呪術廻戦───黒い死神───   作:キャラメル太郎

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最高評価をしてくださった、むりうり カカシ ぶっぱマン マサカの盾 反逆の夜クラウン さん。

高評価をしてくださった、ゆうや117 OKMT よくゑたる人 流され杉 ダディエル 覚者 RX-105 Kazuma@SB その手があったか シキア 岬サナ さんの皆さん、ありがとうございます。




第六十話  乱戦

 

 

 

 

 

 反承司零奈は知っている。家入硝子がどれだけ、黒怨龍已のことを深く愛しているのかを。

 

 

 

 

 

 龍已との決戦を控えた約1ヶ月の期間。精鋭部隊に選出された者達は、皆で訓練を行っていた。虎徹が各々の術式と戦い方、癖を把握するためのものでもあり、少しでも強さを得て戦えるようになるための時間だ。

 

 故に、彼等は毎日遅くまで、それこそ泥塗れになろうと訓練を積んでいた。生傷も絶えない激しいものだ。息が切れようと、肺が酸素を求めて痛みを発しようと、そんなことは関係無いと言わんばかりに各自が動いていた。

 

 そんな、傷だらけの生徒や甚爾を初めとした大人組の治療をしていたのは家入だ。繁忙期という訳ではないが、最近は呪霊の出現がかなり落ちている。それは単に、全国を龍已が回って呪詛師と共に祓っていたからだ。呪霊が発生した廃墟などは、人が居らず、使われていないことを確認して跡形もなく消えている。

 

 再び発生する要因を無理矢理排除していたのだ。そのお陰か、呪術師に任務を与えられる事が少なかった。高専の者達の他にも呪術師は居るので、呪霊が出てもその呪術師達が任務に当たる。要するに、彼等はこの1ヶ月、訓練に精を出すことが出来た。

 

 日々傷だらけの泥塗れ。打撲なんてもう友達みたいなものだ。そしてそれらを治療してくれるのが家入だった。呪霊が出なければ怪我人が運び込まれる事も少ない。彼女の呪力を高専の者達へ集中的に使用することが出来る。反転術式のアウトプットは家入と乙骨しか出来ない。宿儺も出来るが、治してくれる訳が無いので頭数に入れない。

 

 そして、その日も色々な生徒が家入の治療を受けた。もちろん乙骨の反転術式によって治してもらうこともあるが、医師として何もしないのは如何なものかということで治療をしてくれるのだ。

 

 

 

「体中痛い……クッソ、あンのマダオゴリラが……ッ!ついでに五条悟も煽り入れてきてウザいッ!無限バリアあるからって調子乗んなッ!」

 

 

 

 その日の訓練が終わった後、反承司は息を整えて時間を開けてから家入の居る医務室に向かっていた。今回も運動するためのジャージーはボロボロ。髪も所々跳ねているし、小さな傷や打撲傷も見られる。腕を痛めているのか、左腕を右手で押さえていた。

 

 術式の精度を上げるために、速度で翻弄してくる甚爾の攻撃を反射しようと演算するが、動きが速過ぎて間に合わない。よって殴られ蹴られる。どう演算すれば良いのか解らない、目に見えない術式の演算を勘で出来るようにするために、五条の無限を使って特訓。で、最後は煽られながら殴り蹴られる。

 

 なまじ生徒の中で1番強い反承司は、相手も必然的に決まっていた。虎杖達の相手をすることもあるが、鍛えるとなると五条や甚爾、七海や東堂といった者達が専ら相手をしている。

 

 少し時間を開けすぎたことで、家入に申し訳なさを感じながら医務室のドアに手を掛ける。少しだけ開ける。居るかどうか確認するために。しかし、反承司は目を少しだけ瞠目させる。中から聞こえてくるのは、鼻を啜る音だった。

 

 

 

「……っ……はぁ……すぅっ……はぁ……」

 

 

 

「ぁの……家入さん」

 

「……っ!すまん。傷の手当てだな。今準備するから少し待って──────」

 

「──────家入さん」

 

「…………………。」

 

 

 

 乱雑に袖で濡れた目元を拭い、すぐに立ち上がって傷の手当てをするための道具を取ってこようとする家入の名を呼び、待ったを促す。立ち上がりきらず、中腰の状態で止まった彼女に近づいて肩に手を置く。椅子にもう一度座らせて、近くにあった椅子を持ってきて対面するように自身も座った。

 

 恐らく自身がこの日最後の負傷者なので、他に医務室へ来る者は居ないだろう。それでも念のため、家入の傍へ行くときにドアの鍵は閉めておいた。反承司は何も言わず彼女を見ている。自身から話を切り出そうと思ったが、まずは落ち着いてもらう方がいいだろう。

 

 机の上に置いてあったティッシュ箱からティッシュを数枚取って軽く目元を拭った家入は、静かに深呼吸をして落ち着いた。恥ずかしいところを見せてしまったな。そうか細い声で言う彼女に、反承司は首を横に振って否定した。泣くのは恥ずかしいことじゃない……と。

 

 

 

「泣いちゃうなんて、当たり前ですよ。私なんて涙だけで脱水症状起こしちゃうじゃないかってくらい泣きましたからね」

 

「……龍已が完成したのは、君の所為なんかじゃないよ。そんなことまで君が1人で背負い込むことはない。あれは間が悪く、運も悪かった。タイミングも最悪だった。不幸の積み重ねだ」

 

「……だと良いんですけどね。私……ううん。大丈夫です。もう割り切ってますから。それより、家入さんは大丈夫ですか?……すいません、大丈夫じゃないですよね」

 

「見られてしまったからな。ぶっちゃけると、頭がおかしくなりそうだよ。10年以上一緒に居るからな。この界隈だ、2人で仲良く寿命で死ぬ……というのは難しいと思っていたが、まさかこんな事になるとは思わなかった。他者に話せないという縛りの所為で話せなかったにしても、数年前のあの時……龍已に異変が起きたときから本気で調べていればと……少し後悔してる」

 

「それは……」

 

 

 

 疲労によって龍已の内側に居る先代継承者であり初代が表に出てきた時の話だろう。明らかな異常で、普通ではない。家入は無闇矢鱈に彼を疲れさせないために裏で徹底的に体調管理を行っていた。食事にも気をつけさせていたし、栄養バランスの取れた食事を摂らせるために管理栄養士の資格も取っていた。

 

 体調は万全で、繁忙期を除いて彼が疲れるようなことはなかった。だがそれだけだ。根本的な解決にはなっていない。再び変なことにならないようにしようという事ばかりに目がいってしまい、どうしてそうなったのか。本当の原因は何なのかを考えていなかった。

 

 悔やんでも悔やみきれない。解決さえしていれば、こんな事態には発展していないだろうに。そう言う家入だが、反承司は目を伏せた。恐らく彼の内側の存在は誰にもどうしようもない。膨れ上がり過ぎた、怨念の塊だ。1000年以上の歳月を掛けて研ぎ澄まされた怨念の牙である。呪術師と呪詛師をこの世から消すためだけに虐げられることを良しとした凶人の意識。取り除くのは最早不可能だろう。

 

 何かしようにも無駄であることは明白。自身にも家入にも、五条悟にだってさえどうしようもない。どうにかできていれば……たらればの話を持ち出すとキリが無いのは解っていても、言わずにはいられない。

 

 どうしてよりにもよって龍已なのだと、家入は頭を抱えた。愛する両親を御三家の誰かの差し金で雇われた呪詛師に殺され、半ば強制的に呪術師になり、なりたくもない特級に押し上げられて良いように“上”に使われ、できた親友達を亡くし、その果てがこれか。彼の人生は何故こうも酷いことばかり起きるのか。いや、こうなることをある程度解っていての、継承の術式なのだろう。

 

 彼と戦うこと以外の道が無い。共についていきたいと言ったら否定され、気絶させられたくらいだ。龍已が家入に手を上げた事など過去に1度も無い。何があろうと、どんなことがあろうとそんなことはしなかった。だから、あの気絶が本気だと言っていることを察した。

 

 

 

「反承司。君は学生の中で頭1つ抜けて強い。乙骨や秤も強いと言っている五条が、君のことも良く褒めている。甚爾さんもな。術式の練度は学生1だ。だがそれでも、龍已にはまだ届かない。学生時代、五条と夏油を同時に相手して負かしたのは本当の話だ。鈍るといけないからと手合わせしても、五条ですら龍已の膝を地に付けさせたことがない。そんな怪物が相手だが、死なないでくれ」

 

 

「……私達は負けませんよ。負けませんし、龍已先生は殺しません。殺さないで、連れて帰ります」

 

 

 

 話をしながら、死なないでくれと言いながら、目を伏せながら、家入硝子は反承司零奈の傷を反転術式のアウトプットによって治癒した。話は終わり、席を立ちながら治癒のお礼を言って部屋を出て行こうとする反承司の背を見て、小さいはずなのに大きく見える。呪術師となった少女の背中はいつも逞しくて大きく映る。

 

 だが、それは逞しく大きく見えるだけで、本当にそうだとは思えない。反承司だって悲しい想いを抱き、戦いの日が一生来なければとさえ思っている。でもやるしかないから、やるのだ。

 

 

 

 

 

 

 家入硝子は聞いていない。反承司零奈は言っていない。死なないでくれという言葉に対して“死なない”という答えを。相手は怨念の怪物。呪いの化け物。元特級呪術師。反承司は家入硝子の彼に対する想いの大きさを知った。しかし家入硝子は、彼女の覚悟の大きさを知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直な話。虎徹の手によって造られた3分間という縛りを持った遠距離無効化の呪具は、黒怨龍已の術式を全面的に封じるという面を持っているものの、それはまさしく諸刃の剣にも成り得てしまう。呪術師が術式を使えば素より強いのは当然だ。絵物語にある魔法みたいなものだから。

 

 しかし龍已の場合、距離を開けても攻撃が出来るというだけで、遠距離攻撃が専門じゃない。近づいてくるならば、それこそ好都合。彼にとって0距離での戦いこそが、彼を彼たらしめるのだ。つまり、遠距離を警戒するなり無効化するなりして近づけば、それだけ危険度は増すということだ。

 

 甚爾。真希。虎杖。七海。東堂。彼等は接近戦が主な戦闘スタイル。つまり最も死と隣り合わせだ。気を抜けば、恐らく殴打1つで死ぬ。組み敷かれても死ぬ。龍已が狙うならば、まず手の届く範囲に態々来てくれる彼等だろう。そこへ、中距離の攻撃が可能の反承司が躍り出た。誰よりも速く、誰よりも真っ直ぐに。

 

 

 

見せかけ(フェイント)も無しに直線か。それだけ自信があるということだな──────反承司」

 

「……ッ!集中しろ……集中ッ!!演算開始……ッ!」

 

 

 

 反承司零奈の術式は、細かな演算を必要とする。彼女に触れようとする物体の大きさ。質量。体積。速度。そこから発生する空気抵抗や計算上の衝突時の衝撃。その一撃を構成する要素全てを計算して導き出さなければならない。そうしないと、彼女の術式は発動しない。

 

 それを悟った小さな頃、勉強が特に得意じゃなかった反承司は絶望した。なんつーめんどくせぇ術式に恵まれたのだろうかと。知識の中にあるある人物に似た異能に、大変めんどくさいものを感じた。しかし、チャンスとも思った。呪術が絡む世界では、ある程度の強さは必要だ。この術式ならば、必ず役立つと確信したのだ。

 

 そのため、好きでもない勉強をやった。寝る間も惜しんでやった。学生時代を作る大きな要素の青春を全て費やし、鍛練に明け暮れた。友達も作らず、恋人も作らず。来たるべき時に向けて鍛練を重ねた反承司の術式練度は、学生の中でもトップであり、1級呪術師としてもトップレベルのものだ。

 

 それでも、反承司は龍已の殴打1つ反射させるのに命を賭けた。彼の殴打は計算が合わないのだ。いや、殴打に限らず蹴りも体当たりも……デコピンだって計算が合わない。見た目以上の威力を持つ彼の攻撃に、計算が狂うと術式が発動しない。素通りしてしまうのだ。

 

 内に詰め込まれた凄まじい筋肉。人知を超えた腕力を持ちながら、スタイルの良い彼の肉体から、与えられる衝撃を計算するのは……彼女からしてみれば妄想と勘の域。見た目通りの計算をしたら、確実に死ぬ。だから、反承司は全てを賭けた。自身の妄想力に。前世を含めた十数年分の、黒怨龍已の事だけを考えていた脳味噌を使って、彼が繰り出す攻撃の演算を行った。

 

 誰よりも前に出て、正面から向かってくる反承司に、龍已は躊躇いも無く拳を向けた。一切加減無く、顔面に向けた硬い拳。演算が間に合わなければ死ぬ。演算が狂っても死ぬ。失敗=死という理不尽に反承司は直面し……彼女は賭けに勝った。目前で止まる龍已の拳。触れていないと理解するより先に、拳を引いて最短距離を使った蹴りを、首に向けた。

 

 

 

「演算……成功……ッ!」

 

「開けた一月で成長しているということか。なら、これはどうだ?」

 

 

 

 2発。たったとも言える回数だが、あの龍已の攻撃を正面から凌いだ。殴打と蹴り。それらを反射で防いだ反承司は、呼吸を忘れるほど集中していた。少しでも計算が狂えば死んでいたという事実が、後になって襲ってくる。激しく鼓動する心臓が耳元にあるようだ。

 

 彼女は演算が成功したことに感激も喜びもしなかった。ただ、彼の攻撃を凌いだことで()()()()ものの大きさ、強大さに驚いているのだ。そしてそんな彼女へ、龍已は人差し指だけを立てた拳を向けた。服に隠れて見えない彼の腕に、ビキリと青筋が浮かんで筋肉が力む。確実に演算を狂わせる力を与えるつもりなのだ。

 

 見た目以上の力を込めた人差し指だけの貫手。狙うは頭。それもこめかみだった。頭蓋骨は人の骨の中で最も硬いとされているが、龍已の腕力ならば、人差し指だけで頭蓋骨に穴を開けるなど容易い。演算を狂えば、脳味噌を人差し指が貫く。反承司は演算を開始したが、これは“ダメだ”と悟った。

 

 

 

 

 ──────ぱんッ!!

 

 

 

 

 放たれた人差し指の貫手は、穴を開けた。数センチ程度の大きさをした石に。ボッ……と不可解な音が鳴り、空中にある石には穴がぽっかりと開いている。そこに反承司の頭があれば、確実に風穴があっただろう。

 

 龍已は重力によって地面に落ち、()()()()()()石をチラリと見て、なるほどと呟いた。反承司はその場から消えて別の場所へ移動している。少し離れた、東堂の傍へ。移動していた反承司は特に驚いた様子を見せなかった。少し、助かったと言いたげな溜め息を吐いていただけだった。

 

 

 

「乱戦ではこれ以上無いほど面倒な術式だな、東堂?」

 

「Mr.黒怨が他とばかり遊んでいるから、寂しくてな。つい手が出てしまった」

 

 

 

 東堂葵の術式は『不義遊戯(ブギウギ)』という。手を叩くことで、術式範囲内にある“一定以上の呪力を持ったモノ”の位置を入れ替えることができる。術式対象は生物であろうと無生物であろうと問わない。呪力さえ持っていれば、入れ替え可能である。

 

 拾った石に呪力を込め、手を叩いて範囲内に居る反承司と位置を入れ替えた。あの貫手はマズいと直感した東堂の英断だった。行わなければ、反承司は死んでいたかも知れない。龍已は殺し損ねた事に何とも思わず、再び拳を構えた。

 

 

 

 ──────……恐らく一定時間という“縛り”で遠距離攻撃を無効化する虎徹の呪具が発動せず、東堂の『不義遊戯(ブギウギ)』が発動したところを見ると、使用者の認識によって攻撃か否かを決めているのか、俺の攻撃のみを無効化しているかのどちらかだな。

 

 

 

「反承司は少し休め。行くぞ超親友(ブラザー)ッ!」

 

「ブラザーじゃねーけど……おうッ!」

 

「僕も行くよッ!」

 

 

 

「大丈夫ですか、反承司さん」

 

「……ふーっ……大丈夫ですよ」

 

「衝撃は得られましたか?」

 

「えぇ。ただ……凄まじい衝撃ですよ。殴打と蹴り1発ずつなのに、解放したらMAX速度で衝突した戦闘機の衝撃よりも大きいです」

 

「それが拳から繰り出されるなんて考えたくありませんね」

 

 

 

 近接組の東堂を始めとした虎杖、乙骨が龍已の前に躍り出た。虎徹作の呪具は仲間の術式が敵ではないと思い込むことにより無効化することないようだ。それにより、『不義遊戯(ブギウギ)』が発動して反承司と呪力が籠もった石が場所を入れ替えた。しかし龍已の遠距離からの攻撃は今だ無効化中だ。

 

 広大な術式範囲を持つ龍已の術式は、本人の呪力出力と相まって凶悪なそれ。無効化しておかないと初手で五条以外の者達が全滅など容易く、想像に難くない。彼はまだ制限時間があることを察しているだけで、細かな時間は知らない。

 

 かなりの無理ゲーに思える、3分間という制限時間内に黒怨龍已を討ち破らねばならない。自体は刻一刻と進んでいる。焦りは出さず、あくまでいつも通りに、彼等は龍已と対峙する。

 

 負でマイナスのエネルギーである呪力は肉体を治すことができない。その代わり、纏うことで肉体を強化することができる。呪術師には絶対必須なその技術には、奥が深いものがある。通常の呪術師よりも肉体的に強い虎杖は、その素の強さを逆手にとって体に纏わせる呪力は少なくて済む。

 

 呪力の流れから、次の攻撃の予測が立てづらいと、学生呪術師として頭抜けて優秀な東堂にさえ言わせた虎杖の戦闘スタイル。それとは対照的に、五条悟よりも多いという膨大な呪力で肉体を覆う乙骨は、呪力が立ち上って見えて逆に判らない。それに加えて相手からの攻撃を最小限に、自身の攻撃を最大限に強化する。

 

 虎杖と乙骨が先に向かい、東堂が後から付いていくという陣形で、拳を構える龍已を先方2人が左右から挟み撃ちにした。虎杖はメインの拳で、乙骨は刀で。顔を狙うと見せかけてフェイクを混ぜた脇腹を狙う拳と、袈裟斬りのため振り下ろされる真剣の刀。それに対して龍已は、掌で双方を受け止めた。

 

 拳だけなら受け止めるのも分かるが、素手で刀を受け止めるのは違和感がある。ましてや乙骨の膨大な呪力で強化された刀身は、普通ならば手を腕ごと真っ二つに両断していることだろう。しかしそれは()()()()()()という話だ。纏わせる呪力の話をしたが、そこに龍已の事も外せない。

 

 五条悟よりも多い呪力量の乙骨。だがそれより上に怨念の怪物が居る。1000年以上の歳月を掛けて継承してきた総呪力量は、乙骨の呪力量を容易く凌駕した。そこに加え、人知を超えた操作技術により、感じて解るそれは弱々しい4級から3級にかけての呪力量が乏しい呪術師が纏わせる呪力。一方その実態は、薄皮1枚の弱々しい呪力を被せてカモフラージュした、莫大な薄い呪力である。

 

 視た感じと感知からではまず勘違いを起こす纏った呪力であるが、ただでさえ超人を凌駕する躯体を持つ龍已を限界以上に強化している。虎杖と同じように弱々しすぎて攻撃の予想ができないことに加えて、乙骨のように受けた攻撃を最小限に、与える攻撃を最大限にしている。

 

 2人の特徴を合わせ込んだような呪力の使い方をしているのが、龍已であった。その際に得てしまった特徴は、膨大な呪力を纏わせた名剣や名刀ですら、正面からでは彼の肌を傷つける事ができないという不可思議な現象だった。故に、乙骨の刀は、彼の肌を薄皮1枚も裂くことができなかった。

 

 

 

「──────『逕庭拳(けいていけん)』ッ!」

 

「それは知っている。普通は遅れることがない呪力を、今では意図的に出せるようになったのか」

 

「ぅおぉッ!?」

 

 

 

 虎杖が放った逕庭拳とは、呪力の扱いが初心者だった頃に、呪力を纏って攻撃したところ呪力が拳のインパクトの瞬間よりも遅れてやってきた。狙ってやるのは逆に難しいその技は、初期の虎杖の武器となった。時間と特級呪霊との戦闘で呪力の使い方を覚え、東堂の教えにより一皮剥けた虎杖は、いつの間にか改善されていた遅れてやってくる呪力。

 

 龍已の掌に打ち込んだ拳は、その逕庭拳だった。1ヶ月の特訓の際に自由に扱えるようにしたその技術は、しかしながら既知である龍已には通じなかった。薄く纏う莫大な呪力にモノを言わせ、正面から抑え込む。2度目の打撃が来ても、彼の手は微動だにすることがなかった。

 

 止めた拳を掴む。その瞬間に虎杖はゾッとした。死に直結する攻撃を向けられた訳でもないのに、背筋を駆け登ってくる圧倒的嫌な予感。反射的に手を引っ込めようとした時には遅く、何に掴まれているのか解らないと錯覚してしまう程の力で、虎杖の拳は龍已の手に包まれていた。一切抜け出せず、引いても動かない。まるでローマのサンタ・マリア・イン・コスメディン教会にある真実の口に手を入れ、伝説の通り手が抜けなくなってしまったかのようだ。

 

 掴まれた手を振り解こうにも解けない手を引かれ、虎杖の体は宙を舞った。軽く振ったように見えて、80㎏以上ある虎杖が弾き飛ばされていった。その飛ばされていった先には乙骨が居た。仲間を傷つけるわけにもいかず、刀で斬り裂かないように気をつけながら抱いて受け止めた。

 

 膨大な呪力で身を固めている乙骨ならば、虎杖を受け止めることは造作もない。しかし明らかな隙には繋がる。それを逃がす彼ではなく、虎杖と乙骨が重なった時には駆け出して飛び後ろ回し蹴りを放っていた。

 

 薄く見えて莫大な呪力を身に纏う龍已の蹴りは、素の肉体が強いとはいえ虎杖では受け止められない。しかし今は体勢を崩しながら乙骨に受け止められているので、今すぐに回避行動へ出ることはほぼ不可能だった。差し迫る蹴りに、マズいと悟る虎杖。もう回避は間に合わないと理解する乙骨。

 

 早くも脱落するのかと思われたその時、乙骨の背後から大きな手が伸びてきた。人間の手ではないそれは、まるで2人を庇うように差し出される。龍已の蹴りが真面に入り、手が腕ごと弾き飛ばされる。紐解いて解呪した筈の特級過呪怨霊『祈本里香』が、腕だけを部分的に顕現したのだ。

 

 

 

「ありがとう『リカ』」

 

「あっ……ぶねぇ……あの蹴りマジでヤバい。多分受けてたら死んでた」

 

「うん。僕でもそう思うよ。だから虎杖君も気をつけようね。黒怨先生の攻撃は基本全て即死級だよ」

 

 

 

「『祈本里香』は解呪されたはず。ならばあれは……乙骨が造り出した式神に似たものか?それにしては……」

 

 

 

 リカの手を弾き飛ばしたはいいが、バックステップで距離を取られたので龍已はその場で拳を構えた。表情には一切出ず、乙骨の背後から現れたリカについて考えた。呪われていたのではなく、呪っていたという関係は解呪により解放されている。つまり特級過呪怨霊『祈本里香』はもう居ない。

 

 だが確かに現れたのだ。気配は少し違うが、殆ど同じものだろう。呪霊ではないが、式神に近しいものだ。詳しいことは判明していないので確定的なことは言えないが、式神であろうと元はあの特級過呪怨霊である。片腕だけの顕現で計り知れない呪いを感じた。

 

 完全顕現をしないのは、恐らく龍已の術式反転を警戒しているのだろう。彼に対する遠距離からの攻撃の完全無効化。リカが乙骨の式神である以上、攻撃させればそれは遠距離の範囲内に入る。そうなれば、何をしても彼の術式反転の領域内に入った途端に消滅してしまう。

 

 危険度で言えば、五条悟に次ぐ存在。ある程度の警戒は必要になってくる。特に、乙骨の術式はかなり汎用性が高く純粋に強力だ。早めに落とす事が望ましい。が、そう簡単にやらせるほど、龍已が相手をする呪術師達は甘くはない。

 

 背後に発現した強い気配。龍已は考えるよりも先に振り向き様に拳を振った。繰り出された裏拳は、厚さ数十センチのコンクリート壁を粉々に粉砕できるもの。人の顔に叩き込まれれば残るのは力を無くした体だけだろう。だがそれは、容易に阻まれる。目に見えない無限によって。

 

 

 

「おーコワ。届かないって解ってても身構えちゃうよね。センパイの拳」

 

「面倒なモノだな、無下限呪術は」

 

「よく言われるー。それにしてもさ、僕の生徒達とばかり遊んでないで僕とも戦おうよ」

 

「良いのか?お前が暴れれば巻き添えを生むぞ」

 

「あはは。大丈夫だよ。だって彼等は優秀だもん」

 

 

 

 無限を纏う拳が向けられる。手を這わせ、逸らせようとしても無限の壁によって触れることができない。結果逸らすことはできず、顔面を狙ったそれを首を傾げる形で避けた。乙骨と同じく膨大な呪力で覆われた拳は触れることこそなかったが、肌の傍を通り過ぎるときの余波による鋭い風は、殴打の強さを示した。

 

 攻撃はできるのに、相手の攻撃は一切受けず無限の遅延を与える五条の無下限呪術。オートで行っているので不意を突く事もできず、反転術式を常に掛けているので無下限の壁が途切れる事は無い。普通の方法ではまず五条に触れることすらできない。

 

 まさに最強の呪術師に相応しい術式だ。彼の眼も、呪力を原子レベルで視認し、緻密な制御を可能にさせる他、相手の術式を完全に看破することが可能という。その代わりに、無下限呪術には六眼が必須であるが、揃えば凄まじいまでの力を手に入れる。そこに天賦の才を噛み合わせたのが五条悟という男だ。

 

 しかし忘れてはいけない。遙か昔から生きていた偽夏油の中身の呪詛師ですら、あの五条悟を正面から殺しうる力を持った存在として、黒怨龍已の名を上げていた。つまり、無下限呪術の無限が阻んでこようと、突破するだけの手段と実力は兼ね備えているのだ。

 

 

 

「すぅ……ふーッ……」

 

「……あの時の呪霊がやってた『領域展延』かな。自力で思いついたの?」

 

「1ヶ月以上も時間があった。ならばお前の攻略法の1つや2つ、思いつくだろう」

 

「へぇ。けどいいの?それ使ってると術式使えないんでしょ」

 

「使っても今のお前達には虎徹の呪具がある。故に問題ない」

 

 

 

 体の周りを覆う呪いは結界のような役割をしている。五条の無限を通り抜けるには、より濃い結界で中和する必要がある。その1つが領域展開だ。しかしこれには流石の龍已も掌印と呪力の集中が要る。周りを囲まれている彼は、その領域展開を警戒されている事など解りきっていた。

 

 結界を水のようにして体を覆うイメージで展開された『領域展延』は、この1ヶ月以上の時間があった中で自力で思いついたもの。渋谷事変の際に五条が相手をした特級呪霊達も、偽夏油の知恵によって会得していた。掌印を組まずに発動できる展延は、五条の無限の壁を中和して手を届かせる。

 

 ただし、展延の発動中は術式の使用ができなくなる。虎徹の呪具により遠距離攻撃の無効化が継続中の今は、術式を使う必要など無い。なので使っても問題ないと言う。五条は1人で戦うと戦い方も難しいねと皮肉を込めて言い、龍已は何も言わなかった。

 

 

 

「じゃあ、数の利を使わせてもらうよ──────七海ッ!」

 

 

 

「──────十劃呪法(とおかくじゅほう)瓦落瓦落(がらがら)』ッ!!」

 

 

 

「どうやって地面を7対3の割合で……なるほど、虎杖と乙骨の距離か」

 

 

 

 囲まれている龍已の頭上から、七海がやってきた。ネクタイを拳に巻きつけ、上から全力で振るった。時間外労働という時間による縛りは、既に17時を回った今では外れていて、本当の全力を出すことができる。1級呪術師の中でもトップクラスの攻撃力を持つと言われる七海の一撃は、無人島に震度2程度の揺れを起こした。

 

 真上からの攻撃を後退して避けた。空振りになった拳は地面に叩き込まれ、亀裂を作りながら呪力を周囲に奔らせる。7対3の割合の点を強制的に弱点とする彼の術式では、地面を線分することはできないと思われたが、龍已は今囲まれていて、左右に虎杖と乙骨が居た。虎杖が遠く、乙骨が近い場所に立っている。距離からして7対3だ。

 

 この感覚で、しかもいつの間にか周囲の地面には薄く円が描かれている。戦っている最中、あまり攻撃が来ないと思えばコレを用意していたのかと納得する。知らない間に十劃呪法が発動する舞台を作っていたらしい。しかし、龍已はこの工程に引っ掛かった。何故態々地面にそんな小細工を施すのかと。直接狙わない理由は何なのかと。

 

 七海建人。1級呪術師として活動して長い彼の術式は十劃呪法であり、線分した対象の7対3の割合で出した点を強制的に弱点とする術式を持ち、拡張術式をも持つ。『瓦落瓦落(がらがら)』がその拡張術式にあたり、効果は術式で破壊した対象に呪力を込めるというもの。つまり、拳の威力で砕け、宙に浮かび上がった小石1つにとっても、彼の呪力が込められている。そして、この拡張術式に最も相性が良いのは……。

 

 

 

「──────(あおい)ッ!」

 

 

 

 ──────『不義遊戯(ブギウギ)』ッ!!

 

 

 

 複数回拍手が鳴り響いた。東堂の術式を発動させるための拍手。一定の呪力を内包しているもの同士の位置を入れ替える術式。七海の拡張術式で破壊され、呪力を込められた小石や岩は数百以上になる。その中から幾つかだけが何かと入れ替わる。結果、龍已の周囲には攻撃準備を整えた虎杖と乙骨が位置を変えながら連続して現れる。

 

 軽く避けたのが仇となった。破壊された地面の破片が四方八方に存在し、完全ランダムに入れ替わっている。龍已の意識が切り替わると同時に、乙骨の刀と虎杖の拳が向けられた。呪力を纏っているが、五条の無限を破るために展延を発動中の龍已にとって、呪力による防御力は通常と比べれば格段に下がっている状態と言える。

 

 展延を解いて呪力の攻防に回すには少し時間が足りない。なので優先順位を瞬時につけて対応することにした。乙骨と虎杖に混ざり、五条も拳を向けている。術式の『赫』と『蒼』は威力が高すぎて巻き込んでしまうからだろう。七海が最も近くに居るが、『瓦落瓦落(がらがら)』の発動後で攻撃に転ずるまでは遅い。つまり、対処の優先順位は乙骨、五条、虎杖、七海の順になる。

 

 乙骨の刀をいなし、虎杖の蹴りを避け、五条の拳を受け止めようとした。その時に東堂の拍手が鳴る。目の前の五条の位置は変わらないだろう。無限の壁が解除されていない。ならば1番近い背後の石と変わると直感した。拳を受け止めながら、背後へ蹴りを入れた。が、蹴りで砕かれたのは入れ替えられた石だった。石と石を入れ替えた。フェイントに引っ掛かったと思うと同時に、受け入れる覚悟を決めた。

 

『石と石を入れ替える』ことが合図だったのか、五条が一瞬だけ無限の壁を解除した。術式効果を受ける状態になると、拍手が鳴って入れ替えが起きる。

 

 

 

「手を叩くことが発動条件だからと言って、必ず発動する訳じゃない。そして……入れ替わるのが必ず人とも限らないッ!こういった実力者の多い乱戦では特に引っ掛かりやすい。そうだろう?Mr.黒怨」

 

「……はは。そうだな。これは甘んじて受けよう。俺の認識の甘さによる結果だ」

 

 

 

「ふゥ……っ!!──────『月輪(がちりん)』ッ!!」

 

 

 

「……ッ……ふ……ッ!」

 

 

 

 五条と位置を入れ替えた反承司が、強大な呪力を纏った掌底を龍已の脇腹に入れた。料理の際に使う猫の手の形で掌底を打ち込み、捻り込んで衝撃を内部へ浸透させる。腰も入れた完璧の掌底は、その力強さから足元の地面が更に砕けた。そして与えられる衝撃は、反承司が龍已に殴られた時の衝撃を全てストックして上乗せしたもの。少なくとも、龍已の呪力を込めた殴打2発分が1発に集約されている。

 

 通常の呪力による肉体強化ではなく、五条の無限を破るための展延。防御力はかなり落ちている今の彼に、反承司から与えられる一撃は重かった。掌底を入れた手から伝わる生々しい感触に泣きそうになりながら、反承司は龍已の体を宙に吹き飛ばした。

 

 かなりのダメージは入っている筈。龍已の拳ならば、龍已の体に確実なダメージを入れられる。自身の与えた拳の威力がそのまま返ってきたようなもの。宙を舞い、吹き飛ばされた瞬間の龍已は東堂の拍手により位置が替えられる。替えられたのは七海の拡張術式による呪力を込められた石。その場所は、虎杖と乙骨の目の前だった。

 

 

 

「──────しィッ!!」

 

「──────黒閃ッ!!」

 

 

 

 黒き閃光を与える女神は、相手を選ばない。独自の技術で黒閃を狙って出せるようになった虎杖の拳と、凄まじい集中力と才能で黒閃を決めた乙骨。2人の拳が位置を入れ替えられた龍已の腹に同時に叩き込まれた。2.5乗の威力になるという黒閃が2人分であり、彼等の一撃はトップクラスの強さを誇る。

 

 真面に攻撃が入り、再び龍已の体が宙を舞った。弾き飛ばされていき、危なげに脚から着地した。獣道を作り、数十メートル滑ってから止まる。俯いていた顔を上げると、口の端を少し持ち上げて笑みを浮かべている。彼は背筋を真っ直ぐと伸ばして体勢を立て直す。ダメージを受けたようには感じられなかった。

 

 

 

「……先輩。黒怨先生を黒閃で殴った時の感触どうだった?」

 

「多分、虎杖君と同じ意見だと思うよ。()()()()()()()()()()。ダメージが入ったとは思えないかな。というより、もう反転術式で治ってるだろうし」

 

「……やっぱり龍已先生には軽傷かぁ。打撲にすらなってなさそう」

 

「大丈夫。例え少しだろうとダメージが通ったという事に変わりはないから。焦らずやっていこう」

 

 

 

 連携は上手くいった。完璧に近い流れで事が運び、龍已に対して強力な攻撃を真面に3度も入れた。しかし、彼等は殴った感触から、龍已の肉体の異常なタフネスを知った。山でも殴っているかのような重厚感に、得体の知れない金属を相手にしているような硬さ。生身の人間が持って良い防御力ではなかった。

 

 だというのに、彼の今の防御力は格段に落ちている状態であるという。加えるならば治癒の力すら持っている。呪力を重ね合わせることによりプラスのエネルギーを生み出し、反転術式を自身の体に掛ける。それだけで与えられたダメージは0へと戻り、完治する。多くの視線の中、龍已は殴られた箇所に手を這わせ、良い一撃達だったと褒めた。効いた様子が見られず、皮肉にすら聞こえてくる。

 

 

 

「連携も仕上げてきているんだな。だがここまでだろう。俺の予測でしかないが──────遠距離無効時間の3分が今、経過した」

 

 

 

 脚に巻かれたレッグホルスターから『黒龍』を引き抜いて手に持つ龍已に、誰かがごくりと生唾を飲んだ。3分は龍已の予測した時間に過ぎない。もしかしたらまだ遠距離無効化の範囲内かも知れない。しかし残念なことに、効果時間は予測通りの3分であり、たった今、遠距離攻撃が可能となってしまった。

 

 近接だけなら数の利を使ってどうにかなっていたというのに、手数という面では最早呪術界1と言っても過言ではない龍已の術式が解禁された。銃口を向け、身の毛もよだつ程の莫大な呪力を込め始める。

 

 

 

 

 

 戦いは激化し、熾烈を極めるだろう。黒怨龍已の術式が解禁された途端、まだ戦闘に参加していなかった伏黒恵と釘崎野薔薇が彼の前に躍り出た。

 

 

 

 

 

 






東堂葵

乱戦に於いて無類の面倒臭さを発揮する存在。術式はある一定以上の呪力を持つもの同士を生物無生物問わずに入れ替えるというもの。入れ替え後の差異が大きいとそれだけでも混乱する。そして本人も1級呪術師としての強さを持ち、尚且つ頭の回転が速い。

龍已の戦いに於いて居ていて心強い存在。そして逆に、龍已からしてみると最も厄介な相手。




反承司零奈

気合いと妄想力で龍已の二撃を反射して威力の抽出を行った。彼女曰く、確保した時の衝撃はMAX速度で突っ込んできた戦闘機の衝撃並だそう。普通に食らえばまず間違いなく人は死ぬし、呪力で肉体を強化していても関係無しに死んでいただろう威力だった。

反射し続けて溜めていた衝撃を全て使い、龍已に掌底を入れたが恐ろしいほど硬く重い感触に、1つの巨大な山を想像した。人の体の感触ではなかったと感じた。それでもまだ最硬状態でないのだから感嘆とするしかなかった。




七海建人

拡張術式と本来の術式の合わせ技により地面を大きく砕き、東堂に繋げた。小石1つにとっても呪力が込められており、入れ替えの対象とさせる。それにより入れ替えを何度も起こさせて龍已に近づきつつ攻撃を食らうこと無く攻撃を入れられる状態を作り出した。

大人として、龍已と戦うことは決心をつけているが納得はしていない。結局、龍已が離叛した理由というのが呪術界のクソさ加減にあると分かると、存在していて良い界隈なのかも問いたくなる。




虎杖悠仁

凄まじい集中力と巧みな呪力操作により、任意のタイミングで黒閃を放てるようになった。黒閃を決めたことにより120%の実力を発揮中。龍已を殴った時の感触は、反承司同様山のようだと感じた。人の肌を張り付けた巨大な山を想像するくらいなのに、本気で硬めた呪力だったならばどうなっていたのかと怖いもの見たさがある。

実は精神の内側で両面宿儺が替われと言っていてうるさいが無視している。表に出したら仲間にも手を出しそうなので当然却下。




乙骨憂太

五条悟をも上回る呪力総量を持つ少年。夏油が起こした百鬼夜行の後、僅か3ヶ月で特級呪術師に返り咲いた五条に次ぐ存在。虎杖と並ぶ主人公的存在。

特級過呪怨霊『祈本里香』を解呪したが、現在『リカ』という存在と共に戦う。龍已に次ぐ圧倒的呪力総量を使って攻撃も防御も熟すが、相手が相手だけに一撃も貰わないように細心の注意を払っている。




黒怨龍已

底無しの呪いを持つ乙骨を超える、永遠に尽きない怨念の怪物。その集合体から完成した傑物。そして呪術界が産み出してしまった負の象徴。

独力で領域展延に辿り着き、五条の無限を削り取る。呪力総量の差により、拮抗すること無くスプーンで抉るように無限の壁を破壊し直接手を下すことが可能となる。代わりに術式の使用はできなくなり、攻撃力と防御力が格段に下がる。その状態で乙骨と虎杖の黒閃を食らったが、ダメージらしいダメージは殆ど通っておらず、反転術式によりすぐさま完治している。

相手から受ける、又は見聞きするなどして経験したものを『もう慣れた』と称して完全な耐性を獲得する。同じ手が2度通じることは二度と無い。そしてそれは、戦闘が長期戦になればなるほど『慣れ』るまでの時間が短縮されていく。彼のボルテージが上昇していくためと考えられる。

戦う時間が長くなれば長くなるほど不利になるため、彼と戦い勝利するためには、彼の予想もつかない初見の一撃で完全に頭を呪いによって破壊し完全完璧に殺しきること。※ただし、細かな条件は他にもあることとする。




天切虎徹

作戦を考えて実行してもらっているが、自身の呪具があっても龍已を殺しきることはほぼ不可能に近いことを感じ取っている。龍已の持つ呪具。力。能力。思考パターンを全て知る彼だからこそ、これだけのメンバーが居て不可能()()()と思っている。

そもそもな話、親友である龍已を殺したいと思っている訳がない。殺したくないし、死んで欲しくない。でもやらないといけない。この中で1番精神崩壊を起こしそうなのは、実のところ天切虎徹がトップを走っている。


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