呪術廻戦───黒い死神───   作:キャラメル太郎

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最高評価をしてくださった、ただのメガネ アミジャガ5 さん。

高評価をしてくださった、Nagato itika さん。ありがとうございます。




第五十二話  ある少女の事情

 

 

 

 

「龍已──────お前の手で俺を殺してくれ」

 

「父……様?」

 

 

 

「なんで……こんな所に黒圓龍已の父親が……ッ!?」

 

 

 

 陀艮を打ち祓った一行が出会ったのは、傷だらけの上半身を晒した筋骨隆々の男だった。七海や直毘人は首を傾げている。真希も誰なのか理解していないし当然恵も知らないので反応は薄い。しかし龍已と反承司は違った。

 

 まだ子供の頃だった話。ある日突然自身が留守中の家に呪詛師がやって来て父親と母親を殺された龍已。激しい怒りと恨み、怨念を携えて裏の世界へ入ることを決意した日。忘れもしない、黒い死神がこの世界に誕生した日である。忘れるわけが無い。

 

 そして反承司。彼女が何故、龍已の両親を目にして驚きを露わにしているのか。不思議な発言も密かにあった反承司は、黒圓忠胤を視認した瞬間、()()()()()生を受けた自身の3()5()()()()人生をフラッシュバックさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────反承司零奈の()()()()()()記憶。

 

 

 

「──────やった!更新されてる!んふふっ」

 

 

 

 私、█████は歴とした日本人だった。都会とも田舎とも取れない微妙な町で生まれて育ってきた。友人もそれなりにいて、毎日を普通に過ごしていた。普通じゃない人って社長の息子や娘だったり、ラブコメ主人公みたいなハーレム鈍感のような奴の事でしょ?なら私は普通の高校生だったよ。

 

 実家は定食屋さんで、お母さんとお父さんが作るカツ丼がとても人気だった。かく言う私も両親の料理が大好きで、ついつい食べ過ぎてお腹周りのお肉が気になって泣きながらダイエットした覚えがある。うん。今では良い思い出だね。今はパーフェクトボディだけど。しかも太りづらい体質。はーっ、私勝ち組っしょ!(割と)

 

 普通の私は、高校が終わったら親しい友達と放課後に遊んで、ゲームセンターのUFOキャッチャーでキャーキャー言ってた。割と青春してると思う。顔立ちもまあ悪くないし、今と同じように胸も中々大きかった。だから性欲の権化な男子高校生には良い提供(隠語)になっただろう。告白されることもあった。

 

 けど、私は断った。言ったらヤバイ奴かも知れないが、私はある作品のあるキャラにドはまりしていた。世間を震撼させた呪いがテーマのダーク現代ファンタジー『呪術廻戦』。ある日呪いの王両面宿儺を食べて裏の世界に入門する主人公のあれやこれやだ。作者は本当に読者(こちら)のメンタルボコ殴りにするのが好きで、良いキャラを普通に殺す。てか、面白くするために良いキャラ殺してる。

 

 これまで普通のファンタジーやら、ちょっと逸れて恋愛の小説や漫画を読んでいた私には手の出し辛い作品だったが、とても面白かった。次は次は!?とドキドキしていたのは今でも覚えてる。原作は面白い。時系列ガバってるところとかあったが、総じて面白かった。でも、私はそれよりも好きなものができた。

 

 

 

 ──────二次創作。

 

 

 

 原作が出ているものを自分なりの想像で弄って作品を書いたもの。人気であれば人気であるほど、二次創作の数は増えていく。呪術廻戦も例に漏れず二次創作が流行った。私もその二次創作を読み漁ったものだ。その中で1つ、気になったものを目にした。

 

『黒い死神』という、如何にも厨二なあれが目立つ題名をした二次創作だった。ふーんと、最初は軽く読んだが、それなりに内容は詰めているようだった。取り敢えず主人公が呪力量ヤバくてエグいってことと、近接強いのに術式遠距離という遠近両用タイプという、まあ強い系のありがちだと思った。

 

 でも、最初はそんな主人公が呪霊祓って、原作にちょっと関わってって感じだったところから、一気に主人公の過去編に飛んだ。一子相伝の流派を継承する事以外、多才なだけであとは普通の主人公黒圓龍已。しかしその過去は壮絶だった。見ていて痛々しい。

 

 

 

「えっ……両親殺されてたの?呪詛師に……?……………。」

 

 

 

 常に無表情のスナイパーキャラ。あの五条に強さに対して絶大な信頼を抱かれている頼れる先輩。そんな彼の過去は、やはり無表情から始まった。日々、暴力という言葉では表せない鍛練を積み重ね、背中を除いて生傷が絶えない。幼稚園児でそれだ。小学校に上がってからは尚更鍛練の難易度が跳ね上がっていた。

 

 呪霊に殺されるキャラよりも、鍛練の方がよほどヒドい。人間にやる鍛練ではなかった。それを当然だと思い受け入れ、行っている黒圓龍已はイカレているのだろう。そして傷だらけの体と、どんなことが起きても動かない表情。そして普通の人には見えないものが見えるという発言。

 

 善悪の区別がついていない子供は、黒圓龍已を虐めた。話し掛けても無視をしたり、足を引っかけたり、掃除を押し付けたり、教科書を隠したりと様々なことをされていた。彼に話し掛ける者なんて全くと言って良い程居なくて、無表情と子供ながら流暢な大人のような話し方や考え方な、取っつきにくさを覚えた担任の教師でさえあまり干渉しなかった。

 

 

 

「子供なのに……まだ小学生になったばかりなのにこんなに……何も悪いことしていないのに……っ!」

 

 

 

 呪霊は一般の非術師には見えない。触れても触れていると認識できない。けど攻撃はされるし、憑かれる。肩の痛みを訴えたり突然の腹痛も主にそれだ。学校は負の感情を集めやすいので呪霊が発生するのだ。黒圓龍已はそれを誰かに教えて、憑かれている人を助けようとしたのだろう。優しいなと思う。でも、他の子には見えないから、意味の解らないことを話す変な奴というレッテルを貼られた。

 

 それでも黒圓龍已はめげず、人知れず呪霊が憑いた子達を助けた。虐めてきた子達のことも助けてあげていた。教室ではいつも1人。家に帰るのも1人。家に着けば、厳しい鍛練が待っているが、両親の笑顔と優しい言葉に嬉しさと温かさを感じていた。彼はどんなに酷いことをされても言われても、幸せだった。

 

 学校で孤独になりながらも、テストでは必ず優秀な成績を収め、身体能力は小学生で既にアスリートのそれを大きく上回っていた。そんな彼に親友ができたのだ。呪いが見えない非術師の親友3人と、彼が後ほど使うようになる呪具を造る呪具師の家系の親友1人。4人も親友を手に入れた。

 

 それからの黒圓龍已の毎日は光り輝いていた。家には大好きな両親が。学校では仲の良い親友達が。その他から敬遠されようが、そんなことはどうでも良かった。幸せに幸福がやって来る。彼は毎日が楽しかった。その頃だろう。この二次創作を書いている人の友人に、絵を描ける人がいて、違うサイトで漫画バージョンをアップし始めたのは。私は当然飛び付いた。過去編を見てからどっぷりハマってしまっていたから。

 

 

 

「うぉっ……カッコイイ……寡黙な感じだ……えっ待ってすごくイイ。無表情も合ってるじゃんヤバくね?ハイ推し」

 

 

 

 うん。推しになった(早い)。だってカッコイイしイイんだもん仕方なくね?大人になった黒圓龍已は基本的に自分の話をしない。呪術師の等級の話すらしないのだ。だから初見では特級呪術師だと思わない。訊ねられたら答える程度だ。そういうところもカッコイイ。この頃の私は最高に輝いてたと思う。もう黒圓龍已が好きすぎたのだ。

 

 なんだったら人形の作り方を調べて夜蛾学長みたいにチクチクしてた。カワイイ黒圓龍已人形作ったら部屋に置いて寝るときに抱き締めてたし、筆記用具の筆箱にも付けた。高校のバッグにも装備済み。死角は無い。

 

 二次創作の作者の友人さんは、絵が爆裂に上手かった。もう原作と間違うレベルのものを寄越してくるので、小説の方の更新と漫画の方の更新を待って毎日をドキドキに過ごしていた。偶に2ヶ月とか更新されない時があってエタったかな?と焦った事もあったが、更新された時はマジでやばい。発狂して両親に怒られた。……てへぺろ(白目)

 

 その日その日に気分が変わって色々なものに手を出して極めるのカワイイし、服を決める時に結局黒くなるのカワイイし、ナンパされると無表情で困惑するのもカワイイ。兎に角推しがはちゃめちゃに仕事した。仕事しすぎて人形作りまくった。

 

 黒圓龍已の過去は中々に重い。小さい頃は無表情と呪霊が見える所為で虐められたし、両親は呪詛師に殺されて一時期危ない感じになった。それを親友達が癒しつつ、裏の世界に入った。題名にある『黒い死神』として生きて、仇である呪詛師を片っ端から殺す主人公。誰からも褒められず、讃えられず、恐れられ恐怖されるだけ。でも彼は、生き続けた。

 

 夜蛾に見つかって高専に入ったり、星漿体の護衛に於いて伏黒甚爾を()()()()、色々あった過去が明らかになり、ほんのりと家入硝子との恋愛も描かれる。黒圓龍已の同期2人が死んだ時は私も泣いた。クソ泣いた。てっきり巌斎妃伽がヒロインだと思ってた。めっちゃ好きで姐御って勝手に呼んでた。

 

 毎日毎日、この作品を読み漁る日々。何だったらセリフの一語一句まで覚えてる。けど、そんな毎日に突然の終止符を打たれた。よくファンタジーとかで見かける、良く解らんトラック衝突事故。それは略してトラ転とか呼ばれるけど、アレを私もやられた。てか、祈本里香みたいに頭潰されて死んだ……と思う。即死だし。潰される瞬間のタイヤを見て終わったから(寒気)

 

 

 

 

 んで──────呪術廻戦の世界に転生しましたと。

 

 

 

 

 おっと?これは死んだか?2度目の死即来ちゃう??だって死亡してなんぼの世界よ?主人公の虎杖悠仁でさえ2回死ぬからね?私なんて1発じゃね?と思った。ん?何で呪術廻戦の世界って解ったかって?生まれて目が見えるようになって最初に見るのがこの世界の両親の顔より呪霊の汚ぇツラの時点で呪術廻戦だろうがよ。舐めてんのか(豹変)

 

 呪霊が見える。意識もしっかりしてるし、原作も覚えてる。二次創作の黒い死神だって覚えてる。てか、それは意地でも忘れねーから。忘れてたら神様ぶっ殺しちゃうぞ♡

 

 それから私はやることを決めた。大体の呪術廻戦の二次創作は原作に何かしら関わる。高専に入ったり虎杖悠仁達植物トリオの同期だったり。西暦を調べたら確実に虎杖悠仁達の2つ上だと判明したので、やることを原作に関わるではなく()()()()()()()()()に絞った。それ以外はどうでもいい。

 

 そう。そうなんだよ。()()()()()()()。渋谷事変の時に、あることをして呆気なく。後のことは五条悟や主人公組などに任せて、あれだけバグキャラとして存在していた男は死ぬのだ。二次創作書いてる作者、マジ私のこと嫌いか?って思ったね。だって普通に殺すし、前兆無いんだもん。私トラックに轢かれて死ぬより心臓止まって死ぬかと思った。

 

 

 

「反承司さん……その、好きです!付き合ってください」

 

「は?無理だわ。つかお前誰。知らないし興味ない。それより私それどころじゃないから」

 

 

 

 この世界に生を受けてから、私はよく告白された。幼稚園生の時から始まり、小中とめっちゃ告白された。まあ、いずれ会う黒圓龍已のために自分磨き超したし、胸も大きいし、顔可愛いし当然だよね。でも興味ない。前世でも恋愛なんて別にしてこなかったけど、今回はもっと要らない。

 

 こっちは黒圓龍已救済すんのに忙しいんだよ。ふざけんなよモブキャラうっぜぇ。おっと、口調が巌斎妃伽姐御みたいになっちゃった。ごめんちゃい♡(煽り)。

 

 私の術式は、どこぞの悪党みたいなもんだった。オートでは出来ないし、演算すんのマジゴミクソ怠いけど、鍛えれば鍛えるほど強くなることは確信していた。だから勉強頑張った。好きくない勉強ちょーがんばりましたぁ……。だって頭良くないとこの術式使えねーし。素通りしてきやがるし。1回ミスったら死ぬやろうがい!いい加減にしろッ!

 

 まあ私が高専に入るまでやったことは、毎日を勉強と術式訓練に割り振って頑張ったって感じ。その弊害が友達0と恋愛0に繋がったけど、黒圓龍已救済のためならいくらでも捨てるわ。処女は捨てねーけどな(聞いてない)。私、黒圓龍已を脳内で神格化して処女誓ってるから舐めんなよ(妄信)。

 

 クソみたいにピーキーな術式を使って特訓して、特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して特訓して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して勉強して……やっと高専に入れた時はホント疲れてた。マジ呪詛師堕ちも目の前じゃね?って思った。

 

 

 

「──────見つけた!やべぇ生黒圓龍已だ!生の黒圓龍已が目の前に居るッ!超テンション上がるっ!ツーショット……の前に抱き付かせてーっ!」

 

「……っ?」

 

 

 

 まあ秒で消えたけどね?もう本物見た瞬間体が動いてたわ。最高速度で抱き付きに行ったもん。本物はね、ヤバいよ?超良い匂いするし体温かいし、生きてるんだって解るから。死んでないって思うとさ、今までやって来たことをこの先で使えるんだって感じて目頭に来るよ。泣きかけたもん。

 

 あ、何でこの世界に二次創作の黒圓龍已が居るか解ったかって?私が呪術廻戦の世界に転生するのに黒圓龍已が居ない世界線なわけないじゃん(狂)。転生した瞬間に解ったよ(狂)。んでもしも黒圓龍已が居ない世界線だったらガッカリ感がハンパないから普通に自殺するしね(狂)

 

 黒圓龍已……龍已先生は生で見るとマジカッコイイし、大人の男って感じだし、デートは最高に楽しい。会話をすれば、触れ合えば、訓練すれば、眺めれば、一緒に居れば、尚更この人を死なせられないって思った。だから術式磨きを欠かさなかった。

 

 

 

 

 だから……だから……()()()()()()()()()()()()()、最大の危機感を抱かずにここまで来ちゃったんだ。

 

 

 

 

 私は百鬼夜行で龍已先生が東京校を守れないか聞いた。それはあのクソメロンパン野郎を確実にぶち殺してもらうためだ。五条悟はダメだ。絶対夏油傑の死体を処理しない。けど龍已先生なら確実に火葬する。そうしないとあのクソ羂索(けんじゃく)が、龍已先生が死ぬ原因の1つになっちゃうから。

 

 けど言えなかった。東京校に移れないかとまでは言えたけど、そこから先の理由は無理だ。だってなんて説明すればいい?予知できる?五条悟に術式見破られてるし、ただでさえ()()()()()()()()。転生しましたー、あなたはもう来年にはメロンパンが原因で死ぬので夏油傑の肉体は粉微塵にしてくださーいって言う?嫌だよ。龍已先生に変だと思われたら自殺する。

 

 転生者だって、まさかここまで言えないものだとは思わなかった。知らなかった。けど、私は転生者。本来この二次創作世界にも居ないイレギュラーで、少し先の未来を知ってる。なら、メロンパンに呪霊操術盗られても大丈夫。だって、龍已先生は私が死なせないから。

 

 二次創作の原作に沿って物語は展開されている。伏黒甚爾というクソうざマダオゴリラが生きているのは少し謎だったけど、それ以外は概ね原作に則ってる。本当は龍已先生の同期2人の救済もしたかったけど、子供過ぎて行けなかった……。

 

 そうやって悩みつつ、術式を磨くこと十数年。生黒圓龍已に会って決意を確固たるものにして2年。私はとうとう渋谷事変に突入した。運良く黒圓班に入れたので救済は確実だ。勝ったも同然。あとは離れることなく、その時を待つだけ。……の筈なのに。

 

 

 

「父……様?」

 

「お、おおお俺を殺ししししこここ殺してくくくくれ」

 

「どういう……ことだ……何故父様が……ぐッ!?」

 

 

 

「なんで……?なんで此処に黒圓龍已の父親が出てくんの?だってここには伏黒甚爾が……出て…………ッ!!!!」

 

「あ?俺が何だって?つか、龍已が吹っ飛ばされたぞ。誰だアイツ」

 

 

 

 ──────そうだ……伏黒甚爾は生きてる。だから伏黒恵と会って戦うことが無いんだ。じゃああの降霊術のババァはなんで黒圓忠胤を降ろせた?だって龍已先生の両親は……ぁ……そうだ。龍已先生は殺された両親の処理をせずに天切虎徹の家に行ったんだ。呪術界で知ってる者は黒圓を知ってる。まさかあのクソババァはそれを知って……?なんて奴ッ!龍已先生の父親の死体を弄くりやがったのかッ!多分ババァは殺されてる。黒圓忠胤が暴走しているのを見れば何となく伏黒甚爾に似た状況になったんでしょ。けどそれこそなんで?黒圓忠胤はフィジカルギフテッドの天与呪縛なんて持ってないから魂を肉体で凌駕できないはず。どうやって術者のババァに抗って殺したの?ダメだ解らない。解らないけど、黒圓忠胤は()()。あの龍已先生が接近を赦して殴打1つで吹っ飛ばされた。

 

 

 

 突然現れた父親の存在に、龍已先生は動揺して体を硬直させてた。その隙を突いたのか、黒圓忠胤が動いた。私の目では捉えきれない速度で、龍已先生に肉薄して殴打を打ち込んだ。腕を使って防御したのに、あの龍已先生が後ろに吹っ飛ばされた。踏み込んでた足元の床が粉々になって蜘蛛の巣みたいに亀裂が入ってる。どんな力が加わったらそんなことになるのか見当がつかない。

 

 呪力で肉体を強化しているなら、コンクリートの壁を素手で壊しても別に何とも思わない。けど、一般人で非術師だった筈の黒圓忠胤が、呪力で守って踏ん張った龍已先生のことを吹き飛ばすのは異常だ。もしかして、黒圓無躰流はそれすらも可能とするの?恐ろしすぎて知りたいようで知りたくない。

 

 壁をぶち破って外に出て行ってしまった龍已先生を追って、黒圓忠胤も出て行った。急いで破られた壁の方に駆け寄って外を見ると、もう2人は米粒のように小さくなりながら近接で戦っていた。あの龍已先生と殴り合えるのは伏黒甚爾くらいだと思ってたけど、黒圓忠胤はその更に上を行く。攻撃をさせない猛攻を繰り出していた。

 

 けど、大丈夫。龍已先生なら必ず勝つ。呪力もあるし、反転術式で傷を癒せる。だから負けることはありえない。そう思った瞬間、私の頭の中に警鐘が鳴り響いた。何かを忘れてる。重要な、絶対に忘れてはならない事を。気になった私はその場で考える。伏黒甚爾が何か話し掛けているけど無視する。

 

 何だ。何を忘れてる?何を見落としてる?私らしくもない。思い出せ。思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い……出せ………。

 

 

 

実はですね。ちょっと考えていた部分がありまして。結局出さなかったんですが、もし伏黒甚爾が生きていてオガミ婆が黒圓忠胤を降霊して、龍已がそれを殺した場合、未完成の完成体が完全に完成する……なんて状況にしようとしたんですよ。あ、黒圓龍已が完成してたら終わってましたよ、色々と。だって無理ゲーが無理になりますから笑笑

 

 

 

 何だろう。嫌な予感がする。思い出さなくちゃいけないはずなのに、思い出しちゃいけない気がする。

 

 

 

実はですね。ちょっと考えていた部分がありまして。結局出さなかったんですが、もし伏黒甚爾が生きていてオガミ婆が黒圓忠胤を降霊して、龍已がそれを殺した場合、未完成の完成体が完全に完成する……なんて状況にしようとしたんですよ。あ、黒圓龍已が完成してたら終わってましたよ、色々と。だって無理ゲーが無理になりますから笑笑

 

 

 

 もう頭が勝手に思い出そうとしていた。嫌だと思っても、聡明になった脳が前世の思い出を掘り返す。

 

 

 

実はですね。ちょっと考えていた部分がありまして。結局出さなかったんですが、もし伏黒甚爾が生きていてオガミ婆が黒圓忠胤を降霊して、龍已がそれを殺した場合、未完成の完成体が完全に完成する……なんて状況にしようとしたんですよ。あ、黒圓龍已が完成してたら終わってましたよ、色々と。だって無理ゲーが無理になりますから笑笑

 

 

 

 嫌な予感は悪寒として体を奔り、鳥肌がぶわりと立った。冷や汗が顔中に掻いていて、もう引き返す事なんてできやしなかった。

 

 

 

『実はですね。ちょっと考えていた部分がありまして。結局出さなかったんですが、もし伏黒甚爾が生きていてオガミ婆が黒圓忠胤を降霊して、龍已がそれを殺した場合、未完成の完成体が完全に完成する……なんて状況にしようとしたんですよ。あ、黒圓龍已が完成してたら終わってましたよ、色々と。だって無理ゲーが無理になりますから笑笑』

 

 

 

 二次創作の作者がポツリとあとがきに残していたちょっとした曝露。当時はへーそうなんだと軽い気持ちで読んだが、今は違う。伏黒甚爾は生きていて、降霊されたのは黒圓忠胤。言われた通りのものをなぞっていて、彼等は殺し合いを始めてしまっている。

 

 未完成の完成体。黒圓龍已。それが完成した時は、終わる。何が?そんなもの決まってる。()()()()終わるってことだ。五条悟もたった1人で世界中の呪術師も非術師も殺せる。なら黒圓龍已は?……殺せる。今でも最強に近い最凶の男が、まだ完成していないのだとしたら、完成したら誰も手が付けられない。

 

 

 

「お……て……」

 

「あ?小さすぎて聞こえねぇ。というよりさっさと移動すんぞ。人造人間さっさと殺して腹拵え──────」

 

 

 

「──────追いかけてッ!!!!龍已先生を今すぐ追いかけてあの男を殺させないでッ!!あの人()殺したら……殺したら……龍已先生が龍已先生じゃなくなっちゃうッ!!!!」

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 私は走った。後ろで私の大声に驚いて固まっている連中を置いて。ひたすら走った。詳しいことは解らないけど、ダメだ。二次創作の作者が言うくらいの終わりが、龍已先生の手によって齎される。最早私の原作知識なんて意味ない。ここからは私の知らない物語。

 

 

 

 

 

 私が、私自身の所為で狂ってしまった誰の目にも映ることが無かったもう1つの物語が、進められようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、ここここ黒圓無躰流──────『刈剃(かいそ)』」

 

「……ッ!くッ……父様待ってください。俺はあなたを殺したくは──────」

 

「黒圓無躰流──────『切空』」

 

「……っ。クソッ。黒圓無躰流──────『刈剃(かいそ)』」

 

 

 

 頭を狙う最速最短の蹴りを右腕で防御する。呪力を纏った龍已の肉体にミシリと食い込む打撃。下手な刃物ですら肌を通さないし痛みすらも無いというのに、呪力を持たない非術師である筈の忠胤の打撃は龍已に少量とはいえダメージを与えていた。対人戦でダメージを受けたのは何年ぶりだろうか。

 

 何の因果かまた再会できた父を手に掛けたくない。それは当然の思いだろう。愛する家族だ。何よりも大切にしていて、ある日突然失ってしまったものだ。それが目の前に居るというのに、その父は自身のことを殺すつもりで黒圓無躰流を使ってくる。

 

 その昔、呪術全盛の時代から存在する黒圓無躰流は、その近接面でのあまりの強さから呪術師が幾人も葬られてきた。呪力や術式を持つ者が、武術を使うだけの非術師にだ。明らかな力の差がありながらも、黒圓無躰流はそんなことは関係無しと突き進んで悉くを殺した。

 

 いつしか、黒圓無躰流は無意識の内に呪いをも超える力を身につけていた。呪いによる防御を貫通する特殊な打撃。龍已の鋼よりも硬い強化された肉体にダメージが入ると言えば、それがどれだけの力を持っているか伝わるだろう。

 

 跳び上がり、全力の踵落としに対して最速最短の蹴りを上に向けて放つ。脚が衝突し合い、龍已の体を支えているもう一方の脚の足元が粉々に砕ける。非術師からの踵落としを受けただけで、周囲50メートルのコンクリート道路が捲れ上がった。衝撃が脚に伝わって痛みがやって来る。

 

 それは相手も同じどころか、本来の龍已の『刈剃(かいそ)』ならば、蹴りで物体を刀で斬ったように両断できる。それだけの威力は黒圓無躰流1000年以上の歴史の中でも殆ど見られず、切れ味と威力は歴代でもトップだった。ならば当然、蹴りを当て合った忠胤の脚が斬れてもおかしくないのだが……健在。

 

 威力がどうのではない。龍已が本気で蹴りを放てる筈がないのだ。まだ心の整理すらついていないこの状況で、心の中がぐちゃぐちゃになっている今、襲ってくるからと即座に殺せる訳が無い。何せ、忠胤から感じる気配が、昔の父そのものであると語っているのだから。

 

 

 

「黒圓むむむむ無躰流──────『蛇功(だかつ)』」

 

「黒圓無躰流──────『浮世』……ッ!!」

 

 

 

 向けられる攻撃を気配の察知と合わせながら避ける技が、蛇のように捻じ曲がりながら追い掛ける拳に破られる。固く握られた忠胤の拳が龍已の顔面を捉えた。頬に食い込み、鉄よりも硬くなるよう鍛えられた拳が捻られながら打ち込まれ、振り抜かれる。呪力による防御で少しのダメージだが体勢が崩れた。

 

 拳を打ち込んだ忠胤は、打ち込まれた龍已に接近する。距離は取らずひたすら前進あるのみ。相手の体勢を崩すなり緩急を付けるなりして隙を作り徹底的にそこを叩いて必ず追い詰め殺す。体勢を崩された龍已の腕を取り、関節を決めながら背負い投げる。

 

 

 

「黒えええ圓無躰流──────『飜礙(はんがい)』」

 

「づ……ッ!」

 

 

 

 関節を決めたまま背負い投げられ、途中で腕から板を割るような音が何度も響いて激痛が奔った。上腕から前腕に掛けて16箇所の骨折。その後、地面に叩き付けようとしたが、その寸前で龍已は脚を着地させた。またしても地面に亀裂が入る。背中から落とされれば呼吸困難どころの騒ぎではなかっただろう威力。

 

 関節を決められて16箇所の骨が折れている龍已の左腕を持ちながら、天高く脚を振り上げる。足をついて上を見上げる龍已の顔面目掛けて振り下ろされる足に、彼は体を捻り込んで体勢を変えながら忠胤の体を支えている地についた脚を払った。

 

 転倒するように体が宙を舞う忠胤はそれだけで終わらず、体勢が崩れたときに離してしまった龍已の腕に目もくれず、空中で下に居る彼に対してすぐさま拳を振り抜いた。折れていない方の腕で受け止めると、今度こそ背中から地面に落とされる。地に叩き付けられて尚威力が減衰しない拳が体にめり込んでいき、大きな砂塵を巻き上げて爆発音を響かせた。

 

 巻き上がった砂塵の中で打撃音。聞こえてくる。1度鳴る度に、周りに舞う砂塵が揺れて内側からの風圧で吹き飛ばされていく。見えてくるのは、折れた左腕を垂らしながら右腕だけで忠胤の猛攻を受ける龍已の姿だった。半身になって左腕を庇いつつ、殴打を逸らしていく。後ろに下がるのは手数の問題によるものだろうか。

 

 1歩1歩下がっていき、建物に背中を触れさせた龍已は、忠胤が脚を横薙ぎに振るうのを見てその場で跳躍。壁を蹴って空中を移動して距離を取った。目標が居なくなった蹴りは建物の壁に打ち込まれ、3階建ての建物前面の壁を罅だらけにし、窓ガラスを1枚も残すことなく砕き割った。

 

 

 

「……反転術式により完治」

 

 

 

 呪力を回してマイナスのエネルギーがある呪力を合わせてプラスに変える。すると折れた左腕が一瞬で元に戻った。降ってくるガラスの雨を、上段回し蹴りの風圧で更に砕きながら吹き飛ばし、振り返って龍已の元へやって来る忠胤から視線を逸らさず、左手を開閉して問題が無いことを確認する。

 

 ゆっくりと向かってくる忠胤からは敵意も殺意も感じない。感情というものが欠落した単なる人形。あの頃の黒圓忠胤ではない。と、解っている筈なのに、龍已には攻撃できない。どうしてもあの頃の、幸せだった日々の光景が頭にチラつくのだ。構えを取れないのがその証拠。龍已には、黒圓忠胤を殺せない。

 

 

 

「りゅ……りゅりゅりゅりゅ龍已……ァ?お、おおおお俺をころころころ殺せ。殺……してくれ」

 

「──────っ!!」

 

「殺し……てくれ。殺して……くれ。殺してくれ。殺殺殺殺殺殺殺殺してくれ」

 

「……ッ。クソ……クソッ!クソッ!クソッ!!!!」

 

「黒圓無躰流──────」

 

 

 

 誰に向けてか、それとも全てに向けてか忌々しそうに言葉を吐き捨てる龍已は、技を出す構えとしてではなく、相手を殺すつもりの構えを見せた。拳を握り込み、正面から向かってくる忠胤を見据える。

 

 何故だろう。視界が歪む。水を張ったカメラのレンズのようにぼやけるのだ。それがやはり苛立たしくて、血が出るほど拳を握り締めた。

 

 無表情で涙を流す、痛々しい姿。忠胤に攻撃される度にダメージを負っているが、そんなものは反転術式でいくらでも消えるし、治せる。骨折なんぞ有って無いようなものだ。しかし心へのダメージは計り知れない。折角会えたのに、今度は自分の手で殺さねばならないのだ。

 

 

 

 父を殺す。父を殺す。父を殺す。あの時の……呪詛師のように。

 

 

 

 ぷつりと何かが切れた。流れていた涙は止まり、血を流す拳を構えながら、忠胤と全くの同時に疾走した。構える拳。向ける殺意。抱く罪悪感。感じる憤り。呪う状況。全て、全て全て全て嫌になるくらいに感じられて……どちらかの拳はどちらかの体を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────ダメっ!ダメっ!ダメっ!!龍已先生!父親を殺したらダメ……っ!先生が先生でなくなっちゃう!」

 

 

 

 私は駆けていた。全速力で。いや、術式を使って地を蹴るときに自身の脚にも返ってくる衝撃を全て地の方に反射し、加速する。景色が流れるように後ろへ流れていく速度を出しながら、龍已先生と黒圓忠胤が行っただろう場所を目指す。

 

 所々に刻まれた破壊痕。拳の形や脚で蹴り抜いた形があって、確実に2人の戦闘の余波であることは解る。黒圓忠胤は非術師だ。埒外の呪力で肉体を強化する龍已先生の体に物理は効かない。けど、対呪術師として戦えるように長い時を重ねて研鑽を積んだ黒圓無躰流は、呪いの防御を紙屑のように破る。

 

 剣で斬られようが刺突を受けようが、生身の体に傷一つつかない龍已先生の体でも、黒圓忠胤の殴打は効く。けど、それだけなら負けない。どんな状況でも絶対に龍已先生が勝つ。()()()()()()()()()()()()

 

 龍已先生が黒圓忠胤を殺すのを止めないと、この先どうなるか解らない。二次創作の作者が何を思い、何を想像してあんな言葉をあとがきなんかに残したのかは理解出来ないが、今なら何となく解る。未完成の完成体。それはつまり、黒圓龍已が完成された力を持っているのに、完成しきっていないことを指す。

 

 ならば完成体になればどうなるか。真意は解らないけれど、私の推測が正しければ終わりだ。止める術が無い。理由は単純だ。二次創作だからこそ、原作のように先のことを考えず思い付いたことを書ける。書けてしまうからこそ、あまりにもありえない展開を考えついて断念し、あとがきに書いただけで終わらせたのだ。二次創作の作者が書くことを諦めた原因。それは……

 

 

 

 ──────完成体黒圓龍已が強すぎた。

 

 

 

 あらゆる漫画の中でもトップレベルの強さを誇る最強の呪術師、無限を操る五条悟。性格以外の全てを持った男と謳われた男が居ても、強すぎたからという理由で()()()()()()()()()()本当の黒圓龍已。恐らくそれのトリガーが黒圓忠胤を殺すこと。

 

 だからマズいんだ。絶対に止めないといけない。殺してしまったら、私の知る大好きな推しの黒圓龍已が消えちゃう。それは嫌だ。龍已先生には死なずに幸せになってほしい。だからここまで頑張ってきたのに、こんな……私の所為で狂うのは嫌だ。

 

 流れ出る涙を袖で雑に拭う。肌が制服と擦れて痛いが、その痛みを感じている暇がないほど全速力で駆けて龍已先生の元へ辿り着いた。

 

 

 

「ぁ……ぁあ……ぁあぁああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」

 

 

 

「こ、殺じ……ごろじ…………で………」

 

「シィィィ……ッ!黒圓無躰流──────『鏖砲(おうほう)』……今度こそさようなら、父様」

 

 

 

 私は遅かった。あまりに遅かった。もう手遅れだったんだ。龍已先生は泣いていたのか、赤く充血した瞳で黒圓忠胤のことを見ながら、右腕で黒圓忠胤の胴体に大きな風穴を開けていた。上半身と下半身に分かれない、ギリギリぐらいの大きな穴。もう助からないし、死ぬ。

 

 降霊術を使ったクソババァの術式が解けて元の誰か分からない男に戻る……前に、黒圓忠胤の肉体から黒い靄が出て来た。それは龍已先生に飛び掛かったけれど、それを避けて距離を取っていた。アレがダメなものの正体だ。アレさえどうにかできれば、龍已先生は龍已先生のままだ。

 

 あんな良く解らないものの演算ができるか解らないが、やってみせる。そのために止まった足を一歩前に踏み締めた瞬間……黒い靄は先程までの速度は何だったのかと問いたくなる速さで龍已先生に向かって飛んで行き、迎撃しようとした龍已先生の拳を絡め取って全身を覆って包み込んだ。

 

 

 

「なん……だこれは……ッ!」

 

「龍已先生……っ!龍已先生ッ!!」

 

「ゔ……ぐッ………──────」

 

 

 

 黒い靄は実体が無いのか、絡み付いた後に龍已先生が外そうとしても触ることができず、少しずつ体に浸透していってしまう。私はもう泣きながら駆け寄って一緒に外そうとしたけれど、私も触れられず、体の中に入っていくのをただ見ていることしかできなかった。

 

 黒い靄が無くなってしまった後、龍已先生は立ったまま俯いた。意識があるのか確認するために、下から顔を覗き込んでも表情は変わっていない。糸を切られたマリオネット人形のように動かなくなってしまった。途端に不安に駆られる。もう終わりなのだろうか。黒圓龍已は消えてしまったのだろうか。

 

 大丈夫か声を掛けながら頬に手を伸ばした瞬間……今まで以上の呪力を感じた。恐ろしい。恐ろしすぎて、あの私が勝手に後ろへ後退していた。龍已先生の体から立ち上る呪力が身の毛もよだつナニカに思えてしまう。

 

 そうしていると、龍已先生の発する呪力が色を変えた。呪力は基本的に青黒い。私もそうだし五条悟もそう。なのに龍已先生の呪力は青黒い色から……何もかもを呑み込もうとする黒い呪力へと変色していた。黒すぎて龍已先生の体が見えない。質も量もおかしい。

 

 一端ここは安全を取って距離を取って観察をしよう。そうやって後ろに1歩下がったら何かに背中が触れた。前に居た龍已先生が居ない。じゃあ後ろのこれは何?道路のど真ん中だから標識じゃない。気配が強すぎて吐き気がする。恐る恐る私は背後を振り返った。

 

 

 

「まさかこんな事で完成するとは思わなかった。あの場に行って正解だったな。()()()他の者に殺されていたらこうはいかん」

 

「ぁ……あなた……は……誰?」

 

「……?俺は黒圓龍已だ。知っているだろう?」

 

「違う。……違う違う違うっ!龍已先生はあなたじゃない!龍已先生は……そんな風に笑わないッ!!」

 

「俺も人間だぞ。笑みくらい作る。今までは作れなかっただけで、作ることができるようになった。まあ、作れるだけで浮かべている訳ではないのだが」

 

「返して……私の黒圓龍已を返してっ!」

 

「返すも何も()()()()()()()()()()()()()()()。乗っ取られた訳でも無い。変わった訳でも無い。()()()俺に戻った。それだけだ」

 

 

 

 そう言って薄く笑みを浮かべる黒圓龍已。笑った顔なんて描写されていなかった。漫画にも無かった。これ誰だ?どうなっている?どうしてここまで怖い?龍已先生の体から発せられる黒い呪力が異質過ぎて私に恐怖を煽ってくる。

 

 何がどうなっているの?判断がつかない。知りたいのに知りたくない。怖くないと言いたいのに途轍もなく怖い。龍已先生の服を握り締めて訴える私に肩を竦めると、右手を向けてきた。親指で曲げた中指を押さえているからデコピンだろう。咄嗟に私は術式を展開して演算を終えて反射の壁を張った。

 

 

 

 

「ぁ……りゅう……や……せん………せ…──────」

 

 

 

 

「悪いな、反承司。今は少し眠っていろ」

 

 

 

 私の体は後ろへ吹き飛び、建物を6つは貫通していって。額から流れる血。力の入らない体。反射の壁を砕き割って与えられたデコピンは、私の体を小石かなにかのように弾き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 遠くの方で踵を返してどこかへ行く龍已先生に、私は待ってとも言えず、手を伸ばすことすらできずに意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 







反承司零奈『█████』

転生者。元々普通の女子高生。高校2年生だった。

呪術廻戦の原作はもちろん好きだが、どこぞの誰かが書いた二次創作の黒圓龍已に心底惚れ込み推しになった。漫画バージョンも一緒に追い掛けて毎日の楽しみにしていた。けれど、トラックに轢かれて頭を潰され即死。何故か呪術廻戦の二次創作バージョンの世界に入り込んだ。

黒圓龍已の死亡を無かったことにするために、救済のためだけを目標に力をつけたが、思わぬ方向に物語が進んで止められなかった。何もかもを犠牲にしたのに、救うはずの命を別のものに変えてしまった。現在何が起きているのか把握できていない(したくない)

龍已からのデコピンにより気絶。戦闘不能。




黒圓龍已(?)

未完成の完成体、完成体へ至る。

笑みを作れるようになった。ただし、作れるだけで浮かべているのではない。本当の笑みではない。

無限に感じる呪力量が更に跳ね上がり、質が超向上し、色が青黒いものから黒へと変色した。

ある世界の人間が、書くことを放棄してしまう力を秘めた存在。




作者(偽)

呪術廻戦の二次創作を楽しみながら書いていたが、明らかに怪物だな……と思った黒圓龍已を思い付いてしまった。けど、明らかに異常なので書くことを諦めて頭の中に封印した。誰もその内容は知らない。


















実はですね。ちょっと考えていた部分がありまして。結局出さなかったんですが、もし伏黒甚爾が生きていてオガミ婆が黒圓忠胤を降霊して、龍已がそれを殺した場合、未完成の完成体が完全に完成する……なんて状況にしようとしたんですよ。あ、黒圓龍已が完成してたら終わってましたよ、色々と。だって無理ゲーが無理になりますから笑笑

バグが起きて理不尽なクソゲー先輩が、無理ゲーの無理に変わるんですよ。でも、皆さんは呪術廻戦にそういう最強系って求めないですよね?なので書かないです笑笑

いつかは書いてみたいですねー笑笑

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