調整平均評価が一定以上上に行かないように、定期的に低評価が入ってきて笑いました。そういう調整する人達が居るんですかね?つまりこの作品は、お前にそんな評価なんざ要らねーんだよ!ってことですかそうですか……。
まあ、これは息抜きなので別に構いませんが(ニチャァ)
仮に、作品を評価するのではなく、気に入らないからという私情で評価するのはやめて下さい。私はともかく、面白いと言って楽しんで下さっている方々に迷惑ですので。
「本当にすまなかった。呪具等に関しては、話が終わったら返す。もう少し待ってくれ」
「…………………。」
龍已は腕と脚に巻き付いていた縄を解かれ、呪符が貼られていた部屋から出された。筋肉断裂を起こしていた体は後ろの少女に治して貰った。話をしたいとだけ言われ、『縛り』を結んでも良いという夜蛾に着いていく。しかしその間は全く喋っていない。視線も冷たい。
談話室へ向かっているのだが、先導しているので必然的に龍已が後ろに居るのだが、あそこまではっきりと誓いを口にした龍已が背後に居るとなると、少し冷たいものが背筋を通る。だが激情に従ってすぐに行動するのでは無く、冷静に物事を受け止め、話も通じるようで大人しい。まあ、言葉1つ間違えれば殺しに掛かるが。
目的の部屋のドアを開けて中に入る。本当は飲み物でも出したい所なのだが、今の龍已を待たせても逆効果と思われるので話を進める事にした。内容は当然、呪術師にならないかというもの。ここまでのことをしてやらせたいものなのかと思うが、夜蛾は龍已に2つの顔を使い分けることを進めた。
中学校は一般のものだったが、龍已は高校を呪術高専にして呪術を学んでいく歴とした正規の呪術師の傍ら、これまで通り呪詛師殺しをしていくというものだ。仮にも教師という立場なので人を殺す道を歩ませるのはどうかと思うが、何年もやってきて、その道では知らぬ者は居ない程名前が大きくなった存在に言っても今更だろうと判断した。
使い分けるということは、一人二役するということで、若しかしたら疲れが溜まってしまう可能性もあるが、正規の呪術師にも呪詛師捕縛等の依頼が来ることは教えているし、そもそも邂逅したら捕まえても良いという。それに仕事の斡旋もする事が出来るし、何かとフォローはすると言った。
「つまり、呪術師になるならば黒い死神の顔は黙認するということか」
「黙認というよりも、別々のものとして考えるということだ。あくまでお前の話だが、お前の友人であり非術師の人間を巻き込む訳にはいかない。それに大きな声では言えないが、上層部は確かに腐っているところがある。それならば、見つからないようにやれという話だ。呪詛師が消えて困ることは無いからな」
「……お前達のメリットは何だ。俺には確固たる呪術師としての身分が約束され、それなりのパイプが繋がる。しかしお前達は何を得る。何を得ようとしている」
「単純なことだ。人手不足に新たな呪術師の誕生。呪術界の人手不足によって、救えない非術師の命もある。正直、強い呪術師はいくら居ても足りない。お前のポテンシャルは十分だ。必ず学生の内に俺と同じ一級術師になるだろう。そして、将来的には他の呪術師達を牽引して欲しい。それだけだ。それだけで、小さかろうが未来は変わる」
「……………………。」
何度も聞かされている人手不足問題。見える人すらも稀少となるこの界隈は、こと戦える人間に関して、とてもではないが人員が足りているとは言えない。なのに上層部が邪魔な奴等を消していくのだから話にすらならない。
しかし疑問が残る。確かに人手不足かも知れないが、一級術師ともあろう者が、未だ中学生のガキに頭を下げてまで謝罪し、こうして拘束を取って別室で話をするまでのことだろうか。確かにそこらの呪詛師なんかには死んでも負けるつもりは無いが、それでも全体で見れば自身の力なんて、行っても中の上だろう。必死に説得するほどの人材とは思えない。
しかしふと気が付く。自身を黒圓の生き残りと言っていた。呪術界を代表する御三家や、その分家が手を出してくる程の家だ。ならばその生き残りである黒圓無躰流を継承した自身ならば、説得してまで欲しがるのではないか。あくまで表向きは人員確保。裏は黒圓無躰流の技術確保。そうなれば考えられなくも無い。
暫し考えて、何故そこまでするのかという結論に自身なりの答えを出した龍已は、取り敢えずこの件には頷く事にした。正規の呪術師の名前は欲しい。それに仕事の斡旋をするのもいい。まあ、どちらにせよ、ここで厄介になる……それ以外の道なんて残されていないのだが。
「……そっか。東京の学校か」
「しかも呪術に関する学校」
「なんか、任務?とかやらされたり、黒い死神ってバレたらヤバいんだろ?なのに、クソ野郎の近くに居て大丈夫なのか?」
「呪術界の腐った連中が居るのは、本場の京都だから大丈夫……とは言い切れないけど、高専の教師も何かフォローしてくれるんでしょ?しかも、何か有った時の為にフォローする縛りと、黒い死神の情報を外部に漏らさない縛りも結んだ」
「……黒い死神の情報がこれから先、絶対に漏れないとは言えない。そして万が一情報が漏れた場合、狙われるのはお前達だ。だから何か可笑しいと感じたり、嫌な予感があった時は必ず虎徹の家に行ってくれ。そして虎徹は……」
「僕が造った、転移が出来る呪具を使って龍已を呼ぶ。大丈夫、把握しているよ」
呪術高専から戻ってきた龍已は、事の経緯をケン達に話していた。連絡が取れなくなった事を心底心配しており、帰ると涙を浮かべながら抱き締めて帰ってきて良かったと喜んでくれた。
そして、龍已は虎徹にまた新たな呪具の作製を依頼した。それは万が一情報が漏れてケン達が狙われた場合、その対処が出来るように、龍已を呼ぶためのものだ。少し離れるのですぐに駆け付けるのは難しい。そこで龍已を跳ばす事にした。
呪詛師絶対殺すマンの龍已を呼べば、大体解決するという寸法だ。実に脳筋戦法である。但し、龍已は本気であるとする。高専からも呪詛師殺しをするつもりだが、勿論正体は隠す。必要に迫られれば明かすかも知れないが、基本絶対隠蔽である。
「あーあ……一緒の高校行きたかったなぁ……」
「仕方ねーよ。これは別に龍已悪くねーもん」
「女の子狙う呪詛師ぶっ殺したら飛び付かれて絞められるとか、普通に容赦なさ過ぎて草も生えねーわ」
「しかも結局めちゃくちゃ呪術師?を薦めてくるって……どんだけ人手不足なん?必死すぎ」
「まあ、正直黒い死神に怯えて呪詛師の活動も抑えられているし、抑止力になる位の龍已を放って置くわけ無いもん」
「俺も同じ高校に行きたかった。……本当にすまない」
「まあま!絶対に会えないって訳じゃないんだから、それに気にするなよ!メールだって電話だってあるんだから!」
「……あぁ」
元気付けるように肩を叩くケン達に励まされながら、龍已は高専でやっていく自分を想像した。小学校から今まで、学校には必ず親友達が居た。これからはそんな親友達は居ない。励まされたり、元気づけられたり、勇気づけられたり、バカをやったりする事が出来ないのだ。
あと数ヶ月。それでもう気軽には会えなくなる。これからもずっと、今までのような日常を謳歌出来ると思っていただけ、肩が何だか重く感じてしまう。人はそれを不安というのだ。
「……はぁ」
数ヶ月後。2004年。龍已は無表情で溜め息を吐きながら、広い敷地を持つ東京都立呪術高等専門学校の前にやって来た。普通の学校とは違う、広大な敷地に、所狭しと並ぶ木造の建築物。緑も多く、ぱっと見では何をやる学校なのかは解らない。
あの日から少しずつ荷物の整理をし、虎徹の家から出て行く準備を進めていた。結局、龍已の荷物は一つの大きめなキャリーバッグに全て入ってしまう程度しか無かったのだが。それでも、少しずつ準備をした。まるで心から行きたくないと駄々を捏ねているようだった。
無自覚に子供のような心境になっていた龍已だったが、いざ出て行くとなると、親友達が全員総出で見送りに来てくれた。最寄り駅から特急電車に乗って行く事になった龍已に、乗り込んで窓を隔てて手を振る親友達。視界が歪もうとしたが、気合いで納めて、手を振った。大丈夫。一生会えなくなる訳じゃ無い。必ずすぐ会えるし、会いに行けば良い。そう強く念じて、東京を目指して、こうして此処へ来た。
初めての東京駅で、あるあるの乗り換え迷子を経験しながら、どうにかここまでやって来た。左手でキャリーバッグを引きながら、学校のパンフレットにあった地図を見て学長室を目指す。地図を見ながらなので普通に迷子にならずに着き、学長と少し話して寮の部屋を案内して貰った。
寮の部屋は一人暮らしするにはとても十分な広さを持っていて、中にはエアコン、机、ベッド、流し台や冷蔵庫、風呂場やトイレまで完備されている。至れり尽くせりというもので、食堂もあるらしい。任務があって使えるかは解らないので飯を作ってくれる人はおらず、食べたい物があったら自分で作るのが暗黙の了解だという。まあ、料理は人並みには出来るので気にはしない。
部屋に入って軽く荷下ろしをし、届けられた制服に着替える。あまり見ないタイプのものだな……と思っていれば、何故かパーカーのようにフードがあったのには疑問符を浮かべた。普通制服にフードついているか?と思ったが、改造がOKな学校なので、勝手に弄られたのかと思うことにした。
さっさと着替えて、トレードマークのレッグホルスターと『黒龍』を身に付け、高専に張られている結界に敵と認識されないように登録されているクロを首に巻き付かせる。クロの頭を軽く撫でながら部屋を出た。12時にガイダンスをするのだ。今は11時半。少し早いが行ってしまおうと、部屋を出て鍵を閉め、一年間お世話になる教室へ向かった。
「……同級生は俺を含め3人か。人手不足になる訳だ」
一年の教室に着くと、目に入ったのは机と椅子がセットになった席3つだった。人手不足というのは本当のようで、一学年が合計で3人しか居ない。先輩はどうか知らないが、どうせ同じような人数なのだろう。まあ、先輩の内、冥冥という女生徒が居ることは知っているのだが。説明が面倒だなと思いながら、特に座る場所は決まっていないようなので一番窓際に座った。
何もせずに足を組み、腕を組んでボーッとしていると、クロが頬に頭を擦り付けてきた。どうやら構って欲しいらしい。人差し指で鼻先をくすぐり、組んでいる腕を解いて掌を肩に近付けると、首から離れて掌の上に乗った。
机の上に置いて指で突いたり、頭を撫でたり、尻尾を掴んで机の上を引き摺り回したりして遊んであげていると、教室に向かってくる気配が一つ。移動速度からして歩幅が大きい。足音が聞こえてくるが体重はそこまででも無い。
教室のドアの前で一端止まり、ドアを勢い良く開いて中へと入ってきた。現れたのは男子で、染めたとはっきり解る茶髪に、耳に何個も付けられたピアス。首元にはヘッドホンを付けている、如何にもチャラそうな奴が入ってきた。
「暇だから来てみたらもう居んじゃん!何々?もしかして楽しみで来ちゃった感じ!?」
「……………………。」
「えー無反応は無くない?ま!これから数少ない同級生としてヨロシク!
「……黒圓龍已だ」
「簡潔!!」
何ともまあ騒がしい奴が来たものだ。いきなり下の名前を呼んでも良いという割には、席はしっかり一つ空けて座った。初めて会う同級生に慣れないのか、そういうものなのかと思って視線を外に向けた。二人居る空間なのに静寂が続く。そもそも龍已はお喋りでは無いので自分からは話し掛けず、慧汰もどうやら喋るのが苦手なような龍已に、無理矢理話かけるのもなーと思いながら黙った。
壁に取り付けられた時計の針がカチカチと音を立て、それがこの空間の唯一の音だった。龍已はジッとして動かなく、慧汰は何処か落ち着きが無く耳のピアスを弄ったり髪先を弄ったりしていた。そのまま5分、10分と経ち、11時55分に最後の一人がやって来た。
入ってきたのは肩まである金髪の髪を揺らす、背が高くプロポーションが抜群の女子だった。肌は少し焼けて褐色で、釣り目が似合う番長気質な女子だった。この一学年で紅一点である彼女は、空いている席が真ん中だと解ると顔を顰めつつ、めんどくさそうに席に座った。そして見た目通り女の子に目が無さそうな慧汰が早速声を掛けた。
「最後の一人は女の子だったか!いやー、しかもとびきり美人さんじゃん!俺ってついてるぅ!俺、音無慧汰!慧汰って呼んで!君の名前は?」
「……
「じゃあ妃ちゃんって呼んでいい!?いやー、男だけでむさ苦しい空間になると思ってたけど、そうならなくて感激!ねね、今度一緒にご飯食べに行かない?俺が作ってもいいよ!マジ感動させてあげっから!」
「……おい」
「んー?何々?妃ちゃん!」
「呼び方は好きにしろよ。興味ねぇ。だけどお前、さっきから私の胸見過ぎなんだよ。キメーな」
「えっ!?」
「バレバレなんだよ。ナンパなら余所でやってろ」
「い、いやいや別にそんなつもりじゃ……!!」
「──────全員揃っているか」
見抜かれて焦り、必死に違うと言おうとしている慧汰に対して、妃伽の視線は冷たく、慧汰より身長がある妃伽に見下ろされて腰が引けている。入って早々始まった二人のやり取りに対して、龍已は見てすらいない。心底興味が無かった。妃伽が入ってきて姿を確認したら、また外に視線を送った。
慧汰が言い訳を並べようとすると、ドアが開いてあの時以来となる夜蛾が入ってきた。どうやら担任をするようだ。今の2年と3年、4年と5年は違う人がそれぞれを担当をしているらしく、夜蛾は今年の一年と来年の一年を担任に持つという。
一週間分の時間割を配られるが、普通の学校じゃ無いので午前中が近接戦の授業だったり、一般教養の時間だったりとバラバラだった。まあそんなことはどうでもいい。普通に受けていれば良いのだから。問題は、今日はガイダンスだけだと言われていたのに、行くぞと言われた事だ。一体何処へ?と同じく思ったらしい慧汰が質問をすると、実地訓練だと返された。
「えっ……今日はガイダンスだけで解散じゃあ……」
「呪術師に規則正しい生活と日常サイクルは無い。いつ任務が入るか分からないからだ。これはその第一歩。これから3級程度の呪霊が出ている廃ビルへ向かう。そこでお前達の実力を示せ」
「お、俺……女の子と遊びに行く約束してたのに……」
「ハッ。くっだらね。だったら遊びに行って来いよ。やる気がねー奴が居ても私の邪魔だし。……お前はどうすんだよ」
「……今日は特に用事は無い。それに体を動かしたい気分だったから丁度良い」
「んじゃ、行くのは2人っつーことで」
「えっ!?ま、待って待って!俺も行く!!」
危なく置いて行かれそうになった慧汰を連れて、夜蛾は高専の前に車を止め、3人に乗るよう促した。龍已は真っ先に助手席に乗り込み、妃伽と慧汰が後部座席に乗り込んだ。そして妃伽は後悔した。そして何故龍已が真っ先に助手席に乗ったのかを。その理由は、隣に座る慧汰からのお喋りがうるさいからだ。
適当な返事しかしていないというのに、一方的に話し掛けてくるのだ。しかも時々慧汰から胸に視線を送られている。それが益々妃伽の苛々を加速させているとは知らず、つい見てしまう慧汰。そろそろ拳が飛んで行きそうだなと、バックミラーを見ている夜蛾は溜め息を吐き、一方で龍已は何もせずに外の景色を見ていた。
表は普通の呪術師を目指す学生。裏は呪詛師殺しを専門とする黒い死神。一人だけ異例の経歴を持っている龍已がどうなるか少し不安だったが、問題行動も無いし大人しい。同級生との交流に難はあるが、それだけだ。これから改善されていくのだろう。そう思いながら運転し、目的の場所に辿り着いた。
「この廃ビルは6階建てだ。それぞれが2階分対処をすれば直ぐに終わる。『窓』の報告では、主に4級から3級程度の呪霊しか出て来ない。それでも何かあったり、不測の事態が起きたら俺を呼べ」
「ハッ、ンなもん必要ねぇ。私は呪霊なんぞに負けやしねーんだよ。さっさと呪霊祓って終いだ」
「けど、やっぱり女の子を一人には出来ないしさ!危ないときは俺が守るから、妃ちゃん一緒に行かない?俺ってちょー頼りになるよ!」
「あ?舐めてんのかテメェ。雑魚に守られる程私は弱かねーんだよ!」
「……俺は一番上から下に降りてくる。お前達はその他の階をやれ」
「私に命令すんじゃ……は!?」
二人で勝手に盛り上がっているのをどうでも良さそうに無視した龍已は、二人を置いて先にビルへ向かって行った。一番上に行って適当に下へ降りてこようと思っていた龍已は、その事を妃伽達に言えば、命令されるのが嫌いなのか、妃伽が早速反論した。しかし、その頃にはもう龍已は2階の部分に居た。
階段を使わず、窓に掴まって外壁をロッククライミングのように登っていく龍已に、妃伽は唖然とした。妃伽も同じ事は出来る。しかし龍已のそれはあまりに早すぎた。10秒も掛からず6階部分の窓に手を掛けた龍已は、罅割れた窓ガラスをかち割って中へ易々と侵入した。
その姿を見ていた妃伽は対抗意識を燃やしたのか、一緒に行こうと行っていた慧汰を置き去りにして中へと入っていった。取り残された慧汰は足の速い妃伽に追い付けず、出遅れて中に入っていった。バラバラな3人に、夜蛾は溜め息を吐き出しながら帳を降ろした。
「……この階に居るのは3体か」
夜蛾が降ろした帳の効果で、隠れていた呪霊が姿を現して襲い掛からんとしている。呪力からして全て4級。行っても3級だろう。先ほど夜蛾が言っていた通りの呪霊だった。今やっている実地訓練は前から決めていたのだろう。態々3人で祓わせるくらい低級とはいえ呪霊が居るのだ。
某ゾンビ映画に出て来る犬のような呪霊に、蝶と芋虫と螳螂を混ぜたような呪霊、巨大な目玉に手脚が生えただけの呪霊がやって来て、同時に襲い掛かって来たが、焦りもせず、然りとて『黒龍』も抜かず、右足を持ち上げて右から左へ薙ぎ払うように蹴りを入れた。長い脚が呪霊右端の呪霊に当たり、抵抗無く引き千切れて3体共上下に分断した。
まさしく一蹴。『黒龍』を抜く価値すらも無かった。最上階の呪霊を祓い終えた龍已は階段を使って降り、5階に到着……すると同時に襲い掛かる熊のような呪霊の頭を掴んで柘榴のように破裂させながら握り潰し、人の頭程の大きさの虫のような呪霊が、口から伸ばした針を使って突進してくるが、敢えてその針に向けて殴打した。
針の先端部分と同じだけの範囲の呪力を厚くし、呪力を纏った拳が衝突した。すると呪霊の針は拉げて砕け散り、そのまま龍已の拳を受けて粉々に消し飛んだ。無傷の手を下ろして呪いの気配を探り、全て祓ったのを確信して4階へ。しかし呪いの気配が無かったので続いて3階へ。するとそこでは、丁度妃伽が戦闘をしていた。
「ハハッ!雑魚が調子こいてンじゃねーよッ!!」
「……身体能力を上昇させる類の術式か」
黒い辛うじて人の形をしている大きな呪霊と殴り合っている妃伽。最初は呪力で全身を覆っていただけだったようだが、呪力が漲り、勢いを付けて腰を入れた殴打を呪霊に撃ち込むと、先までの拳の威力とは桁外れのパワーを見せ、呪霊の体に円形の大穴を開けた。握り込んだ手を反対の掌で覆ってばきりと関節を鳴らしながら、消えながら倒れる呪霊をつまらなそうに見ていた。
完全に近接タイプで好戦的に思える妃伽は、最後だったのだろう呪霊を祓い終えると踵を返してこちらへ向き直る。そこで初めて龍已の存在に気が付いたようで、少し驚いた表情をしていた。まあ気配を消していたので分からなくても仕方ないのだが。
「ンだよ、見てたのかよ」
「上から降りて来て丁度だったから、少し観戦させてもらった。気に障ったならば謝罪をするが」
「……別にそのくらいで目くじら立てねーよ。お前はもう終わったんだな、何体居た?」
「5体だ。1体だけ3級が居たが、それ以外は全て4級程度だった」
「私の所は3体だった。さっきのが多分3級。……お前、強いんだな。立ってるだけでも解る。教室に入って座ってるお前を見た瞬間私の背筋が凍った。……お前何級だ?」
「階級が強さの指針となるとは思えないが、2級だ」
「……ケッ。入学して早々2級か──────よッ!!」
普通に話していたというのに、腰を落として呪力を漲らせ、更には術式を使って猛スピードで突っ込んで来る妃伽。拳を固く握り込み、手加減していたのか、先の呪霊に対して以上の一撃を龍已の顔面に向けて放ってきた。
接近中、しっかりと琥珀の瞳が自身の動きを追い掛けていたのを見て舌舐めずりをし、威力は6割、速度は8割の殴打を顔面目掛けてくれてやった。しかしやはりというべきか、妃伽の拳は龍已の右手によって受け止められ、バシッと音が出たと同時に衝撃が二人の周囲に捲き起こる。
埃が巻き上がって威力を物語るが、龍已は相変わらずの無表情。それに対して妃伽は、赤く艶やかな舌でもう一度舌舐めずりをした。拳を受け止められて感じたのは山。見上げるほどの……黄金でできた巨大な山だ。それだけ大きく、固く、険しい、見上げるほどの
「お前、面白ェな。今度近接格闘の時間、ツラ貸せ」
「……満足したならば行くぞ。もう一人の様子を見る。明らかに戦闘向きの体付きじゃ無かったからな」
「あー、あの雑魚臭するやつね。てか、お前の名前私聞いてねーぞ。早く教えろ」
「黒圓。黒圓龍已だ」
「ふーん。じゃあ龍已。一緒に行こうぜ!」
「……構わんが」
鼻歌を歌いながらご機嫌で龍已の隣を歩く妃伽に、内心で首を傾げている龍已。何かしたのだろうかと思う一方で、特に興味は無いので放置した。二人で階段を降りていくと、2階には何も居なかった。どうやら祓い終えているようだ。そうなると1階に居るという事になる。
階段を降りて行けば、やはり聞こえてくる戦闘音。教室で初めて慧汰を見た時、龍已は慧汰が弱い事を看破した。ブレている重心に見た限り余り付いていない筋肉。薄い体にそこまで多くは無い呪力。注意力も散漫で女を優先しがち。守ると発言していたことが大いにそれを煽る。結果、一人にすれば2級程度に殺されるだろう同級生というのが、龍已が慧汰に抱いた印象だった。
「あーもう!!階級は3級程度なのに硬すぎ!!」
「……アイツ、あんなのにも勝てねーのかよ」
「だがよく見てみろ。攻撃は全て躱している。来ると解っているような身の熟しだ。術式は『聴く』に特化したものなのだろう。首に掛けたヘッドホンは人混みの中で物音が聴こえすぎるのを抑えるもの……と推測するが」
「ンじゃあ、戦闘力皆無じゃねーか。それで私を守るとかほざいてたのかよ」
「お前が心配だっただけだろうがな」
「それを要らぬ心配っつーんだろ」
「お前の場合は……違いない」
毛むくじゃらで人型の呪霊と戦闘している慧汰だったが、決定打に欠けているようで四苦八苦していた。見た目に寄らず硬いようで、呪力を纏わせた殴打や蹴りを繰り出しても呪霊は何ともないようにしている。しかし呪霊の攻撃は全て躱している。来ると解っているように。
慧汰の術式は龍已の推測通り、聴くことに特化した術式だ。それを使って呪霊の動きを先読みしているのだ。しかし術式はそれだけで、先も言ったように決定打に欠ける。これ以上は今の慧汰がやっていても勝てないだろう。
龍已はしゃがみ、砕けた壁の破片を手にした。妃伽はそれを傍で見ていて疑問符を抱いていたが、龍已が壁の欠片を持って振りかぶったのを見てそういうことかと察した。野球の投球フォームで投擲された欠片は、寸分の狂いも無く慧汰が相手をしていた呪霊の眉間に当たり、頭が弾け飛んだ。
バッと振り返った慧汰が目にしたのは、腕を組んでこちらを見ている妃伽……だけだった。戦闘に集中していて居ることに気が付かなかったが、妃伽は自身のことを心配そうに見守り、助けてくれたのだ!……と思い込んだ。
「ひ、妃ちゃんっ!!俺のために助けてくれたんだね!?ありがとう!ありがとうっ!今度お礼にご飯を奢るよ!だからメアド交換しよ!?」
「あ゙?……あ、龍已のヤロウ私に押し付けやがった!」
「ねぇ妃ちゃん妃ちゃん!!行くなら何処がイイ!?俺何処へでも連れて行ってあげるし、何でも奢ってあげるよ!」
「鬱陶しいんだよ雑魚!私は何もしてねーよ!龍已が……」
「え!?なんで黒圓の事を名前で呼んでるの!?じゃあ俺のことも慧汰って呼んで妃ちゃん!慧汰だよ!け・い・た!ほら、呼んでみて!?」
「ぶん殴ってやろうかコイツ??」
尻尾があればブンブン振り回しているであろう慧汰に苛ついて、そろそろぶん殴ってやろうかと考え始めている妃伽と、助けてくれた……ように見えた妃伽に必死にアピールしている慧汰を置いて廃ビルからさっさと出て来た龍已。確信犯である。
一方的に話し掛けている慧汰は確実にお喋りなので、関わっていると面倒だと思って、妃伽に行くよう仕組んだ。結果は大成功で、廃ビルから出て来るときもべったりだった。
呪術高専での生活はどうなるかと思っていたが、あの二人が相手ならば扱いやすいと密かに思った龍已だった。
東京駅
えっ……〇番線……どこぉ………。
作者も普通に迷子になって半べそかきながら駅員さんに聞きました。
あれは駅じゃ無くて迷路って言うんですよ。えぇ。
髪を茶髪に染めたチャラい系男子。
教室に入った時に、龍已の組んでいた脚にドキリとした人。そうだよね、そうなるよね。長い脚が組まれてレッグホルスターが付いてるんだもんね。色気的にさ?ね?
周囲の音を広範囲で聴く事ができる術式。索敵役かな。
タッパもケツもデカくて胸もダイナマイトな女番長系女子。
名前がゴツいことと、胸や尻に他人の視線が集まるのが嫌い。
龍已の脚にドキリとした人。その2。
強い気配がビンビンで、しかも胸も尻も見ないで目を見て会話するから気に入った。今度やる近接格闘の授業は絶対楽しいと確信してる好戦的ゴリラ。
呪力量で身体能力を爆発的に上げる術式。シンプルな強さ。