呪術廻戦───黒い死神───   作:キャラメル太郎

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高評価をしてくださった、NASUKI さんの皆さん、ありがとうございます。




第五十六話  天切家当主来訪

 

 

 

 

 

「ようこそおいで下さいました、天切家当主の天切虎て──────」

 

「あぁ、そういうのいいから。僕は龍已のことを爪の先程度は知ってる君達に事の顛末を聞きに来ただけだから、よろしくするつもりはないよ。だからお決まりの言葉は要らない。事情を知っている人だけを集めてくれる?」

 

「……解りました」

 

 

 東京高専の学長である夜蛾は、来訪者である天切虎徹の相手をしていた。最初に連絡が来たとき、何事かと驚愕したものだ。代々有名な呪具師を輩出する呪具師の名家中の名家。呪術界で知らないと言う者が居れば、呪術師を疑われるほどのビッグネームと言っても良い。

 

 そんな天切家の当主が直々に高専にやって来るという。粗相をすればどんなことになるのか想像がつかない。不興を買って呪具の製作を意図的に止められれば、世の呪具を使う者達は大変困る。特級呪具も製作して時々売りに出しているので、それも止められると呪術界には大打撃だろう。

 

 あの上層部でさえ、呪術師には必要な呪具を造る天切家には手出しをしないし、文句も言わない。言えないし、そもそも言わせてもらえない。命令なんて以ての外だ。嘗て、舐めて掛かった上層部が天切家の怒りを買ってしまい、世界中の呪具師が呪具の製作を完全に止める……という事件を起こしたことがある。

 

 マイナーな呪術師は、呪霊が見えるだけでも呪術師として引き入れる。そんな者達が頼るのが呪具だ。その製作を止められるとなると、戦える人間がかなり減るし、武器を失ったことで死者も多く出るだろう。結果的に、その時の上層部は姿を消した。噂では、呪物にされたか、呪霊に殺されるよう仕向けられたとも言われている。真相は未だに明かされていない。

 

 呪術界に身を置く者達と接点を持たないことで有名な天切家。その当主が来たので失礼のないように対応しようとした夜蛾の行動を無下にし、早速本題に入る。目的は事情聴取。それ以外はどうでもいい。宿儺の器だろうが禪院家だろうが関係無い。虎徹の中では、龍已、親友達、その他の括りで完結されているのだ。

 

 夜蛾は会議室に虎徹と、付き人のメイド数名を招待して待っていてもらい、至急龍已と関係のある者達を集めた。その中には七海や灰原も含まれている。宿儺に体を奪われていたものの、接触した虎杖。龍已の父親と戦う時その場に居た恵。何度も彼と任務に行った釘崎。真希、パンダ、狗巻に、彼の専属補助監督であった鶴川などである。当然、甚爾も居るし……家入も居る。

 

 必要な人物があらかた揃うと、夜蛾が場を仕切って話し合いをしようとする前に、虎徹が手で制した。順を追って自己紹介をしてもらう必要はない。よろしくするつもりはないのだから。なのでさっさと事情聴取をして帰るつもりなのだ。

 

 

 

「君達の事は噂程度のことは知ってる。けどごめんね、欠片も興味ないんだ。だから君達の自己紹介はいいよ。僕は一応天切家の当主としての立場があるから名乗っておくね。僕は天切虎徹。しがない呪具師をしているよ。家入さんは久しぶりだね」

 

「……お久しぶりです」

 

「うん。それじゃ、悪いけど早速本題に入らせてもらうよ。この高専でつい先日まで教師兼特級呪術師をしていた僕の親友、黒圓龍已が離叛して特級呪詛師という扱いになってる。そんなことになった原因は、渋谷のテロ事件の筈だ。そこで、現場に居ただろう君達から詳しい話を聞かせてもらう。僕が投げる問いに対して黙秘権とか拒否権は無いよ。絶対に全て、何もかもを包み隠さず話してもらう。じゃないと……──────何の呪具を使うか解らないからね?」

 

 

 

 

 

「な、伏黒。あの人結構偉い感じなん?」

 

「実際名家の当主だから偉いが、それよりも呪術界に対しての影響力が御三家の比じゃない。多くの呪術師が使ってる呪具。その殆どを造って世に出してるのが天切家だ。その中でも呪具師としての天切虎徹は最上位。今まででに幾つも特級呪具を造ってる」

 

「マジか。けどさ、めっちゃスゲー呪具造れるのと影響力があるのはちょっと違くね?てか、具体的にどういう影響力があんの?」

 

「世界中の呪具に関しての影響力よ。天切家の当主サマのあの人が『造るな』って言ったら、その瞬間から世界中の呪具師が呪具の製作を止めるのよ。だから、“上”の腐った連中すらも何も言えないわけ」

 

「……めっちゃ偉い人じゃんッ!!全然しがなくねーッ!?」

 

「虎杖君、声が大きいです。解らないことを聞くのは良いことですが、話の最中にするのは感心しません。天切さん、話の腰を折ってすみません。続きをお願いします」

 

「あまり長居したくないから、面倒なことはしないでね。宿儺の器君?」

 

「あ、はい。スイマセンっした……」

 

 

 

 呪術界に入ってまだ日が浅い虎杖には、突然やって来てみんなを集めたかと思えば、偉そうに質問していくから答えろと言ってるめっちゃ美人な女の人というイメージしかない。実際は男なのだが……兎も角として、誰なんだこの人は?という印象しかない。なので隣に居る恵に聞くと、釘崎も補足を入れてくる。

 

 意外にも呪術師の家系である釘崎も、天切家のことは当然知っている。1度壊したトンカチを天切製のトンカチに変えたいと思ったが、値段がクソ高くてビビったのは記憶に新しい。釘崎も知ってんのか……と思いつつ周りを見渡すと、知らない人は居ないようなので自分だけか!?とちょっとショックを受けた虎杖だった。

 

 相手が名家の当主ということを抜きにしても、龍已の事について細かな情報の交換ができる良い機会ということで、七海はうるさくなった虎杖を注意しつつ、話の続きを促した。情報のやりとりをしたいのはこちらとて同じという考えの基、元一般会社に勤めていた常識人がそうさせた。

 

 話ができる状態になったのを確認してから、虎徹は話を続けた。最初の問いは、渋谷の無差別テロ事件が起きる前に、龍已の体調等に変化はあったかどうかというものだった。しかしそれは皆が同じ事を口にする。何の変わりも無かった。同棲していた家入でさえ、同じ意見なのだから間違いないだろう。

 

 ぐるりと会議室を見渡して、1人1人の顔を見ると、小さく頷く虎徹。嘘ではないと、口裏を合わせている訳ではないと判断したのだろう。体調等に問題は元より起きていなかった。では次の問いだと言い、第2の質問が出される。龍已の体調以外に、異変は無かったかというものだった。

 

 

 

「体調とは関係ねーのか?」

 

「違うよ。健康状態の有無じゃなく、龍已そのものの異変だ。性格が豹変したとか、いつもの彼らしくない行動をしたとかね」

 

「……無いわね。少なくとも私は見てないわ」

 

「俺も釘崎と同じだな」

 

「俺も見てないです」

 

「私も黒圓さんの異変については知りません」

 

「……そっか。じゃあ──────知っているのは家入さんだけかな?」

 

「…………っ」

 

 

 

 虎杖や釘崎、恵や甚爾、七海といった者達が首を横に振るのを見届けると、虎徹は名指しで家入に問い掛けた。異変。龍已の身に起きた事の何かしらの出来事。この中で、その事を知っているのは家入だけだ。思い出すのは、非術師が呪詛師に見えると言って、様子がおかしくなった学生の頃。だがそれよりも、家入はもっと深いことを唯一知っている。

 

 誰にも話すなと、龍已ではない何かに指示されており、今日この日まできた。表情には一切出していなかったのに、虎徹には通じない。頭脳明晰である龍已すらも、虎徹に勝てるビジョンが浮かばないと評す天才的頭脳の持ち主の虎徹には、この場に居る者達の瞬きから虹彩の動きで、隠している秘密の存在に辿り着く。

 

 反応しないようにしても、反応しないようにする事そのものに不自然な動きが加わるので、虎徹にとっては隠していると大々的に言っているようなものだ。隠し事は通じない。部屋の中で唯一だろう、龍已の異変を知っている家入に多くの視線が注がれる。

 

 他者に明かしてはならない。そう言われている。明かせば、龍已がどうなるか解らないと。しかし、そのどうなるか解らない状態が既に起きてしまっている。ならばもう秘密にしている必要は無いだろう。溜め息を吐きながら、家入は昔に知った異変について話し始めた。二重人格のように短時間だけだが性格が変わったこと。秘密にするよう言われていたこと。5つの楔のことを。

 

 

 

「あー?楔って何のことだ?縛りとかそーいうことか?」

 

「可能性はあると思います。人格が変わったというのが引っ掛かりますが、その時に己を縛り、元の人格に戻ったならば黒圓さんが知らなくてもおかしくない」

 

「だがよ、テロん時に殆ど一緒に居たが、その楔と関係ありそうなことはしてねーぞ。変な奴と殴り合いになって消えた時に追い掛けようとしたが、特級呪霊に邪魔されてその後は見てねーが」

 

「その後だと、宿儺がだけど黒圓先生と接触してる。なんか怨の一族とか何とか話してたよ」

 

「……あー、そういや、襲ってきた奴のことを『父様』とか言ってたな」

 

「……父様。家入さんを含めた、『人』に関連する5つの楔。……ふーっ。なるほどね。縛りの方がまだ良かったかも」

 

「……?天切様は何かお気づきになられたのでしょうか」

 

「まあね。その人格とやらが何かはまだ深く知らないけど、十中八九5つの楔は僕、家入さん、そして他にも居る龍已の親友3人だね。それ以外考えられない」

 

 

 

 あっけらかんと言い放つ虎徹に、七海と灰原が首を傾げる。親友だと言う虎徹が楔なのは……まあ良いだろう。楔という言葉が大切な者を示しているのならば、長年交際している家入のことを含めるのはごく自然のこと。だが残り3人については知らない。学生の頃からの付き合いで、それなりに知っていると自負していたが、そんなに仲の良い者が居るとは知らなかったのだ。

 

 今は封印されている五条とも仲が良いが、親友かと言われれば違うだろう。何せ五条には唯一無二の親友が居た。龍已とは仲の良い先輩と後輩という友人関係を表す言葉が合っている。京都校の歌姫も違うだろう。冥冥は避けている節があったので元より除外。残念ながら、七海と灰原は親友と呼べるほどの関係に至っていないことを自覚している。

 

 ならば誰かという話になるのだが、ある事を思い出す。自分達が高専に入った時、龍已は唯一の3年生だった。しかし、実は同期が2人居たという話を聞いたことがある。仲が良かったということも聞いた。それならば可能性があるが、その2人は十数年前に殉職している。この世に居ない者に楔も何も無い筈だ。

 

 

 

「その3人って誰なん?」

 

「あはは。それを君達呪術師に教えるつもりはないよ。一切ね。詮索するのはオススメしない。その3人は僕の親友でもあるからね。呪術師や呪詛師が介入できないように、周りを僕の優秀な呪具で固めてある。手を出そうとすれば即死ぬよ。そうなるような呪具を造って持たせているからね」

 

「えぇ……。何で呪詛師なら兎も角、俺達もダメなの?いてっ!?」

 

「虎杖、ズケズケ聞き過ぎだ」

 

「……当たり前じゃないか。僕はね、君達呪術師が大嫌いなんだ。日頃から呪霊を祓除するためと言い訳して僕の親友を扱き使ってさぁ?一時期は疲労困憊の声で疲れたって僕に電話をしてきたよ。弱さを一切見せない龍已がだよ?本当なら普通の人生を歩んでいる筈だったのに……僕達はいつまでも一緒に学校生活を送って、青春をすると思ってたのに……それを奪った。死にかけたこともあったね?使えない『窓』が情報伝達を間違えたんだっけ?特級2体とか舐めてるよね。態とかな?まあもうそんなことはいいや。でもさ、龍已の人生を無理矢理変えた呪術師は赦さない。扱き使った挙げ句、これ見よがしに呪詛師扱いしている上層部はもっと赦さない。そして……夜蛾正道、僕は君を最も赦さない」

 

「…………………。」

 

「知ってるからね?無理矢理捕まえて、あらゆる情報を吐かせて、その上で呪術師の道に引き摺り込んだ。守銭奴で有名の冥冥って1級呪術師が龍已を見つけたんだよね?彼女のことも相当嫌いだよ。まあ、夜蛾正道……君程じゃないけどね。当時は本当に、頭にきたよ。僕の呪具でこの世から消してやろうかと思ったくらいさ。でも、そんなことをしても龍已が喜ばないからやらなかった。ホント、余計なことをしてくれたよ。ふふっ。大して龍已の事を知りもしないで、知ったような気になって、離叛したことを嘆くだけの君達は僕からしてみれば醜悪だよ。見ていて腹が立つ。勝手に友人面するのやめてくれないかな?黒圓龍已(僕の天使様)はそんなに安くない」

 

 

 

 虎徹から感じるのは、純粋な怒りだった。大切な親友を使って、その果てに現状を作り出してしまったことが我慢ならないのだ。特に、夜蛾に対して怒りを超えて殺意すら抱いていた。呪術師とは関係を持たず、黒い死神として呪詛師を殺すことだけをしていき、その他の時間は一緒に親友達と過ごせていれば、それ以上の幸福は無かった。

 

 なのに、呪術師になるからという理由で東京まで行き、東京を起点に毎日毎日忙しない任務と仕事を行っている。特級呪術師という肩書きの所為で、海外にまで足を運ぶなんてイカレているのかと思った。どれだけ利用すれば気が済むのかと、血が出るほど奥歯を噛んだ事だって1度や2度ではきかない。

 

 呪術師はマイナーだから万年人手不足?だから龍已に任務を押し付けても良いのか?黒圓無躰流を教えないからと、嫌がらせで山のような任務を与え、遠征を何度もさせ、任務を消化すれば今度は黒い死神として仕事をする。疲れないわけが無い。いくら人類最高峰の肉体を持っていても、彼だって人間なのだ。弱くて脆い、人間なのだ。

 

 未だに、天切家というビッグネームの当主と親友という関係を、龍已が持っていたのか懐疑的だったが、これで嫌というほど確信した。彼は龍已の親友だ。面と向かって、ここまで強くて深い怒気を露わにする人が、龍已の身のことを考えている人が、親しくない訳がない。

 

 

 

「……はぁ。呪術師を相手に話をすると恨み辛みを湯水の如く垂れ流しそうで、自分の心を抑制するのに疲れるよ。話を戻すけど、そこの元術師殺しが言った『父様』というのは、降霊された龍已の実の父親の忠胤さんだろうね。調べさせたら、死んだ人間の肉体の一部を取り込ませる、または取り込むことで一時的に降霊させることができるっていう降霊術式を持つ呪詛師が居たみたい。忠胤さんのお墓も掘り返された形跡があったみたい。これは完全に僕の落ち度だ。杜撰な管理をしていることに気がつかなかった」

 

「……天切さん。あなたは龍已がおかしくなった原因を、もう解っているんじゃないですか?」

 

「今確信しただけだよ。5人の楔。僕と家入さん、そして3人の親友。1人1人龍已が大切にしている人だ。それを欠けさせた時に、未完成の龍已が完成する。つまりは、大切な人が死ねばおかしくなるってことだ。だったらもう簡単なことだよね。降霊術式によって差し向けられた忠胤さんを、龍已は自分の手で殺した。龍已は、両親のことを心から愛していたからね。きっと殺した瞬間計り知れないダメージを心に負った筈だ。だから、僕達に何も起きていないのに、龍已がおかしくなった」

 

「……そういうことか」

 

「イレギュラーで現れた6人目の楔。それが欠けたからだろうね。はーあ。本当に腹立たしいなぁ。忠胤さんを使った呪詛師も、龍已にばかりこんな不幸を与える世の中も、腐った肥溜めのような呪術界も」

 

 

 

 心底腹立たしそうに、苛々した様子で愚痴を溢す。傾国レベルの美貌を持つ顔には笑みを浮かべているのに、声は底冷えするように冷たいのだ。しかしそれは、龍已を想うからこその冷たさだ。本人が嘆かず、悲観しないから、その代わりに虎徹が龍已の分の負の感情を抱いている。

 

 苛々している気配を感じ取って、虎徹と対峙する一行は気まずそうにしている。最近龍已と知り合ったばかりの虎杖や釘崎は、龍已の過去の話を聞いて初めて知ることができた。七海や灰原も、後輩ではあるが呪術師となった経緯は初めて聞かされた。引き入れる要因を作った夜蛾は、若干の後悔を滲ませていた。

 

 呪術界にとって五条と並ぶ双璧を担っていた黒圓龍已。呪詛師を必ず殺してくることから、表立って活動する呪詛師が極端に減った。居るだけで大きく貢献していた彼だが、そんな優秀な彼を不幸な目に遭わせてでも呪術界に引き留めようとは、流石に考えられなかった夜蛾。しかし実績が多大に重なってしまった以上、龍已は呪術師を簡単に辞めることは不可能になっていた。

 

 辞めたくても辞められない。1度足を踏み入れたら最後、無惨な死か、陰謀による惨い死のどちらかしか存在しない地獄に叩き落とされた龍已と、叩き落としてしまった夜蛾。この構図は意図した訳でなくても、虎徹にとっては憤慨ものだった。裏で呪詛師狩りをしながら、皆で普通に過ごす筈だった未来を崩されたのだから、仕方ないのかも知れない。

 

 

 

「……そういえば、最近龍已からの話によく出て来た子が居ないね。黒髪に琥珀色の瞳だって言ってたけど。反承司さんだったかな」

 

「……零奈は今、別の部屋に居ます」

 

「……はぁ。あのさぁ?僕言ったよね?事情を知っている人は集めてって。反承司さんはテロ事件の時に龍已の班に居たんじゃないの?もしかしてその程度すらも知らない奴だと思ってる?」

 

「……っ!違います。零奈は現在他者と関われるような精神状態にありません。心苦しいですが、彼女が持つ戦闘能力を加味して拘束しながら幽閉しているんです。なので、この部屋には呼ぶことができませんでした」

 

「じゃあその事を最初に言うべきだよね。報連相知らないの?……もういいよ。僕が直接会って話すから、反承司さんが居る部屋に案内して」

 

「し、しかし……」

 

「──────拒否権は無いって言ったよね?それとも、脅しの言葉通りに何か呪具使って欲しいの?僕は構わないよ。この場に居る全員がどうなったとしても」

 

 

 

 いつの間にか握っていた紫色のビー玉のような物を取り出して見せる虎徹。どういったものなのかは、外観だけでは解らない。しかし相手は呪具師の最高峰と謳われる虎徹であり、そんな彼が脅しに使っている。普通の呪具と考えない方が良いだろう。それに加え、どうやら効果範囲は広いようだ。でなければ、この場に居る全員……とは言わないだろう。

 

 元術師殺しで有名となった甚爾が居ながら、堂々とした脅し。常人の目では到底追い付けない速度で駆け抜ける彼が動いても結果は変わらないと言ってもいい。そんな特大の代物を懐に幾つも入れている様子の虎徹。親友である龍已の為ならば、誰が相手だろうと容赦も躊躇もしないというスタンスに折れて、夜蛾は虎徹とお付きのメイドを連れて部屋を出て行った。

 

 数人が会議室から出て行っただけなのに、部屋の中の空気が幾分か軽くなった気がした。呪術師としての彼等が虎徹と戦えば、勝つのは自明の理。しかし、そんなことが関係ないのだと悟らされるくらいの怒気を発せられていた。友を思い、友を想うからこそ発せられる怒気は、中々に強烈なものだった。

 

 

 

「……まさか黒圓先生の友達に、あんな大物居るなんて知らなかったなー」

 

「意図的に隠されていたんでしょう。今回天切さんが表立って動いたのは、黒圓さんが“上”の方々に呪詛師と断定され、死刑対象にされたから。隠れている訳にもいかないのも頷けます」

 

「楔ってやつにも驚いたなー。縛りとかとちょっと違ってくんのね」

 

「……隠していて悪いな。龍已の別人格みたいなのに他言するなって言われててな。……もう、その必要も無いみたいだが」

 

「仕方ないですよ。他言して何が起きるか解らないのが1番怖い」

 

「……世界中に放たれた、偽物の夏油さんと契約していたと思われる呪詛師や呪術師が、近頃活動していないと報告されてます。皆さん心当たりはありますか?」

 

「言っちゃワリーが、上のクソ共はこういう時、虎杖を即ぶっ殺そうとするだろ。五条の坊と龍已が居ねーからな。お得意の秘匿死刑でもやらせるはずだ。その命令すらこねェ。それにこれは俺の勘だがアイツ、日本中動き回って呪詛師ぶっ殺して、上層部も殺してンじゃねーか?」

 

「……一理あると思います」

 

「黒圓先輩、上層部嫌ってたし、呪詛師に関しては尋常じゃない執着だったからね。見つけたら絶対その場で殺してたもん」

 

 

 

 虎徹が居なくなった会議室では、龍已についての考えが飛び交っていた。最初こそ活動していた呪詛師達の動きの報告がされなくなった。呪霊の目撃情報も減っていた。そして何より、腫れ物扱いしていた両面宿儺の器である虎杖の秘匿死刑を実行しようとしない上層部だ。

 

 勘であると甚爾が言っていたが、殆ど決定事項だと思っている。何せ、昔から上層部のことを五条と同じく嫌っていた。腐っているからという理由もあるが、何かと黒圓無躰流の継承をさせるのに胎として女を送りつけてきたり、情報を明け渡すように圧力を掛けてきたりとつまらないことをしてきていたからだ。

 

 それらが何度もあり、積み重なって上層部を嫌っていた。呪詛師を必ず殺していたという灰原の言葉には、七海も同意する。学生時代から、その場に偶然居合わせた呪詛師だろうと、躊躇いなく殺していた。捕まえて仲間の情報を吐かせたら殺し、その仲間の呪詛師を皆殺しにする。その姿を見てきたから、呪詛師の活動が止まっていることに、龍已の行動が関係しているのではと結び付けられるのだ。

 

 甚爾は、黒い死神としての龍已をしっているので、確実に表立って動いている目立った呪詛師を片っ端から殺しているなと確信していた。むしろ、そこで動かなければ黒圓龍已とは言えないだろう。様子がおかしいと言われても、結局そこは変わらないんだなと、少しだけ笑った。

 

 そうして、龍已についての事を推測等を交えて話し合っていく各々。虎徹が帰ってくるまで続くだろう話し合いでは、龍已が敵に回った場合のことを口にする者は居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────この部屋です」

 

「じゃ、入らせてもらうよ」

 

 

 

 夜蛾の案内で高専の廊下を進み、地下にあるとある部屋までやって来た。過去に夜蛾の手により捕まった龍已や、五条に気絶させられて連れてこられた虎杖が使用したことある呪符の貼られた部屋だ。出入口の扉にも呪符が貼られており、夜蛾は扉の取っ手を掴むとゆっくりと開けた。

 

 中は蝋燭の光だけを光源に照らされている。今の時代明るいLEDが普及しているので、光の強さは心許なく、中に居る反承司を薄く映すだけ。遠ければ目を凝らしても見えない薄暗い中、彼女は椅子に太い縄で雁字搦めに縛られ、口には猿轡を付けられていた。顔は俯かせていて見えないが、何となく髪が乱れているのが解る。

 

 何度も暴れようとして力尽き、そのままずっと幽閉されているのだろう。夜蛾は本来、子供の反承司にこんな事したくなかった。しかし暴れるのだ。豊潤な呪力。強力な術式。優れた身体能力。龍已と甚爾から受けたスパルタの特訓により培われた高度な技術。それらが凶暴な暴れ馬の如く、周囲に撒き散らされるのだ。学生という身分でも伊達に1級呪術師をしていないという訳だ。

 

 

 

「や、こんにちは反承司さん」

 

「……………………。」

 

「変わっちゃった龍已と接触した、それもその時の現場に居たと思われる君に話を聞きたかったんだ。話してくれる?渋谷のテロ事件で彼に何があったのか。あ、ごめんね。ソレ(猿轡)付けてたら喋れないよね。今外すよ。……はい、取ったよ」

 

「…………わ…………せ………っ」

 

「うん?なんて言ったのかな?」

 

 

 

「──────私の……所為だ……私の所為で……龍已先生が……『黒圓龍已』が完成して……私の……ッ!!!!」

 

 

 

「……楔の干渉による完成。今までの龍已が未完成状態で、今回の事件で完成したということだけど、何で反承司さんの所為になるのかな?」

 

「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!!私の所為で龍已先生を無くしたくないッ!なんでッ!?私は助けるために、救うためにこれまで頑張ってきたのにッ!何でこんなことになるのッ!?こんなの望んでないッ!嫌だ、帰ってきて龍已先生ッ!元に戻ってッ!完成したらダメッ!手が付けられなくなるッ!私は龍已先生に幸せに──────」

 

「──────はいストップ。錯乱するのはいいけど、勝手に現状を悲観しない。せめて内容を僕に話してね。……と言っても会話にならないよね。仕方ない。呪具を使わせてもらうよ」

 

「……天切様。反承司には……」

 

「安心しなよ。使う呪具は記憶を覗かせてもらうだけのものだよ。死にもしないし後遺症もないから」

 

 

 

 そう言って懐から取り出したのは、キャップタイプの普通の帽子だった。何の変哲もない帽子にしか見えないが、それを2つ取り出して、片方を椅子に縛られてブツブツと呟いている反承司に被せた。もう一つは自分で被る。これで準備は整った。念の為にということで、高専へ移動している途中に車の中に置いてあった帽子を呪具にしたのだ。

 

 造っておいて良かったと思いながら、短時間で尋問に使える実用的な呪具の作製をしていたことを当然のように考えている虎徹。彼にとってはこのくらい出来て当たり前なのだ。複雑な術式程、専用の工房がある家でないと造れないが、その場で思いついたような手間の掛からない呪具の作製はその場でできる。

 

 口頭で教えてもらうよりも、視せてもらった方が早い。だから視せてもらうよと、俯いているだけの反承司に声を掛けて、呪具を使った。瞬間、虎徹の頭の中に渋谷事変で反承司が見てきた光景が流れ込んできた。甚爾と龍已の後ろからついて行き、呪霊や改造人間を祓っていく。

 

 そして、渋谷駅の中に入って行き特級呪霊の陀艮の領域内に意図的に入り込んで戦闘を行う。早々に陀艮を祓除してしまった一行を見ていたが、次の瞬間には虎徹にも見覚えがある龍已父親、忠胤の姿があった。甚爾の言葉通り、真っ先に襲い掛かって消えていった。その後反承司も追い掛けて行ったが、黒い靄に取り込まれた龍已を目にした。

 

 明らかに異常となった龍已だったが、虎徹はそれよりも反承司の記憶に変なものが混ざったことに意識を持っていかれていた。それは、あたかも龍已が忠胤を殺せばおかしくなると解っていたかのような言動と記憶だ。ばちり……と、虎徹の意識が弾けようとする。何か違うものが流れ込んでこようとしていたらしい。

 

 まさか、世界最高の呪具師である自身が呪具造りを失敗した?と思った矢先、虎徹の頭の中には反承司零奈の記憶だけでなく、前世で生きた█████としての記憶も流れ込んできて、刹那の時間で35年分の記憶を叩き込まれた。渋谷事変部分の記憶だけを覗かせてもらうつもりが、█████と反承司零奈の両方の全ての記憶が雪崩れ込んできた。

 

 人の記憶というのは膨大で、尋常ではない情報量の塊だ。だから、天才である虎徹でも、メインで欲しい渋谷事変の記憶に限定して覗き込んだ。そのくらいならば耐えられるから。しかし、叩き込まれた記憶は何故か解らない35年分。それを刹那の時間でだ。結果、虎徹は目と鼻から血を流して膝を付いた。様子がおかしい虎徹に、お付きのメイドが駆け寄った。

 

 

 

「虎徹様……ッ!?」

 

「大丈夫でございますか!?」

 

「くッ……少しずつ……視れば……大丈夫だったけど、はぁ……いきなり余計な記憶を貰っちゃってね……驚いただけだよ……。それにしても──────反承司さん。君は随分と稀有な存在なんだね」

 

 

 

 反承司零奈。前世█████。元女子高生。呪いも何も無い、呪術廻戦というダーク現代ファンタジーの漫画がある世界から転生してきた少女。そして、原作とは違う二次創作にハマり、何の因果かその二次創作の世界にやってきたという存在。渋谷事変までの記憶を知っていて、()()()()()()に舵を取らせてしまった者。

 

 世の中にはパラレルワールドを題材にした漫画やらアニメが存在しており、虎徹もそのくらいは知っているし、見聞を深めるために読んだことも見たこともある。しかし、本当にパラレルワールドから転生してきた存在が居るとは思わなかった。呪い。呪霊。術式。非術師からしてみれば()()()()()空想上のような力を持つ呪術師。

 

 そんな者達が裏の世界に居るこの世界で、ありえないなんてことはありえない。絶対なんて言葉は無い。故に、どんなことが起きてもおかしくはないのだ。おかしくないのだが、別の世界に住んでいた者が、漫画の世界、それも二次創作の世界に入り込んでくるとは思わないだろう。ましてや、虎徹は自分が物語でオリジナルとして創られた存在であることに驚いた。

 

 親友が居ることも、龍已と出会うことも、何もかも反承司が前世で呼んでいた二次創作の通りだ。何の間違いも無い。何だったら描写された時の心情すらも一致している。変えられないレールの上を走らされたと、普通は思うだろう。キャラクターに過ぎない自分に個を見出せなくなるだろう。だが虎徹はイカレていた。何がどうなろうと、黒圓龍已と出会う運命だった自分の『天切虎徹』という人生に感激し、運命だったのだと恍惚とした。

 

 

 

「……僕と反承司さんの2人だけにして」

 

「何かありましたらお呼びください、虎徹様」

 

「すぐに参ります」

 

「………………。」

 

 

 

「……ふぅ。やっぱり、僕と龍已が出会うのは運命だったんだね……流石は僕の天使だよ……ふふ。ふふふっ」

 

「…………………。」

 

「反承司さん。大切な記憶をありがとう。君の過去は誰にも言わないよ。言って何かが狂うと面倒だしね。それと、君は自分の所為だと思い込んでいるようだけど、君の所為じゃない。少し間が悪かっただけだ。そもそも、本来渋谷事変編で死ぬはずだった龍已の事を救済しようとしてくれて、第2の人生を全て賭けてくれた君にそこまで求めないよ。だから、ありがとう。龍已の死を無かった事にしてくれて。君の過誤じゃない。君のおかげだよ」

 

「……私……わたし……っ……龍已先生に……っひっく……死んでほしく……なくてっ……嫌いな勉強……いっぱいしてっ……がんばって……ひっく……術式磨いて……痛いの嫌だけど……体術もやって……ここまで友達も作らなくて……全部全部犠牲にして賭けて……龍已先生救おうとしたら……っ……龍已先生が……っ!龍已先生じゃなくなっちゃったよぉっ!ぅあぁあああああああああああん……っ!!」

 

「うん。うん。ずっと1人で抱えて生きてきて偉いよ。言おうとしても言えなかったこと、僕も君の記憶の中で経験したからわかるよ。辛かったね。ここまで一途にやってきた君を、僕は尊敬するよ。だから卑下するのはやめておきなよ。私が救ったから、今も龍已が生きているんだくらいの気持ちでないと。君は確かに、龍已の死の未来から生存の未来へ繋げたんだから。それに、完成した龍已は龍已だよ。本人がそう言うんだからそうなんだ。だから落ち着いてね」

 

「うぅっ……うわあああああああああああっ!!龍已先生っ、龍已先生ぇっ!ぁあぁああああああああああっ!会いたいよぉ!龍已先生に会いたいよぉっ!」

 

「そうだね。会いたいね。語られてない完成した龍已の事情も知りたいものね。だから──────本人に聞いてみようか?」

 

「ぐすっ……えぐっ……え?」

 

 

 

 ぽろぽろと涙を流したと思えば、反承司は子供のように泣いた。記憶を覗かれようと、もうどうでも良かったから無抵抗だったが、記憶を覗いた虎徹の言葉に体が軽くなって、それでも龍已が居なくなってしまったことには変わりなくて、悲しみが溢れて涙と一緒に出てきた。

 

 整った顔をくしゃくしゃにして、恥ずかしげもなく泣き散らす反承司の頭を、虎徹は撫でた。少し前まで事情を知るその他の1人という認識が、龍已の為に全てを賭けていた一途な女の子という認識になっていた。大切な親友を死なせないように、裏で誰にも頼らず頑張っていた彼女のことを、責めるような事はできない。

 

 悲しみの涙を流しながら泣いている反承司を慰めながら、彼はニッコリとした笑みを浮かべたまま本人に聞こうと言った。それが出来るのならば苦労はしないのだが、彼の言葉は勢いに任せただけの言葉ではないと、何故か確信できるのだ。反承司は顔を上げて呆けた表情をする。手早く懐から呪具のナイフを取り出して反承司を縛る太い縄を斬り落として解放すると、踵を返して扉の取っ手を掴んだ。

 

 

 

「僕が龍已の居所を知らないとでも思ったの?──────そんなのまさかでしょ。ふふっ。僕は龍已に会う前に、起きた出来事をある程度知っておきたかっただけだよ。そして知りたいことは概ね知ることができた。なら、後は会って話をするだけ。一緒に行こうか、反承司さん。龍已に会いたいんでしょ?連れていってあげるよ」

 

「ずずっ……はいっ!よろしくお願いしますッ!!」

 

 

 

 手を差し伸べる虎徹に頷き、その手を取った。先程まで錯乱していた人物とは思えない、覚悟の決まった強い意志を感じさせる反承司。彼女は前世で読んだ二次創作から、虎徹の事は知っている。そんな彼には龍已の親友という印象しか抱いていなかったが、今は頼りになる人だという印象に変わっていた。

 

 

 

 

 

 

 彼等が向かうのは、皆が求める黒圓龍已の居場所。彼は今何処に居て、何をしているのだろうか。そして、言葉を交わせば何を得られるというのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 






天切家

有名な呪具師を数多く輩出する、呪具師の名家中の名家。御三家とか、他に並び立つ家が無いくらいの家系。その影響力は、意思1つで世界中の呪具製作をストップさせられるほど。故に上層部も口出しはできない。

好きなときに呪具を造り、好きなときに売りに出す。天切家が製作したというだけで、呪具の価値は超爆発的に上がる。当主が造ったなんて事になれば、2級呪具相当でも数千万から数億の値段が付く。



天切虎徹

天才的頭脳の持ち主故に、隠し事をしようとしても小さな反応だけで曝くことができる。楔の謎はすぐに解った。人に対して楔という言葉を使い、それが5つともなれば、自身を合わせたケン、カン、キョウと、長年交際している家入だということは明らかだから。

謎の人格については、まだ考える必要があると思っているが、答えは既に9割は出ている。

龍已の事について他の誰よりも知っていると自負している。呪術師にならざるをえなかった話も、疲労が溜まっていたことも知っているし、1度死にかけたことも把握している。そして、龍已をそんな疲労の溜まる呪術師に引き摺り込んだ呪術師を嫌っている。

記憶を覗く呪具で反承司の記憶を全て覗いた人。物語というレールの上を走るだけの存在であるという認識はせず、龍已との出会いは必ず訪れた、つまりは運命だったことに歓喜した。




反承司零奈

転生者。龍已が死ぬはずだった未来を覆すために、色々なものを犠牲にして挑んだが、二次創作の作者ですら思いついただけで書くことを放棄したルートを進んでしまったことを、自分の所為だと思って暴れ、幽閉されていた。

天切虎徹という二次創作で登場した龍已の親友の1人というキャラについては知っていた。死ぬまでの最新話まで読んでいたから。しかし興味があるのは龍已のことだけなので、接触はしなかった。




夜蛾正道

現状、虎徹からのヘイトが1番高い人。龍已のことを呪術界に無理矢理関わらせたことを恨まれている。高専に入れさせなければ、自分達と同じ学校で青春しながら、呪詛師のみを狙って活動ができ、無駄な疲労を重ねなくて良かったのにと。

自白させる術式を持つ呪術師を使って、龍已にあらゆる情報を話させたことも全てバレている。虎徹に理性がなければ、その日の内に呪具で消し飛ばされて殺されていた。




上層部

過去に天切家にちょっかいを掛けて、世界中で呪具の作製がストップされたことがある。呪具を造って呪術師をサポートするのが当たり前という思想は、その日から完全に砕かれた。以後、天切家には一切手を出さない口を出さないというのが暗黙の了解になる。




家入硝子

虎徹がキレてるのを見て、まあそうなるだろうなと分かっていた。唯一、龍已の親友達に接触した人。飲みの席で、龍已のことをよろしくと言われたが、これでは合わせる顔が無いと思っている。

特別仲が良いという訳ではないが、虎徹が呪術師を嫌っていることは知らなかった。だが、言われてみれば確かに嫌うよな……と納得している。龍已が死にかけた時なんかは、自分も呪術界を呪いたくなった。

長年誰にも打ち明けてこなかった、龍已の異変について初めて語った。楔が自分を含めて5人居るが、数が変動しないとは誰も言っていない。今回は、横から忠胤が来たからこんな事になってしまったので、家入に落ち度は無い。体調管理やストレスの発散など、長年よく調整してきた偉い人。




黒圓龍已

ある場所に留まっている。全国の呪詛師を殆ど殺害し、偽夏油が契約していた呪術師を見つけ出して殺し回り、呪霊も祓い回った。

彼の前には誰も居ない。居れば祓い、割り込めば殺し、邪魔をすれば排除する。個にして()である彼は、尋ね人を待つ。必ず来ることを知っているから。

彼は以前までの彼ではない。しかし彼は今までの彼だ。何も違わず、何もかもが違う。元特級呪術師として接するか、特級呪詛師として相対するかは君達の自由だ。だが忘れてはいけない。彼は今までのように君達とは接しない。


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