呪術廻戦───黒い死神───   作:キャラメル太郎

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最高評価をしてくださった、叶翔 ひざグリ さん、ありがとうございます。




第四十四話  悩み留まり

 

 

 

 特級呪詛師、夏油傑。彼が始めた百鬼夜行には数々の呪術師を投入している。呪術連やOGにOB、そして御三家。呪術界を語る上で外せない三つの大きな権力を持つ御家。五条家。加茂家。禪院家。今回の戦いには勿論参加している。

 

 参加しなければ、大きな権力と力を持っている筈の御三家が逃げたと思われ、何を言われるか分からない。沽券に関わってくるので参加は確実だろう。そんな禪院家の中で、実際に戦いへ参加する者を選んだ。誰か居ないかと禪院家26代目当主、禪院直毘人(なおびと)に問われた時、ポツポツと挙手された。

 

 参加する者が決まり、いざ百鬼夜行が開戦した時、それぞれは呪霊を祓っていた。御三家と呼ぶに相応しい戦果だろうことは間違いない。しかしそこへ、目にも止まらぬ速度で疾走し、擦れ違い様に呪霊を祓っていく者を発見した。呪力を全く感じられず、肉体の強みだけを活かした超人。伏黒甚爾である。

 

 目にした男は、腰に下げた刀の柄を強く握り締めた。思い起こすのは生物として備える純粋な恐怖。自分は奴にとって其処いらにのさばる有象無象に過ぎないのだと、自身で自身を断じてしまう程の圧倒的力の差。呪力も術式も持たない存在に対して抱く気持ちではないのは理解している。しかし、到底納得が出来ないのだ。

 

 

 

「禪院甚爾ィ────────────ッ!!!!」

 

「あぁ?俺は婿入りして今は伏黒だ。つか、なんか見覚えあんなオマエ。……誰だっけか。思い出せねェな」

 

 

 

 鞘に納まった刀を抜刀し、刀身の先を止まった甚爾に向ける。その男は禪院家の者であり、名を(おうぎ)と言った。禪院家当主である禪院直毘人の弟であり、東京の呪術高専に在籍している禪院真希と、京都校に在籍している禪院真衣の父である。それなりに禪院家でも発言権がある彼のことを、甚爾は覚えていない。

 

 術式を持たないどころか、呪力すら持たず生まれた甚爾のことを、禪院家は猿と断じて長年迫害していた。真面な育て方はされておらず、呪霊が居る森の中に放置されて襲われた事もある。そんな家に嫌気が然し、禪院家を出たのだ。それから何十年も経っており、当主の禪院直毘人以外の顔も名前も殆ど覚えていない。禪院扇もその1人であった。

 

 生物としての恐怖。心が負けを認めそうになるのを叩き起こして対峙しているのに、相手は何とも思っていないどころか自身のことを忘れたと言う。屈辱であった。猿風情に侮辱されたに等しい。禪院扇は内に抱く恐怖を拭い去る為にも、刀を甚爾に向けて殺意を滲ませる。

 

 

 

「──────駄目やろ扇のオジさん。アンタじゃ甚爾君には勝てへんよ。そんなモン自分で解ってるやろ?」

 

「黙れ直哉……ッ!!私は猿に遅れなぞとらんッ!!」

 

「馬鹿やなぁ。だから術式も戦い方もパッとせんねん。無駄なだけやから下がっとき。あ、甚爾君は久し振りやな。元気しとった?最近会わへんからどうしてるか考えとったんや」

 

「あー、ジジイの倅の直哉……だっけか」

 

「覚えててくれたん?それは嬉しいなぁ。ところで、京都を任されてる龍已君は何処に居るん?高専の姉妹校交流会以来会ってないねん」

 

「龍已ァ?アイツなら──────もう来るぜ」

 

 

 

 気配で察していた甚爾は、上を見上げた。つられて禪院扇と禪院直哉も上を見る。空から人がゆっくりと落ちてくる。地面の上に立っているかのような姿で、高度を下げているのだ。原理は解らないが、奴の術式は空を飛べるようなものではなかったはず。そう思っている扇を置いて、空からやって来た龍已は地面に降り立った。

 

 足が地面に付いた時も、彼には何ら変わりは無い。表情も噂通り無を表す。仕草一つ取っても、こちらの命を脅かすものではない。だが明らかに、向けられる怒気は無条件で臨戦態勢を取らせた。彼等の一連の動きは全て知っている。認識出来なかっただろうが、呪力の音波が届いていたのだ。

 

 

 

「百鬼夜行中に何をしている。そちらは禪院家の者ですね。何故鋒を甚爾に向けているのです。向けるべきは呪霊及び呪詛師の筈。甚爾が至らぬ事を仕出かしたならば俺が代わりに謝罪しますが」

 

「俺ァ何もやってねェ。呪霊祓ってたら怒鳴り散らされただけだ」

 

「実際のところ、『呪心定位』で事の詳細は把握している。だから解せない。何故攻撃的意志を向けるのかを。説明してもらえますか」

 

「あー、龍已君。扇のオジさんはちょっとココがやられてしまってんねん。無視してええよ。それよか、龍已君俺とちょっと遊んでくれへん?此処でばったり会ったのも何かの縁と考えて」

 

「……何?俺が何を言っているのか理解していないのか?こんな時に揉め事を起こしているから説明を求めているんだ。お前の遊びに付き合っている暇は無い」

 

「そうツレないこと言わんで──────やッ!!」

 

 

 

 駆け出した禪院直哉が途中で加速した。ほんの1秒程経っただけなのに、疾走の速度を軽く上回ったのだ。そして掌を向けて触れようとしてくる。龍已は突然攻撃的な行動に奔った直哉に苛立ちを感じながら、掌に触れない余裕を持って横にズレて回避した。脇を抜けていった直哉は更に速度を加速させ、後ろから回り込んできた。

 

 時間が経つにつれて速度を加速させていく直哉に龍已は翻弄され、追い詰められていく。……なんて事が起きれば話は早く終わったのだろうが、龍已はどれだけ加速されて迫られようと、一切触れられること無く、向けられた掌を悉く回避した。視界の中の、周りの光景が背後に恐ろしい速度で流れていく加速中の中、直哉は舌打ちを打った。

 

 何度も術式を使って加速しているのに、()()()()()()()()()。速度に追いついているのだ。目視して、伸ばされる手を見てから避けている。つまり余力は十分と言いたいのだろう。手を伸ばしても届いていない現状に、直哉は口元を歪ませて歯軋りをした。

 

 直哉と龍已が戦っている一方。禪院扇と甚爾も話が進んでいた。何故攻撃的なのか理由を知ろうとしていたのに、直哉に邪魔されているのだ。甚爾は面倒くさそうに頭の後ろを掻いている。扇は自身を前に敵とすら思っていない行動と馬鹿にしたような表情に青筋を浮かべつつ、何かで震える手を意図的に無視した。

 

 

 

「ンで、扇っつったか?名前聞いて思い出したわ。オマエあれだろ、真希のオヤジだろ」

 

「アレ等は私の子ではない。単なる出来損ないの胎でしかない。奴等の所為で私は当主に選ばれず、歴史の浅い術式を持つだけの兄が当主となった。全ては奴等が出来損ないだったからだ。娘だと思ったこともない」

 

「へー。相変わらずの家で安心したわ。やっぱり禪院(クソ)はクソじゃねーとな」

 

「呪いが見えず、私らが通る純粋な肉体強化の途中過程程度の肉体。相伝は持たず、小さなものを日に1つ創るのがやっとの呪力量と練度。それに加え、双子という凶兆。奴等は生まれてから何の役にも立っていない」

 

「そうかよ。俺には関係ねーことだ。だけどなァ?いつまで俺に武器向けてるつもりだ?やりあうってンなら、やってやってもいいぜ。ご主人サマからお許しが出たみたいだからな」

 

 

 

 チラリと目線を変えると、龍已が手話を使っていた。何かあった時のために共通して覚えていた暗号。それを読み取って、襲い掛かってきた場合は不可抗力ということで不問にするから、戦闘不能に追いやってしまえと言っていることを察した。

 

 昔に散々痛めつけられたクソ筆頭の禪院の奴を合法的にボコせるならこんな上手い話は無いと、甚爾はニヤついた笑みを浮かべながら舌舐めずりをした。戦う気になった甚爾から発せられる気配は、恐ろしく強烈であり、毛穴に針を刺し込まれている錯覚に陥る。

 

 目を限界まで見開き、体中から大量の汗を分泌する。刀の柄を握る手が震えを大きくさせ、刀がガタガタと音を鳴らした。何という事だろう。呪力も術式も持っている特別1級呪術師が、呪力も持たず術式すら持たない存在に対して怯え、心の底から恐怖している。武者震いなんぞとんでもない。正真正銘恐怖からくる震えだ。

 

 だが扇とて特別1級呪術師だ。恐怖で怖じ気づき、この場を引く……ことはない。ここで逃げれば一時的な心の安寧が訪れるが、結局のところ逃げたという事になる。禪院に生まれた猿に対してだ。それは到底受け入れられるものではない。

 

 

 

「術式解放ッ!!来いッ……禪院に生まれた猿がァッ!!──────『焦眉之赳(しょうびのきゅう)』ッ!!」

 

「クッ……ははッ!!」

 

 

 

 構えた刀に炎が宿る。炎を纏って唸りを上げ、周囲に高温の熱を放出している。扇の持つ術式の完全解放である。これで甚爾を斬り伏せるつもりだった。しかし、人間の域を超えた超人の肉体は、鮮やかで力強い躍動を見せながら神速の速度を叩き出し、手に持つ3節棍を振りかぶった。

 

 姿勢を低くしながら走っている甚爾に、扇は対応出来ていない。その凄まじい速度から完全に見失い、速度に対応出来ていないのだ。御三家に伝わる技を使えば、あるいは対応出来たのかも知れないが、今行っているのは自身の術式である。対応は自分でやるしかなかった。故に……扇は甚爾を認識する前に攻撃を受けていた。

 

 振りかぶられ、伸ばされた3節棍である特級呪具『游雲』は、唯一術式効果を持たない特級呪具だ。だがその代わり、持ち主の膂力によって与えられる一撃の重さは変わってくる。つまるところ、超人の肉体、最強のフィジカルギフテッドを持つ甚爾が『游雲』を扱えば、特級呪霊を一撃で撲殺できる破壊力を秘める。

 

 炎を纏う刀に叩き付けられた『游雲』は、抵抗も無しに刀を粉々に破壊して半ばからへし折った。そして速度を止めることなく扇の腹部に直撃する。くの字に曲がって大量の血を吐き出し、何が起きているのか理解出来ておらず限界まで目を瞠目させる。絶妙な武器術で扇の体は吹き飛ばされず、その場に蹈鞴(たたら)を踏んで体を蹌踉(よろ)めかせた。

 

 ふらりと、脚が後退りし、激痛を訴える腹部を両手で押さえながら視線を上げる。甚爾の事を睨み付けたのも束の間、ニヤついた笑みを浮かべて硬く握り込んだ右拳を振りかぶっている姿を見た。回避は無理だ。『游雲』の一撃で既に瀕死と言っても良い。それに甚爾の動きは、呪力で肉体を強化しようが見えず反応も出来ない。反射的な回避も間に合わない。結果。扇は甚爾の拳を顔面で受けた。

 

 強靭な筋力から来る衝撃は想像を遙かに超え、顔に暴走車が突っ込んできたと錯覚させた。それでも甚爾は、殺さないように加減をしている。本気でやれば頭が弾け飛ぶことを知っていたからだ。だから手加減したのだが、扇の体は十数メートル吹き飛ばされて店のガラスを突き破って壁にめり込んだ。

 

 

 

「が……ぁ゙………」

 

「猿、猿って言うのもイイが、その猿に()けるオマエは何て言えばイイんだ?ま、興味ねーけどな」

 

 

 

 拳を振り抜いた姿を最後に、扇の意識は完全に失われた。網膜に焼き付く程、甚爾の姿に恐怖を覚えた。これから先、扇が甚爾の事を忘れることはなく、忘れられる事もないのだろう。体の芯に深く刻み込まれてしまったのだから。

 

 呪術界の御三家と評される禪院家。そこでは相伝の術式を持っているかが重要視され、術式を持たない者は迫害される。ましてや呪力が無いとくれば壮絶な迫害を受ける。故に甚爾は家の者達から猿と呼ばれて蔑まれていた。しかし一方で、今の禪院家が在るのは甚爾の気紛れによるものだという認識が存在する。

 

 人間ですらないと蔑んでいた存在が、1度何かの拍子に禪院家に乗り込んで来れば、禪院家はその瞬間から全滅が確定する。それだけの力を、甚爾は持っていた。猿は猿でも、人間を超越している猿である。人間の呪術師では勝てないのもまた、仕方ないのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────クソッ!クソッ!何でやッ!何でこんな届かへんねんッ!!こっちはほぼ最高速度やでッ!?何で()()()()()()んッ!!おかしいやろうがッ!!

 

 

 

 禪院家26代目当主、禪院直毘人の実の息子であり、相伝の術式を継いだ直哉は才能があった。現に特別1級呪術師をやっており、性格は兎も角として禪院家の中でも最高クラスの地位と実力を兼ね備えていた。禪院家の精鋭部隊で構成された『丙』の筆頭であり、次期当主の最有力候補である彼は、血を流すほど口を噛み締めていた。

 

 複雑で扱いが難しい術式をフルに使い、最高速度に達した。その速度は亜音速にもなり、飛行機と同じくらいの速度である。その速度の中、直哉は龍已に掌で触れようとしていた。しかし躱される一方であり、掌で触れることが出来ない。蹴りを入れようとしても、殴打を繰り出しても全く入らないのだ。しかも、必ず目が合う。龍已は速度についてきているのだ。

 

 術式を使い始めて速度が乗り始めた時に目視しているなら解るが、もう最高速度に達している。これ以上は視界を()()()()()使えなくなってしまい、1秒フリーズしてしまう。龍已にとって、1秒あれば殴打の10は叩き込める最高の隙だ。だから直哉はこれ以上速度を上げられない。

 

 

 

「まだ続けるか。これ以上聞き分けが無いならば禪院家といえど容赦せんぞ。これは()()()警告だ」

 

「……ッ!!ははッ!!何を言ってるんや龍已君。これは単なる遊びやん。まァ──────本気になってくれるならそれでもええけどなッ!!」

 

 

 

 龍已の周囲を常人には一切見えない超速度で駆け回り、攪乱させながら隙を見ている。フェイントを混ぜ込んで術式もフルに活用する。掌で触れれば()()確実に1秒のフリー時間を得ることができる。しかしすぐ龍已の懐に入り込もうとするのはもう無理だろう。何故なら、彼が最後の警告に反発した瞬間、拳を構えたからだ。

 

 途端に変わる気配。出方を窺っているようなものから、戦闘用のものへと変わったのだ。100在る内の10程度……要は前回の1割程度のものなのだが、直哉にとっては凄まじい気配ではあった。本気の殺す気でやらねばならないと思うくらいには。

 

 直哉の父である禪院家26代目当主、禪院直毘人は五条悟を除いた最速の呪術師と謳われている。それは、直哉も継いだ相伝の術式に関係する。最近になって出て来た術式であり、複雑なものだ。しかししっかりと術式を使い熟せば、最速とまで呼ばれるようになるのだ。

 

 直哉が使う術式。それは禪院家相伝の『投射(とうしゃ)呪法』という。自らの視界を画角とし、1秒間の動きを24の瞬間に分割したイメージを予め頭の中で作り、それを実際に自身の体でトレースする呪術である。 動きを作ることに成功すればトレースは自動で行われる。

 

 ただし、頭の中で描いたイメージの動きを作るのに失敗するか、成功してもそれが過度に物理法則や軌道を無視した動きがあれば、その場でフリーズして1秒間全く動けなくなってしまう。それはどんな状況でも絶対である。しかし、後者に関しては裏返せば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということである。これがこの術式の醍醐味だ。失敗しない範疇であれば、その動きが術者の身体能力的に不可能な場合でも、問題なく全自動でトレースされるのだ。

 

 制約に反しない範囲での加速度で絶えず術式を繋げていけば、制限は青天井に拡大されていくことになる。仮に1秒で時速100kmまで加速できるとし、術式効果終了直後の時速100kmで動いている状態で間を置かず、術式を再び発動すれば更に時速100km加速できてしまい、結果合計で時速200kmになる。それが、1秒毎に直哉の移動速度が跳ね上がっていた理由だ。今現在、直哉の速度は飛行機にも匹敵する。

 

 また、術式発動中の術者の掌に触れられた者にも、同じ効果が適用される。これを聞けば、一見敵もこの術を利用できるように思えるかも知れないが、実際には触れられてから1/24秒という極短い時間で動きを作ることを強制されることとなり、術式の情報や特別な才能、訓練も無しで即座に24コマ分の動きを正しく作るのはまず不可能。認識としては、触れた相手を強制的に1秒間フリーズさせる技として考えている。このフリーズは術をかけられた者には自覚が無く、相手からするとまるで時間が1秒飛んだかのように感じるのだ。これが、龍已に掌で触れようとしていた理由である。

 

 少し複雑であり、使い熟すにもかなりの時間を有する。直哉は父から受け継いだ才能があり、日々鍛錬を行っているので術式を使い熟していたのだ。それで禪院家の精鋭で筆頭に身を置いているのだ。普通ならば既に戦闘不能に追いやられているだろう。だが相手が()()悪かった。

 

 

 

「俺の最高速度でぶち抜いたるッ!!」

 

 

 

 ──────俺も()()()()()辿り着くんやッ!甚爾君や悟君、そして龍已君の居る()()()()()ッ!!その為に、クソみたいに鍛錬積んだんやッ!!

 

 

 

「……はぁ……仕方ない。少し()()か」

 

 

 

 納められた『黒龍』をレッグホルスターから抜こうと思っていた手を、上から這わせるだけに留める。解いた構えをもう一度取り、拳を向ける。風向きが変わる。百鬼夜行中に吹くには爽やかなそよ風だったというのに、龍已に向かって風が吹いてとぐろを巻いているように思える。

 

 吹いている風に服が靡く。短めの髪もふわりと浮く。そこだけ何かが違っていた。呪力ではない。龍已の総呪力量は五条悟よりも多く、最近になって現れた呪力の塊、特級過呪怨霊『祈本里香』よりも更に多い。特級過呪怨霊『祈本里香』の事をまだ知らない呪術師は居るが、五条悟を知らない者は居ない。

 

 要するに、黒圓龍已の呪力量は人知を超えているということを、呪術師ならば把握していて当たり前。彼は自身の等級のことを言わないが、彼とて特級呪術師である。人知を超えた呪力量に広大な術式範囲。修得した領域展開に反転術式。そして唯一の黒圓無躰流後継者、黒圓一族の生き残りということもある。

 

 直哉は自身が出せる最高速度で動き回り、龍已に近づいていった。すぐに懐に入り込むのは自殺行為。しかし投射呪法はその性質上、接近戦に持ち込む必要がある。呪力も無限ではない。龍已に動きのパターンを晒し続けるのだって避けたい。故に直哉は、龍已に向かって突貫した。

 

 

 

「──────ぁ……ぁ゙……ッ?」

 

 

 

「──────シィィィィィィィ…………これに懲りたら無駄な戦闘は慎め。今回のことは今の一撃で軽く済ませてやるが、今後同じような事があれば、それ相応の処罰が下ると思え」

 

「な……ごぼッ……!?な……にが……」

 

 

 

 ──────何が起きたんや……何をされたんや……全く解らん……いつの間にか上向いて伸びとった。龍已君に触れようと接近して……接近して……どうなってんねん。殴られたんか?蹴られたんか?ホント……解らへん。

 

 

 

 加速した視界が止まり、青空を見上げていた。地面に五体投地しており、腹部が熱いような冷たいような、痛いような痒いような状態になっている。何が起きたのか全く解らない。直哉は、深く息を吐きながら自身のことを上から見下ろす龍已を視界に捉え、呆然としながら血を吐き出すことしか出来なかった。

 

 起き上がろうとしても無理だ。指先すら動かない。瞼も重くなって抗えない。目標であり、憧れでもあったあっち側。五条悟。伏黒甚爾。黒圓龍已の居るあっち側へ行くつもりで、これまで鍛錬を積んできたというのに、こんな……何をされたのかすらも解らないまま終わるのかと。嫌だと思っても、落ちていく意識を繋ぎ止める術を、彼は持っていなかった。

 

 完全に気絶した直哉を見下ろしていた龍已は、はぁ……と溜め息を溢した。まだ学生だった頃以来となる禪院直哉が何をするかと思えば、何故百鬼夜行中だというのに呪術師同士で戦わなければならないのか。彼は振り返って、また1つ溜め息を溢した。

 

 直径20メートルの範囲にあるアスファルトの道路が粉々になり、陥没している。中央に足形を残して。()()()使()()()()踏み込んだのにこんな事になってしまったことを、今更ながら少し後悔した。止めるべき立場の者が止めるのはいいが、無闇矢鱈と破壊行為をするのはいただけないなと思ったのだ。

 

 溜め息をついていた龍已は振り返り、既に戦いが終わっていた扇と甚爾の方を見る。殺してはいないことに安堵しつつ、禪院家の者が意味の無い戦いを強いたという報告をするべく、ポケットから携帯を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────傑の死体は僕が処理しておいたよ。アイツの狙いは最初から憂太だったみたいでさ。パンダと棘には悪いことしたけど、結果は憂太の勝ち。逃げようとしているところを僕がトドメを刺した」

 

「夏油は最後に何か……いや、それはお前だけが知っていれば良い話か。俺が担当した京都では犠牲者は出なかった。送られた呪詛師も大した者達でもない。夏油の仲間は恐らく、東京(そっち)に集中させていたのだろう」

 

「それについては、アイツが賭けだったって言ってたよ。ボビー・オロゴンみたいな喋り方する呪詛師が持ってたモノが特殊な術式を持っててさ、僕の術式すら散らすの。けど、センパイが相手だったら術式範囲が広すぎて対処できなかっただろうね。2分の1の確率でセンパイと当たって即全滅していたかも知れないから、ヒヤヒヤしてたってさ。呪詛師の家族が居るんだと」

 

「……そうか」

 

 

 

 呪詛師、夏油傑が招いた百鬼夜行。それは既に終戦した。龍已が担当した京都の呪霊は全て祓い、呪詛師も始末した。呪術師の犠牲者や避難させておいた一般人の犠牲者も出ることは無く、京都の戦いは終わった。後始末や報告、生存確認等を終わらせてから東京に帰った龍已は、東京側で起きた事の顛末を五条から聞いた。

 

 夏油は自身の仲間、家族と一塊になって東京に現れた。広大な術式範囲を持つ龍已が東京を任せられていれば即に詰み。ある呪詛師が持っていた特殊な呪具のお陰で、五条悟を止めることはできたが、龍已の場合だとそうはいかないだろうとは五条の談。

 

 百鬼夜行を行った夏油の狙いは、最初から乙骨だった。彼を殺すために攪乱も兼ねて呪霊や呪詛師を放ったのだろう。東京だけを舞台にすると、五条と龍已の2人を相手にしなければならないので勝ちは確実に失う。そこで、東京と京都の2箇所を戦場に変えることで、2人を分散させて配置させた。

 

 激闘の末、乙骨との戦いに敗れた夏油は逃げようとしていた。しかしそこに五条が現れて逃げることを諦めた。最後は何と言ったのかは五条しか知らない。夏油の死体は五条が処理したという事に口を挟むようなことも、龍已はしなかった。彼等は親友だったのだ。他の者に触れて良い部分ではないだろうという考えだ。

 

 そして夏油に関するものの他に、乙骨と特級過呪怨霊『祈本里香』の事がある。激闘の際に命を賭けた縛りを用いて祈本里香の居る場所……あの世へ至ろうとする乙骨に、本来の少女の姿を取り戻した祈本里香が来ることを拒否した。祈本里香に憑かれていたと思われていた呪いは、死んで欲しくないという乙骨の強い想いの元、乙骨が祈本里香に呪いを掛けていた。

 

 結局、何故あれ程の力を持っていたのかは判明していないが、乙骨の呪いは解かれたのだ。東京側であった事を夜蛾や五条から全て聞いた龍已は、数年間一緒に学生をしていた夏油の事を、目を閉じて思い返した。怨敵の呪詛師に堕ちた夏油だが、後輩であった過去は消えない。涙は流さないが、次があるならこの業界に触れないような、表側の人間になって欲しいと思った。

 

 

 

「ほんと、この業界は嫌になるよね。すーぐ人が死ぬんだから。特級とか言われてた奴が呪詛師になるわ。ただの少女が莫大な呪いの塊となるわ。将来ストレスでハゲないか心配だよ、僕は」

 

「……………………。」

 

「ねぇ、センパイ。センパイは簡単に死なないでよ。センパイが死ぬと硝子が悲しむし、僕も悲しいからさ。その力はこれからの呪術界に必要なんだ。知識も経験も」

 

「約束はできない。昔にあったように、俺とて死ぬときは死ぬ。だが、善処しよう。できうる限りは死なないと」

 

「うん。それでいいよ。……じゃっ、僕は上の腐ったミカン共に呼ばれてるからこの辺で!また何処かお茶でもしに行こーねー!」

 

「あぁ」

 

 

 

 手を振ってその場を後にした五条を見送り、龍已は高専に設置されている自動販売機から缶珈琲を1つ買い、適当な段差のあるところに腰掛けた。小気味よい音を立ててプルタブを開けて口を付ける。安っぽい味を喉に流し込んでから上を見上げた。

 

 嘗ての後輩が死んだという暗くつまらない話をしていたのに、頭上に広がるのは雲1つ無い快晴の空。布団を干すにはもってこいの日だろう。風が吹いて頬を撫でる。着ている服の裾や髪を揺らして脇を抜けていく。身を置いていて楽しい業界ではない。心からそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────東京に行く予定があったのにすまなかった。楽しみにしていただろう」

 

「いいっていいって!秋葉原は行こうと思えば他の日にも行けるからさ!」

 

「いやー、龍已に東京には絶対来るなって言われた時には何事かと思ったけど、大変だったんだろ?お疲れさま!」

 

「怪我が無いようで何よりだよ、親友!」

 

「僕の呪具達は役に立ったかな?京都の犠牲者は0だって聞いたから大丈夫だと思うけど」

 

「あぁ。『黑ノ神』『黒龍』『黒曜』を主に使っていたが、相変わらずの性能だ」

 

「良かった。あ、それとこの前の試作品で渡した『黒糸』だけど、完成したからあげるね。はい、クロちゃん。あーん」

 

「……っ!♪」

 

 

 

 百鬼夜行が終わり、五条や夜蛾との情報交換などを終わらせた後日。龍已は地元の方へ帰ってきていた。会っていたのは親友達。飲み屋で合流すると仲睦まじく会話を交わした。

 

 小学校から親友をやって今年で28にもなる各々は落ち着いた雰囲気をしている。もう立派な大人であり、それぞれ会社に勤めて働き、社会人をしていた。働いているので中々時間が取れなくなってしまったが、暇があればこうして集まって飲み会をしている。

 

 そして何と言っても、彼等の左手の薬指には光を浴びて輝く指輪が嵌められていた。そう、龍已の親友達は結婚しているのだ。残念ながら虎徹はまだ結婚していないが、その他のケン、カン、キョウは彼女を作り、そして結婚した。

 

 

 

「いやー、それにしてもケンちゃんが本当に美人な人を嫁にするとは思わなかったよねー」

 

「小学生の頃なんておっぱいの大きいちょっとえっちなお姉さんと夕陽をバックに初チューするとか舐め腐ったこと言ってたけど、お姉さんみたいな感じのおっとりした人で良かったじゃん」

 

「しかも逆ナンされて徹底的に甘やかされて即落ちというね」

 

「男の即落ち2コマとかいらねーから」

 

「ケンちゃんの場合は特にね。子供に悪影響だからやめてくんない?」

 

「お前ら言いたい放題過ぎだろッ!!」

 

「ふふっ。まあまあ。カン君とキョウ君も結婚式で泣きながら祝ってくれてたんだからいいじゃん。あ、ケン君その時の動画見る?」

 

「「やめてください虎徹ママッ!!」」

 

「ぶはっ!何だかんだ言ってお前ら俺のこと好きすぎだろ!」

 

「は?何でそんな事になんの?クソほど自意識過剰すぎでしょ。頭大丈夫?取り敢えず死んでね」

 

「舐めたこと言ってるとフォーク眼球にぶち刺すからね」

 

「いやそこまで言う!?ってか、本当に刺そうとすんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!」

 

 

 

 カンがケンの事を羽交い締めにし、キョウがサラダを食べている時に使っていたフォークを目に刺そうとしている光景が広がる。まあいつも通りじゃれ合ってるだけだから放っておこうかと虎徹は言って、こっそりと結婚式で密かに撮っておいたケンの結婚式の動画を龍已と見始めた。

 

 親友である皆のことをケンは当然のように招待した。まあその前にカンとキョウの結婚式の時も呼ばれたので呼ばない理由が無いのだが。取り敢えず、結婚式は恙無く行われていき、新郎新婦の誓いのキスも終わった。幸せそうに微笑み合っている正装のケンに、口笛とヤジが飛んだ。幸せになれ。嫁さん泣かせたらぶちのめす。口が悪くても皆が祝福していた。

 

 

 

『良かったなぁ……ぐすッ……ケンちゃん結婚できて良かったなぁ……一生独り身で童貞で寂しく死んでいくだけのつまらない可哀想な親友だと思ってたよぉ……』

 

『うっ……うぅっ……俺達が結婚してからいつも羨ましそうにして陰で泣いてたケンちゃんが結婚なんて……きっと明日で世界が終わるんだな……この瞬間をしっかり噛み締めような、親友!』

 

『おまっ……お前らっ……こういう時も……ぇぐっ……ひでーこと……ずずずっ……言うんじゃねーよバカッ!……ははっ』

 

『はーっ。幸せになれよケンちゃん!』

 

『困った事があったらちゃんと親友の俺達を頼るんだぞ!虎徹ママも居るんだから!』

 

『なんか僕変な参加の仕方したね!?しかもケン君の結婚式で虎徹ママはやめてよっ!』

 

 

 

 会場が彼等の長年続けてきた漫才によって笑いを届けられる。勝手知ったる仲だからこそ、何でも言い合えてふざけることができる。微笑ましい光景だ。カメラを回している虎徹からも、時々ずずっ……という鼻を鳴らす音が聞こえてくるので、幸せな光景を見て泣いているのだろう。

 

 肩を叩き合って泣きながら笑っているケン、カン、キョウ。会場に居る招待者達や親族に見守られていると、場が暗くなる。何事かとどよめき、出入口にスポットライトが当てられた。扉が開き、現れたのは正装をした龍已だった。海外に任務を出されていると言っていて参加できないと思われていた龍已が来たことで、3人は驚きの表情をし、虎徹はクスクスと笑っていた。

 

 ゆっくりと入ってくる龍已は、周りの人達に礼をした。そしてケンと新婦の居る壇上までやって来ると、両手に抱えた大きな花束を差し出す。目立つことを好まない龍已が、多くの人の視線を受けながら来てくれたことに感動しているケンは、震える手で新婦と共に差し出された花束を受け取った。

 

 

 

『──────遅れてしまったが、結婚おめでとう。友人の出来づらかった俺に話し掛け、今日まで親友でいてくれた御劔剣一(みつるぎけんいち)に感謝の意を込めて、花を贈りたい。これから新婦さんと共に、二人三脚で頑張って欲しい。何があれば相談に乗るから、遠慮なく言ってくれ。俺はケンと出会えて、そして親友でいられて誇らしく、幸せだった。大人になってお互い仕事があり、皆が集まるのは難しくなってしまったが、離れていても俺達は変わらず親友だ。今までありがとう。そしてこれからもよろしく頼む。重ねて、結婚おめでとう。お幸せに』

 

『ばっか……お前ぇ……忙しくて……来れないって言ってたのにっ……どんだけ急いで来たんだよバカヤロぉ……へへっ。でも、ありがとな!俺の親友!!』

 

 

 

「ふふっ。まだ最近の話なのに、これ見てると懐かしく感じちゃうのは僕だけかな?」

 

「……いや、とても良い結婚式だったことを懐かしく思うのは俺も同じだ。だが瞼を閉じれば鮮明に思い出す。……──────ケンの結婚式なのにドレスを着た虎徹の容姿に釣られて男性陣が声を掛けようと必死になり、アイドルの握手会のような状態になっていた光景を……」

 

「も、もぅ!そんなこと思い出さなくていいからっ。今日の龍已はイジワルなんだからぁ。罰として膝貸してっ!」

 

「構わない。おいで」

 

「ふふっ。じゃあお邪魔しまーすっ」

 

 

 

 まだじゃれ合ってるケン達を放って置いて、虎徹は隣に座る龍已の太腿に頭を置いた。寝やすい位置を見つけてゆっくりとする。そんな彼の頭を、龍已は酒を片手に撫でていた。28になっても美しいままの虎徹は、美しさを損なうどころか色気すら身につけて大変なことになっている。街を歩けば振り返らない男は居ないくらいだ。だが男だ。

 

 懐きまくった猫のようにゴロゴロしている虎徹の頭を撫でながら、ケン達のことを眺める龍已。親友達はもう結婚生活した。まあ結婚してもおかしくない歳なのだから問題ない。虎徹は家系が家系なので結婚しづらいだろうし、彼がそういった願望を持っておらず、親は強制をしていないので自由にしていた。

 

 グラスに口を付けながら龍已は今この場に居ない人物のことを考える。残念ながら急患で来られなくなってしまった家入硝子。長年龍已と交際をしている女性。もう結婚を考えても良いだろうに、そこへ龍已が踏め込めないのが現状だった。

 

 呪術界でも特異の立ち位置に居る龍已。黒圓無躰流を狙って何時、呪術界が強行的な行動に出るか分からない。それに裏の顔のこともある。もし情報が漏洩すれば家入が狙われてしまう。長年交際している時点で何を言うかと思われるが、どうしても呪詛師に殺されてしまった両親のことが頭から離れないのだ。

 

 結婚しよう。そう言えば家入は当然と言うだろう。むしろ家入は龍已が心を決めるまでずっと待ってくれている。何も言わず。催促もせず。数少ない、彼の裏の顔を知っているからこそ、こういった事も含めて理解して、交際してきたのだ。待つ事を苦に思わない覚悟を既に抱いているのだ。

 

 グラスをテーブルに置く。首に巻き付くクロから、小さな箱を受け取った。片手で器用に開ければ、中に入っているのは結婚指輪だった。そんなに派手なものは好きではない家入の為に、できるだけシンプルで良いものを買っていた。サイズも完璧だ。寝ているときにこっそりと調べたから。これを渡しながら一言言うだけなのに、背負っているものが多すぎて言い出せない。

 

 

 

「あ、龍已見てくれよー。2歳になった娘。可愛いくない!?」

 

「俺の息子も大きくなってさー。1歳になったばっかりで可愛くて仕方ねーのなんのって!」

 

「いいよなー。その内俺も子供欲しいわ。帰ったら頑張ってみようかな……」

 

「いんじゃない?俺達の歳考えれば子供居てもおかしくないんだから。きっとケンちゃんの奥さんも欲しいと思ってるでしょ」

 

「数撃ちゃ当たるって!」

 

「射的かよッ!」

 

「……カンとキョウの子供に、将来オジさんと呼ばれるのか。楽しみだな」

 

「若い子からしてみれば、もうオジさんかもしんないけどねー」

 

「オジさんって呼ばれたら凹むわー。せめてまだお兄さんでいたい!」

 

「あー分かる!オジさんって言われると、えっ……俺もうオジさんなの?ってなる」

 

「虎徹はお姉さんって言われるよね。ずっと」

 

「ずっとなの!?」

 

「「「「──────確かに」」」」

 

「もぅっ!」

 

 

 

 龍已の膝枕からガバッと起き上がって頬を膨らませている虎徹に、そんな表情をしてるから可愛いままなんだよとツッコまれ、笑いが起きた。龍已はやはり無表情だが、雰囲気はとても楽しそうだ。虎徹も膨らませた頬を萎めて、クスクスと笑った。

 

 大人の飲み会は長く、今飲んでいる店を終えたら次の店。そしてまた次の店とハシゴしていった。騒ぎに騒いで楽しそうにしている親友達を眺めて、龍已は心から楽しいと思えた。大切な親友に愛する人ができた。子供も産まれた。こんな善人に危険が及ばないように、呪詛師はより殺していこうと決心する。

 

 

 

 

 

 飲み会は次の日になるくらいの時間まで続き、酔いすぎて動けなくなったところを奥さんに迎えに来てもらう親友に、メイドに引き取られる虎徹。龍已は暗闇広がる夜空の下、溶けて消えるように帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────黒圓龍已さーん。はい、お待たせしました。検査の結果ですね、お相手さんにも黒圓さんにも異常は見られませんでした。()()()()()()()ということでしたが、お2人とも至って健康体ですね。もしかしたら運が悪かっただけかも知れないので頑張りましょう。また何かありましたら是非ともいらして下さいね。しかし不思議ですね。聞いた情報だと妊娠されてもおかしくないと思うんですよ。子供ができない()()()()()()()()あったりして……あはは!冗談ですよ?昨日やっていた怖い話に考えが傾いてるだけですので。では、お大事に」

 

 

 

「……ありがとう……ございました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 







ケン&カン&キョウ

3人は結婚している。ケンは最近になって結婚しており、まだ子供はいない。カンとキョウにはそれぞれ1歳の息子と2歳の娘が居て、とても可愛がっている。

龍已に会わせて抱っこさせてあげようとしたら、笑っていたところから一転して泣き叫んだのを見てビックリし、それで落ち込んだ雰囲気を出す龍已に笑った。




天切虎徹

まだ結婚していない。普通の家なら胎として女が宛がわれるが、天切家はそんなことはしない。実は天切家の当主になっている。彼の言葉1つで天切家が動く。

結婚は別にしたいと思っていない。子供は可愛いし良いと思うけど、欲しいかと言われたらちょっと別。

美しさに磨きが掛かり、色気も兼ね備えて無敵になっている。ナンパの数はあの五条悟をもぶっちぎりで超えている。ちなみに男からの。ぶっちゃけると女からのナンパも相当多い。




禪院扇

禪院真希と禪院真衣の実の父。原作ではマジクソ外道。甚爾に心の底から恐怖している。




禪院直哉

禪院家現当主の息子。相伝の術式を継いでいる。五条悟や伏黒甚爾、黒圓龍已の居る高みに羨望しており、必ず彼等と同じ場所へ至ることを目標としている。

顔はまあまあいい感じだが、性格がドブカス。龍已に訳も分からないままぶん殴られて終わった。




黒圓龍已

家入に渡そうと思っている結婚指輪は買ってある。だが、自身が背負っているものと、それが他者に……特に呪詛師に露呈した場合のことを考えて踏み込めない。どうしても呪詛師に殺された両親の死体がチラつく。

ある病院に行って、こっそり行為の最中に採取していた家入のあるものと、自身のものを渡して検査してもらっていた。

領域展開は呪術師としての奥の手。けど、まだ黒圓一族としての奥の手は出していない。本当に滅多なことでは使わない力を、直哉は経験できた。見えなかったけど。




家入硝子



「あー、龍已と結婚して黒圓名乗りてー。法的に一生縛りてー。ま、私はいつまでも待つけどな」



本当は結婚しようと言ってしまいたいが、龍已の事情を知っているので自分からは言わないで待っていることにしている。

ケン、カン、キョウとは顔を合わせている。水のように酒を飲んで彼等を驚かせたが、良い飲みっぷりだねぇ!と言って笑って盛り上げてくれる彼等は、確かにとてもいい人達だと思っている。流石は龍已の親友。

結婚はいつまでも待つが、子供はいつまでも待つとは言っていない。長期任務で疲れて帰ってきた龍已を襲った。ゴム?知らない子ですね。

別に子供嫌いじゃないし、龍已と私の子供なら可愛いだろうし健やかに生きてくれるだろうと思っている。



検査のことは知らない。


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