呪術廻戦───黒い死神───   作:キャラメル太郎

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最高評価をしてくださった、メイギン ハル吉★ 魁人 おっぺー マサカの盾 まんが さん。

高評価をしてくださった、鳳飛鳥 kkkkkkk Yoto 登竜 デューマン レストラン 悠久7723 クランチ555 さんの皆さん、ありがとうございます。



もうそろそろで年が明けようとしています。まさか息抜きに書いたこの小説がこんなに長く続くとは思ってもみませんでした。それに多くのお気に入りなど、本当にありがとうございます。

失望されないように展開を考えるのは大変ですが、やりがいはあって楽しいです。感想もありがとうございます。モチベーションが上がる切っ掛けになってます。

誤字報告など、一体どれだけしてもらい助かっていることやら……誤字る私が悪いんですけれども笑笑

兎に角、もう少しお付き合いください。そして、本当の呪術廻戦もよろしくお願いします!


※私はまだエピソード0見れてません(白目)




第四十六話  裏の最強

 

 

 

 

 

「──────龍已先生と同じ任務5日ぶりー♡任務終わったらデートしましょ♡」

 

「構わないが、浮かれて怪我をするんじゃないぞ、反承司」

 

「はーい!」

 

 

 

 同年7月。龍已は反承司と共に任務へやって来ていた。高専から数時間も離れているところに発生した呪霊を祓って欲しいということだった。客がまだ入っている店が建ち並ぶ商店街での祓除なので、最近多い建物への損害を少なくという要望付きだ。

 

 本当は龍已1人の任務だったのだが、予定が空いていて龍已の任務事情を聞きつけた反承司が捻じ込んできたのだ。後学のための見学というのが建前で、実際は一緒に居たかっただけだ。今も隙を見て車の後部座席で膝枕をしてもらっている。バックミラーで見た補助監督の鶴川も苦笑いだ。

 

 基本的に龍已に付いてくるのは反承司だ。その他の学生は五条であったりもう1人の1級呪術師などが請け負っている。五条は学生を育てたいという目的があるので外せない任務以外は大体面倒を見ている。その代わり、等級の高い任務を受けている龍已は1人だ。まだ学生達にはついていけないのだ。2人を除いて。1人は乙骨。もう1人が反承司である。

 

 

 

「さて、着きましたので帳を降ろしますね。『闇より出でて闇より黒く、その汚れを禊ぎ祓え』」

 

「ありがとうございます。ではすぐに戻ってきますので待機をお願いします」

 

「行ってくるー」

 

「はい。お気を付けて」

 

 

 

 任務先の商店街に着いた龍已と反承司は、車を降りて帳が降りた後に中へ入っていった。現れるのは1級呪霊1体と2級呪霊1体である。共に行動するタイプの呪霊らしいので、1体を見つけたら近くに居ると考えて良いだろう。

 

 昔、新しく店の建物を建てようとしたところ、建築中の事故で5人が大怪我を負ったことがあり、ニュースにもなった。それから少しずつ負の感情が集まっていき、今回凝り固まって呪霊になったらしい。特級を除けば最高等級の1級呪霊が出るが、2人は問題ないだろう。片やそれより上の特級。そして()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「居たな」

 

「ムカデを人型にしようとして失敗した……みたいなのが1級で、カエル擬きが2級ですね!」

 

「どちらを相手したい、反承司零奈1級呪術師」

 

「そうですねぇ……じゃあ私が1級呪霊ぶち殺してきますね!黒圓龍已特級呪術師♡」

 

「了解した」

 

 

 

 2メートル近い人型に、腕が左右で20ずつは生えている見た目をしたムカデの出来損ないのような呪霊が1級呪霊で、反承司が相手をすることになった。龍已はカエルに人の口が無数に付いたような2級呪霊が相手であり、当該呪霊は舌を伸ばして即行で反承司を狙った。担当ではない呪霊からの攻撃。しかし彼女は動かない。

 

 反承司に紫色の長い舌が触れる前に、横から手が伸びて舌を鷲掴んだ。龍已である。そして掴んだ舌を剛力で引いて2級呪霊の体を強く引き寄せる。体が浮き上がって龍已の元へ一直線に飛んでくる。受け止めるのは舌を掴んでいない右手。呪力を()()纏った右手が、2級呪霊の頭を捉えてぶちりと引き千切った。

 

 早々の祓除に、反承司は横目でうっとりと眺めた。仲間意識があるのかは知らないが、2級呪霊がやられて激昂しながら駆け出して向かってくる。うっとりとした表情から一転し、冷たい表情になった反承司へ右側の20本の手を拳にして叩き付けた。だが、叩き付けた筈の拳は反承司に()()()()()止まってしまい、届かなかった。

 

 

 

「──────お前みたいな雑魚の攻撃が効くわけねーだろ。いくらやっても同じだし、試してみればァ?」

 

「──────ッ!!あしたの……ああああしたののの……かいもの……し……しなくちゃねえぇえええええええええええええッ!!!!」

 

「はいはい弱い弱い。そして()()()()

 

 

 

 左右合わせて40の拳を使った怒濤の連打。連打連打連打連打。当たれば挽肉にもなる拳の嵐に、反承司は瞬き1つしない。何せ届いていないのだから。繰り出される拳の数は百を超えて千にも届こうとしている。にも拘わらず一切届かない。1つとしてだ。その異常に1級呪霊は何か薄ら寒いものを感じ取り、殴打をやめて1歩下がった。

 

 攻撃が全く通じない。届かない。何も分からない。だから怖いと感じる。負のエネルギーで生まれた呪霊が怖いと感じる反承司の異常性。それを察してか、反承司は整った綺麗な顔を歪ませて嗤う。ケタケタと1級呪霊に嘲笑の笑みを送り、どこまでも下に見て侮辱するような目を向けた。

 

 右手を顔の高さまで持ち上げる。人差し指を立てれば、指の先に小さな黒い球体が生み出された。何なのか解らない。解らないから逃げよう。そう思い、1級呪霊は踵を返して反承司に背を向ける。背を向けて逃げた先に、反承司が何故か居た。そして、形成した黒い球体を1級呪霊の胸に軽く押し当てる。

 

 

 

「それ全部()()()だから。私はこのあと龍已先生とデートなんだよ。さっさと死ね、雑魚が」

 

「────────────ッ!!!!」

 

 

 

 1級呪霊の腰から上が消し飛ばされた。塵も残さず、完全な消滅。腰は半円を描いて残っているだけで、あっという間に祓除は完了された。残っていた腰から下も崩れ落ちて塵となって消えていく。完全に消滅して、帳が上がったのを見てから反承司は満面の笑みで振り返った。

 

 相変わらず呪霊に容赦の無い攻撃。それに自身とは比べられないくらい優れた術式に、龍已はおぉ……と声を出した。何度も見ているが、実に素晴らしい術式の技術力だ。やはり東京校の生徒の中でも1番戦いに慣れていて、力を持ち、呪力が豊富で、才能があるだろう。3年生で既に1級呪術師になっているだけあるというもの。

 

 これだけの強さがあれば、9月頃に予定されている京都姉妹校交流会でも、また注目を集めることだろう。去年は乙骨が一瞬で終わらせてしまったので出番が無かったようだが、1年の時に人数合わせで参加し、()()()京都側の生徒を全員医務室送りにしたのは今でも鮮明に思い出せる。あれは理不尽な殲滅だった。

 

 

 

「ふふっ。龍已セーンセ♡」

 

「おっと……」

 

「にへへ……すーっ……はぁぁ……やっべ、これはキマる。マジ良い匂いが鼻腔突き抜けてアドレナリンがナイアガラ。硝子さんと一緒の匂いしてるのなんかクソ萌えてキュン死する♡」

 

「……いつまでも抱き付いていないで戻るぞ。鶴川さんが待っている」

 

「うひひ……このままつれてってくださぁい♡」

 

「まったく……」

 

「えへへ」

 

 

 

 抱き付いたまま離れないので、仕方なくそのまま歩き出した龍已。ズリズリと引き摺られているのに、何とも言えない幸せそうな表情でデレデレしている反承司。確かに人には見せられないデレデレ顔なので、そのまま抱き付いていた方が良いかも知れない。

 

 くっつき虫と化した反承司を引き摺りながら戻ってきた龍已に、鶴川も慣れた光景に内心ホッコリしつつ苦笑い。彼等のために後部座席を開けてあげるとお礼を言われるので、いえいえと返して笑みを浮かべる。此処へ向かう途中で反承司がデートをしたいと言っていたので、調べておいた近場のデートスポットに向けて車を走らせる。

 

 車の中で行きと同じく膝枕をされて甘えている反承司と、そんな彼女の頭を撫でて呆れの雰囲気を出している龍已。2人の姿を見ていると、父親が大好きで甘えている娘という図に見えて、ついクスリと笑ってしまった。暗く淀んだ界隈なのに、何とも平和な光景に微笑みを漏らしてしまう鶴川。

 

 その後、龍已と反承司はウィンドウショッピングなどをモールでして、帰りは3人でクレープを買って一緒に仲良く食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────黒圓さんッ!この度は本当に申し訳ありませんでしたッ!全ては私の責任ですッ!釘崎さんは病院に、伏黒君は重傷を負い、虎杖君にいたっては……」

 

「……伊地知の責任ではない。上層部が仕組んだものだろう。でなければ特級呪霊及び生死不明の一般人5名の救助に1年生を当てる訳が無い。五条も同じ意見の筈だ。だから伊地知、己を責めるな。()()()()()()()()お前の監督不行届きではない」

 

「……っ。派遣が決まった時点では……本当に特級になるとは……っ!」

 

「──────まぁ、結局は上層部の僕に対する嫌がらせだよ。悠仁は将来、憂太や秤と同じく僕と並ぶくらいの呪術師になる筈だったんだ。それを……」

 

「ご、五条さん……」

 

「いっそのこと……──────上の連中全員殺してしまおうか」

 

 

 

 死体などを解体するための場所に龍已は、連絡を受けてやって来ていた。内容は任務先で特級呪霊と戦闘になり、虎杖悠仁が死亡したという話だった。独自の作戦で特級呪霊に両面宿儺を当てて倒させようとしたのは成功したが、その後虎杖は戦闘により気絶してしまい、宿儺が表に出たまま暴れてしまった。その際に、恵が重傷を負ったという。

 

 その任務の日付は、龍已が反承司と共に遠出をして任務をしていた日と同じだ。五条も外せない任務を与えられて留守だった。つまり、宿儺の対応が可能且つ、特級呪霊を祓除できる存在2人を態と留守にさせて、虎杖、伏黒、釘崎に任務として行かせたということになる。

 

 明らかに態と仕組んだ任務内容。特級呪霊になったのは偶然なのか、それとも故意なのか。特級呪霊から宿儺の指が見つかり、表に出た宿儺が食べて取り込んだことを考えると犯人がいるのやも知れない。報告書を読んでいた五条は、苛立たしげに殺気を振り撒き、伊地知は顔を蒼白くさせて怯えた。そこへ、部屋の扉を開けて家入が入ってくる。

 

 

 

「珍しく感情的なんだな。そんなにお気に入りだったんだな、彼のこと」

 

「い、家入さんっ!お疲れさまですっ!」

 

「……僕はいつだって生徒思いのナイスガイさ」

 

「あまり伊地知をイジメてやるなよ。……ん?龍已も来てたんだな。お前も虎杖のことを気に入ってたのか?」

 

「一般の出とはいえ、呪術界に珍しい根明。それに、望んで秘匿死刑という立場に収まっていた訳でもない。……良い子だった。最後に顔くらいは見ておきたいと思うのは不自然か?」

 

「いいや。今のは私の聞き方が悪かったな」

 

「構わないとも。……だが頭は撫でなくていい」

 

「あぁ……これは私が撫でたかっただけだ」

 

「おーい。悠仁の遺体の前でイチャつかないでくれるー?」

 

 

 

 入ってきた家入は、龍已が居たことに目を丸くしていた。確か今日は任務が幾つかあると知っていたからだ。早々に片付けてきたんだなと理解すると、虎杖のことを気に入っていたのか聞いてみる。まあ、良い子だった生徒の最後を見に来ないわけがないのは知っていたので、聞き方が悪かったと謝罪した。

 

 椅子に座っていた龍已の前に来ると、謝罪と共に頭を撫でる。別に撫でる必要は無いと言ったが、これは単に家入が撫でたかっただけのようだ。五条は安置された虎杖の遺体がすぐそこにあるのに、熟年夫婦の雰囲気醸し出してイチャつく2人にもの申した。やることはそれじゃないだろと。

 

 愛しい彼氏が居ると、つい構いたくなってしまうと五条に態と見せつけながら言ってその場を離れた家入は、虎杖の遺体に被せられた白い布を取った。宿儺が体の自由を奪い返されないように心臓を抜き取った。その時にできた胸の傷が痛々しい。家入は、遺体を見ても表情を変えず、好きに解体(バラ)していいよねと聞いた。家入がこの場に来たのは、虎杖の体を解体して宿儺の器として何かが無いか探るためだった。

 

 

 

「しっかり役立てろよ」

 

「役立てるよ。──────誰に言ってんの」

 

 

 

 いずれ来るかも知れない次のことに備えて、虎杖の遺体は有効的に使わなくてはいけない。五条は念の為の言葉を添え、家入はそんなこと当然だろと言わんばかりに返し、解体するときに使うゴム手袋を嵌めて、虎杖の遺体と向き合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────つまり、君達のボスは今の人間の立場と呪いの立場を逆転させたいと……そういうわけだね?」

 

「……少し違う。人間は嘘でできている。表に出る正の感情や行動には必ず裏がある。だが負の感情……憎悪や殺意などは偽りのない真実だ。そこから生まれ落ちた我々呪いこそ、真に純粋な本物の人間なのだッ!偽物は消えて然るべきッ!」

 

 

 

 とあるファミレスで、一般人からしてみれば頭に縫い目のある袈裟を着た男が1人で何かを話している。だが呪術界に身を置く者からすれば、火山のような頭をした一つ目の人型呪霊と、目から枝が生えた人型呪霊、白い布を被った蛸のような見た目をした呪霊、黒山羊の頭と獅子の頭と馬の頭を持つ人型の呪霊が1ヵ所に集まっているのを目撃しただろう。

 

 話し合いをしている彼等は、物騒な話題を出している。人間と呪いの立場を逆転する。というより、呪霊からしてみれば真に純粋な人間は自分達なのだから、元の相応しい形に戻そうという狙いがあるようだ。だがその計画には袈裟の男が待ったを掛けた。普通にやれば、そんなの一瞬で破綻する。何せ、人間側に厄介なのが居るからだ。

 

 しかし袈裟の男からすれば、たった3つのことを達成するだけで人間との戦争に勝てるという。火山頭の呪霊は身を乗り出して、その3つのことを問う。何をすれば、戦争に勝てるというのか……と。

 

 

 

「呪術界最強の五条悟を戦闘不能にし、両面宿儺……虎杖悠仁を仲間に引き入れる。そして特級呪術師の黒圓龍已を()こすこと」

 

「ちょっと待て……死んだのであろう?その虎杖悠仁とは?」

 

「さぁ?()()()()()()()()()

 

「ふむ……?それにしても、五条悟……やはり我々が束になっても殺せんか」

 

「ヒラヒラ逃げられるか、最悪君達全員祓われる。『殺す』より『封印』に心血を注いだ方がいい」

 

「封印……?その手立てはあるのか?」

 

「──────特級呪物『獄門疆(ごくもんきょう)』を使う」

 

「獄門疆……?──────ッ!持っているのかッ!?あの忌み物をッ!!」

 

 

 

 火山頭の呪霊……漏瑚(じょうご)は興奮した様子で袈裟の男に詰め寄った。その際、頭の火山部分が噴火してファミレスの室内温度が急激に上げられる。エアコンの冷房も意味を為さないくらいの高温に、他の客達が暑そうにしている。そこへ、店員が向かってきた。入ってきてから何も注文していないからだ。

 

 何か注文が無いのか、無いならばお引き取り願おうと思ったのだ。しかし、漏瑚が指を振ることでやって来た店員を火達磨にして焼き、殺した。悲鳴が上がる。人体発火事件を目の当たりにして逃げようとした店員も客も、全て漏瑚に焼かれて殺されてしまったのだった。袈裟の男は鼻を覆い、人が焼けた臭いから鼻を守りつつ、ファミレスにして良かったと呟いた。

 

 

 

「──────()()。儂は宿儺の指何本分の強さだ?」

 

「甘く見積もって……8、9本分の強さってところかな」

 

「充分ッ!!獄門疆を儂にくれ、蒐集に加える。その代わり──────五条悟は儂が殺す」

 

「いいけど……死ぬよ?漏瑚」

 

「ふんッ」

 

 

 

 獄門疆と呼ばれる特級呪物を手に入れるために、漏瑚は五条を自分だけで殺すと言ってのけた。袈裟の男……夏油は五条の強さを知っているため、挑めば死ぬことは分かりきっていた。なので軽い言葉だが警告はした。向かっていけば何も出来ずに死ぬことになる……と。

 

 しかし漏瑚は鼻を鳴らすだけでその警告を無視した。これは後程五条のところへ行って殺しに行くだろうことは窺えた。脚を組んで椅子の背もたれに寄り掛かる漏瑚は、頭の中でどうやって五条を殺そうか考えているよう。そして五条を殺した後、手に入れることができた獄門疆を蒐集に加えた時のことを思い浮かべて笑みを浮かべた。

 

 夏油は漏瑚を横目で見て口角を上げると、黒山羊の頭と獅子の頭と馬の頭を持つ呪霊に顔を向けた。特殊な喋り方をする目から枝が生えた呪霊と、蛸のような呪霊は喋るのに向いていない。ならば漏瑚を抜けば3つ頭の呪霊との会話に移行される。3つ頭の呪霊は、黒山羊の方の頭で喋り始めた。

 

 

 

「それで、両面宿儺の件は今は置いておくとして、黒圓龍已とは何者なんです?」

 

「彼は五条悟と同じ特級呪術師だ。実力も相当なものだよ。五条悟を正面から堂々と殺せるのは彼くらいじゃないかな」

 

「……なんですって?それなら、両面宿儺を仲間に引き入れるより、その黒圓龍已を仲間に引き入れた方が戦争の決着は簡単なのでは?」

 

「無理だね。呪霊の言葉には一切耳を傾けない。交渉なんて無駄だよ。呪霊というだけで必ず祓いに来る。五条悟のようにヒラヒラ逃げないんだ。そもそも『逃げる』という選択肢が無い。だからその場で祓うことをメインにする。もちろん、私が出ても意味は無いよ。彼と()()()()相性が悪い上に既知でね」

 

「ふむ……呪術界最強と謳われているのでしょう?五条悟は。ならば獄門疆はその五条悟すら殺しうる黒圓龍已に使えば良いと思うのですが」

 

「いや、六眼と無下限呪術の抱き合わせは封印しておきたい。野放しにしていたくないんだ。それに、黒圓龍已は()こすだけでいい」

 

「……気になったのですが、その()こすというのは?眠っているのですか?」

 

「本人は起きてるよ。けど、黒圓龍已の()()()()化け物共が表に出て来ないんだ。それを無理矢理表に出す。そうすれば、少なくとも呪術師側は()()()()()()()()()()()

 

 

 

 頭を3つ持つ呪霊……獸崇(しゅうすう)。彼は夏油に疑問を口にする。現代で最強と謳われる呪術師、五条悟のことは聞いている。ただ、黒圓龍已という人間については深く知らないのだ。その空いた部分を埋めるように情報を与えていく。あの五条悟をも正面から殺せる存在であると。ならば彼こそ封印するべきでは?と思うのが普通の反応だ。

 

 しかし夏油は違うらしい。確かに敵に回せば確実にその場で祓おうとしてくるので厄介だろう。だが五条悟とは勝利条件が違ってくる。五条のことは封印……必ず戦わなければならないが、龍已とは別に戦う必要が無いのだ。戦わずして引き金を引くことができる。ただ()こすだけで、呪術師を圧倒的不利に持ち込ませる事が可能なのだ。

 

 もちろん、簡単とは言えない。龍已の場合も色々と準備をしないといけないのだ。それでも、五条を相手にするよりかは簡単だという話である。獸崇は黙って夏油の話を聞いて、解らなければ問い、そして教えられたことを噛み砕いて理解していった。理解していったが、納得できないところもあるらしい。

 

 

 

「──────なーんで俺様が手を下さないで、その黒圓龍已っつー奴に任せなきゃなんねーんだよ!全員ぶち殺してやれば終わりだろーがッ!」

 

「聞いていなかったんですか、私。呪術師最強をも殺せるという存在ですよ。簡単には手が出せないのですよ。私も何か言って下さい」

 

「──────興味ない。だが、殺し合うというのならば殺そう。俺ならば可能やも死れんぞ、俺」

 

「はぁ……私は慎重に事を運びたいんですがね。ですが私が納得していないようですし……」

 

「ハッ!俺様ならぶっ殺せるんだッ!五条悟は漏瑚に殺らせて、俺様は黒圓龍已をさっさと殺し、残りの人間モドキ共を食い散らかしちまおうぜッ!」

 

「……ややこしい頭と一人称だね、獸崇」

 

「仕方ないでしょう?私は私で、私は俺様で、私は俺なんですから」

 

 

 

 頭を3つ持っている獸崇。敬語を使って話すのは黒山羊の頭。言葉が乱暴で自分のことを俺様と言っているのが獅子の頭。淡々としているのが馬の頭であり、それぞれが勝手に話していた。だがそれぞれには意思が在り、その意思は一つであった。だから夏油は1体を相手にしているのに3体を相手にしていて、1体と話し合っているのだ。

 

 話の流れ的にも、漏瑚が五条を殺しに向かい、獸崇が龍已を殺しに行くようだった。だが黒山羊の獸崇が夏油に訊ねる。最強の五条悟を殺せるということは、持っている術式も相当なものなのではないのか?と。普通ならばそうだ。そう考える。強力な術式を持って才能があれば、呪術師最強をも殺せると。しかし現実は違う。

 

 

 

「黒圓龍已の術式は五条悟と比べれば、あまりに弱い代物だよ。本来ならば呪術師すら続けていられないようなものだ」

 

「……その程度の術式で、一体どうやって五条悟を殺すというのです?」

 

「それがね、上手い具合に術式と天与呪縛が嵌まって、更に呪力量が埒外なんだ」

 

「呪力量がですか……両面宿儺と比べてもですか?」

 

「そうだよ。五条悟よりも、20本の指全て取り込んだ両面宿儺よりも、黒圓龍已の呪力量は遥か上をいく。あれこそ無限の呪力と言っても過言ではないね。だって()()()()()()()()()()()()()()呪力量なんだから」

 

「……人間ですよね?それほどの呪力を身に宿すなど、想像ができません。何故黒圓龍已はそれだけの呪いを?」

 

「さてね。けど、()()()()()()()ないだろうね」

 

 

 

 五条の呪力量は乙骨が現れるまで最も多いとされていた。乙骨も、変幻自在にして無限にすら感じる呪力を、彼に取り憑いた『祈本里香』が保有していた。呪術界は、その2人が最も呪力を内包する存在であると疑わなかった。しかし、他にも居たのだ。彼等の呪力を更に越えていく存在が。

 

 無限にすら感じる特級過呪怨霊『祈本里香』を遥かに超える呪力量。その量は、内包している黒圓龍已を以てしても上限が判らなかった。どれだけ使えば無くなるのか検討もつかない。他者からしてみればありえない程の呪力を瞬間的に消費しようとも、減った感じがしないのだ。まさに呪力の怪物。故に、彼は1日に二桁にも及ぶ領域展開を行い、その日だけで数時間展開を維持している。

 

 領域展開は自他共に認める、非常に激しい呪力消費を強いられる。なので五条であっても1日数度が限界だ。でも、龍已だけは十数度領域展開してもまだ余りあるのだ。となれば、持久戦に持ち込めば圧倒的不利になるのは目に見えている。どれだけ数を集めようが、彼の一撃に込められる呪力量は常軌を逸しており、持久戦のじの字も無く殺しにくる。

 

 獸崇に夏油は警告をする。普通に挑めば必ず祓われるよ?と。そんなことは誰が見ても聞いても明らかだ。特級呪霊といえど、龍已の呪力出力と術式範囲、最大量の呪力には勝てないのだ。むしろ、五条ですら龍已を殺すにはどうするかと頭を捻らせるほど。そんな相手を、少し説明を聞いて初見で破れるならば苦労しないだろう。

 

 

 

「まあいいでしょう。やれることはやりますよ。そうしないと私が納得してくれませんから」

 

「ッたりめェだろうが!やらねーで負けは認めねーぞ!ぜってぇぶっ殺してやるッ!だからしっかりしろよな、俺様ッ!」

 

「興奮しすぎてもダメだ。いつも通り淡々と蹂躙して殺そう、俺」

 

「2対1では私が不利ではないですか、私。ということなので、黒圓龍已は私に任せて下さい」

 

「そうかい?なら、是非とも頑張ってみてよ。私は警告したからね」

 

 

 

 胡散臭い笑みを浮かべた夏油は、パトカーが鳴らすサイレンの音を聞いて立ち上がった。呪霊とは違って誰の目にも写ってしまう自身は、集団人体発火事件の現場に居る訳にもいかないのだ。それに、逃げるにしても術式を使うこともできない。その場に夏油の残穢が出てしまうから。

 

 さっさとその場を後にした夏油の背を見送ってから、漏瑚や獸崇、目から枝を生やしたような人型呪霊と蛸のような呪霊もその場を後にした。漏瑚は五条をどうやって殺してやろうか考えてニヤつき、獸崇は龍已を襲撃する際に必要な準備を進めようと、それぞれの頭と話し合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーんとね、近接格闘に関して()()は頭一つ抜けてると思うよ。となると今教えるべきは……呪力の制御(コントロール)。そして呪術に関する最低限の知識だね……って、どうしたの?」

 

「いやー、やっぱ修行つけてもらうなら五条先生がいいと思ってたから嬉しくてさ!……俺は弱くて誰も助けられなかった。それどころか伏黒を殺しかけた。今のままじゃアイツ等に顔向けできねぇよ。……強くなりたい。五条先生の『最強』を教えてくれ」

 

 

 

 高専の地下のとある一室にて、虎杖と五条が話し合っていた。そう、死んだ筈の虎杖悠仁である。何故生きているのかというと、内に宿る両面宿儺が反転術式を使って虎杖の傷を全て治し、蘇生させたからである。その際に生得領域で一悶着あったが、宿儺の提示する縛りを受けて生き返った。

 

 だが、虎杖はその条件について覚えていない。忘れることを縛りとしてしまったからだ。もう一つが、『契闊』と唱えたら一分間体を明け渡さなければならないというもの。それでも、体を奪われようと他人を傷つけられないし殺さないという縛りがあるので、誰かが死ぬことは無いだろう。

 

 取り敢えず、虎杖悠仁は生きていた。しかし五条はすぐにそれを表明するのではなく、再来月に控える京都姉妹校交流会まで隠すことにした。理由は、交流会までに虎杖に力をつけさせ、自衛できるだけのものを備えてもらうためだ。そのために、今はこうして五条が呪術とは?というところから教えている。

 

 虎杖は高校で『両面宿儺の指』を食べてしまった時、伏黒と合流した五条が宿儺を完封したところを見ていた。明らかに強いということが解るので、呪術を教えてもらうのは、最強と謳われている五条がいいと思ったのだ。しかしその当人は、最強については少し補足が要ると言うのだ。首を傾げる虎杖に、五条は割と真剣な表情で語った。

 

 

 

「確かに僕は呪術界で最強と呼ばれてる。でもね、最強だからと言って無敵な訳じゃない。それに僕は()()最強なんだ」

 

「表の?じゃあ裏の最強が居るの?」

 

「居るよー。ていうか、悠仁はもう知ってる人だよ」

 

「……?え、誰?」

 

「ほらほら居たでしょ?一目見て『あ、この人絶対強いわ』とか思っちゃった人」

 

「……もしかして、黒圓先生?」

 

「せいかーいっ!裏の最強はセンパイでしたーっ!」

 

「えぇっ!?あの人そんなに強いの!?確かに絶対喧嘩強いと思ったけど……五条先生と同じくらい?」

 

「まあ、殺し合えば決着は一瞬だろうし、どちらかが絶対死ぬよね。やらないから何とも言えないけど……僕としては悠仁の中の両面宿儺よりも、センパイの方が嫌だなー。超絶無理ゲーの攻略だからね」

 

「マジ……?そんなに?」

 

 

 

 目を丸くする。恵から五条先生が()()()()最強と呼ばれてると聞いた。実際に宿儺を完封したところも見た。だから虎杖は五条が最強の存在なのだと信じて疑わなかった。だが蓋を開ければ、五条は表の最強で、裏には別の最強が居るという。その裏の最強が、先日会った龍已だった。

 

 別に、龍已は裏の最強という話を知らない。何せ五条が勝手に思っている事だからだ。相当に限られた者だけが、龍已が五条を何度も戦闘不能にしてボコボコにしていることを知っている。知っている人からすれば、今更かよと思うが、呪術界最強の五条悟が頭に根付いている人からすると信じられない話になってくるのだ。

 

 確かに一目見たとき、絶対喧嘩強いし勝てないと思った。でもそれはあくまで喧嘩の話。呪術のじの字も知らない虎杖からすれば、それがイコール呪術師として強いとは繋がらなかった。いや、呪術を知っていても、体術ができるから呪術師として強いとも結び付かないだろう。要するに、呪術師としてそんなに強いと思わなかったという話だ。

 

 

 

「センパイはね、僕と同じ特級呪術師だよ」

 

「先生と同じッ!?マジでッ!?一言もそんなこと言ってなかったのにっ!」

 

「そりゃあ、センパイそういうの自分から言うタイプじゃないし、何だったらずっと教えないからね。教えて何かあるわけじゃないんだから、態々教える必要なんてないだろう?とか言うから」

 

「えぇ……。あ、てことはさ!黒圓先生もめっちゃ強いチョベリグな術式持ってんの!?」

 

「いや、センパイには悪いけど、術式はものすごく弱いよ。弱い上に、同じ術式を持っている人なんて幾らでも居るから」

 

「え?だって五条先生と同じくらい……?強いんでしょ?術式弱くて特級呪術師になれるもん?」

 

「それがセンパイの恐いところの1つ。刻まれた術式そのものはものすごく弱いのに、ちょっとした天与呪縛と呪力量、それに体術だけで特級呪術師になったんだ。正直、術式が弱かろうと、僕はセンパイが誰かに負けるところを想像できないね。だって無理ゲーのラスボス瞬殺して裏ボスも捻り殺して、代わりにそこで待ち構えているバグみたいなもんだからね」

 

「黒圓先生そんなにスゴい人だったんだ……」

 

 

 

 知らないし、解らなかった……と、虎杖が驚く。だが知らなくても仕方ない。龍已は自分から等級を明かすようなことはしないし、自分のことを強いとは言わない。相手がそれを知るのは、彼の強さを実体験した者から聞いた時だ。もしくは、直接彼に問い掛ければ普通に教えてくれる。

 

 兎も角として五条の他にも、これだけ強い人物が虎杖の側に居るのだ。紹介されていないが、呪力を用いない体術戦に於いてはエキスパートの甚爾も居るし、当然龍已だって近接格闘は教えられる。とても恵まれた環境に居た。

 

 復学するのは京都姉妹校交流会直前。それまでには呪術に関する少なくとも必要最低限の知識を覚えることと、戦いではどうあっても必要になる呪力の制御を身につけるために、虎杖は五条から出されたキツいお題……夜蛾学長お手製呪骸を抱きながら映画鑑賞を実行した。

 

 

 

「ねえ五条先生」

 

「んー?どうしたの悠仁」

 

「もしさ、もうマジでめちゃくちゃ強い呪霊と黒圓先生が……それこそ黒圓先生でもキツいって思うくらいのと戦ったら、どんな風に戦って勝つと思う?」

 

「んー、そうだねぇ。呪力にモノを言わせて領域展開(奥の手)使うか、頭おかしいくらいの呪力を込めた一撃で消し飛ばすか、もしくは──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────あなたが黒圓龍已ですね。その命、何も言わずに私へ差し出してはくれませんか?」

 

「さっさと死んで消え失せろ人間モドキッ!テメェが居るからこっちはめんどくせーことになってんだよッ!ま、俺様はテメェを殺したいだけだがなッ!」

 

「時間を掛ける必要は無い。俺がさっさと殺して終わらせよう」

 

 

 

「……この呪力量は未登録の特級呪霊か。それに、これ程流暢に人語を話す呪霊は初めてだ。やって来た狙いは……俺か。察するに俺を殺すと何かが有利になるようだな。人間モドキ……──────呪霊風情が上からもの言うとは、笑えないな」

 

 

 

 

 

 

 

 もしくは──────嬲り殺して無理矢理祓うだろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 







反承司零奈

龍已に会えていない日を数えている。何だったら時間すらも数えているが、言って引かれるのは嫌なのでそこだけは言わない。

龍已の他に愛想良く話せるのは家入硝子だけ。何故か2人で話しているところを眺めて体をクネクネさせている場面を度々目撃する。授業をやっていると、勉強そっちのけでうっとりと眺めてくるのでRさんはとてもやりづらいと言っていた。補修にするとマンツーマン!?と喜ぶのでやらない。

百鬼夜行を経て、多数の呪術師達から推薦を貰い、1級呪術師に昇級した。同じ1級呪霊ではまず勝てない。




五条悟

呪術界、表の最強。自分がそう思っているだけで、他はどう思っているかは別に知らない。家柄、名前の浸透性、術式、六眼などを加味して、色んな観点から最強と言わしめる存在。

解剖しようとした虎杖が、突然起き上がったのは純粋に驚いたが、これで将来有望な子を失わずに済んだとホッとした。この度、虎杖に修行をつける。




黒圓龍已

裏の最強。後ろ盾は無く、術式も弱い。だが総合的な強さは五条と同等かそれ以上とされている。ザ・無理ゲー先生。彼を殺すにはどうすればいいのか、割と頭を抱えるくらいの性能をしている。ちなみに不意打ちは無理。

なんだか最近、反承司と一緒に任務やら何やらやっている所為で、ブラコンの妹かファザコンの娘のように思えてきた。相手生徒なのにその考えはおかしい……と思っているが、つい構ってしまう。

実は自身が内包する呪力量を把握できていない。使っても使っても減っている感じがしないので、あれ?と思っていたが、もう20年以上そんなことしているので考えるのをやめた。暇なときの領域展開は今でも毎日やっている。領域展開熟練度SSS。何だコレは……たまげたなぁ……。

誰かこの無理ゲー先生斃す方法教えて(白目)




家入硝子

虎杖の解剖をしようとしたら生き返って驚いた。ちょっと残念……という気持ちもある。

龍已の頭を撫でたのは、撫でたかったから。何年付き合っていようがカワイイものはカワイイし、好きなものは好き。隙あらばイチャつく。バカップルみたいなイチャつきではなく、愛し合ってる熟年夫婦のイチャつき。なので非リアにはダメージが計り知れない。




夏油傑

最期は五条の手によって死んだ。しかし何故か存在しており、話し考え呪霊と会談をしている。



理由知ってても絶対言っちゃダメだよ?



あ、私パンの中でもメロンパンが好きれすぅ←




獸崇(しゅうすう)

人語を流暢に話す特級呪霊。黒山羊の頭、獅子の頭、馬の頭を持つ人型。それぞれの頭が別々のことを考えているが、結局それは1つの考え。ややこしい一人称になる。

甘く見積もって宿儺の指12本分の強さ。()()()()()()()4本分の強さ。




漏瑚(じょうご)

火山頭で一つ目の呪霊。甘く見積もって宿儺の指8、9本分の強さを持っている。五条を殺して特級呪物を蒐集に加えようとしている。人間を殺す過激派(呪霊全部そう)


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