呪術廻戦───黒い死神───   作:キャラメル太郎

55 / 81


最高評価をしてくださった、三笠 お蓮 だんず よくゑたる人 わたしだ Meer ただのメガネ アミジャガ5 沙羅双樹 OKMT burny 鯱熊 セミさん 泰 時雨 チーフなっちゃん OMx2 未確認知的生命体 黒鉄 零 オットマン 錬金術師 影鰐 戀海恋 F1ppInoX Sui-1027 隼型一等水雷艇 隼 (°д°) ロードランナー 鮭ご飯が食べたい はるぱす 新手のスルメイカ キヨシ Joan りょうはや メイギン ハル吉★ 魁人 おっぺー マサカの盾 まんが 会会 Billy Artemis メンコ どーぱみん 猫くろ さん。

高評価をしてくださった、ハゲすぅ smic KURO蓮夜 ラズ❤︎ 【雅】 パニックパニック うぉるぴす Nagato itika ギルネリーぜ さばっぺ ダンまちファン チルッティドラグーン yuma2017 カヤン 夕張の渡り鳥 Tera_18 かっつ ツァラトゥストラ AXEL0329 ベルハーゲン カキた むらさき君 ニーター norio 鳳飛鳥 kkkkkkk Yoto 登竜 デューマン レストラン 悠久7723 クランチ555 ナギンヌ オルガ ロイク の皆さん、ありがとうございます。






第五十五話  離叛の一方

 

 

 

 

 

「──────伏黒。アンタ大丈夫だったわけ?」

 

「言葉が抽象的過ぎるだろ。どれのこと言ってんだ」

 

「察しなさいよ。特級よ特級。七海さん達と一緒に戦ったんでしょ?」

 

「……俺は領域を展開して穴を開けようとしてただけだ。戦いらしいことはしてねぇ」

 

 

 

 渋谷事変後日。釘崎と恵はグラウンドの段差にある階段に座っていた。いつもの元気な感じは無く、何となくだが暗い雰囲気が漂っている。今回のテロ事件は学生に対して強い印象を残す戦いだったため、丸1日の休みを設けていた。その1日が明けて、任務が入っておらず念の為の学校休校に手持ち無沙汰となり、外に居たら会ったので話しているという現状。

 

 恵が座って自身の影を見下ろしているところに、釘崎がやって来た。何となくで来た場所に居た同期に、一言二言話してその場を去るというのは何だか違う気がして、2人はこうして話をしていた。暫くは両者共に黙っていたが、口を開いたと思ったらやはりあのテロ事件のこと。

 

 切り出した釘崎は、なんつーつまんない切り出し方かと自身に呆れながら、でも……気になっていることを口にしない性分でもないので話を続けた。釘崎は1級呪術師への推薦があって査定中という立場だが、実力は1級呪術師に敵わないと自覚している。一瞬だけ合流した七海の実力を見て、格が違うと感じたのだ。

 

 そんな彼女は七海と別れた後、ここから先は最低でも七海レベルだと言われて雑魚呪霊の祓除に回っていた。改造人間も見掛け次第祓った。言われたとおり渋谷駅の方には近づかないで、自分にできることをやっていたのだ。しかし、それはある時を境に終わった。天より飛来した黒い光線に、周辺の呪霊及び改造人間、そして呪詛師が殺され、祓われたのだ。

 

 移動しても敵は居なかった。如何したのかと、何が起きているのかと訳が分からないまま帳は上がり、携帯の電波が届くようになったので補助監督の新田に話を聞いて合流し、渋谷駅周辺から離脱した。負傷らしい負傷はしていない。ただ、恵が七海や真希、禪院家の当主と共に特級呪霊と戦闘したらしいという話を聞いて、少し話を聞いておきたかったのだ。

 

 

 

「あんまり詳しい話知らないのよねー。どうやって特級祓ったのよ」

 

「……七海さんと禪院家の当主、真希さんが居てもアレには勝てなかった。だから引き摺り込まれてた領域から逃げるために、俺が入った時に維持してた領域の穴から脱出しようとした。その時に、親父と3年の反承司先輩……黒圓先生が入ってきたんだよ」

 

「……そう」

 

「苦戦してたのがアホらしくなるくらい、親父と黒圓先生は特級を一瞬で祓った。反承司先輩も、疲労してる俺達を護ってくれた。……問題はその後だ。誰か解らないが、黒圓先生が固い声を出すくらいの男がやって来て、いきなり黒圓先生に襲い掛かって一緒に消えていった。追い掛けようとしたが、別の3つ頭の特級呪霊が来て行けなかった。後を追ったのは反承司先輩だけだ」

 

「分裂してそれぞれが術式使うっていう、黒圓先生襲った特級呪霊ね。反承司先輩って、確か今──────」

 

「──────()()()()()()。精神状態が悪いらしい。話も聞かず、会話が成り立たず、自傷行為をしようとする。なまじあの先輩強いから、拘束されて幽閉中だ」

 

「女相手に手厚いわね」

 

「仕方ねぇだろ。反承司先輩はあの東堂を正面から倒せる数少ない人だ。形振り構わず暴れられたら止められなくなる。親父が気絶させてなかったら、今頃校舎が徹底的に破壊されてるぞ」

 

「見た目に似合わない強さよね。黒圓先生が絡むと人格変わるけど。……まあ、悪い先輩じゃないのよね。黒圓先生以外に対しては総じて塩だけど」

 

「もうあの人は……そういうもんだと思った方が良い」

 

 

 

 反承司零奈。黒圓班に所属していた釘崎と恵の3年の先輩。いつもはニコリとも笑わず、話し掛けても冷たい対応だが無視はせず、何か聞けば答えて教えてくれるという人だ。最初こそ、気が強い釘崎は印象が良くなく、何だこの人はという考えだったが、龍已が絡んだときに見せる姿を目撃して呆然とした記憶がある。

 

 なんだあれ、同じ奴か?と懐疑的になったのは仕方ない。明らかに好きな人に対してオーバーなアピールする痛いオンナ。それが釘崎の中に固まろうとしていたが、恋する女の目ではないことを察した。同じ女としての勘が、そんな()()()()()感情だとは告げなかったのだ。謂わば執着。妄信の域だ。何がそうさせたのかは知らないが、彼女も彼女でイカレてるんだなと思った。

 

 そんな彼女は今、呪符が貼られた部屋に幽閉されている。動けないように全身拘束して、舌を噛まないように念の為の猿轡を嵌めながら。そうしないと何をするか解らないのだ。話が通じず、暴れ出すのを甚爾が止めたが、錯乱しているようにしか感じなかった。何があったと聞きたくても、話にならないのだから仕方ない。ほとぼりが冷めるまで頭を冷やさせる事にしたのだ。

 

 謎の男と龍已が離れていったのを追い掛ける前までは普通だった。追い掛けた後に、おかしくなったのだ。何が起きたのか……とは問わなくても解る。事件の詳細を知らないだけで、反承司が戦闘不能にされたことは知っていた。何せ、各員に通達された信じたくもない情報に関係することだからだ。

 

 

 

『1級呪術師夜蛾正道の証言により、黒圓龍已特級呪術師を離叛者として特級呪詛師に定める。不用意な接触は黒圓龍已特級呪詛師と関係を結ぶ者として秘匿死刑の対象とする。見つけ次第呪いによる殺害を実行することを通達する』

 

 

 

「……訳解んないわ。なんで黒圓先生が離叛になるのよ。反承司先輩をボコって、硝子さん達に離叛すること宣言して消えて。ほんと、何言ってるか解んないんだけど」

 

「解りたくないんだろ。……俺も同じだ」

 

「……チッ。つーか、虎杖どうした。アイツも私達みたいにジッとはしてられないでしょ。てっきり会うと思ってたんだけど」

 

「虎杖は詳しい事情聴取だ。変わっちまった黒圓先生と……宿儺がとはいえ接触した3人の内の1人だからな」

 

「なるほどね」

 

 

 

 多くの『両面宿儺の指』を取り込まされた虎杖は宿儺に一時的な肉体の主導権を渡してしまう。気絶していたということもあり、意識が覚醒するまでの間は宿儺に自由があった。その時に龍已と会い、戦闘になった。結果は龍已の勝ちで終わったが、宿儺の領域展開で東京の一部分が更地となった。

 

 犠牲者は0であったので秘匿死刑になることこそ無いようだが、彼の立場はかなり危うい。何せ、虎杖の秘匿死刑に待ったを掛けていたのが他でも無い五条なのだ。その五条は今、封印されて不在である。彼が居ない時の、いざというときに備えられるのが龍已だったのだが、彼は離叛して行方知れずとなっている。つまり、後ろ盾が無い状態だ。

 

 いつ虎杖の秘匿死刑決行が言い渡されてもおかしくない。上からの命令ならば従うしかない呪術師には酷な話だろう。それも踏まえて、恵は現状の危うさに思い悩んでいた。五条が封印され、龍已が離叛。全国に偽夏油の用意していた呪霊と呪詛師、昔の呪術師が現れている。現役の呪術師はそれの対応に追われていることだろう。

 

 

 

「……はーっ。真希さんは大丈夫なんだっけ?」

 

「特級呪霊の攻撃を受けたが、そこまで深傷を負った訳じゃない。家入さんの治療受けて既に完治してる。深傷だったのは、禪院家の当主と七海さんぐらいだった」

 

「禪院家当主はどーでもいいわよ。真希さんの昇級邪魔するような奴だったし。けど、七海さんは心配ね。交流会の時に忍び込んできた呪詛師を代わりにノしてくれたし」

 

「七海さんも家入さんの治療受けて、今は大丈夫だと思う。死んだのは……メカ丸の与幸吉先輩だけだ」

 

「……そう」

 

 

 

 禪院家当主の禪院直毘人は片腕を無くすという深傷を負うも、治療を受けて生きている。七海も片眼を失う程のダメージを負っていたが、治療を受けて目も回復したようだ。なので、今回の戦いで死んでしまったのはメカ丸こと与幸吉だけである。

 

 呪霊側と通じていて内側の情報を流していた与幸吉は、天与呪縛により縛られている肉体を元の健全な状態に戻すという縛りを結んでいた。真人の『無為転変』によって肉体は戻されたが即座に戦闘に入った。裏切っていたが、裏切りきっていたわけではなく、裏で真人や偽夏油を祓う準備をしていた。

 

 結局真人によって渋谷事変前に殺されてしまっていたが、死んでしまったのは彼のみということになっている。その他の呪術師に死者は居らず、補助監督も全員無事である。あれだけのテロ事件でありながら望ましい生存者に、呪術師達からは奇跡だと言われていた。

 

 残念なことに、戦いに巻き込まれて呪霊や呪詛師、五条が相手していた特級呪霊に殺されてしまった非術師はかなり居た。それについてはもう仕方ないと割り切るしかないだろう。帳で閉じ込められてしまい、呪霊を放たれてしまったのだから。

 

 

 

「──────ん?あれ、伏黒君に釘崎さん?こんなところでどうしたの?」

 

「……灰原さん」

 

「灰原さんこそどうしたのよ」

 

「あはは。僕は補助監督仲間と打ち合わせや、今後のことについての意見交換。夜蛾学長との情報照らし合わせ……とかかな!今はちょっと休憩中だよ!」

 

 

 

 2人の近くを通った補助監督の灰原。七海の同期である彼は、買ってきたばかりの開けられていないコーラを片手に2人を見下ろしていた。学生は休みの筈なんだけどなと思いながら話し掛けたようだ。何だかジッとしていられなくて……という事を恵と釘崎から聞くと、溌剌とした笑みを浮かべながら分かる!と同意を示した。

 

 学生は休みだが、補助監督の仕事はたんまりと残っている。高専外の呪術師に情報を伝達することや、各地の呪霊状況の聞き込みに情報の更新。打ち合わせ等とやることは多く、大忙しだ。人数もそこまで多い訳でもないので、休憩以外は皆忙しなく動いている状態。

 

 灰原は引き継ぎをして、別の補助監督と交代して休憩時間に入っている。貴重な休憩なのだから休んでくれと思うが、学生が今どういう状態に身を置いているのか理解している灰原は、恵と釘崎の傍にやって来て話をする姿勢を見せた。人畜無害な笑みを浮かべて、話をしようと言われてしまえば頷くしかない2人は、3人で少しだけ話すことにした。

 

 

 

「黒圓先輩のことは聞いたよね?」

 

「……はい」

 

「まあ……」

 

「困惑するよね。その反応は正しいよ。僕達補助監督もね、みんな混乱してるんだ。信じたくないということもあるけれど、それを隠すために忙しく仕事してる。手を止めると考えちゃいそうになるからさ」

 

「…………………。」

 

「僕はね、昔……君達みたいな高専の学生の頃に黒圓先輩に命を救われたんだ」

 

「……そうだったんですか?」

 

「うん。2級呪霊の祓除って内容だったんだけど、産土神信仰の土地神が居てさ。もう死ぬってなった時に、偶然近くで依頼を熟してた黒圓先輩が駆け付けてくれたんだ。気絶してたから見てないけど、土地神を宥めようとして失敗して、やむを得ず結局は一撃で殺しちゃったみたい。そう考えると、黒圓先輩って神殺しだよね!あはは!」

 

「…………………。」

 

「……黒圓先輩が居なかったら、僕は死んでた。下半身吹き飛ばされて、今はこうして歩くことには問題ないけど走れない体になっちゃった。けどさ、生きてるだけでありがたいよね。こうして生きる機会をくれた黒圓先輩には頭が上がらないよ。そんな命の恩人の先輩が離叛ってさ……僕も未だに信じられない。だから君達学生が困惑して、信じられなくても不思議じゃないし当然だと思う。……なんかごめんね!言ってること滅茶苦茶だよね!訳解んなかったらごめん!喋るの下手だなー僕!」

 

「いえ、灰原さんが言いたいことは伝わりましたので大丈夫です。ありがとうございます」

 

「右に同じく」

 

 

 

 みんな混乱して同じ気持ちだから2人だけで落ち込んでいたり、考え込んでいないで、皆で話し合った方が抱え込まないで済む。そう言いたいのだろう。何となく、伝わった。灰原も命の恩人が離叛したと報されて動揺している筈だ。だからコミュニケーションも現状上手く取れない様子。

 

 ふざけて馬鹿にするなんてこと、できるはずがない。恵と釘崎は、自分でも今の状態で誰かの相談に乗ったり、励ましたりしようとしたら同じように何を言いたいのか分からなくなってしまう自信があったから。なので、話がおかしいと自覚して気恥ずかしそうに頬を掻く灰原に、お礼の言葉を贈った。

 

 その後も、灰原と話をした。学生には現在伝わっていない、これから伝えられるだろう情報を先に教えてくれた。というのも、全国に放たれてしまった呪霊や呪詛師、昔の呪術師による無差別殺戮が止まっているということ。目撃情報がみるみる消えていき、“上”の連中からの言葉も止まっているそう。

 

 非術師が襲われていないならば、それに越したことはない。明るみに出なかった呪霊が表の世界で生きる者達に認知されれば、恐怖によって負の感情が増大して呪いが強まるだけだ。隠せるものなら隠していた方が良い。写真にも写らないので、幽霊として処分されるだけなら何の問題も無いのだ。ただ、気になるのは何故目撃情報が少なくなっているのかということだ。

 

 本来は何故だろうかと悩むだろう。何者かによる仕業か?と勘ぐることもあるだろう。だが、その話を聞いた時に恵と釘崎が思ったのは、ある人のことだった。離叛してしまった彼。でも彼ならばやっていてもおかしくない。特に呪詛師については、彼ほど敏感に反応する者は皆無だろうから。

 

 

 

「黒圓先輩……なのかなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────お母さんっ。怖いよぉ……っ!」

 

「大丈夫……大丈夫だからね……っ!」

 

「父さんっ!これは一体どういうことなんですか!?あの人は誰なんです!?」

 

「こ、これは……おい()()()()っ!貴様、どういうつもりだ!?」

 

 

 

「お前達を1箇所に集めた理由か?──────()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

「……っ!!」

 

 

 

 とある鬱蒼と木々が生えた場所にて、老人とその他の十数名の男女と子供が1箇所に集められていた。地面につけられた大きな円。木の枝で描かれただけのそれ。その中に入るように命じられている彼等。突然攫われて、こんなところに連れてこられた者達は最初こそ……連れて来た本人である龍已に反発した。

 

 高校生くらいで、気が強い男がどういうことだと詰め寄り、円より外に出るなという龍已の言葉を無視して外に1歩踏み出した瞬間、蹴りで頭が千切れ飛んだ。木にぶつかって粉々になった頭。頭を無くした体。一瞬で目の前の男を殺した龍已に、本能的恐怖を感じて皆で集まり固まり、肩を寄せ合っている。

 

 その中で、老人の男だけは苦々しい表情を浮かべていた。どこかに居ると思っていた黒圓龍已が突然姿を現したかと思えば、いきなり気絶させてきたのだ。目を覚ませば何処か解らない現在地に、()()()()()()家族と一緒に居た。顔ぶれは覚えている。息子夫婦に孫。今は亡き妻の方の親戚など、思い当たる顔全部が揃っていた。

 

 そんな彼等と共に集められた自分と、無表情で見下ろしている特級呪詛師にした男。何を考えているのかは解らないが、何をしようとしているのかは解る。だからこそ、全身から掻く冷や汗が止まらないのだ。老人の男の立場が、呪術界上層部というものであるからこそ。

 

 

 

「貴様ッ!気は確かかッ!?儂を殺せば、貴様はより淘汰される存在になるのだぞッ!?」

 

「淘汰される?前から用意していたように、即座に俺を特級呪詛師認定して懸賞金まで掛けておいて良く言う。邪魔になり、五条が居なくなったから何をしても文句を言う奴が居ないと勘違いしていたのだろう?頭がめでたい奴だ。これから死ぬ癖に、マシな頭の回転はしないのか?」

 

「ふざけ……っ!はー……貴様が儂を殺そうが、上層部はまた別の存在が就く。殺しても根本的解決にはならんぞッ!!」

 

「……?あぁ、上層部というシステムの1つを改善させるために殺すと思っているのか。違う違う。『俺』達怨の一族を散々虚仮にした塵芥の血を受け継ぐお前を殺したいだけだ。お前の家族もそうだ。お前と縁がある者達を全員攫ったのも、この世から目障りなものを消すためだ。安心しろ。赤子でも何でも等しく殺す。そのために連れて来たのに、逃がしたら何の意味も無いだろう?まあ、俺から逃げるなんぞ不可能に近い訳だが。俺の術式は知っているだろう?」

 

 

 

 そう言って手に持つ『黒龍』を振って見せる龍已。老人の男……上層部の1人である彼は息を呑む。そう、龍已の術式は呪力を体外に飛ばして操作するものであり、銃を介さないと発動しない天与呪縛がある。その代わりに約4キロの術式範囲を持っている。目の前で対峙するということは、一瞬で彼から4キロ以上離れなければならない。

 

 この範囲内は全て黒圓龍已の領域だ。身を隠そうが意味は無い。必ず何処に居るのか把握できる術を持っているからだ。上層部として君臨しているばかりで、戦う技術を衰退させ、とても戦える体ではない老人にとって、今がまさに現役の元特級呪術師に正面から戦って勝てるわけがない。絶対が無い業界でも、こればかりはどうしようもない。

 

 上層部を引退した場合の後釜として育てた息子も、一族繁栄の為に与えた胎の女も、自身に関係する全ての者達が集められ、老人を除いた皆が困惑している。脅しを掛ける男……龍已の事は知らない。息子だけは、黒圓龍已と聞いて現在懸賞金が掛けられている特級呪詛師と解って青い顔をしているが、それ以外はただ攫われたとしか思っていない。

 

 龍已がやらんとしていることは唯一つ。殲滅故の皆殺し。一族全てをこの場で殺すつもりなのだ。折角息子夫婦に生まれた胎の孫も何もかも。そうはさせてなるものかと腰を上げようとした時、1発の銃声が響いた。ビクリと肩が跳ね、反射的に背後を振り返る。そこには、頭を撃ち抜かれて頭部を破裂させた体が1つ、出来上がっていた。

 

 ぶちまけられた脳髄。固まる者達。血の気が引く音が幻聴で聞こえてくるようだ。何の言葉も無しに突然殺した龍已に、老人は向き直る。よくもやってくれたな。そんな言葉の一つでも吐いてやろうと思ったが、彼の瞳を見て固まる。敵意だとか殺意だとか、そんな生易しいものではない。黒々とした怨念。それが黒い炎となって灯っていたのだ。

 

 妖しい炎を揺らめかせる瞳に、走馬灯を見た。これまでの70余年の人生を、ものの数秒に閉じ込めたのだ。世界から色が褪せ、灰色のように感じる。時が停まったように感じる体感速度の中、老人の親族は次々に頭を撃ち抜かれて死んでいった。

 

 怯えていた女も。やはり戦おうと決意を込めた男も。成人になっていない未成年の子供も、等しく頭を撃ち抜いて殺した。死後呪いに転ずることが無いように、呪力を纏った弾丸で殺されている。世界最高の呪具師に手掛けられた銃は、その硬度と超重量の他に、普通の銃では撃てない徹甲弾が撃てる。

 

 撃った場合の衝撃は筆舌に尽くしがたく、常人が使えば腕が引き千切れる程のもの。体格に恵まれた者でも、腕全体の粉砕骨折は免れないだろう。そんな怪物のような銃から放たれる弾丸は、最も硬いとされている頭蓋骨を易々と貫通し、突き抜けた後に遅れてくる衝撃で頭を粉々に粉砕した。疑問を抱く余地も無く即死。もの言わぬ死体が転がっている。

 

 

 

「何故……儂のみならず……」

 

「誓ったからな。虚仮にしたお前達塵芥の呪術師を何時か必ず、然るべき時に皆殺すと。受けた怨は怨で返す。潔く死ね。お前は死して悔い改める機会すら必要ない」

 

「待っ──────」

 

 

 

 銃声。また1つ、もの言わぬ死体が増えた。頭を失った体が痙攣を起こしている。頭の無くなった死体が幾つも転がっている光景は凄惨な光景だ。そんな光景を作り出した龍已は喜びも何もせず、動くようになった表情筋を欠片も動かさず、無表情で眺めていた。鉄臭い臭いが辺りを包み込む中、死体から流れる大量の血でできた池の中、啜り泣く子供が居る。

 

 まだ小さい子供だ。幼稚園生くらいだろうか。周りの大人達が次々頭を吹き飛ばされながら死んでいく光景を、光を失った暗い目で見ていた。死んでしまったのだと理解すると、限界まで涙を溜めて泣き崩れる。何が何なのか、解らない内に絶望を与えられた。今感じているのは恐怖だ。

 

 龍已は泣き崩れる子供に近寄り、しゃがみながら頭を撫でて視線を合わせる。絶望し、恐怖する目を向けられるが、小さな頭を抱えるように軽く抱き締めた。人肌を感じて恐怖の中に幻想の温かさを感じた子供は、龍已に縋り付いた。彼は女の子の頭を撫でながら、優しい声色で耳に囁いた。

 

 

 

「怖かっただろう。目を閉じ、大きく息を吸ってみろ」

 

「えぐっ……ひっく……すぅ……はぁ……っ……すぅっ」

 

「目はずっと閉じているんだ。怖さが紛れる。大きく息を吸って……その調子だ」

 

「すぅ……はぁっ……すぅ……──────ッ!?」

 

 

 

 言われた通りにしていた時、女の子の胸にナイフが刺し込まれた。痛みは無かった。無いのだが、体の中に異物があるという違和感があった。龍已の首に縋り付き、上を向きながら目を開けようとすると、彼の大きな手が視界を遮った。暗い中で浅い呼吸しかできない。

 

 縋り付くことしかできない女の子の視界を遮りながら、突き入れたナイフを奥に刺し込んだ。ひゅっ……と小さな悲鳴に思える声が女の子の口から漏れた後、縋り付く腕から力が抜けていく。小さく震えている女の子の視界を遮りながら、刺したナイフを抜く。ナイフを手放した手で頭を撫でてやれば、安心したように手の中で瞼を閉じる。

 

 浅い呼吸が小さくなっていき、やがて呼吸は止まった。動かなくなった女の子の体を横にして寝かせる。閉じられた瞼が再び開くことはない。ナイフで刺したのに出血は少なく、痛みも無かった。苦しまずに逝けただろう。龍已はその場で立ち上がると、クロから火炎瓶を受け取り、死体の中央に投げた。

 

 瓶が割れて中の液体に炎が引火し、炎が広がっていく。燃えるものである死体と、身につけている衣服に炎が燃え移っていくのだ。人を燃やす炎を無表情で眺めていた龍已はこの時初めて、あくどい笑みを浮かべて嗤った。

 

 

 

「さぁ……怨によるゴミ掃除だ。呪術界は燃やすゴミが多くて困る。さっさと終わらせてしまおう。同時に、夏油の皮を被った奴の遺した置き土産の処理をしながらな」

 

 

 

 ケタケタと嗤う。いい気味だ。ゴミがまた1つこの世から消えた。散々黒圓一族を虚仮にしてきた呪術師の末裔が滅び去った。後釜に適当な呪術師が置き換わろうが関係無い。殺すと決めていた奴等を始末できれば、それで良い。

 

 炎は広がり、林全体が炎に包まれていった。火事だ火事だと遠くから人の声と、遅れて消防車のサイレンが聞こえてくる。龍已は黒のローブを身に纏い、暗闇に紛れるように姿を消した。後日、ニュースには山火事が起きたという報道が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────ねぇねぇ。ボクと遊ぼうよぉ。絶対に気持ち良くしてあげるからさぁ。ヒヒヒッ」

 

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……っ!!」

 

 

 

 少女は逃げていた。細く草臥れたような、骨と皮しか無いように見える痩せ細った男から。道を聞かれ、外見の怪しさに怯えながら答えようとしたら、突然襲い掛かってきたのだ。持っていた高校のスクールバッグを振り回して運良く顔に当てることに成功した。一瞬怯んだ隙を突いて、少女は逃げた。

 

 捕まったら何をされるか解らない。塾の帰りで、今日は偶然親の迎えが来れないからと自分の足で帰っている途中だった。辺りはもう暗い。人の影は無く、電灯が点いているだけ。明るさなんてその程度だ。

 

 運動はそれ程得意でもなく、自分でも平凡な女子高生だと自覚している少女は、自分にできる最高速度で走っていた。でも、追い掛けてくる男を何故か引き離せなかった。痩せ細った体のどこにそんな体力があるのかと問いたくなるくらい、走るのが速い。下劣な笑みを浮かべて舌を出しながら走っているのに、息を切らす様子は無い。

 

 このままだと追いつかれる。そう思えば思うほど、恐怖で脚が竦んで縺れそうになる。運動は得意じゃない。走るのも得意じゃない。助けを呼びたくても、引っ込み思案な性格が災いして助けを求める声すら上げられず、走ることしかできなかった。

 

 どうしよう、どうしよう、どうしよう。そればかり考えていたからなのか、とうとう足が縺れて転倒した。男はすぐに追いついた。ズボンのベルトを外して下ろし、勃起した男根を見せつける。そのあまりの悍ましさに、少女は顔色を蒼白くさせて後退った。こんなところで、こんな形で犯されるのは嫌だ。

 

 誰もが思うだろうことを考えて後退るが、気持ちの悪い男はもう目の前だ。男の魔の手が伸びてきて、ここまでだと諦観に近い感情を抱いて目を閉じる。瞬間、ごきりと鈍い音が響いた。恐る恐る目を開けてみると、手を伸ばしていた男の首が、3周程回って捻れ、口から泡を吹いて白目を剥いていた。

 

 

 

「──────昔の呪詛師も今の時代の呪詛師も、やることは変わらんな。実に虫唾が走る」

 

「あ……なた……は……?」

 

「知る必要は無く、知ったところで意味は無い。運良く生き延びたことを噛み締めていればいい」

 

「は、はい……すみません。あ、あと……助けてくれて……その、ありがとう……ございました」

 

 

 

 どさりと崩れ落ちる、人だったもの。今ではもう死体だ。誰が見ても、3周する程首を捻られた人が生きているとは思わないだろう。少女は、襲ってきた男の背後に居た男を見ると、不思議な雰囲気な人だと感じた。脚に巻かれたレッグホルスターは映画等でしか見ない。今のご時世、銃刀法違反で捕まるような、本格的な銃を納めている。

 

 顔立ちは整っていて、寡黙な印象を与える。ピクリとも動かない表情に話し掛けづらいものを感じるが、その反面しっかりと言葉を返してくれた。人を殺してしまった男の人のことは置いておいて、お礼を口にするのは真面目だからだろうか。それとも、人が目の前で死んでいるのに、叫び声も上げない精神にもの申せば良いのか。

 

 少女を助けた男……龍已はさして興味を抱いた様子も無く、少女から視線を外すと右脚の『黒龍』を抜き、首が捻れて死んだ男に向かって発砲した。しかし銃声は鳴らず、目に見えない何かが飛んで頭を撃ち抜いた。少女には、何を撃ったのか、そもそも本当に何かを撃ったのかさえ解らなかった。

 

 

 

「──────いつまで呆けているつもりだ」

 

「……え、あっ」

 

「見たところ高校生……まだ1年生だろう。今回のように襲われる可能性が高い夜に、1人で徒歩で帰るものでもない。両親を呼ぶなりして早く家へ帰れ」

 

「あ、あなたは……?人を殺して……」

 

「これは人間ではない。呪詛師……と言っても通じんか。兎も角、ゴミを処理しただけだ。お前が気にする事でもない。真っ直ぐ家へ帰り、今回のことは忘れろ。いいな」

 

「……はい」

 

 

 

 銃の引き金を引く。目の前にあった人の死体は、いつの間にか消えていた。地面が削り取られたように無くなっているのも合わせて、少女は目を白黒とさせた。人が死ぬ瞬間。人が人を殺す瞬間。手品のように人の死体を消し去る瞬間。短時間でこれだけのことを経験してしまえば、少女は今なら並大抵の事じゃ驚かないと自覚する。

 

 夜の道は危ない。確かにそうだ。今回のことで身に染みた。龍已の言っていることは正しいので、親に迎えに来てもらえるよう頼もうとスマホに手を伸ばすが、見当たらない。スカートのポケットに入っているはずが、何度確認しても見つからない。追い掛けてきた呪詛師から逃げるのに必死で、落としたことに気がつかなかったようだ。

 

 冷や汗を流しながら上着のポケットを弄るが、目当てのスマホは見つからなかった。連絡をする手段が無くなったと落ち込んでいると、溜め息を溢す声が聞こえる。鈍くさくて自分でも呆れるのだから、助けてくれた人が呆れても仕方ない。恥ずかしさを感じながら俯いていると、さっさと行くぞと声を掛けられた。

 

 

 

「え……?」

 

「4キロ圏内に呪詛師も呪霊も居ない。乗りかかった船だ、送ることだけはしてやる。早く行くぞ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 

 

 知らない人、それどころか簡単に人を殺した人に家まで送ってもらうのは危険極まりないだろうとは思う。でも、襲われたばかりの少女は感覚が麻痺していた。それに少女からしてみれば、何故か解らないが龍已に対して危険だと思えなかった。だからこそ不思議な雰囲気の男性なのだが、彼と一緒に帰ること以上に安全なことは無いことを知らない。

 

 スクールバッグは逃げている途中で、スマホと同じく落としてしまっているので手ぶらの状態。龍已は家の場所を知らないので少女が誘導し、夜の暗い道を歩いて帰る。2人の間に会話が無く、話し掛けても大丈夫なのかと躊躇う。

 

 助けてくれたけど人殺し。でも悪い人ではない。けれど男に襲われたばかりで、どうも信用しきれない。少女は変な葛藤を抱いたまま歩みを進めた。我武者羅に走って逃げていたが、その所為で家までの距離はそう大したものでもなくなっていた。歩いて十数分もすれば、自ずと家に着く。

 

 目と鼻の先に家があり、部屋の電気が点いていないのを見ると両親はまだ帰ってきていないようだ。あれが家ですと指を差して説明すると、そうかとだけ返された。見た目に違わず寡黙な人だなぁと思いながら、再び頭を下げてありがとうございましたと礼を口にした。そんな彼女に、スクールバッグが手渡される。

 

 

 

「え……これって、私の……」

 

「道の真ん中に落ちていれば解る。スマホもあった。歩いているだけで暇だったからな、探して持ってきた」

 

「……??えっと、ありがとうございます。なにから、なにまで……」

 

「気にするな。……さて、今回は俺が居たからどうにかなったものの、変質者は世の中幾らでも居る。夜道を1人で帰るくらいならば友人と共に帰るか、迎えを呼ぶことだな。次に何かあっても助けてもらえるとは限らん」

 

「……はい。お世話になりました」

 

 

 

 引っ込み思案の性格で、恥ずかしながら友人はそう多くない。なのに帰る道は別々なので一緒に帰るのは厳しいだろう。なので今度からは両親に迎えに来てもらうことにしようと決めた。折角助けてくれた人の助言なのだから、聞き入れないと……罰が当たるような気がするのだ。

 

 龍已は最後に軽く頭を下げる少女に踵を返して背を向けた。大人の男性の大きな背中が離れていく。命の恩人に何のお礼もできていないが、何となくそういうのを求めておらず、受け取ってくれないだろうと思った。でも、その代わりに深く頭を下げて感謝の気持ちを贈った。そして頭を上げた時、その時には既に龍已の姿は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある日。東京の呪術高専に、ある人物が訪れた。人の視線をこれでもかと集める、傾国レベルに整った美貌。すらりとした手脚に、太陽の光を浴びて金色に輝く髪。いつまでも見つめていたくなる神秘的な碧眼。彼女……いや、彼は自分の意思で、呪術高専を訪れたのだ。

 

 基本的に呪術界の者とは接点を持たないことで有名な彼が、全国に2つしかない呪術を学ぶための高専に訪れるなど、彼を知っている者からすれば驚きに値するだろう。しかし彼にとって、今はそんなことを言ってられる状況ではなくなっていた。訪れた理由は唯一つ。事情聴取である。

 

 

 

 

 

 

 

「──────此処が高専かぁ。龍已が教師をしてたっていう学校。思ったよりも広いんだね。ま、そんなことはどうでもいいか。さて、初めまして。僕は天切虎徹。しがない呪具師をしているよ。よろしくするつもりはないかな。それより僕の親友がおかしくなった理由を全て聞かせてもらっていい?あ、拒否権とか黙秘権は無いよ。抵抗したら──────何の呪具を使うか保障できないかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






助けてもらった高校1年生の少女。

とあるド田舎に生まれた引っ込み思案の少女で、1番仲が良かった女友達は東京に行ったが、自身は地元の高校に通っている。大学に行ったら地元を離れるつもり。




禪院直毘人

右腕を無くしたが存命。特級呪霊の陀艮との戦いが終わった後、獸崇が来て詰んだかと思ったが、甚爾がボコボコにしたので見学していた。




禪院真希

陀艮との戦いで深傷を負っていたが、家入の反転術式により完治している。高専が休みでも何かしていないと落ち着かないので、パンダと狗巻を呼び出して鍛練している。



伏黒甚爾

渋谷事変を無傷で生還した。特級呪霊の陀艮を祓い、獸崇を追い詰めるくらいの化け物身体能力のオッサン。龍已が離叛したと聞いたとき、別に驚きはしなかった。

天性の肉体は、龍已から時折感じる凄まじい恨みというべきか、怨念のような気配を感じ取っていた。誰に向けているのかも定かではない闇のようなものを持っている彼は、その内何かするのではと思っていた。




七海建人

特級呪霊の陀艮との戦いで片眼を失う重傷だったが、家入の反転術式により完治した。お世話になった先輩の龍已が離叛したと聞いて、とうとうあの人まで離叛するくらいになったかと、呪術界のクソっぷりに飽き飽きしている。




灰原雄

補助監督として、渋谷事変では人の先導や情報のやりとりで貢献していた。元呪術師ということもあり、戦闘は禁じられている補助監督の中でも、有事の際には戦闘が許可された人。

学生時代からお世話になり、命の恩人である龍已が離叛してしまったことに、ショックを受けている。尊敬していた夏油も同じように離叛しているので、悲しみは倍増。




反承司零奈

錯乱状態に陥り、周囲の物を手当たり次第に壊して暴れようとするため、甚爾によって抑え込まれて現在幽閉中。自分の所為で……というような言葉を吐き続けている。

幽閉中、ここまで死にたいと思ったことはない。何故救済しようとしたら、黒圓龍已を終わらせてしまったのか理解出来ない。いや、本当はしているが、理解することを頭が拒否している。




虎杖&伏黒&釘崎

1年ズ。虎杖は宿儺に体を一時的に取られたが、奇跡的に誰も殺すことがなく死刑は免れている。が、五条が居ないため、いつ上層部に秘匿死刑を言い渡されるか解らない状況に少しの不安を持っている。

恵は昔からの知り合いで尊敬する大人の龍已が突然離叛したことを信じられていない。何かしらの術式に掛かっていると思った方がまだ現実的だと思っている。もしくは、信じられないというよりも、信じたくないだけ。

接してきた期間が短い釘崎だったが、真面で良い人だという印象を龍已に抱いていた。家入と長年付き合っていて、大事にしているというのもポイントが高かった。しかし離叛したことにより、何でこんな事になってんのよ……と気分が沈んでいる。いつも通りに見せている家入の姿を見ると、泣きそうになる。




呪術界上層部

親族を含めた、縁のある者達全員を巻き添えに皆殺しにされた。頭はいくらでも変えられると言っても、受けた怨を返すだけで、そんなことは興味はないと返され、赤子も関係無く無惨に殺された。

虎杖の秘匿死刑が言い渡されないのは、言い渡す上層部が居ないため。全員殺されているので、今は誰が上層部の椅子に座るかを検討しているが、座った瞬間に殺されるかも知れないと考えて、誰も座ろうとしない。




黒圓龍已

全国に散らばった呪詛師と呪霊を殺し回っている。だが、それはあくまでついでに過ぎず、メインは呪術界上層部の皆殺し。一族を根絶やしにしており、縁のあるものは例え生まれたばかりの赤子であろうと見つけ出して殺している。

受けた怨は怨で以て返す。有言実行をし、結果的に現在上層部の椅子には誰にも座っていない。座った瞬間に殺されると勘違いしているため。殺しているのは、怨の一族を虚仮にした()()()呪術師の血を引く者と、それらに関係のある者。

呪霊と呪詛師狩りをしながら、その場に居合わせた人達も助けているので、謎の人物が助けてくれたという声は、チラホラ出ている。




家入硝子

龍已が離叛を宣言したその場に居たが、証人として名前を出す事なんてできるはずがなかった。

仕事が手につかない。家に帰っても虚しい。大きめのベッドは冷たい。酒は飲む気になれない。食べ物はどれも美味しくない。世界が色を失ったように感じる。

楔が云々はもういい。他のことなんてどうでもいいから、私の元に帰ってきてくれ。私は今、それだけを求めている。




天切虎徹

呪術界の人間と接点を作らないことで有名。呪具作製の依頼をしても、相当な理由と対価、そして気分が乗らないと造らない。ただし、龍已の呪具は無条件で造る。

絶対にやらないだろう大々的な離叛をし、呪詛師として処理されている経緯について詳しく知るため、高専に訪れた。龍已との接点が明るみに出ないようにしていたが、そんなことも言ってられない状況になったので、隠すつもりはなくなった。

龍已を態々呪術師の道に引き摺り込み、扱き使って呪詛師認定した上層部も、切っ掛けを作った呪術師も全員嫌い。



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。