最高評価をして下さった、鼻からエメラルドスプラッシュ クレイン070 アイス好き JUMP大好き芸人 ZACKEY 888 tanker ヨッシーマタタビ touyu nakan 五月雨@ノン さん。
高評価をして下さった、でーさん ヌーピー(ΦωΦ) AwaKa_KS VZ 2020 セリヌんティウス 自販機裏のタカ nakan
さんの皆さん。ありがとうございます!
京都姉妹校交流会。毎年開催される、生徒の呪術師による戦闘系の催し物。日本にたったの2校しかない呪術高専が、バッチバチにやり合うこのイベントは人気が高く、ここでの成績が呪術師への評価に大きく影響されると言っても過言ではない。
優秀な成績を収める事が出来れば、活動している呪術師からの推薦で階級を上げられる事も有る。冥冥がその良い例で、索敵と情報収集が主な使い道である黒鳥操術を存分に使って相手の位置を把握し、本人の高い戦闘力で狙われたとしても落ちない。結果として相手校の生徒を何人も無力化し、貢献していた。
色々と諸事情があって最終的には負けてしまったのだが、活躍を聞いた呪術師が冥冥の階級上昇を推薦し、晴れて準一級呪術師となることが出来た。言うなれば、危険度が果てしなく高い体育祭みたいなものだと思えばいい。少し死ぬ危険がある程度のものだ、問題ない。
現在は8月だが、交流会が開かれるであろう日は来月。それまでは各々で鍛練を積んで備える。相手も呪術師であり、主に3年と2年が出張るので、入学して四ヶ月程度しか経っていない龍已達よりも、相手の方が経験は上だ。と言っても、龍已と妃伽に関しては対人戦は慣れているので問題ないが、慧汰はもう少し実力を付けた方がいい。
龍已は言わずもがな、妃伽は高専に入る前から喧嘩に明け暮れ、度々見掛けた呪霊を拳で祓ったりしていたので戦闘には慣れている。寧ろ戦うことが大好きだ。そんな2人を見ていればどうしても戦闘面では霞んでしまう慧汰を強化するため、対人戦闘を鍛えることにしている。
「ほら攻撃されたからって立ち止まらない!格好の的よ!相手を翻弄する術を身に付けなさい!」
「了解です!」
「歌姫の次は私とだね。戦斧は使わない代わりに棒を使わせてもらうよ」
「ばっちこーい!!」
「扱かれてンなーアイツ。まあまだまだクソザコだから仕方ねーンだけど」
「お前も相手をしてもらえばいい」
「くはッ……目の前のご馳走しか見ないタチなんでね私はッ!!」
「だから術式を使うな」
「どうせ効かねぇンだからイイだろケチケチすンなオラァッ!!」
「おいその呪力量は拙──────」
グラウンドに大穴が開いた。校舎の方から夜蛾がすっ飛んで来て妃伽の頭に拳骨を落とした。焼いた餅みたいに膨れたたんこぶを摩りながら、それでも目をギラギラさせている妃伽に、本当に戦闘民族なんじゃないかと思う龍已。因みに龍已はケン達から薦められてドラゴンボールは知っている。だだだ連打多過ぎでは?と口にしたら説教された。
拳一つでクレーターみたいなことになっているのを見て、歌姫が顔を青くしていた。まあそうなるだろう。何せ一番最初の頃に拳で殴り合っていたのだから。少し本気で術式使ったら、歌姫の体は木っ端微塵だっただろうから。
冥冥は相変わらず微笑みを浮かべて、ものの成り行きを見守っている。いや、見て楽しんでいると言った方が良いのかも知れない。関与しないので傍観者で中立的立場だが。慧汰は最早妃伽のゴリラ具合に慣れたのか、またやっちゃったねー、と軽い。イカレ始めている。感覚が。
反省する気のない妃伽に気を取られているが、そんなクレーター作りの殴打を受けて無傷の龍已は意味が分からない。一応躱したので無傷なのだが、これに近い威力の殴打を受け止めたりしているのだ。はっきり言ってどちらもゴリラである。
受け身の練習だったり攻めの練習だったり、隠密の方法など先輩である歌姫と冥冥からレクチャーされて鍛練を積んでいった。1日の殆どを動いて過ごしている龍已達は消費カロリーが尋常じゃなく、最早食べる事すら鍛練の一つに組み込まれる。そう……食べる。
ここで明かすが、慧汰は料理が死ぬほど出来ない。寧ろ料理をしたら人が死ぬ。ついでに妃伽も料理が出来ない。やろうとすればフライパンがへし曲がり、最終的にはお湯を入れて3分のアレに行き着く。つまり生活力は皆無なのだ。部屋の掃除は出来る癖になんで簡単な料理すら出来ないというのか。龍已には理解が出来なかった。
なので、結局何が言いたいかと言うと、1日の疲れを癒す、魂の補充とも言うべき食事を龍已頼みにするということだ。あれだけ動いて食べるのがカップラーメン?殺す気かと言って、龍已に泣き付いてきた2人。龍已が1人で自分の分だけ晩飯を作って食っていた時は、任務帰りとはいえ本気で泣いて縋り付いてきた。龍已は無表情でドン引きした。
「お願い龍已行かないでッ!!龍已が居てくれないと俺死んじゃう!!本当に死んじゃう!!ムリムリムリムリムリッ!!後生だからッ。後生だから行かないでッ!!うわあああああああああんっ!!」
「なぁ龍已……悪いとこ直すから……近接格闘で勝手に術式使ったりしないから……だから行かないで……」
「これから任務なんだが」
これから任務なので現場の資料を片手に行こうとしている龍已の腰に慧汰がひっしりと抱き付いて、服の裾を妃伽が掴む。何がしたいんだ、というか何があったんだと問われれば、放課後に近場の任務なので晩飯は帰ってきてからでいいかと思って出掛けようとすると、腹を空かせた慧汰と妃伽と鉢合わせし、こうなっている。
何か適当に作って食べれば良いと思うことなかれ。2人は料理が出来ない。じゃあ外食でもしてくれば良い。任務を受けていて報酬が出ているのだから。金はあるだろう、外で食べてこいと言えば、お前の料理じゃないと満足出来ないという。じゃあ昼を挟んだ任務はどうしているんだ。
取り敢えず龍已は任務へ行かなくてはならない。なのに2人が放してくれない。理由は腹が減って死にそうだから。引き留める理由が本当にショボい。こっちは確認された呪霊を祓わないといけないというのに。はぁ……と溜め息をつきながら腰に隙間無く抱き付いた慧汰と、掴んだ服の裾を離さない妃伽を見る。2人は必死で、龍已の瞳を見返した。
「……はぁ。分かった、晩飯だな。作ってから任務に行くから、音無と巌斎は補助監督の方に謝罪と少し遅くなるという旨を伝えてこい。俺はキッチンに行く」
「……っ!!ありがとう龍已!!」
「やったぜ!!マジでサンキュー龍已ッ!!」
「まったく……俺まで補助監督の方に謝罪せねばならん」
先までの落ち込みようと縋り付きようはどうしたと言わんばかりに駆け出した慧汰と妃伽に呆れる。もう我慢して外食すればいいのに。しかし必死に求められて嬉しくないという訳では無いので、やれやれと言いながら言うことを聞いてくれるので、2人もつい甘えてしまうのだ。なんだかお兄さんみたいで。歴とした同級生なのに。
仕方ないので来た道を戻って食堂のキッチンへ向かう。流石に凝ったものを作っている暇は無いので、パパッと作れて、あの2人が満足するものと言えば……丼ものだろうか。だが色々なものが存在する中でどれにしようかと悩んだ時に、そういえばスーパーで買い物している時に、厚いロース肉が半額セールしていたので買ったな……と思い出した。
買うものリストを作って買い物カゴ片手にスーパーで買い物をしている龍已の図は、何故かしっくりきてしまう。主婦だろうか。嫁でも良い。まあ兎に角、龍已は今日の2人の晩飯のレシピを思い付いたので用意するものを頭の中に思い浮かべる。
キッチンに着いたらお馴染みの黒いエプロンを装着し、冷蔵庫からロース肉二枚と玉ねぎ、卵と醤油にみりん、料理酒や砂糖などを取り出して並べていく。パン粉も必要なので棚から出して、浅い鍋をコンロにセットしておく。玉ねぎを細く切って調味料と一緒に入れておく。
油の入った鍋に火を付けて熱し、ロース肉をパックから取り出して小麦粉をまぶして余分なものを落とし、溶き卵が入った容器の中に入れて絡め、パン粉の中に放り込んで衣の部分を作る。それを二枚分やり、油が熱せられたのを確認して投入。じゅわっといい音を立てる。
今日の龍已の補助監督を務める人に訳を話してきた慧汰と妃伽は既に食堂にやって来ていて、油でカツを作っている音を聴いて目を輝かせた。相当楽しみらしい。菜箸で揚げ加減を確認していい感じになったのを確認してまな板の上に移動させ、包丁を入れる。ザクッと音が鳴り、中を見ればしっかり火が通っているようだ。そこで浅い鍋の方に火を付けて中の調味料と玉ねぎに火を通し、溶き卵を作っておく。カツを鍋の中に入れたら卵を入れて蓋をする。
少しの待ち時間の間にサラダと、盛り付けるためのどんぶりに白飯を入れて準備は完了。グツグツと煮立った鍋の蓋を開ければ、もわっと良い匂いが顔に掛かる。火加減もタイミングも完璧だった。二つの鍋を持ってどんぶりに入った白飯の上に滑り入れれば、カツ丼の出来上がり。それとサラダである。持っていこうとして、最後の仕上げにカツ丼の上にアクセントの三つ葉を乗せて本当の出来上がり。
因みにだが、自身の分は作っていない。帰ってきてから食べるし、そもそも今日の気分は麺なので、帰ってきたらパスタを作って食べる気である。
「ほら出来たぞ。カツ丼とサラダだ」
「うおーっ!?金色に輝いてる!!カツでっか!?」
「腹減ってもう我慢出来ねぇ!いただきます!!……うんめェッ!!」
「タレが優しい味で泣きそう!!」
「カツ丼うめぇ……カツ専門店のやつより私はこっちがいい……」
「龍已……俺と結婚しよ……お嫁さんになって……」
「私と結婚しようぜ……一生養ってやるから……龍已は私の嫁……」
「では、俺は任務に行ってくる。洗い物くらいはしておけよ」
「「はーい!!」」
やることは終えて、2人も満足そうにカツ丼をむしゃむしゃ食べているので任務へ向かう。何かと自身を嫁にしたがる慧汰と妃伽には首を傾げる。何故男の俺が嫁なのだろうかと。いいや、合っていると思う。掃除も洗濯も、そして料理も出来るのだから嫁に欲しくなる。スーパーで買い物をしている姿を見たら駆け寄ってしまうかも知れない。
まったく、変な懐かれ方をしたものだと思いながら外へ出て、待っていてくれた補助監督に謝罪した。事の経緯を知っている補助監督は苦笑いだった。苦労していますねと言われているようで微妙な気持ちになった。
8月が終わって9月の上旬の頃、男は逃げていた。後ろから追い掛けてくる得体の知れない何者かとナニカから。
男は呪詛師だった。持っている術式は戦闘に於いて役に立つが、戦闘には使えない。つまり攻撃性が無い。だがとても気に入っているものだ。そのお陰でこうして呪詛師としてやってこれて、捕まることもなく、やられることも無く生きていたのだ。しかし、それは今日までの話。
手持ちの金が無くなったので適当に一般人を襲って金を巻き上げて殺そうと思った。しかしそれよりも先に呪力の弾丸が目の前を通過した。音は無く、呪力を察知するよりも先に目の前を通っていた。危なかった。後少しで頭を撃ち抜かれるところだった。
実弾ではなく、呪力によって形成された弾丸なのだから、一般人には見えない。音が無かったから何も無いものと同じ。だからこそ恐ろしいと思った。この手段ならば、何が起きたかも分からず自身を殺すことが出来る。
飛んできた方向を振り返る。心臓が嫌な鼓動を刻みながらの振り返り。そして視線の先に見付けたのは、黒いローブを着て、黒い銃を此方に向けている何者かだった。すぐに察した。今は夜。雲に隠れて月の光りも無い、人工の光だけが当たりを照らす暗闇時だ。つまり、アレが……黒い死神が動き出す時間。
全身から脂汗が噴き出て、過去最高だろう速度で駆け出した。目的の場所は無く、兎に角逃げることを最優先にした。術式も迷い無く使った。だから飛ばされる呪力弾を避けることが出来た。所詮は真っ直ぐにしか飛ばせない呪力弾。解りさえすれば避けるのは容易い。
後はどうやって逃げ切るかだ。3発の呪力弾が飛んできたので、右の道に入る。少し先を行けば工場地帯で、倉庫などが多く並ぶ場所だ。そこで黒い死神を撒く。依頼達成率が100%。狙われた呪詛師は必ず始末されてきた。だがそれも今日までの話だ!
自身には逃げ切るための算段がある。そして、それを行うだけの術式がある。俺が、俺こそが黒い死神から逃げ切った第一号となる!そう息巻いて己を鼓舞し、逃げるために鍛えた脚を全力で動かした。そして、男は術式によって導き出されたものにより、ある倉庫の中へと侵入した。
薄暗いが、電気なんてものを点ければ居ると言っているようなものなので、壁に背中を預けて座り込み、息を潜めてその場で待機する。10秒、30秒、1分が経過した頃、男は確信した。あの、あの呪詛師殺しである黒い死神の魔の手から逃げ延びたのだと。男は
『──────勘が鋭くなる術式』
「──────ッ!?」
『だからこれまで、呪術師の手から勘を頼りに逃げ延び、俺の呪力弾を避けることが出来た』
「……っ!!まさか……なんで……俺の術式は告げていた!お前はこの倉庫を興味を示さないと!」
『倉庫には興味を示していない。最初からお前だけを狙っていたのだからな』
「……クソッ!こんなところで殺されて堪るか!出て来い真っ黒野郎!!ぶっ殺してやるッ!!」
『奇遇だな。俺も
「……あ?テメェ何言って………………まさか」
『実験の始まりだ──────精々避けろよ』
呪詛師である男の術式は、勘を鋭くさせることが出来るというシンプルなもの。攻撃性は無い。だがとても素晴らしいものだと思っている。使用すれば、どんなことに対しても勘が働く。盗みを働こうと思えど、術式によって鋭くなった勘がやめた方が良いと出てやめておけば、近くを警察が通り過ぎる。
勘がやっていいと判断したので人を殺せば、殺し終えて金品を盗んでその場を去るまで、人は一切通らなかった。呪術師に追われても、勘に従って動くと撒く事が出来る。発動させるのに条件は必要無い。使いたいときに使うことが出来る。だから今回も逃げ切れると思ったのに……こうもあっさりと破られるなんて。
しかも今気付いたが、倉庫を囲んで帳が降りている。つまりもう逃げられないし、一般人が気付き、騒ぎが起きて戦況をどうのこうのという展開にもならないのだ。ならばもう、どんなに無謀でも黒い死神と戦うしか無い。なのに、黒い死神の姿が全く見えない。何処に居るのかも、気配も呪力の気配も分からなくなっていた。
そして不穏な言葉を吐いた、黒い死神。何が目的なんだと頭に血が上ったところで、術式を使って鋭くなった勘が避けろと叫んだ。それに従って頭を横に動かしてみると、すぐ横を青黒い光線が通り抜けた。触れるか触れないかの横を通った呪力の光線からは、身の毛もよだつ呪力量を感じた。食らえば一撃で死ぬ。それを悟らせるものだった。
「今……どうやって……気配が無かったッ!!お前何をした!!」
『死ぬお前がそれを知る必要は無い。さて、此処に誘い込まれたお前の選択肢は2つ。先のもので今すぐ撃ち抜かれて死ぬか、逃げ続けた挙げ句最後に死ぬか。どちらかだ』
「だったらテメェを見つけ出してぶち殺してやる!!」
『そうか。ならば先ず俺を見つける事だ。でなければ話にすらならんからな』
「ハッ。俺の術式なら余ゆ……っぶねッ!!」
勘で見つけ出そうとして、飛んできた右太腿を狙ってきた光線
だが気配はしない。呪力の光線も飛んでくるまで分からなかった。しかし今避けられているのは、勘が鋭くなっているからだ。放たれている光線は速度が速すぎて気付いた時にはもう貫いているだろう。だからこその勘。
黒い死神の術式は判明していない。判明させられる者が居らず。対峙したり狙われた者は必ず始末されるからだ。死人に口なしとは良く言ったものだ。全員始末されるから、例え見て解ったとしても伝えられないのだ。
──────クソッ!2人で行動してんのか!?それとも術式によるものか!?気配もしねーし、あの攻撃も放たれるまで解らねぇ!どういうカラクリなんだよ!!
一本は頭を、もう一本は左前腕を。
いや、もう人数はここまで来ると1人と思って良いだろう。実験とはいえ、こんな中距離の攻撃があるのなら、1人くらい攻め込んできてもいいはず。なのに誰1人も来ないどころか、1人も姿が見えないのは不自然だ。つまり黒い死神は1人。この攻撃は何らかの術式を使っているとみていい。
男は確信する。これだけ何度も高威力の呪力光線を放っているのだ。ガス欠になるのはすぐだと。況してや三箇所から撃っているのだ、尚更ガス欠になるのは必然だ。しかし男の確信は脆く崩れる事になった。3本の光線が、4……5……と増えていき、最終的には6つの光線が放たれるようになってしまった。
6つからはもう流石に増えてはいないものの、避けている男は必死だった。当たれば確実に死ぬ程の呪力量の光線。それが同時に6方向から飛んでくるのだ。一体何の悪夢なのかと問い掛けたくなる。しかも一向に呪力のガス欠が起きない。かれこれ30分は避け続けている筈なのだ。
「なんなんだよテメェッ!!どういう術式だ!!なんであれだけの呪力を籠めてッ……これだけ撃ち続けていられる!!どんな手を使ってやがる!!」
『死ぬお前が知る必要は無いと言った筈だ。それよりも、俺を殺すのではなかったか?お得意の勘で探し出せたのか?』
「こンのッ……知ってて言いやがってェ……ッ!!」
奥歯をギリリと噛んで歯ぎしりを立てる男の顔は真っ赤だ。虚仮にされていると分かっているのだ。男の勘は一つにしか働かない。物事に関するものか、自身に関するものか。何かが起きると勘付く、それか自身に関することで勘付く。どちらかにしか作用せず、片方への勘を強めている時はもう片方は勘付けない。
男は今、バラバラで飛んでくる光線を避け続けている。つまり、自身に関する勘を発動中だ。そこで物事に含まれる黒い死神の居場所を知るために術式を使用すれば最後、男の全身は穴だらけとなって死ぬ。それが確実の道だ。何せ、これだけ撃たれれば慣れると思いきや、全く慣れないし感じ取れない。光線の速度が速過ぎるのだ。
だからもう黒い死神の呪力の枯渇を狙っているのに、一向に攻撃が止まない。こちらはもう呪力が尽きそうだというのにも拘わらずだ。一体どれだけの呪力総量を持っているというのだ。
ここまで来ると焦りが沸いてくる。何時まで続く。何時まで撃たれる。何時
それら全ての負の感情を余すこと無く呪力に変えて、術式に回す。だが呪力の限界よりも肉体の限界が近い。もう足の裏が痛過ぎる。横っ腹に千切れるような痛みが奔り、息がもう絶え絶えだ。勘に従って動いているから頭も痛くなってきた。
早く楽になりたい。でも死にたくない。何時まで続くんだ。まるで見せしめのような有様。黒い死神が見ている。何が撃ってきているのか分からない。呪力が尽きそう。何故あっちは尽きない。俺は一体何をしている。
「──────ゆるしてくれッ!!俺がッ……俺が悪かったからッ!!もう人は殺さない!心を改める!だからもう……ゆるしてください…………」
光線が止まった。何処に居るのかも解らない黒い死神に向かって土下座をする。誠心誠意心を込めた土下座だ。男は固いコンクリートの床に向け叫ぶ。もう殺しもしないし、悪いことを一切しない。心を入れ替える。金が無いからって人を襲わないし、賭け事もやめる。ちゃんと就職して地道にお金を貯めて、細々としていようと1人の一般人として生きていく。だからもうやめてくれ。
恐怖を孕んだ男の声は倉庫の内側で良く響いた。黒い死神が何処に居ても絶対に聞こえる声量で謝罪した。改めたのだ。心の底から。まるで善人から見た悪人のように、過去の己がどれだけクズだったか思い知った。あれだけのことをしたのだ、普通というのが無理でも、自首して牢屋にでも喜んで入る。悔い改める。だから殺さないで欲しい。
土下座をして謝罪をしてからどれだけ経っただろうか。一分か?十分か?一時間か?そんなことすらも解らなくなるほどの押し潰されそうな暗い空間の中で、全身から噴き出た汗が滴り落ち、コンクリートに落ちて水滴の跡を作る。そして、何処に居るのか特定出来ない、倉庫内部で反響する声が鼓膜を揺らした。
『──────青森県〇〇に住んでいた小門信二。聞き覚えは?』
「……?無い……です……」
『お前が8ヶ月前に公園に隣接する林の中で殺し、金品を奪った5歳の娘が居る一児の父親だ』
「──────────ッ!!」
『山形県〇〇に住んでいた斉藤善樹。実家暮らしで独身。父親が4年前に他界。7ヶ月前にお前が殺すまで、足腰が悪く息子の手を借りなければ生活が儘ならない母親と2人暮らしだった。斉藤善樹が殺されて間もなく、自宅で衰弱死している母親を警察が発見』
「ぁ……ぁあ………」
『福島県〇〇に住んでいた西尾佳奈。6ヶ月前にお前が殺した中学三年生14歳。高校生となるので学校生活で必要な文房具を購入していたその日の帰り道、公園のトイレ内で強姦された後、首を絞められたことによる窒息死。財布の中身は空。両親の内母親は一人娘を殺されたことによって幻覚を見るようになり首吊り自殺。父親は娘と妻の写真を飾って現在も一人暮らし』
「ま……まって……くれ………待って……それは……」
『群馬県〇〇に住んでいた夏宮智子。お前が3ヶ月前に殺した高齢の女性。夫は5年前に他界。その日は4ヶ月ぶりに息子夫婦と孫が遊びに来るということで家に居る所を窓から侵入したお前に包丁で滅多刺しにされたことにより死亡。家中を荒らされた形跡があり、通帳や現金が全て奪われており、家族写真が斬り刻まれて遺体の上に鏤められている所を息子夫婦が発見』
「ちがッ……俺は……俺はただ………っ!!」
『そして東京の〇〇に住んでいた服部雄介。一昨日お前に殺された長女15歳、次女10歳、長男3歳の三児の父親。一般企業に務め、帰り道に長男の誕生日ケーキを購入し、帰宅途中で襲われ、身に付けていた身包みを全て剥がされ、公衆トイレに放置されていた。遺体の腐敗が進み、発見された時には無惨な姿になっていた。妻は専業主婦だったので職探しのサイトに登録している』
「ゔぅ゙ゔぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ……………っ!!」
『お前のような呪詛師が、何の罪も無く、その日を愛する者と生きている無辜なる者達を殺すから、
「いやだぁ……っ……死にたくないッ……死にたくないぃ……っ!まだ……まだ生きたぃ……おねが…ッ……お願いします……お願いします……っ!」
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、もう何もしないからと、これからは全うに生きるからと、そう震え声で宣言して縛りを結ぶ呪詛師の男を、ここまで追い詰める要因となった6つのナニカと、目の前に立つ黒い死神が持つ二丁の銃が狙いを定めていた。
「
「虎徹か。性能は上々だ。実に素晴らしい。やはりお前の造る呪具は俺の手にも呪力にも良く馴染む」
慧汰
大分良い動きが出来るようになってきたし、先輩達に教えてもらっているから強くなってるよ!
先輩達は可愛いし綺麗だしやる気が倍増!夜には龍已のご飯を食べて元気モリモリです!
龍已は良いお嫁さんになるよ……。
妃伽
拳一つでグラウンドにクレーター作って夜蛾の拳骨落とされた人。マジでメスゴリラだろ。術式は身体能力強化だよね?何が起きた??
龍已は私の嫁。一生私の為にアスパラのベーコン巻きを作ってくれ。それと戦いだけで私は生きていける。
カツ丼おいしかったれす……。
龍已
は?許しを請われたからってなんで見逃さなアカンの?
勿論追い詰めてブッコロス。ざまぁ。
勘が鋭い呪詛師……回避率高……新呪具……閃いた!
虎徹
え?龍已が呪具のリクエスト?……ふんふん。ほうほう……へぇ。ふふふっ──────オモシロそう♡
どう?上手く動いた?上々?えっへん!そりゃ勿論そうだよ!
──────僕の最高傑作だからね♡