ。




○星河大吾
 WAXAの前身、NAXAの宇宙飛行士にして科学者。
 20XX年に光熱斗博士が提唱した「ココロネットワーク」を元に、ブラザー理論を構築。その研究の正しさは現在のブラザーシステムの普及率が証明している。
 宇宙飛行士としてFM星人とのコンタクトをとる任務に就く。その後交信が途絶。現在は殉職として登録されている。
 妻に星河あかね。子息には星河スバルがいる。

○キズナプロジェクト
 FM星人とのコンタクトを取ることを目的としたプロジェクト。
 地球人類が初めて観測した宇宙人と、友好的な関係を築くことを目的とした。
 宇宙ステーション「キズナ」をFM星に向かわせ、通信を試みるという方法をとった。
 プロジェクトの総責任者は、うつかりしげぞうチーフ。
 船長は星河大吾。
 クルーはスティーブを初めとする数名によって構成された。
 地球近辺で建造された「キズナ」は、無事にFM星へ向けて旅立った。
 その後交信が途絶された。
 最後に得た情報はFM星人の危険性を示唆するものであった。これにより、うつかりチーフはプロジェクトの凍結を宣言。まだ生き残っていた可能性はあったが、星河大吾以下クルー全員の殉職を発表した。
 3年後にキズナの破片が地球の海に落下。クルーの生存を期待したが、無人であった。
 キズナクルーは現在も全員殉職扱いである。

○ココロネットワーク
 20XX年に提唱されたネットワーク理論。
 光正博士と、アルバート・W・ワイリー博士が原型を構築。
 アルバート・W・リーガル博士が犯罪に利用。
 光祐一朗博士がその危険性を解いた。
 その後、光熱斗博士が有用性を発表した。
 星河大吾はこれを元にブラザーバンドを構築したらしい。


 参照.ヨイリーレポートより抜粋
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