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黒圓龍已の異変から1年という年月が経った。今年は西暦2007年の8月である。
家入は監視も兼ねて龍已の様子を出来るだけ見ている事にしていた。結果を言えば、彼がそれから異変を起こすことは一切無く、異変のいの字もなかった。五条にも時々で良いから六眼で確認しておいてくれと言っておいたが、謎の靄は欠片も視ていないそうだ。
取り敢えず、1年も時間が空いて変わった事が無いのならば、あの謎の人格が言っていた通り、出てくることはないのだろうと、一先ずではあるが納得しておくことにした家入。ただし、絶対とは言い切れず、縛りを結んだわけでもないので少しの警戒はしている。誰かにうっかりと秘密を言わないように、自分自身にすら警戒している。
まあ黒圓龍已の事は今は無事であることは確認出来たとして、1年が経過するということは、呪術高専に在籍する生徒は1学年上に上がるということになる。つまり新1年生が入ってくるということだ。呪術界はマイナーなので、今年度の入学生は1人だけだ。名は伊地知潔高といい、一般からの出である。
先輩達にクセが強くて戦闘力的な意味でも強い者達に囲まれている伊地知は肩身が狭く、戦う術を持たないので色々と困惑していた。困らせられたり、イタズラをされたり、戦闘訓練ではボコボコにされるが、虐めている訳ではなく、先輩として後輩である自身の面倒を見てくれていると実感して、それなりに高専生活は上手くいっていた。
だが一方で、ある事態は進行している。呪術師とて人間。非術師の為にと日夜犠牲を払いながら呪霊を祓っているものの、どこからか綻びが出て、心のダムが決壊しても何らおかしなことはない。呪術師が呪詛師に身を堕とす事例だってあるのだ。
「──────うん。イケるね」
「げっ……何今の?」
「……術式対象の自動選択か?」
「そっ」
五条家の天才、五条悟。彼は伏黒甚爾との戦闘で呪力の核心を掴み、反転術式を会得したことにより、1年前と比べても明らかに強くなった。無限のバリアをマニュアルでやっていたものをオート化し、呪力の強弱だけでなく、質量、速度、形状から危険度を選別出来るようになった。
無限のバリアをほぼ一日中展開する。普通ならば脳が焼き切れるところを自己補完の範疇で反転術式を回し続けることによりクリア。術式を使用する際に行う掌印の省略。術式順転『蒼』と術式反転『赫』のそれぞれの同時発動も行えるようになり、残るは領域展開と長距離間の瞬間移動だけだった。
──────先輩は特級術師になり、悟は更に力をつけて最強と謳われるようになった。
「傑。オマエちょっと痩せた?大丈夫かよ」
「はは、単なる夏バテだよ。大丈夫」
「なんだよ、ソーメン食い過ぎたのか?」
「それは違うかな」
──────任務を全て1人で熟すようになった。硝子は元々危険な任務に赴くことはない。先輩は当然1人で任務に行き、七海と灰原は2人で任務。必然的に私も任務は1人で行うようになった。
今年の夏は忙しいものである。昨年頻発した事故や災害の影響もあったのだろう、呪霊が大繁殖していた。お陰で手の空いている呪術師だけでなく、手の空いていない呪術師にまで任務が斡旋され、時間感覚が狂うような毎日を送っていた。
だからだろう、夏油傑が少しだけ窶れてしまい、元気が無くなっていたのは。その原因は術式に原因がある。呪霊操術という術式は珍しい事に、呪符などといった物を媒体にする必要も無く、取り込んだ呪霊を操り使役することが出来る。ただし取り込む為には、呪霊を戦闘不能にし、丸く黒い球体にして飲み込む必要がある。
そして負の感情から生まれた呪霊の味が美味であるわけもなく、例えるならば吐瀉物を処理した雑巾を丸めて、丸飲みにしたような味がする。これは誰も知らない。夏油傑だけが知っている、知りたくもない味。祓って飲んで、祓って飲んで、祓って飲んでを延々と繰り返す。
何時しか彼は、何の為にこんな行為を繰り返しているのか、分からなくなってしまった。解決した天内理子の護衛任務。その最後に見た、偽装された天内の死体を見て、笑顔で拍手喝采する盤星教の信者達。周知の醜悪さだった。彼女は今や海外で付き人の黒井と生きているのに、まるで盤星教に殺されたかのような錯覚を起こす程の思い出したくない思い出。
「──────猿共め」
彼は力ある者は力無き者を救うべきであると考えている。だから自身が非術師を護るのは当然だと、そう言い聞かせてきた。しかしそれは最早綻びが生じていた。何故こんなに苦しまなくてはならない?何故あんな猿共の為に命を賭して戦わなければならない?そんな思いが胸の内で渦巻いていた。
そんな発散も出来ない、行き場を失うどころか行き場を与えられない感情を抱えたまま、夏油はとある女性に声を掛けられた。日本に居る数少ない、黒圓龍已と同じ特級術師である九十九由基。任務を受けずに海外を渡り歩いている女性である。
「君が夏油君?──────どんな女が
初対面の相手に好みを聞くという特徴的な挨拶から入る九十九に、夏油は訝しげな表情を浮かべた。丁度居合わせた灰原と話していたのだが、灰原が気を利かせてその場から立ち去って、九十九は夏油にある話をした。自身は高専が行う対症療法ではなく、原因療法を探していると。
つまり、呪霊を狩り続けるのではなく、呪霊が生まれない世界を作りたいのだ。人から漏出する呪力が積み重なって形を為した存在が呪霊。となると呪霊が生まれない世界の作り方は主に2つ。全人類から呪力を無くすか、全人類に呪力のコントロールを可能にさせるかである。
ただ、九十九は前者が最も手が届きやすいと考えている。というのも、モデルケースが居たからだ。呪力を一切持たない唯一の人物、伏黒甚爾である。天与呪縛によって呪力が一般人並みは居ても、全く無いのは世界彼1人だけだ。
天与呪縛のフィジカルギフテッドにより、呪力が無くても強化された五感で呪霊を認識する。呪霊を完全に捨て去ることで肉体は一線を画して、逆に呪いに対する耐性を獲得した。呪霊を飲み込む事が出来るのも彼の肉体があってこそである。つまり彼は新たなステージに立つ唯一の人類であり超人。新人類とも言えるのだ。
勿論、そんな彼が生きているのだからコンタクトを取って、肉体を調べさせて欲しいと願った。これは呪術界……いや、世界のためであると説明して。そんな説明を聞いた甚爾の返答は……否だった。
『あ?……メンドクセーからパス』
『君のような存在は他に居ない。謝礼は弾むよ?』
『なんで体を弄くり回されねーといけねェンだよ。イヤなこった』
清々しい程の断りを入れられてしまっている。当然それだけで諦めるつもりは無いので掛け合っている最中だが、念の為にその他の方法も考えている。
術師からは呪霊は生まれない。術師が死後に呪いへ転ずる事を除いて。それはどういう意味なのかというと、術師は非術師に比べて呪力の漏出が極端に少ない。術式を使用することでの呪力の消費量や容量に差もあるが、一番の理由は流れだ。
術師の呪力は本人の中を良く廻る。無駄が無いから呪霊は生まれない。つまり、大雑把に言ってしまえば、全人類が術師になってしまえば、呪いは……呪霊は発生しないのだ。だがそれは逆の考えが出来てしまう。
「じゃあ──────
「……夏油君」
「……ッ!!あ、いや……今のは……」
「──────それは“アリ”だ」
「え……?」
「というか、それが一番簡単な道だろうね。非術師を間引き続けて生存戦略として術師に適応してもらう」
要は進化を促す。鳥が翼を得たように、恐怖や危機感を使って。しかし九十九は、それを実行するほど自身はイカレていないと断言した。夏油がその考えをどう思っているかは別としてだ。だから、九十九に非術師は嫌いかと問われて“分からない”と答えてしまえるのだ。
その後、夏油は九十九ともう少しだけ話した。非術師を見下す自身と、それを否定する自身。どちらを本音とするか、それはこれから選択するんだと言われた時は、以前ならば否定する自身が本音だと即行で答えただろう。でも即答出来ないということは、揺れに揺れているということになる。
そして最後に、天元様と天内が同化しなかった件については、問題ないと言われた。替えでも居たのか、天元様は安定しているとのこと。だが、今そんな話をされても何とも返事を返すことは出来なかった。
「はぁ……特級になって1年経つが、任務の量が尋常じゃないな」
「──────お疲れ様です、先輩」
「あぁ、夏油もお疲れ様だな」
今年の夏の任務量は呪術師を殺しにかかっていた。特に特級術師である五条、夏油、龍已の3人は休む暇が無いと言っても過言ではなかった。そしてそんな龍已は、真夜中の1時に高専へ帰ってきた。補助監督の鶴川と別れて敷地内に入ったはいいが、何となく自身の部屋に帰る気持ちになれず、高専のグラウンドの方へと歩みを進めていた。
グラウンドへ入るための、コンクリートの階段に座り、今日の気分である甘いものの摂取として、チュッパチャプスをポケットから取り出して口に入れる。カラコロと飴の部分を歯に当てて、舌で舐めながらほんのりとした甘さを感じていた時だった。気配で察知していた夏油が背後からやって来た。
気配と声色から、少し疲れている印象を抱く龍已は、真ん中に座っていたのを横にズレてスペースを開けた。夏油はそれを横に座って良いのだと捉えて、ありがとうございますと言って隣に腰掛けた。お疲れ様と言い合ってからは両者共に何も言わなかった。
真夜中に吹く、湿気のある少しだけ冷たい風。日本の夏風は肌に触れるとジメジメした印象を与えてくる。Yシャツだけとはいえ、制服でいると少しだけ気持ちが悪い。昼間に呪霊を祓ってきたので大量の汗を掻いている所為もあるのだろうか。
「……先輩」
「何だ」
「先輩は非術師についてどう思いますか」
「随分と漠然とした問いだな」
「……最近、疲れているからなのか色々と考えてしまうんです。非術師のこともそうです。盤星教で見た光景が頭から離れません。時々、何の為に戦っているのか分からなくなってしまうんです」
「……なるほどな」
語る言葉は少ないが、それだけで察してくれと言わんばかりの気配。龍已はそれをしっかりと受け取った。つまり、何で非術師の為に戦っているのか解らなくなってしまったということなのだろうと。前に彼が何の為に戦っているのかを聞いた。力あるものが、力無き者の為に戦うのは当然という言葉を。
今ではそれが揺らいでいるのだろう。守っている……いや、
さて、これはどう答えたものかと考える。非術師には確かに醜い部分を誰彼構わず向ける奴も居る。だがその逆で根っからの善人も存在する。身近で例えるならば龍已の親友達や、甚爾の妻である暁美や娘の津美紀だ。まだ子供であるということを考慮しても、津美紀は善人だ。
今は繁忙期でとても忙しい毎日を送っていて、全国を回りに回っている。すると龍已でも疲れが溜まっていくのだが、それを目敏く見つけて心配してくれる非術師も居る。全く知らない人である自身に声を掛けて、心配してくれるのだ。気配からも心配の年がありありと発せられてくる。そんな人を善人と言わずして何と言えばいいのか。
今の夏油はかなり危ない状況にあるということは火を見るより明らかだ。自信ありげに当然だろう?と言わんばかりに非術師は守るべき者達と言っていたのに、今では何で守らなくてはいけないのかと思い始めているのだから。もしかしたら、もしかしてしまうかも知れない。故に言葉を選びながら話し始めた。
「呪霊は非術師には見ることも感じることも出来ない」
「……はい」
「だが見える者を、見えるのだと察する事は出来る」
「……?」
「俺は昔、呪霊は他人にも見えて当然のものだと思って発言したことがある。結果は当然の除け者。意味の解らない事を言い出す変な奴と刷り込んでしまった。常に無表情のことも疑いに滑車を掛けていると思うが……兎も角、俺に友達は居なかった。いつも1人で学校に行き、授業を受け、家に帰った。だがな、そんな俺に……他の者には見えないナニカを見ていると解っていて話し掛け、友達だと言ってくれる非術師が居た」
「それは……良い人ですね」
「あぁ、良い奴だ。得体の知れない存在というのは、善悪の区別がいまいち把握し切れていない子供にとっては邪悪に映り、より顕著な反応をするようになる。明らかに態と無視をされている俺に寄り添って、同じく無視をされるようになっても、構わないとまで言ってくれた。その時に俺の中で、友人達は掛け替えのないものとなった。今でこそ本当にどうしようもない人間を時折見掛けるが、その時は友人達を思い出すようにする。こんなに良い人が居るのだから、これだけ醜い奴もそれは居るだろう……と。物事には天秤があると思えばいい」
「天秤……ですか」
「善人が居るならば、それに釣り合う悪人が居る。強い者が居るならば、それに釣り合う弱い者が居る。要は、
前を向いて、口からチュッパチャプスを取り出しながら語る龍已の横顔はいつものものだ。完全に無表情で眉の端すらピクリとも動かない。でも発する声は優しかった。相談してくれたから、しっかりと相談に乗ると言ってくれてるようであった。
歳はたった1つしか変わらないのに、言葉の重みが違うなと思った。龍已は小学校、中学校と親友達以外に友達が居なかった。それで良いと自己完結していた部分もあるが、無視されたり、元から居ない者として扱われた。でも、それを補ってくれる最高の友人達が居たから、こうして精神的に参りやすい呪霊や呪詛師との戦いに明け暮れることが出来るのだ。
非術師で善人であった両親も殺された龍已には、仲良くしてくれる親友達が全てだった。そんな龍已に対して、非術師な夏油の両親はまだ生きている。友達だって呪霊が見えることを隠していたからそれなりに居た。だから言葉に重みが伝わってくるのだ。龍已は最後に、非術師で一番お前の身を案じてくれるだろう、両親のことを考えてみろ。本当に参っているなら、両親と話し合え。そう言って飴を噛み砕きながら寮の方に戻っていった。
いい話をして終わらせたように見える龍已だが、これは警告でもあった。非術師を守ることに疑問を覚えて、最終的に非術師はこの世に要らないと判断をした場合、非術師に大切な者が居る自身を……黒圓龍已を敵にする事になるのだぞと、暗に伝える警告だった。後は、夏油の心の持ちように賭けるしか無かった。
「──────大丈夫か?七海、灰原」
「……ッ!!黒圓先輩ッ!!灰原が重傷を……ッ!!」
「ぅ……こく……え……せんぱ……ぃ?」
「夜蛾先生からお前達が緊急応援を出したと聞いて、比較的近くに居る俺に任務の引き継ぎが為された。どういう状況だ?」
特級術師らしく忙しく県を跨いで任務を消化していたところ、近くで緊急応援を発したとのことで駆り出された。現場に着くまでにある程度の情報を知っておこうとしたら、その現場で任務を受けているのが七海と灰原であると判明した。
後輩を亡くす訳にはいかないと、無理を承知で急ぐように補助監督の鶴川へ頼み、どうにか2人がまだ生きている内に現場に到着することが出来た。術式を付与されていない領域内に侵入すると、鳥居が所々に建っている岩壁に囲まれた水辺という、不思議な光景の広がる空間に入った。
そこには、学校の体育館程の大きさをしたナマズのような体に、顔の部分には3つの目と、人間と同じ歯並びをした口が付いた存在が居た。そしてそれに対して七海が座り込みながら鉈を向けており、その膝の上には両脚が太腿の半ばから無くなって、右腕も上腕辺りから千切れている傷だらけの灰原の姿があった。
「あれは産土神信仰の土地神です……ッ!それも特級に近い1級です……ッ!!灰原は私を庇ってこんな重傷を……ッ!!」
「……なるほど。2級案件ではなかったか。階級の違いは俺が報告しておく。気を休めて灰原の応急処置に集中しろ。後は俺がやる」
「──────■■■■■■■■■■■ッ!!!!」
「荒ぶるのはやめていただきたい、土地神よ。私達はこの場を荒らすつもりはなかった。故にこれ以上の戦いは不毛。見逃してくれるのならば早急に消えることを約束します。どうか、賢明なご判断の程を──────」
「■■■■■■■■■■■■■■ッ!!」
「……攻撃意思を解除して下さい。そうしなければ、私は武力によってこの場を鎮める手を取らねばならなくなります」
「──────ッ!!」
「警告はしたぞ──────『天ノ晄』」
土地神は天から降り注ぐ青黒い呪力の光線によって呑み込まれた。確実に消し飛んだかと思われたが、土地神が消滅しない程度の絶妙な威力だったようで、瀕死となった事で術式の付与されていない領域は閉じられ、3人は出てくることが出来た。
灰原は意識を朦朧とさせる程の重傷であり、複数の部位欠損ということもあって完全に治しきれるかは解らない状況だった。七海も全身傷だらけなので手当を受けなくてはならない。2人は高専に帰って家入の治療を受けることとなり、残りの任務は龍已が請け負った。
緊急で運び込まれた七海と灰原を、偶然居合わせた夏油が目撃した。今突然死んだとしてもおかしくない傷を負った灰原と、安静にしなければならない傷を負っている七海を。2人の状態を見て思い浮かべるのは、終わりの無い戦いの果て、積み上がっていく
2007年9月██県██市(旧██村)
任務概要・村落内での神隠し、変死。その原因と思われる呪霊の
「はぁ……──────これはなんですか?」
そして夏油は、とある任務先にて木製の牢の中に閉じ込められた2人の年端もいかない、暴行の後がある少女2人と、呪いの何たるかも理解していない無知蒙昧な
「
「……違います」
「
「事件の原因は、もう私が取り除きました」
「
「……っ!それはあっちが──────」
「
「
「──────皆さん。一旦外に出ましょうか」
非術師を見下す自分。それを否定する自分。どちらを本音にするかは、君がこれから選択するんだ
その言葉が頭に流れてきた時には、夏油傑は術式を展開し、今まで守ってきた者達へと向けていた。
『──────お前の心は善だ』
「……すみません先輩──────私は違ったようです」
担当者である高専3年の夏油傑を派遣から5日後、旧██村の住民112名の死亡が確認される。
全て呪霊による被害と思われたが、残穢から夏油傑の呪霊操術と断定。
夏油傑は逃走。
呪術規定9条に基づき、呪詛師として処刑対象となる。
「……は?」
「……………………。」
「……何度も言わせるな。傑が集落の人間を皆殺しにし、行方をくらませた」
「聞こえてますよ、ちゃんと。センパイも俺も。だから、は?つったんだ」
「……傑の実家は既にもぬけの殻だった。ただ、血痕と残穢から恐らく
「
「……ッ!!ンなわけねぇだろッ!!傑がそんなことをするわけが──────」
「──────悟。俺も……何が何だか分からんのだ……」
「──────ッ!!!!」
夜蛾から夏油の呪詛師堕ちのことを報告された五条と龍已は、各々色んな思いを抱いていた。大切な親友がそんなことをする訳が無い。あの時語り合った後輩がそんなことをするとは……と。
そうして明くる日、家入が高専から出て買い物をしているところを夏油と邂逅した。連絡は五条と龍已に発信された。場所は新宿である。すぐに逃げるかと思われるだろうが、夏油はその近くから動くことはなく、まるで来るのを待っているようなものだった。
そうして夏油が居ると言われた場所に五条が到着した。何故非術師を殺したのか、何故あんな事をしたのか説明を求めながら怒気を露わにする五条に対して、術師だけが生きる世界を作りたいのだと語った。待っている間に家入に話したことと同じだ。
そしてふざけた世界を作るためなら親すらも殺すのかと問い、家族だけは特別という訳にもいかないから殺したと、認めた。意味はあり、意義があり、大義ですらあるという夏油の顔は至極真面目なものだった。
「非術師殺して術師だけの世界を作る!?無理に決まってんだろ!出来ねぇことをセコセコやんのを意味ねぇっつーんだよ!」
「……傲慢だな」
「あ゙?」
「先輩なら出来るだろう。そして君もだ、悟。自分に出来ることを、他人には
「──────ッ!!」
「先輩の強さを見誤ってる呪術界は君を最強と呼ぶ。ならばそんな最強である君に問う。君は五条悟だから最強なのか?最強だから五条悟なのか?」
「何が……言いてぇんだよ」
「もし私が君や先輩になれるなら、この馬鹿げた理想も地に足が着くとは思わないか?──────生き方は決めた。後は自分に出来ることを精一杯やるさ」
「──────ッ!!」
五条は掌印を構えた。省略を可能とした彼でも、掌印が必要となれば繰り出そうとする術式は限られる。仮想質量を押し出す『茈』。それを夏油に……親友である男に向ける。しかしそんな五条に対して、夏油は悠々と背を向けた。
周りに巻き込みかねない非術師が居るから……ではなく、彼が自身を殺せないということを解っているからだ。しかし、そんな夏油も非術師に紛れ込んで駆け出した。五条には出来なくても、彼なら出来ると確信しているからだ。
呪力による弾丸が、発砲音を消した大口径対物狙撃銃から放たれた弾が夏油に向かって飛来する。狙うは頭。弾丸が飛ぶ直線上から逃れても、呪力により形成された弾丸は曲線を描き、紛れる非術師の間を抜けて殺そうと迫る。
「──────ごめんセンパイ。虚式『茈』」
「──────ッ!?術式反転……『
4キロ離れたところに居る、ビルの屋上で『黒曜』をうつ伏せで構えていた龍已の元へ、『茈』が飛来した。咄嗟に防御をしたが、その所為で呪力弾の操作が狂い、店の看板を撃ち抜いた。そして夏油の気配は龍已の術式範囲である4.2195キロメートルから出てしまった。
龍已のことを殺すつもりはないというのは解っている。本気でやれば巨大な仮想質量になって襲い掛かってくるからだ。だが飛んできたのは野球ボール程度のものだった。『黒曜』に付いているスコープに呪力を流して倍率を変え、五条を見る。顔を俯かせていて表情が解らないが、決して晴れやかなものではない。
その後五条は高専へと戻り、龍已は他に与えられている任務へと戻っていった。五条は夜蛾と階段の部分で話し合っている。何故後を追わなかったと言われたが、今更それを聞くのかと問えば、謝罪が返ってきた。
「だが、龍已も逃がしてしまうとはな」
「センパイは何て言ってました?」
「『撃てませんでした。申し訳ありません』だ。まあ仕方ないのだろうがな」
「……そっか。後で
「………………………。」
五条と夜蛾はその後互いに話すことはなく、居心地の悪い静寂が訪れた。
この一件以来、五条は口調を高圧的なものから柔らかなものへ変えて、一人称を『俺』から『僕』へと変えた。何時ぞやに親友から言われた、口調へと変えたのだ。
対して夏油は解体された筈の盤星教……とは別の、根は変わらない別の団体の拠点へ赴き、圧倒的力の差で心をへし折り、恐怖と暴力で非術師達を屈服させた。
彼が最終的に選択した答えは……猿は嫌い。心の底から出した本音であった。
夏油傑
九十九由基の発言から、2007年になって特級術師に昇格したと思われるので、特級術師。流石に違うことはないと思う。
天内は死んでおらず、海外にて身を潜めている。なので盤星教に居た天内は姿を変えた龍已でしっかり生きていた。でも、仮に死んでいたとしても、盤星教の信者達があそこまで醜いのは変わらないということで、あたかも天内が殺されて醜さを見ていたかのような錯覚を起こしている。
呪霊操術に必要な取り込む工程の嚥下は、ゲロを吸った雑巾の味がする。それを何の、誰のためにやっているんだと疑問に思い、歪んでしまい、最終的には呪詛師となってしまった。特級術師だったことから、特級呪詛師へと変貌した。
五条悟
親友が悪堕ちしてしまったことにショックを隠せない、表の最強。
夏油を殺そうとしていた龍已を止めたのは、感情がぐちゃぐちゃになっていたから。龍已に会った時に、あの時攻撃してごめんと謝った。あれは流石に仕方ないということで許してもらった。
口調を改めたら家入に気味悪がられ、夜蛾からはどうした?と心配され、甚爾と恵からは気色悪いものを見る目で見られた。誠に遺憾である。
七海&灰原
七海は部位欠損するほどの怪我を負った訳ではないから大丈夫なものの、灰原はかなりの重傷だった。1時は生死の境を彷徨う程だったが、家入の懸命な処置により死ぬことはなかった。だが脚は戻っても後遺症がある。
このまま呪術師を続けるにしても、動きに制限が出てしまうのでどうしようかと七海と話し合っている。必ずしも呪術師の道を歩まなければいけないということでもないので悩み、同時に七海も友人が死にそうになっているのを見て、呪術師はクソだという考えが出始めている。
龍已
五条が攻撃してこなければ、恐らく夏油の頭は消し飛んでいたが、邪魔をする気持ちは分かるので今回は仕方ないと考えている。だが、呪詛師になった以上は次から容赦しない。
階級が1級術師から特級術師になった。任務1つで貰える報酬が跳ね上がったけど、質と量が大分増えた。疲れて異常が出たというのに忙しくなったからか、家入さんに徹底的な栄養管理をされている。
最近で一番驚いたことは、任務と仕事の掛け持ちで7徹し、黒い死神の仕事中完全に居眠りしながら呪詛師殺してたこと。気付いたら頭だけ転がってた。体は何処にやった??
家入硝子
龍已が特級術師になった時に、まあ当然だなと思ったが、任務がとんでもない量となり、龍已の手帳見たときに任務だらけでドン引きした。これに合わせて黒い死神の仕事もしてんの……?私が栄養管理しなくちゃ(使命)となった。
医師免許を手に入れるために大学受験の勉強をしている傍ら、龍已の為に栄養士の資格の勉強もしている。
最近のマイブームは女子寮の自身の部屋ではなく、龍已の部屋に直行して寛ぐこと。ベッドに入り込んでいると布団の上から帰ってきた龍已が抱き締めてくれるのでバカほどハマってる。
高専卒業したら龍已が一人暮らしするだろうから転がり込んで同棲する気しかない。
夏油が呪詛師に堕ちたことを教えられた時は、アイツ犯罪者じゃんウケる(笑)と思った。それだけ。
九十九由基
謎多き呪術師であり、数少ない特級術師。海外を転々としていて真面に任務を受けない。特級術師になっているだけの女性。
初対面の男性に好きなタイプを聞く癖……癖?がある。
どう考えても夏油傑がダークサイド堕ちする後押しした人。タイミングもかなり悪かった。何でそのタイミングで非術師皆殺し“アリ”って言うかなぁ……。
「黒圓龍已君だよね?どんな女が
「家入硝子です」
「清々しいほどはっきり言うね!」