呪術廻戦───黒い死神───   作:キャラメル太郎

51 / 81


最高評価をしてくださった、沙羅双樹 OKMT さん。

高評価をしてくださった、ギルネリーゼ さん、ありがとうございます。






第五十一話  解き放たれる

 

 

 

 

 記録──────2018年10月31日。19:00。

 

 

 

 東急百貨店、東急東横店を中心に半径400メートの『帳』が降ろされる。

 

 

 

 渋谷。そのスクランブル交差点にて、一般人はあることを叫んで訴えている。『五条悟を連れてこい』と。相手側の要求は五条悟が単独で最深部へ来ること。

 

 

 

 そして、監視役を付けた黒圓龍已の術式使用禁止。相手から提示された条件を、上層部が呑み込む形で達せられた。ふざけるなと憤る者や、ほとほと呆れる者。しかし彼を知る者達は必ず同じ事を口にする。

 

 

 

 

 

 ──────そんなモンで黒圓龍已(呪いの怪物)を止められるわけねーだろ。

 

 

 

 

 

 広大な術式範囲は潰された。遠距離からの呪力出力任せな一撃は使えない。術式使用不可なため、領域展開も行えない。が、しかし。彼は構わないと言う。呪力が使え、武器を扱えるならばむしろ好都合。接近して殺す。それだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フム……何となく狙いは分かったかな──────乗ってやるよ」

 

 

 

 一般人が侵入だけできる帳。呪術師が入れない帳。五条悟だけを閉じ込める帳。複数枚降ろされた帳の外で、求められた五条以外の者達が待機している。彼ならば大丈夫だろうという考えの元、その期待と信頼を一挙に背負って彼は進んだ。

 

 20:40。東京メトロ渋谷駅。(地下)()副都心ホーム。そこには3体の呪霊が待ち構えていた。先日虎杖と釘崎が祓った呪胎九相図2番と3番、その兄である脹相(ちょうそう)。少し前に五条を襲った特級呪霊で、火山頭が目印の漏瑚。交流会に現れた目から枝が生えた特級呪霊、花御である。

 

 駅内の吹き抜けになっているところから降りて地下線路のところまで来ると、花御の術式で生まれた枝が伸びて吹き抜けの出入口を塞いだ。逃げるのを防ぐ為かと思われるが、実際は木の壁の向こうに一般人が居るかどうかを見せないブラインドの効果がある。

 

 

 

「これで負けたら言い訳できないよ?」

 

「貴様こそ、初めての言い訳は考えてきたか?」

 

「つーか、逃げ道塞がなくても逃げないよ。逃げたら、オマエ等は()()()()()人間殺すだろ?お?だから来てやったんだよ」

 

「逃げたら殺す?違うな──────()()()()()()

 

 

 

 B5F。その地下鉄のホームにはぎっしりと一般人が敷き詰められていた。スクランブル交差点に居た一般人が突然、風呂の栓を抜いたように駅の中へ吸い込まれてしまったのだ。今どれだけの一般人が、呪霊の居る駅内に居るか判らない。しかしこの者達は人質ではない。五条悟を殺すのに必要な()である。

 

 呪胎九相図の受肉した男、脹相が持つ術式は加茂家の相伝である赤血操術だ。しかも呪霊と人間のハーフという肉体が、呪力を血に変えるという特異体質を生み、術式の多使用による失血死は無くなり、呪力がある限り延々と術式を使うことができる。加茂憲紀の完全上位互換である。

 

 赤血操術『苅祓』から戦闘がスタートする。その際に、ホームに敷き詰められていた一般人が、ゲートを開けられた事で線路上に雪崩れ込んできた。そして、脹相の『苅祓』は一般人の体を両断する。1度に数十人は殺されているだろう。一般人を殺しながら向かってきた血の斬撃は、五条の元までやって来たが無限の壁によって完全停止する。

 

 そこへ、一般人に紛れ込んで接近してきた漏瑚と花御が拳を振り上げた。物理攻撃も術式も、五条には届かない。無限の壁によって無限の遅延を与えられて彼の体へは到達できないのだ。それを知っていて接近してきた。拳は当たらないと解っているのでその場に止まっていた五条は、次の瞬間には驚きを露わにする。

 

 

 

「──────『領域展延(りょういきてんえん)』」

 

 

 

「……ッ!ナルホドね。っていうか、呪詛師と組んでんだからそう来るか」

 

 

 

 振り上げられた拳が向けられる。その途中、漏瑚と花御の体が呪力の膜に包まれた。叩き付けられた拳が無限の壁を削る。このままだと破られると判断した五条は一端大きく跳躍してその場から距離を取った。優秀な天才的頭脳が無限を破ろうとした原理を即座に解明する。

 

 領域展開と似ていた領域展延。これはシン・陰流簡易領域と同じものだ。本来、結界術として相手を閉じ込める領域展開を“箱”や“檻”とするならば、領域展延は“水”。己の肉体のみを包み込む液体であり、あらゆる術式を中和し押し返す効果がある。付与された術式の必中効果は薄まるものの、確実に術式を中和する。つまり、無限の壁を越えて五条に攻撃することが可能なのだ。

 

 確かな手応えを感じた漏瑚は、少し前に夏油が語った事を思い出していた。呪術界最強と謳われる五条悟が最も力を発揮する時はいつか解るかと問われた時のことだ。あの時は勿体ぶられるのが苛ついたのでさっさと話させたが、聞いた後に納得した。

 

 無下限呪術と六眼の抱き合わせ、今世最強の呪術師五条悟。その真価は“1人の時”に発揮される。どんな術師でも、彼の前では基本的に足手纏いだ(黒圓龍已を除く)。故に先ずは、何も持たない非術師である一般人で彼の周りを囲い固めたのだ。

 

 五条が使う術式反転『赫』は、最低出力で『蒼』の2倍ある。密集した空間に居る上に非術師が居れば使用なんて出来る筈も無い。一撃で非術師全員が死ぬ。『蒼』も同様、漏瑚や花御、脹相を祓うレベルまで出力を上げれば非術師を捲き込んで殺してしまう。故に使えない。虚式『茈』なんてのは以ての外だろう。『蒼』を使った高速移動も難しい。非術師を巻き込めば粉々にしてしまうだろう。正面から突っ込んでくるダンプカーみたいなものだ。

 

 そして、五条が使う領域展開『無量空処』。この領域は知覚・伝達、生きるという行為に無限回の作業を強制する。領域内に閉じ込められた瞬間、何もかもを与えられて何もかもができなくなる、『殲葬廻怨黑域』や真人の使う『自閉円鈍裹(じへいえんどんか)』同様必殺必中の代表領域。

 

 しかし五条の領域だけは他と違い、術式を使って必殺により必殺とするのではなく、領域内に入ると引き摺り込んだ相手全てに無限回の作業を強制する。要するに、一般人が入った場合、一瞬にして廃人になるほどの情報が頭に流し込まれてしまうのだ。1度入った事のある虎杖は無事だが、それは五条悟に触れているものには効果がないという特殊な条件があるからだ。

 

 だからこそ、狭い空間に多く居る非術師を巻き込んで領域展開は使えないし、仮に漏瑚、花御、脹相だけを領域に引き摺り込んでも、外に居る非術師は建物の壁と五条の領域の結界に挟まれて圧死する。これだけの条件があれば、五条が護りに徹するしかなくなるわけだ。この作戦を聞いたとき、漏瑚は良い作戦だと思った。

 

 条件として、自分達も領域展開は使えない訳なのだが。漏瑚達が使ってしまうと多くの非術師を巻き込む。そうすれば諦めて領域を展開せざるを得ないからだ。領域展開の押し合いは、漏瑚達では勝てない。現に漏瑚は押し合いで負けて殺されかけ、花御に助けられて命からがら逃げ果せたという過去がある。

 

 

 

「逃げるなと言った筈だぞ、五条悟。ゴミを見せしめに殺さねば解らんか?」

 

「……正直驚いたよ」

 

「なんだ、言い訳か?」

 

「ちげーよハゲ。オマエ等が──────この程度で僕に勝てると思ってる、その脳みそに驚いたって言ってんだよ」

 

「…………ッ」

 

 

 

 付けていた黒い眼帯を外す。現れるのは世界に1人だけしか持つことを赦されない奇跡の眼球六眼。空色の美しい瞳が晒され、漏瑚達に身の毛もよだつ殺気と覇気が叩き付けられる。最強の呪術師五条悟のことを完全に舐めている。そう彼は言っている。

 

 ふざけながら戦った、前の戦闘とは比べものにならない雰囲気と覇気に、漏瑚は笑みを浮かべながら冷や汗を流している。勝つ必要は無い。やれば良いのはあくまで時間稼ぎ。20分だ。20分持たせれば、後は夏油がやる。五条悟を封印する。

 

 

 

「そこの雑草。オマエに会うのは3度目だな?ナメた真似しやがって。まずはオマエから祓う(ころす)

 

 

 

 六眼を晒した本気の五条悟がやって来る。目前まで堂々と接近してきた五条と漏瑚達が睨み合い、漏瑚達が仕掛けた。領域展延を展開しながら拳を振るう。しかしそれに対して、()()()()()()()五条が応戦した。単純な呪力操作と体術のみで2体に肉薄する。

 

 才能に溢れた彼の体術は、昔に散々龍已にボコボコにされて更に精度が上がっている。漏瑚や花御では、真面に触れることすらできない。できないが、攻撃を逸らすのに触れるのだ。それによって無限を解いていると察した花御が今この時に術式を使うべきだと判断し、領域展延を解いて術式を発動した。

 

 その瞬間を、五条が狙っていたとも知らずに。気づいた漏瑚が叫ぶ。領域展延を解くなと。近接戦で圧倒されつつも、腕を失った程度で済んでいたのは領域展延を解かずに自身の身を護っていたからだ。それを解いてしまえば、五条の攻撃もまた通ってしまう。即座に体の向きを反転させて、花御に飛び付く。

 

 交流会で花御と戦った恵や虎杖、東堂からの情報で目から生えた枝が弱いことは知っている。そこを両手で掴み、力尽くで引き抜いていった。弱点をやられた花御は死に体だった。満足に動けそうにも無い。でもそれを悟らせないように五条へ、漏瑚と共に攻撃した。それを無限で受けて、領域展延と押し合いをする。それがいけなかった。

 

 

 

「いいのか?オマエらが僕の無限を破ろうとする度に、僕は無限を保つために術式を強くする。こっちの独活(ウド)は──────もうそれに耐えられる元気が無いんじゃない?」

 

「なっ!?やめろッ!五条悟、あの人間共を殺──────」

 

 

 

 漏瑚が最後まで言うこと叶わず、花御は祓われた。壁に叩き付けられて、無限の壁に押し付けられたのだ。そして、一瞬にして潰された。残ったのは花御の肉片と残骸だけ。完全に祓われたことを確信して、漏瑚は呆然と名を呼んだのだ。

 

 戦いは終わらない。花御が祓われようが、五条はこの場に居る漏瑚と脹相を祓うまで待ってはくれない。恐ろしいほど冷たい六眼が彼等を睨み付けていた。このままならば、漏瑚達は祓われるだろう。しかし作戦はこれだけで終わらない。

 

 人に紛れた脹相が赤血操術で付かず離れずの距離から攻撃して気を散らさせ、隙をついて漏瑚が接近して領域展延を展開しながら近接を仕掛け、攻撃されそうになったら掴まれた自身の腕を自切してでもその場から離れる。ヒットアンドアウェイ戦法を取り、時間を稼ぐ。すると、やって来ることはありえない電車がやって来た。

 

 中に乗っていたのは真人によって呪霊のように改造された改造人間。五条達の殺し合いに巻き込まれて異常を察した非術師が急いで電車に乗り込もうとして、改造人間に殺されていった。現地に着いた真人も参戦して五条との殺し合いが再開される。このままだと相当な非術師が殺される。そこで五条は……一か八かの賭けに出た。

 

 

 

「なっ……ッ!?」

 

「ハハッ……マジかよ……ッ!?」

 

 

 

「領域展開──────『無量空処(むりょうくうしょ)』」

 

 

 

 五条悟。一か八か0().()2()()()領域展開。0.2秒は五条が勘で設定した、非術師が廃人とならず、後遺症も残らないだろう無量空処の滞在時間。根拠は一切無く、完全な勘によるもの。

 

 非術師を含む改造人間及び、漏瑚や真人、脹相の頭の中には、約半年分の情報が流し込まれ、全員が立ったまま気絶した。しかしこのB5Fに居て生き残った非術師達は、この2ヶ月後に残らず社会復帰を果たす。言ってしまえばその程度の領域展開。特級呪霊はこの瞬間にも目を覚ます可能性がある。

 

 五条はその場合に打ち込まれるカウンターを考慮して、標的は電車の中から出て来た改造人間に絞った。現代最強の呪術師は、領域展開解除後、放たれた約1000体の改造人間を299秒で鏖殺。

 

 

 

獄門疆(ごくもんきょう)──────開門」

 

 

 

「────────────。」

 

 

 

 獄門疆。特級呪物であり、源信の成れの果て。これに封印できないものは存在しない。だが当然それだけの力を持つ以上、条件が存在する。

 

 1分。獄門疆開門後、封印有効範囲約4メートル以内に1分間、五条をその場に留めなければならない。漏瑚はこれを聞いた時、怒りの勢い余って夏油を殺しそうになった。どれだけの命を積み重ねても、五条をその場に1分留めるのは無理難題だと知っていたからだ。

 

 しかし、獄門疆の提示する1分は普通の1分ではなかった。()()()()()1分。つまり、現実で1秒だろうが、脳内で1分が経過すれば封印は成功する。五条は何かを考える前に、獄門疆を目にした瞬間踵を返して距離を取ろうとした。

 

 

 

「やあ──────悟。久しいね」

 

 

 

「──────は?」

 

 

 

 話し掛けてきた声、口調、気配。五条は驚き瞠目しながら振り返り、その姿を見た。そこには、去年の百鬼夜行の終わりに自身の手で殺した筈の親友、夏油傑の姿があった。

 

 偽物?変身の術式?……否。相手の術式を丸裸にする六眼がそれを否定した。正真正銘の夏油傑であった。瞬間、五条の脳内に溢れるのは、親友との()()()()()()()。そしてその時にはやはり、1分なんて時間はとうに過ぎていた。五条は獄門疆の封印条件を満たしてしまい、拘束された。呪力も力も入らないのを感じ、詰みだと諦める。

 

 

 

「ダメじゃないか悟。戦闘中に考え事など」

 

「……──────誰だよオマエ」

 

「夏油傑だよ。忘れたのかい?悲しいね」

 

「…………肉体も呪力も、この六眼に映る情報はオマエを夏油傑だと言っている。だが()の魂がそれを否定してんだよッ!さっさと答えろッ!オマエは誰だッ!!!!」

 

 

 

「──────キッショ。なんで分かるんだよ」

 

 

 

「──────ッ!!テメェ……ッ!!」

 

 

 

 夏油傑。いや、夏油傑の体を乗っ取っていたのは、本体が脳味噌のような者だった。切り開いた際にできたのだろう、頭の傷を縫っていた糸を引き抜いて頭頂部を外して見せつけた。脳に口があるような物体。それが夏油傑の体を操っている奴の正体だ。

 

 中に入っている奴の術式によるものだ。脳を入れ替えれば肉体を転々とする事ができるという。更には、肉体が持つ術式すらも使用できるという。夏油の呪霊操術。この状況が欲しかったが為に、死体を探した。五条が夏油の死体を家入に処理させなかったから。

 

 偽物は頭を元に戻しながら語る。五条は強すぎるから、殺すではなく封印することに心血を注いだと。強すぎるが故に、五条の封印は100年後か、1000年後かに解くと、自身の目的に邪魔な存在でしかないと。それに対して五条は笑った。まるで嘲るように。

 

 夏油の術式は手数の多さ的にもかなりの脅威だ。生前特級呪術師をやっていただけのことはある。しかしそれを、真っ正面から打ち砕いたのが乙骨だ。彼の手によって瀕死の重傷を負った。それを挙げられて尚、偽物の余裕は消えない。無条件の術式模倣。底無しの呪力。しかし今は何の魅力も感じないと。

 

 大切な者の魂を抑留する形で得ていた力故に、夏油との戦いの後で解呪された今ではその力は無い。だから脅威に成り得ないと言う。確かにそうかも知れない。以前の超常的呪いの塊は無いのかも、呪いの女王は退位したやも知れない。が、呪いの女王が消えようと、()()()()()()存在する。

 

 

 

「バカだろ。オマエじゃセンパイには勝てねーよ。どんな呪霊向けよーが、取り込んで操っている以上術式だ。センパイには近づけない。触れられない。それに、憂太や里香よりも、呪力の量が勝ってんのは知ってんだろ?どうせ。領域展開だって俺より練度は上だ。術式範囲も広大。近接だって俺より強い。どうやって勝つって?やってみろよアホが。んでボコされて死ね」

 

「……黒圓龍已。()()()()()生き残り。しかも恐らく()()()()()()()()()()。だからこそ付け入る隙がある。彼のことは()こすだけでいい。それだけで、彼のことは終わりだ」

 

「……あ?その怨の一族ってなんだよ」

 

「君が知る必要は無いさ。その頃に君は、居ないのだから」

 

 

 

 

 

 ──────獄門疆……閉門。

 

 

 

 

 

 現代最強の呪術師、五条悟。封印により戦闘不能。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五条悟が封印された後、死んだはずのメカ丸こと与幸吉が生前に用意しておいた通信用メカ丸が稼働した。呪霊達と手を組んでいたからこそ知っていた、五条の封印。どうにか情報を明け渡して保護してもらうつもりだったが、殺される未来のことを考えて、『五条悟が封印された場合に限り起動する』という限定的な縛りで発現した。

 

 現れたのは虎杖の耳元。そして夏油が五条を封印したB5Fの天井だった。天井から眺め、獄門疆が五条の封印を完了しながら、情報の処理を終わりきらず重量が上がり、持ち上げられずその場に待機しなくてはならなくなったことを確認した。察知されて壊されてしまったが、それを虎杖に伝えることに成功する。

 

 虎杖は班員である冥冥とその弟憂憂(ういうい)と共に動き出した。現在五条の封印の話を知っているのは虎杖と冥冥と憂憂のみ。そこで一端地上に居て尚且つ近くの七海班と合流した。七海班は猪野(いの)という七海を尊敬している呪術師と、その他には恵が居る。

 

 1級呪術師としてやらねばならない事がある七海は一端別行動し、猪野を先頭として虎杖と恵が呪術師が入れない帳を破ることになった。その際、帳を降ろしている呪詛師を撃破し、帳を降ろす呪具の破壊に成功する。動きが後手に回っている感じがしているが、少しずつ呪術師達が態勢を整えつつあった。

 

 戦いは激化していた。途中で恵と別れた虎杖が、弟の仇だという脹相と殺し合いをして敗北し、何故か脹相が気絶した虎杖を見て困惑したり、冥冥が夏油の元まで行って、出された特級疾病呪霊と戦闘になったり、釘崎が交流会で龍已が逃がしてしまった呪詛師と戦ったり、多くがあった。

 

 しかしそういった戦いも、突然風向きが変わる。その分岐点は、合流して行動を共にしている七海と、禪院家当主である特別1級呪術師の禪院直毘人。そして、禪院真希が特級呪霊のタコのような見た目の、漏瑚達と行動を共にしていた陀艮(だごん)と邂逅し、戦闘になったところからだろう。

 

 直毘人の術式で初撃は与えることができたが、花御を祓われた事に怒り狂った陀艮は、成長を遂げた。特級呪霊として存在していた陀艮はまだ呪胎だった。つまりは子供だ。外の皮を脱ぎ捨てて一気に成長した陀艮は、人型の姿となった。

 

 水を使った術式を使って攻撃を仕掛け、花御のように無から木を創るが如く水を発生させる。渋谷駅内を埋め尽くさん程の物量で攻めてくる。七海が全力で攻撃しようとびくともせず、HPが果てしなく多いという考えを抱くほど。後に、直毘人の投射呪法を使った速度で攻めていくのだが、陀艮に奥の手を切られた。

 

 

 

「領域展開──────蕩蘊平線(たううんへいせん)

 

 

 

 南国のビーチのような景色の領域に引き摺り込まれた3人。七海は領域に対する手を持っておらず、それは真希にも言えた。唯一直毘人が落花の情という、御三家に伝わる対領域対策を持っているが、陀艮が使う付与された術式『死累累湧軍(しるるゆうぐん)』に止められた。

 

『死累累湧軍』は際限なく湧き出てくる海棲生物の式神。その数は圧倒的なもので、しかも領域によって必中を与えられている。加えて、式神は当たるまでその場に存在せず、当たったと感じた瞬間にも迎撃しなければ、次の瞬間には噛み付かれて肉を抉られるのだ。

 

 必中を消せない七海と真希は苦戦する。現に式神によって肉を抉られたり、迎撃できても陀艮に隙をつかれて近接でダメージを負っている。直毘人も迎撃系の対策である落花の情を扱っている最中に、式神を使って意識を割かれ、攻撃を打ち込まれた。全滅の危機と言ってもいい。

 

 そこへやって来たのが、不完全ながらも領域展開を修得した恵だった。敵の領域に外側から入り込んで、密かに領域に同じ領域で穴を開けている。呪力消費が果てしなく、連戦で残りも少ない中での領域展開で限界が近いが、通りさえすれば陀艮の領域から逃げられる。七海は1級呪術師としての信頼を糧に、直接集合を掛けた。

 

 陀艮が気づいたときには、全員その開けられた穴に集合していた。これで逃げられる。そう思った時、外から中へ別の者が入り込んできた。縁に手を付いて勢い良く領域内に入り込む人影。それが3つ。恵、七海、直毘人、真希は驚きを露わにする。

 

 

 

「──────おい。俺が行くから待機と言っただろう。何故お前達も入ってきた」

 

「オマエ今術式使えねーンだから領域対策ねーだろ。俺がぱっぱと祓ってやるから見てろよ」

 

「えー。私龍已先生のカッコイイとこが見たくて♡。マダオは邪魔なんだけど?」

 

「温度差ひでーなオマエ」

 

 

 

「……ッ!?龍已さん!?」

 

「黒圓に……甚爾か!?」

 

「なんで零奈も居んだよ!?」

 

「……っ!クソッ……穴が閉じちまった……っ!」

 

 

 

 現れたのは黒圓班の3人だった。一切の躊躇いも無く、陀艮の領域の中に入ってきた3人は、中の美しいビーチのような景色を眺めて穏やかな場所だなと、見当違いなことを考えていた。目の前に特級呪霊が居るというのにマイペースにも会話をしている。しかし七海は気が抜けたように鉈を仕舞った。

 

 直毘人も、陀艮にやられて失った片腕の傷の応急処置に入り、真希は領域展開を続行している恵の傍に行って大丈夫そうか見ている。彼等は理解しているのだ。黒圓龍已と伏黒甚爾が揃ってこの場に現れた時点で、陀艮の運命が決まったことを。

 

 

 

「おーおー。ジジイは随分なやられよーじゃねぇか。もう死ぬか?遺産の金幾らか寄越せよ」

 

「フン。この場を退けたら幾らかくれてやるわ。儂個人からな」

 

「へぇ……やるじゃねーか。その言葉忘れンなよ」

 

「恵。あと10秒持ち堪えられるか?その間にアレは祓う(殺す)。反承司は恵達の事を守れ。甚爾、どうせお前は突っ込むんだろう。行くぞ」

 

「おっ任せあれー!♡」

 

「うっし。やっといい感じに動けるぜ。おう呪霊、俺にはオマエがどんな姿してっか見えねーが、今から殴り殺してやるから逃げんなよ」

 

 

 

 水面が爆発した。いや、爆発したとしか言えない強烈な踏み込みがあった。甚爾は口から吐き出した武器庫呪霊を体に巻き付け、口から3節棍を取り出して手に取った。龍已も同じく首に巻き付くクロから薙刀を出してもらい手に取る。

 

 走り出すための踏み込みだけで、爆弾が大爆発したとしか思えない水飛沫を上げて()()()疾走する。横並びになって駆けてくる2人に、陀艮は直感でマズいと悟る。あまりに速い。速過ぎた。50メートルくらいの距離を1秒と掛からず詰める足の速さに、考えるよりも先に式神を召喚した。

 

 足元から現れたのはウツボのような長い体を持った海棲生物。鋭い牙を見せながら人一人簡単に呑み込める口を大きく開けて、前から物量で押し込もうとした。横並びで走っていた甚爾と龍已が一列になった。甚爾が先頭に出て、3節棍を巧みに操り式神を細切りに打ち壊していく。背後の龍已は走っているだけだ。1匹も後ろへ来るとは考えていない。

 

 これではダメだと思って、跳躍して距離を取りながら硬度のある式神を召喚。ダンゴムシのような姿をした式神が来ると、今度は甚爾が後ろに下がって龍已が前に出た。柄が黒い薙刀の刃が領域の擬似太陽の光を浴びて妖しく光る。両手を使って体の周りを高速で振り回し、近づく式神を細切れに斬り刻んだ。

 

 恐ろしい切れ味と、武器を扱う腕。この2人は明らかに相手にするのは危険だと、本能とも言える警鐘が大音量で鳴った。恵の領域が必中を中和していることを邪魔に思う。必中さえあれば、武器を振り回すだけの2人を止められると考え、カジキのような先端が尖った式神を多く召喚して龍已と甚爾、そして反承司達の方へも飛ばした。

 

 

 

「来ます……っ!」

 

「チッ。あの2人見逃してんじゃねーか!」

 

「儂が1秒止めてやるから、その間に──────」

 

「あー、そういうの良いから。あなた達は私の後ろに居てくれます?前に出てこない限りは守ってあげますから、勝手な行動するなら自分の死には自分で責任を取ってくださいね。あと禪院……真希の方。見逃したんじゃなくて()()()()()()。勝手なもの言いはしないで」

 

「反承司さん……ッ!?」

 

 

 

 何故か龍已と甚爾は自分達に向かってくるもの以外の式神を無視した。その式神が自分達の方へ来たので、七海は鉈を構え、直毘人が残る左手を構えた。真希も持っている槍の矛先を式神に向けるが、その3人の前に堂々と出て来た反承司に叫ぶ。

 

 七海は虎杖とはそれなりに接してきていた。真人との一件があってから、顔合わせも何度もしているし親しい仲と言ってもいいだろう。だがそれ以外の生徒とは交流が無いのであまり知らない。忙しくて龍已との話なども出来ていないので、反承司の事もあまり聞いていないのだ。優秀な生徒がいるということは五条がペラペラと喋っているので知っているが、所詮はその程度なのだ。

 

 だから危ないと思ったのだ。真希はまだまだ弱く、反承司も同じ学生だ。此処は領域の中であり、向かってくる式神は20を超えている。明らかに1人で相手するのは厳しいだろう。倒せなくは無い耐久力だとしても、1人では確実に死ぬ。と、思ったのだが、反承司は余裕の態度を変えなかった。

 

 高専で彼女の術式を知る者は少ない。見ただけで解る五条。自分から明かした龍已。夜蛾学長。補助監督鶴川。これだけしか知らないのだ。そして今回で反承司の術式の強さを目の当たりにする。学生にして既に1級呪術師をしており、特級呪霊の攻撃を彼女ならば大丈夫だという考えから()()()()()()()()()()()任された反承司零奈の力。

 

 

 

反射(はんしゃ)呪法──────『不和(やぶれず)御前(ごぜん)』」

 

 

 

 式神から向けられる鋭い先端が、彼女を目前にして止まった。見たことがある光景だと、七海は思った。まるで五条悟のように、見えない壁で敵の攻撃を防いでいるかのよう。向けられた攻撃の一切を通さず、完全停止させる。

 

 式神が止まっている中、反承司は右手の人差し指を向けた。指先に黒点が生まれる。どこから生み出されたものなのか解らないそれは、全て式神が彼女に与えたものだ。反承司はそれを集めて、増幅させているだけ。その操作に呪力を使うだけで、別に彼女の攻撃そのものに強さがあるわけではない。

 

 小さな黒点は、感じる圧力と呪力を跳ね上げていき、反承司の足元の水を退けさせた。異質。明らかな異常。式神が止まった状態から再び動き出して攻撃してくるよりも先に、反承司が溜めておいた衝撃の塊が解放された。

 

 

 

「お前達が寄越した衝撃を倍々に増幅させてやったから消し飛んで死ねよ──────『反衝(はんしょう)』」

 

 

 

 衝撃の反射。受けたものを返すだけの力。式神から与えられた全エネルギーを術式で受け止め、更に反射し続ける。与えられた力に反承司の返す力を上乗せしてまた反射させると、1度行う度に反射される力は大きくなる。反承司はそれを1度に約2倍近く膨れ上げさせる事が可能となり、集めて増幅させた衝撃を黒点にして纏めた。

 

 膨大な衝撃のエネルギーを小さな黒点にしたことで、衝撃は内部で圧縮される。それに方向性を持たせて解放すれば、想像を絶する衝撃が生み出されるのだ。よって式神が粉々に吹き飛び、勢い余って甚爾と龍已の背に向けて飛んでいく。

 

 しかし、それが来ると解っていたのか、今まで走っていた速度を更に上げて、衝撃の速度に合わせて自身の速度を加速させる。瞬間、2人の姿は消えたようにも見え、一条の残像にしか見えない線を描いて陀艮の元まで一直線で走り抜けた。

 

 先頭に行った龍已が擦れ違い様に陀艮の両腕両脚を落とした。七海の鉈でも斬れなかった肉体を易々と斬り裂く。そして後からやって来た甚爾が腰を捻って大きく振りかぶり、強靱な筋肉にみしりと軋ませながら力の限り3節棍を振った。

 

 甚爾が持っている3節棍。名を『游雲』という。特級呪具の中でも術式を持たない特殊な呪具で、その代わりに一撃の破壊力は持つ者の膂力(パワー)に依存される。人知を超えた超人の肉体を持つ甚爾の、腰を入れたフルスイングは、腕や脚を斬り落とされて宙に浮かぶ陀艮の顔面を捉え……一撃で消し飛ばした。

 

 

 

「おらよ、特級呪霊ホームランだ」

 

(ボール)が飛んでいかなかったから失格だな」

 

「つまんねーこと言うなよ」

 

「それよりも甚爾お前、最後をやりたくて態と速度を落としただろう」

 

「あ?いいだろ別に。ちとそこのジジイから金巻き上げるだけだ。その証拠だ、証拠。俺が最後ぶん殴って祓ったんだから」

 

「お前は本当に……はぁ。もういい。特級程度の祓除実績なんぞ今更要らん。……反承司、良くやったな」

 

「うぇへへ。褒められちった……褒められちったっ!♡」

 

()()()は中々だったな。もうちっと早くても良かったが」

 

「は?だったら使わないで勝手に走ってろよ」

 

「龍已との落差がひでーんだっつーの」

 

 

 

 領域が破壊される。それが意味するのは、術者の完全な死。陀艮が祓われたということだ。必中効果を消すために呪力を振り絞っていた恵は大きく息を吐き出した。荒い息を繰り返して真希に心配されている。領域展開はそう軽々と使えないくらいの呪力消費を強いられる。恵の呪力では1日1度が限度だろう。

 

 元の景色に戻り、陀艮の体が崩れていくのを見届けた七海は深く息を吐き出した。あれだけ苦戦させられた特級呪霊を、こうも簡単に祓ってくるのは思いの外心にくるが、この人達ならば普通のことだと思えばいつもの調子に戻ってくる。傷が深いところもあるので、あまり無理して動けないが、家入の所に行って治療を受ければまた戻って来れるだろう。

 

 取り敢えず危機は乗り越えたとホッとしていると、龍已が何かに反応した。ピクリと指先が反応し、突然顔色が悪くなる。血の気が引いているのか真っ青だ。いち早くそれに気が付いた反承司が近寄って心配するが、その言葉は全く耳に入らない。

 

 恐る恐る……龍已は後ろを振り返った。そこにはある者がゆっくりと近づいていた。

 

 

 

「どういう……事なんだ……何故……あなたが……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 龍已と甚爾が陀艮を祓う少し前のこと、七海班の猪野は虎杖と恵と協力して渋谷に入れるように呪術師を通さない帳を解くべく呪詛師と戦った。虎杖と恵はあべこべの術式を持った呪詛師を倒すことに成功したが、猪野はもう1人の呪詛師に手こずった。

 

 相手は老婆だった。数珠を両手で持って何かを唱えている。傍には孫と呼んでいる若い男が居た。孫は大した強さをしていないが、老婆を傷つけまいと動くので邪魔だった。そして老婆……オガミ婆は孫にあるものを飲むように言った。カプセルを飲んだ孫は姿を変えていく。

 

 

 

「■■■■■──────『黒圓忠胤(こくえんただかず)』」

 

 

 

 一子相伝の流派を代々継承していく黒圓一族。その生き残りである黒圓龍已の実の父。黒圓忠胤が再び現世に現れた。猪野は誰かも解らず術式を発動して忠胤を攻撃しようとした。だが術式を使う前に、彼の四肢の骨は粉々にへし折られていた。

 

 瞬きもしていない、一瞬の出来事。何が起きたのかも、何をされたのかも解らない刹那の攻撃によって猪野は戦闘不能になってしまった。後に虎杖と恵に回収されて家入の元へ運ばれるが命に別状は無い。

 

 

 

「ど、どどどどどどどどどうするお、おおおおお婆ちゃん?」

 

「孫はこのあと適当に呪術師を殺していけ。黒圓一族の力を見せてみぃ」

 

 

 

「──────呪詛師風情が()()黒圓に、上からモノを言うな」

 

 

 

「──────ッ!!!!」

 

 

 

 オガミ婆は80を超えている歳を感じさせない動きでその場から離れた。対峙するのは黒圓忠胤。しかし、オガミ婆が降霊術で降ろしたのは肉体の情報だけ。魂の情報は一切降ろしていない。このような事になることを避けるためだ。だから絶対にやらないようにしている。

 

 しかし対峙する男は、孫の着ていた服を掴んで引き千切り、傷だらけの鍛え抜かれた肉体を晒した。首をごきりと鳴らし、拳を構える。それだけで、オガミ婆は生まれてきたことを後悔した。それだけのナニカを、忠胤の拳から感じ取った。

 

 

 

「術師を殺せと言ったな?──────貴様も術師だろう。死ね」

 

「待っ──────」

 

 

 

 血飛沫が舞う。オガミ婆の頭は殴打の一撃で完全に消し飛んだ。頭の無くなった体が崩れ落ち、忠胤はそれを石を蹴るつもりで蹴っ飛ばした。胴体が真っ二つになって宙へ弾き飛ばされる。人間というものに何とも思っていない。いや、呪詛師を人間と思っていないのだ。

 

 手の感触を確かめるように、オガミ婆を殴り殺した右手を開閉している。そして最後にぎちりと握り込むと、足場を粉砕しながら大きく跳躍してその場を後にした。そして彷徨うこと数十分。龍已の前に現れた。

 

 

 

 

 

「さあ龍已──────俺をお前の手で殺してくれ」

 

「父……様」

 

 

 

 

 

 黒圓一族最後の生き残り、黒圓龍已は実の父、黒圓忠胤との再会を果たす。ただしその再会は、決して綺麗なものではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 






Q・展開早くね?

A・原作のところなぞったらマズいでしょ?だから要らないところは飛ばして、メインだけやります(渋谷事変長過ぎ)




花御

ボチュン。




夏油傑(偽)

脳味噌取り替えると体を転々とすることができるクソ野郎。

読者からはメロンパンと呼ばれている。メロンパンみたいな本体してるから。




五条悟

封印された。ヤッタね!(全然良くない)

1000体以上の人造人間じゃなくて、漏瑚とか真人祓ってれば渋谷事変もっと簡単に終わってた。ちょっとやらかしたね。脹相死んじゃうけど。




七海

五条が封印されたことを虎杖から聞いたとき、は?って思ったけど、何やってるんですかあの人……と呆れた。まだ余裕がある。それは黒圓龍已が居るから。

虎杖のように特殊な状況に身を置いて五条の我が儘で助けられている者達はかなり危ない状況になってしまったが、日本が終わることはないと思っている。なので心に余裕はありつつ、五条救出に動いた。




伏黒恵

未完成の領域展開で陀艮の領域に穴を開けて逃げようとしたが、まさかの穴から龍已達がイン。普通に驚いた。10秒必中効果を消していたら、特級呪霊の頭が飛んでいた。君の父親だよやったの。

まさか甚爾が助けに来ると思わなかったし、助けられたことに苦々しい表情をしている。これ絶対後で煽ってくんだろ……と面倒くさそう。




反承司零奈

反射呪法という術式を持っており、物理や術式を反射することができる。しかし反射するには飛んでくるだけの原理を理解して訪れるだろう衝撃の強さを速度や大きさから緻密に演算しなければならない。間違えると反射されずに素通りしてくる。

なので反承司にはそれを即座に計算できる頭の良さを求められる。なので彼女は毎日欠かさず勉強をして地頭を良くする特訓をしている。

式神が突っ込んできたのに反射されて吹き飛ばないのは、衝撃をそのまま反射するのではなく、衝撃のエネルギーを別の所に持っていって反射させ続けて黒点のエネルギーにしていたから。つまり反射されず力は0になる。よって反射で吹き飛ばなかった(ガバガバ理論)

反射できるのは物体があるものだけなので、散布された毒や目に見えず計算できない空気の衝撃などは反射できない(演算できれば可能)。龍已の呪力弾も、見た目と威力が比例していないので無理(これはマジで無理)。

術式の反射にはかなりの呪力が必要とされるが、豊富な呪力を持っているので今のところ枯渇したことはない。




伏黒甚爾

游雲をフルスイングして陀艮の頭を消し飛ばした。追い風ならぬ追い衝撃を受けながら超速度で擦れ違い様に腰を入れて本気でぶん殴ったので、破壊力はマジでゴリラが泣くレベル。

当然のように水の上を走る。陀艮に向かって疾走しているときは、短距離走で隣を走る奴に勝とうとする気持ちだった。結局式神向けられて有耶無耶になった。




黒圓龍已

反承司と甚爾を連れて、帳の内側に入った後は改造人間と呪霊を祓いまくって移動していた。七海達の方へ来たのは、陀艮の領域展開の呪力を感じたから。無理矢理中に入ろうとしたが、ちょうど恵が穴を開けたので中に入った。

甚爾と同じく水面を当然のように駆ける。使っていた薙刀の呪具は1級程度。呪力を込めて使っていただけ。切れ味がヤバいのは使い手の技量がヤバいから。




オガミ婆

アイドル大好きのドルオタ。連れていた孫は本当の孫じゃない。昔に攫ってきた子供を育てて孫にした。他にもそういう奴が何人かいる。

扱うのは降霊術。対象の体の一部を取り込ませる事によって肉体の情報と魂の情報を憑依させることができる。




黒圓忠胤

昔に呪詛師によって殺された龍已の父親。降霊術によって一時的に蘇った。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。