呪術廻戦───黒い死神───   作:キャラメル太郎

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さんの皆さん、ありがとうございます!




第十六話  開示

 

 

 

 

 

「クソッ!クソクソクソッ!!やっぱり来やがった黒い死神がッ!!だから嫌だって言っ──────」

 

「──────死ね」

 

 

 

 人が眠る暗闇の夜。仕事を請け負った黒い死神は、3人一組の呪詛師の内、仲間を置いて逃げ出した最後の一人を始末した。首元からしゅるりと出て来たクロに死体を呑み込ませ、残る二つの死体の所まで戻る。ビジネスライクの相棒へ電話を掛けて報告をし、回収場所を伝えると電話を切って歩き出す。

 

 マンションの上やビルの上、電柱の上を利用して夜の闇の中を黒い装いで包まれた黒い死神……龍已が走り抜ける。呪術高専からそう離れた場所でも無かったので、車は使わずに走ってやって来た。いつも通り誰の目にも止まる事は無く、呪詛師殺しを終えた。だが、龍已は最近の呪詛師について思うことがあった。

 

 一般人を狙って呪う呪詛師が、年々その動きを見せなくなってきているのだ。確かに黒い死神が現れてから呪詛師の活発だった動きはいくらか抑制されたが、それよりも格段に動きを抑制されている。いや、理由は知っているのだ。

 

 呪術界の御三家が一つ……五条家。その相伝である呪力を視認し、視界内の相手の術式を問答無用で解き明かす事が出来る六眼。ありとあらゆる無限を現実に持ってくる無下限術式。幾百年生まれなかったその抱き合わせが生まれ、来年になったら東京の呪術高専へ入学してくる。それも、尋常じゃない程の才能をも持った、最強たり得る程の。

 

 要は怖いのだ、無下限術式と六眼の抱き合わせである五条家の天才が。下手に動いて目をつけられれば殺されると思っている。それに、まことしやかに呟かれているが、五条家の天才……五条悟が生まれた事によって呪術界の均衡が容易く崩れたとされている。活発になる呪霊。動きの止まった呪詛師。だから龍已の黒い死神としての仕事が少しずつ減っている。

 

 今では一週間に一件有るかどうかという頻度。唯でさえ黒い死神の名前があって呪詛師が夜に姿を現す事が無かったのに、五条悟の名前が出てからめっきり減っている。それは良いことなのだが、存在している以上この世から消したいと思うのが龍已なので、隠れられては困るのだ。

 

 

 

「──────もう少し呪詛師を殺したかったが……無いもの強請りか」

 

 

 

 中学一年生の頃からやっている呪詛師殺しだが。まだ足りないようだ。そもそもこの世から呪詛師を残らず殲滅するという夢があるので、生きている呪詛師は全て例外なく抹殺対象なのだが、何時になったら達成できるのやらという話だ。極論を言えば、この世から呪術師全てを殺し、呪術を無くせば居なくなるのだが。

 

 呪術師がこの世には邪魔だと思いながら走り続けて数十分。龍已は灯りの点いていない真っ暗な呪術高専へと戻ってきた。開けておいた窓から部屋に入り、ローブのレッグホルスターを脱いでクロに呑み込ませる。服を脱いで風呂に入って汗を流し、着替えてベッドに倒れ込む。時刻は1時26分。夜更かしのレベル。

 

 明日……というよりも最早今日なのだが、普通に学校があるので朝は起きなくてはならない。慧汰と妃伽は任務があるが自身には無いので普通の学校だが、眠気で授業中居眠りするのは避けたい。一人しか居ないだろうからバレるのだ。そうして、龍已は丁度良い眠気が来て身を委ねた。気持ちの良い眠りの入り方で、体の疲労を回復するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、お前達は何をしているんだ」

 

「おっはよー龍已!」

 

「よー。腹減ったから朝飯作ってくれ」

 

「なるほど、集りに来たと」

 

 

 

 朝起きて朝食を作りに食堂へ行くと、既に同級生の2人が居た。如何にも待ってましたとでも言うような待ち態勢に、龍已はなるほどなと察した。飯を作ってやったはいいが、それに文字通り味を占めたのだろう。二人して両手を合わせて拝む姿勢なのがなんだか腹が立つ。

 

 しかし、制服にも着替えて後は教室に向かうだけ……となっている2人が期待して待っていたというのに、1人だけ作って食べて向かうなんてことは出来ない。それを分かっているのか否かは分からないが、期待したキラキラした目でこちらを見ていた。朝だから凝ったものは作らないぞと溜め息を溢しながら警告すると、それでも良いと首を縦にブンブン振りながら肯定したので作り始めた。

 

 と言っても、本当に大したものは作らない。トースターの中にパンを入れて時間をセットして焼き始め、冷蔵庫から卵とベーコン、ケチャップとマヨネーズ、レタスを取り出す。器具類の中からフライパンを出してオリーブオイルを垂らして温める。掌を翳して熱を確かめ、ベーコンを置いてから卵を割って上に落とす。蓋を置いて熱を調節する。

 

 チンッという音が聞こえたので焼けた食パンを取り出して、二枚一組にする。出しておいたケチャップとマヨネーズを上に掛けてバターナイフを使って混ぜ合わせオーロラソースを作り、その上にシャキシャキのレタスを敷く。頃合いだろうと思ってフライパンの蓋を開けると、ベーコンも卵もいい感じになっているのを確認する。

 

 2人分に卵とベーコンを切り分けて用意したパンの上に置き、もう一枚のパンを上から載せ、パンを切る為の包丁を使って斜めにカットする。皿の上にいい感じに乗せてみれば、ホットサンドの出来上がり。本当は中身とパンを一緒に焼くのだが、その機材が流石に無いのでトースターを普通に使った。

 

 因みに龍已は今日汁物の気分なので、朝はお茶漬けである。密かにポットを使って沸かしておいたお湯をお茶漬けの粉末が乗る白飯に注げば完成である。とてもスピーディーでご飯を満足に食べられる一品である。

 

 

 

「ほら、お前達の朝飯だ。パンだが文句を言うなよ」

 

「うっまそ!?」

 

「ジブリのハウルの動く城に出て来るベーコンと卵みてぇだ!?」

 

「あっ……パンがサクッといってレタスシャキシャキ……っ」

 

「あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙……半熟の目玉焼き最高かよチキショウ……ベーコンがゲロウマぁ……」

 

「時間が押してるぞ。さっさと食べろ」

 

「龍已のご飯だよ!?遅刻なんていいからもっと味わわせてよ!?」

 

「お前の飯の為ならいくらでも遅刻してやるよ」

 

「阿呆かお前達は」

 

 

 

 いいから早く食え、遅刻するならば作らないぞ。そう言うと急いで食べ始めた慧汰と妃伽に、飯さえ与えておけば一日中黙らせるのも可能なのでは?と思い始めている龍已。正直誰でも作れるのでやろうと思えばお前達でも出来る……と言おうとして、若干一名卵すら焼けない猛者が居るので言わなかった。

 

 食べ終わって食器を洗い終わった一行は自分達の教室へ向かう。ドアを開けて中に入り、それぞれの席に座って少し経つと、夜蛾が入ってきたので挨拶をして、今日が始まった。と言っても今日は慧汰と妃伽に合同の任務が与えられているので、最初の一般教養をやったら龍已しか残らないのだが。

 

 因みにだが、呪術師の階級の内、単独で任務を受けられるようになるのは2級からなので、一年生の中で一人で任務に行けるのは龍已だけだ。普通は入学と同時に4級呪術師としてスタートを切るのだが、龍已は色々あるので特別に2級からスタートだ。妃伽はスカウトされるまで一人で呪霊を祓っていたし、見つけたときは2級を祓っていたので3級から。慧汰は4級である。

 

 

 

「うーっしッ!!任務だ任務ー。行くぞ龍已」

 

「3日振りだよね!じゃあ頑張ろっか龍已!」

 

「……?俺は行かんぞ。お前達の合同任務だ」

 

「まあケチケチすんなよ!どうせ一人で授業やってもつまんねーんだから、な?良いよな夜蛾センセー」

 

「……はぁ。ダメだと言ったところで無理矢理連れて行くんだろう。龍已、そいつらの面倒を見ておいてくれ」

 

「……分かりました」

 

「おーっしゃッ!ンじゃあデートしようぜ♡」

 

「任務だと言ったろう」

 

「えっ、俺もデートしたい!」

 

「任務終わりに2人で勝手にしてくれば良いではないか……」

 

「え?俺も龍已とって意味!!」

 

「女好きはどうしたんだお前は?」

 

 

 

 何だか、好感度が一気に上がっていて困惑する。慧汰に至っては女好きの性格はどうした?何故男の俺をデートに誘う?と本気で訳が解らない。まあおふざけで言っているのは分かっているのだが、おふざけでも、そんなことを軽々しく言い合うような仲では無かった筈だ。手料理効果か?それだけで人の好感度が上がるなら、この世に婚活なんてものは消滅する。

 

 夜蛾の溜め息が背後で吐かれているのを聞きながら、龍已は慧汰と妃伽の後を付いていく。本来この任務には行く事は無かったので、何処に何級の呪霊を祓いに行くのか分かっていない。まあ補助監督が資料を持っている筈なので大丈夫だと思うのだが。

 

 高専を出て補助監督が乗っている車があるので乗り込み、龍已はついでに資料を受け取った。内容は墓地に居る3級呪霊2体、4級一体を祓うこと。車では細くて入り口を通れず、周辺の木が伸びきって陽の光があまり入って来ず、薄暗い場所に立地されていて、更には殆どの墓が手入れをされていないので薄汚れている。

 

 衛生的では無いのと、薄暗くて外観の気味が悪いということで人の負の感情が長年に渡って凝り固まり、呪霊を生み出したのだろうと推測される。人死には出ていないものの、何か気持ち悪い者を見たという人が何人か居るので『窓』が調べに向かったところ、呪霊を確認したとのこと。まあ墓地は良い意味で取られることは無いので、負の感情が溜まりやすい。らしいっちゃらしいものだ。

 

 

 

「では、車がここまでしか通せませんので、私はここで待機します。帳も降ろしておきますので、どうかお気を付けて。『闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え』」

 

 

 

「パパッと片付けちまおーぜぇ」

 

「近接戦闘の練習の成果を見せる時だ!」

 

「一体ずつで良いだろう。音無が4級を祓え。何かあったら呼ぶんだぞ。特に音無だからな」

 

「信用されてない!?」

 

「念には念をということだ。東京の呪霊は他と比べて狡猾さが高いらしいからな」

 

「そうなんだ……分かった!」

 

 

 

 妃伽は問題ないだろう。あれだけの戦闘力と戦闘意欲を持ちながら3級呪霊に負けたとなったら、一体全体どうなってそうなったんだという話になる。だが戦闘力があまり無い慧汰が最も心配だ。これでも一応龍已が武器術を教えてきたが、今回が初めての実戦なので、図に乗らないと良いのだが。

 

 徒歩で墓地へ3人で向かって行く。上空で黒い靄が生まれ、ドーム型に膜が落ちてくる。一般人が中で何が起きているのか分からないようにさせるものであり、内部への侵入をしないためのものである。これにより、どれだけの破壊音を撒き散らそうと、外部に居る一般人が気付くことが無いのだ。

 

 呪いの気配が感じると、妃伽は呪力を漲らせながら術式を発動させ、身体能力を爆発的に増大させた。妃伽の術式はとても簡単なものだ。呪力にものをいわせて術式を発動させると、その呪力分だけ身体能力を上昇させることが出来るのだ。それなのに妃伽は呪力が中々に多く、素の身体能力も高い。思考も戦闘を求める傾向にある。つまり妃伽に一番合った術式なのだ。

 

 

 

「み……みず……に゙ぎり゙ぃ゙ぃ゙──────」

 

「──────うっせェ死ねッ!!!!!」

 

 

 

「えぇ……一発ぅ……?」

 

 

 

 先ず出て来た3級呪霊だったが、足下の地面を踏み砕きながらロケットスタートをかまし、目前に躍り出ると引き絞った腕を解放して殴り抜いた。顔面を真っ正面から殴られた呪霊は、頭部を丸々消し飛ばされ、塵となって消えた。祓い終えた妃伽は殴った拳を見つめ、とてもつまらなそうな顔をしていた。予想の範疇を出ない反応だ。

 

 次に出て来たのはムカデのような体に、脚があるところに腕が生えており、頭部に四つの目玉が付いている呪霊だ。大きさはそこまででも無く、腰の高さ程度だ。見た目はともかく所詮は4級呪霊なので冷静に戦えば大した傷を負うこと無く勝つことが出来る。慧汰は懐からナイフを取り出す。しかし普通のナイフではない。攻撃方法が殴打や蹴りしか無い事を夜蛾に話し、高専が所持している呪具を貸し出されているのだ。

 

 慧汰は呪霊が向かって行くよりも早く駆け出した。迎え撃つのは勿論ムカデのような呪霊。ナイフを構える慧汰に突進して足と腕を取ろうとするのを跳躍して回避し、ナイフを背中部分に突き立てた。呪霊の体液が噴き出す中、ナイフを突き立てたまま頭に向けて斬り裂いた。

 

 呪霊の悲鳴が上がり、尻尾を使って慧汰を狙う。先端には長く鋭い針。突き刺されば重傷だろうが、術式を使って『聴いた』慧汰には当たらない。危なげなく避けて、四つある目玉の中央にナイフを刺し込んだ。更に内部の頭の部分に蹴りを入れて奥にぶち込む。それで漸く、呪霊は消滅した。

 

 

 

「や……ったっ!!危なげなく勝てた!やったぁっ!」

 

「ナイフも使えていた。今度は少し長さを変えて短剣にしてみるか」

 

「俺も筋肉がついてもう少し重いのがいいなって思ってたんだ!あ、それと少し気になったんだけど、龍已ってどういう術式なの?」

 

「あー、それ私も気になってたんだよな。その脚に付けてる銃と関係あるのか?私達のは知ってンだろー?1人だけ秘密なのはズリーぞ!」

 

「……そうだな。何だかんだ教えていなかったし、見せていなかったな。この際だ、教えておこう。丁度良く最後の呪霊が出て来たからな」

 

 

 

「おかしぃ……おおおかおかしぃいいぃぃぃ……っ!!」

 

 

 

 妃伽が3級呪霊を祓い、慧汰が4級呪霊を祓った。ならば残りは3級呪霊一体。この場の3体の内2体が祓われた事と帳の効果で姿を現した呪霊は人型で、全身が所狭しに目、鼻、口、耳が付いている姿。それに対して龍已は、右足のホルスターに納められた『黒龍』を引き抜いた。

 

 妃伽、慧汰、龍已が固まっている場所から前方50メートル先に現れた呪霊に、銃口を向けた。軽く持っている『黒龍』は、その見た目以上の超重量を誇る。それを知る者は少なく、妃伽と慧汰もそれを知らない。そんな銃を腕を伸ばした状態で構え、呪力を籠めていく。但し……その呪力は膨大だ。慧汰はその呪力量に、知らず知らずの内に一歩二歩と後ろへ下がっていた。手が震えている。それは未知への恐怖だろうか。それとも……龍已への恐怖だろうか。

 

 一方妃伽は、歯を剥き出しにして獰猛な笑みを浮かべて龍已の一挙手一投足を見て、観察している。こんな膨大な呪力量ははじめてだ。しかもそれを、たった一発の弾丸に形成していく。構築術式のような、0から物質を生み出すようなものではない。呪力を弾丸の形にしているだけだ。だが、その呪力量が破滅的なだけだ。

 

 

 

「──────俺の術式は『遠隔呪力操術』といって、体内にある呪力を体外へ飛ばして範囲内ならば可能な限り操作が出来る術式だ。使い勝手が良いように思えるが、本来の術式は範囲も狭く、操作内容もかなり限られる。そこに俺は天与呪縛を設けられ、飛ばすには銃を介さなければいけない。そうしなければ、俺は術式を使うことすら出来ない。だがその代わりに、広大な術式範囲と操作技術を与えられた。操れる範囲は俺を中心とした4.2195㎞。この範囲内ならば──────俺の領域だ」

 

 

 

 引き金が引かれ、青黒い呪力によって形成された呪力弾は、呪霊の反応出来る速度を大きく超えて向かう。だがこの呪力弾はあくまで呪力によるもの。術式範囲内ならば、どのようにも操ることが出来る。

 

 呪霊の眉間に着弾する寸前、呪力弾は進行方向を変えて呪霊の体の周りを旋回し、青黒い線が幾本にも見える。そして呪霊は訳の解らない状況に困惑し、呪力弾が呪霊の脚を貫いた。痛みで叫ぶ呪霊を尻目に、脹ら脛、太腿、腰、腕と貫いて飛び交い、頭を背後から突き破って眉間から出て来て、最後に鳩尾部分に貫いて内部で爆発した。

 

 大爆発を引き起こし、周囲にも被害を及ぼすと思いきや、爆発した時の呪力がまだ生きていて、竜巻状にとぐろを巻いて上空へと威力を分散させた。呪霊が居た所には何も残らず、抉れた地面が螺旋を描いているだけ。これを操作の一つで済ませられない事くらいは分かっている。同じ事を同じ力でやってみろと言われても、絶対に出来ないと断言出来る。

 

 

 

「ぅわあ……スゴい威力……」

 

「ははッ……お前やっぱり最高だぜッ!!」

 

「……と、まあ……俺の術式開示は以上だ。弾を曲げられるのはあまり他人に言うな。殆ど見せていない技術だからな。真っ直ぐにしか飛ばせないというだけでブラフになる」

 

「確かに……普通の弾って真っ直ぐだもんね。めっちゃ良いと思う!」

 

「……術式は分かるが、じゃあ何であんなに近接つえーんだよ。銃で遠距離だからうぜーと思って近寄ったら近接でボコボコじゃねーか」

 

「俺は黒圓無躰流という一子相伝の武術を修めている。その真髄は相手の懐に潜り込んで使える手を全て使い、相手を殺す。超近接特化戦闘術だ。だから近接では父以外に負けた事が無い」

 

「へぇ──────燃えるねェッ!!」

 

 

 

 戦いたくて仕方ないとでも言うような笑みを浮かべて見てくる妃伽に、やはりかと思いながら『黒龍』を仕舞う。早く帰ろうと言って、龍已は帳が上がったのを確認しながら補助監督の元まで歩いて行った。その後ろを慧汰と妃伽が追い掛け、学校に戻る。

 

 呪霊は報告通りだったという事を補助監督に報告し、車に乗り込んだ龍已は、学校に戻ったら確実に近接格闘の手合わせを妃伽から申し込まれるだろうと確信した。何故なら、助手席に座っている龍已の後頭部に、後部座席に座っている妃伽が熱い視線をぶつけているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2004年8月。この日は朝から近接格闘及び武器術の訓練だった。

 

 

 

 夏の暑さの中、動きやすいジャージの格好で鍛練を積んでいた一年生達。と言っても、慧汰が龍已に動きのレクチャーをしてもらい、妃伽が我慢出来なくなったら龍已と呪力無しで全力でやる……というのを繰り返しているだけなのだが、どうやってもやはり勝てない龍已に、妃伽は只管ボルテージを上げていく。

 

 その内呪力や術式まで使い始めるんじゃないだろうなと、少し警戒していた龍已の元へ、歌姫と冥冥がやって来た。合同での訓練とは聞いていなかったので、何か用でも有るのだろうと思って、全くやめる気が無い妃伽を後ろから羽交い締めにして大人しくさせる。

 

 

 

「オイゴラ龍已ッ!今回は絞め技無しだろォがッ!!正々堂々殴りあえやテメェッ!!」

 

「暴れるな。歌姫先輩が何か用のようだ。少し大人しくしろ、後でまた再開してやるから」

 

「クッソがァッ!!調子上がってきてハイだったってのによォッ!!歌姫ェッ!!何の用ださっさと吐けゴラ殺すぞッ!!」

 

「あ、相変わらずね妃伽は……」

 

「ふふふ……日を追うごとに凶暴性が増している気がするよ」

 

「歌姫ちゃんに冥冥ちゃん!どうしたの?どんな用事?」

 

「ちょっとあなた達に頼みたいことがあってね」

 

 

 

 ギャウギャウ吠えている相変わらずの妃伽に苦笑いの歌姫に、狂犬のようなメスゴリラ具合に何時もの微笑みを浮かべる。用事があるという歌姫と冥冥の為に、あとでまた相手をすると言っているのに暴れる妃伽を抑えるのに龍已が出ているので、代わりに話を聞こうとしている慧汰。

 

 最近は女好きの性格が丸くなってきている慧汰に警戒しなくなった歌姫は、早速用件を話す事にした。内容は、ある行事に一年生3人で参加して欲しいというものだ。それも伝統もあり、とても盛り上がるものだった。

 

 

 

「あなた達に京都姉妹校交流会に出て欲しいのよ」

 

「京都姉妹……?何ですかそれ?」

 

「交流会はね、毎年開催されている催し物で、姉妹校である京都の高専と呪術で競い合うのよ。1日目は団体戦で2日目が個人戦って決まっててね、3年と2年がメインでやるイベントなのよ」

 

「……?じゃあ何で俺達が出る事になるんですか?正直、俺戦えないですよ!」

 

「……2年生が元々3人居たんだけど、あなた達が入学して少しして2人が任務先で亡くなって、残された1人が続けられないって病んじゃって辞めたのよ。だから空きがあるの。どう?出てくれるかしら?あなた達が出てくれるなら頼もしいわ」

 

「……呪術でやり合っていいンだよな?」

 

「え、えぇ。殺すこと以外なら何しても……あっ」

 

「──────出る。いやー、ハッハッハ……クソ楽しみだぜ」

 

「……余計なことを言っちゃったぁ……っ!」

 

 

 

 その言葉を待ってましたと言わんばかりにニヤける妃伽に、歌姫は言わなくて良いことを言ったのを自覚した。殺さないならば何しても良い。何しても良い!最早妃伽に許された独壇場。妃伽の為に用意された席。仕方ないから出てやろうみたいな感じの顔をしているが、目の奥から滲み出る狂気と歓喜が混ぜ合わさった炎が顔を出しているのが、全員に伝わった。もうこれ以上ないくらい伝わった。

 

 頭を抱える歌姫だが、冥冥は勝っても負けてもどちらでもいいので、ただ微笑みを浮かべているだけだ。いや、冥冥は今回楽しみなのだ。妃伽が出るということは、必然的に慧汰も、そして龍已も出るという事なのだから。一子相伝の超閉鎖的武術。千年以上の歴史を持つ独立した家系。その唯一の生き残りの戦いが見れるのだから。

 

 微笑みはいつも通り。しかし目は一切笑っておらず、標的は龍已ただ1人。面白いものが見れれば良くて、あわよくば……と考えている獲物を狙うかのような視線に龍已は勘付き、冥冥の方へ振り返る。目がばちりと合えば、冥冥は何でも無いかのように手を振って笑みを送る。世の男はこれで勘違いを起こすのだが、やはり龍已には効かないようだ。

 

 顔を背けて無視をする龍已に、冥冥は笑みを深くして面白そうに笑った。黒圓……欲しいなあ……と。瞬間、龍已の背筋にゾクリとしたものが奔った。何となく嫌な予感がするので冥冥から一歩離れる。二歩詰める。一歩離れる。二歩詰める。何故か分からないが隣に腕が触れる程近く寄ってくる冥冥に内心ゲンナリとする。

 

 

 

()()君は出るのかな?私は少し気になるんだけれど」

 

「……折角なので出ようと思っていますが、それが何でしょうか」

 

「いいや?それはさぞや……見応えが有るんだろうなぁと思ってね。龍已君が居れば百人力なんじゃないかな?」

 

「過大評価も程々にしていただけますか。俺はやれることをやるだけです。冥冥さんが期待されるような事は起きないと思われますが」

 

「さぁ……それはどうだろうねぇ?未来のことなんて、誰にも分かりはしないさ。だから楽しみに繋がるんだろう?違うかい?」

 

「分からないから楽しみに繋がると、確実性が有りませんよ。苦しみかも知れませんし、辛いだけかも知れません。この業界なら尚更。なので冥冥さんも期待しすぎて()()()()()()()()()()()()ならないようにして下さい」

 

「……ふふふ。良いね。とてもイイと思うよ。じゃあ、程々に期待させてもらうよ」

 

「えぇ、程々に」

 

 

 

 一方は微笑みながら、一方は無表情で会話をしている2人は温度差が激しく、何だか不穏な気配を感じさせる。龍已は何を考えているのか分からない冥冥を少し警戒している。特にこういった龍已が出て来て戦うような時に、矢鱈と獲物を狙う肉食獣のような雰囲気が感じられるのだ。まあ黒圓無躰流関連だろうが。

 

 冥冥が離れていくと肩の荷が下りる。彼女と会話をしていると疲れるのだ。何か不用意な発言を一つすると、死体になっても突っついてきそうで。虎視眈々と狙っているような、烏のような執拗さがありそうで油断ならない。

 

 来月辺りに開催される予定である京都姉妹校交流会。未だ見ぬ対戦相手に万感の思いを馳せながらニヤニヤ嗤っている妃伽に、自分が出るまでも無く妃伽一人居れば気絶しても相手に襲い掛かって勝てるんじゃないかと密かに思った。

 

 

 

「じゃあ、一年生は全員参加で良いのよね?」

 

「任せな。死なねェ程度に血祭りにあげてやるよ。あは♡楽しみだなァえェおい?……くくくッ」

 

「妃伽ちゃん何か薬物キまってる人みたいな顔してるよ!?その顔外でしたら捕まるよ!?」

 

「……まあ、力になれるよう頑張ります」

 

「あっ!因みに何処で開催されるんですか?」

 

「……京都校よ」

 

「えっ!?態々京都まで行くんですか!?あ、もしかして代わる代わる開催地変える感じですか?」

 

「ふふふ。開催地はその前の年で勝った校で開かれるんだよ」

 

「……え?じゃあ去年負けたんですか?」

 

「……そうよ!!私がドジ踏んで負けたのよ!!悪い!?」

 

「えぇ!?なんで俺が歌姫ちゃんに怒られるの!?」

 

 

 

 その時のことを思い出したのだろう。顔を膨れさせて慧汰に怒鳴っていた。相手も呪術師な以上、下手に隙を見せればそこを突いてくる。去年は冥冥が活躍していたようで、そのお陰で今こうして準一級呪術師をやっているのだそう。

 

 まだ何をするのか決まった訳では無いが、恐らく舞台となった京都校に放たれた呪霊をどちらが多く祓えたかという早い者勝ち競争と、個人戦なのだろうから、これからはビシバシ鍛練を積むわよ!という歌姫の号令に、妃伽と慧汰が元気よく腕を突き上げた。

 

 

 

 

 

 

 2年不在によるため、一年生ながら京都姉妹校交流会に出場する事になった龍已達である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「虎徹か。……あぁ、お前の予想通り、少し思い付いた事があってな──────こんな物は造れるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






冥冥

現時点で準一級。烏による索敵と体術が評価されて推薦された。

龍已君も出るんだよね?ふーん、見させてもらうよ♡




歌姫

軽く出てってお願いしちゃったけど、妃伽大丈夫?相手殺さない?

龍已や慧汰が居るし大丈夫だろうと、楽観視している人。バーサークメスゴリラが自重なんて言葉知るわけ無いでしょ。




慧汰

最近、体力向上の走り込みや近接格闘を真面目にやって強くなってきた努力家。そのため女好きの性格が丸くなった。なので妃伽のイライラが消えゆく傾向にある。




妃伽

龍已の術式を見せてもらって、やっぱり全力で殺り合いたいと思ったイカレメスゴリラ。それだけでも嬉しいのに、交流会の事を知る。

え?死ななきゃ何でもオッケー?……ひひっ……おぅけぃ♡





龍已

術式の練習?勿論毎日やっているとも、当然だろう?だから練度が上がってます。

術式範囲は4.2195㎞デス!ん?何か見たことある?気のせいでは?



最近黒い死神の出番が少なくてつまらない。



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