呪術廻戦───黒い死神───   作:キャラメル太郎

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最高評価をしてくださった、ハル吉★ マサカの盾 さん。

高評価をしてくださった、鮪漁港 ナイルナハト さんの皆さん、ありがとうございます。




第六十一話  調伏の儀

 

 

 

 

 伏黒恵にとって、黒怨龍已は歳の離れた兄のような人だった。

 

 

 

 

 昔の女の子供なのかどうか恵は知らないが、伏黒家に迎えた血の繋がらない姉の津美紀を持てど兄は居ない恵は、兄が居るとしたこんな人なのだろうかと考えたことは何度もあった。頼れる、強い兄。数少ない手放しで尊敬できる人物の1人だった。

 

 子供の頃から何かと気に掛けてもらい、伏黒家にやって来て勉強を見てもらった。夕飯を食べていってもらうこともあり、晩ご飯を作って欲しいと強請ると、溜め息を吐きながらも必ず作ってくれるのが嬉しくて、ガラにも無く何度も甘えた。

 

 穏やかで静かな人だが、喋れない訳じゃない。話し掛ければいくらでも返してくれるし、彼との言葉のキャッチボールは心安らぐのだ。それは義理の姉の津美紀も思っているのか、昔から懐いていた。年上のお兄さんに憧れるという気持ちも分かるのである意味当然かと納得していた。

 

 小さい頃には、憧れと好意を一緒にして、津美紀の初恋が龍已であることを実のところ恵は知っている。というより津美紀を除く伏黒家は全員知っていた。知ったら恥ずかしすぎる。だがそれすらも納得するものを、彼は持っていた。勘違いする人も居る鉄仮面のような無表情だが、内面を知ってしまえば彼の傍が心地良い。

 

 

 

 故に、生死を分けるこの戦いで正面から向かい合うのは……恵にとっても心底不快で不愉快で、それ以上に悲しかった。

 

 

 

「伏黒」

 

「……なんだよ」

 

「後悔すんじゃないわよ」

 

「そんなもん、俺だって分かってんだよ」

 

「あっそ。ならいいわ。じゃあ、いくわよッ!」

 

 

 

 共に前に出てきて、隣に並ぶ釘崎野薔薇。東京高専で少ない女子生徒の1人。気が強く、負けん気も強い彼女は田舎が嫌で都会に住みたかったからという理由で東京に来たという経歴を持つ。術式は芻霊呪法と言い、大まかに言えば五寸釘を人型を模した人形に打ち込み、相手に直接ダメージを与えるというもの。その際には相手の体の一部を必要とする。

 

 金鎚を取り出して、懐から藁人形を取り出す。すると龍已の近くに居た虎杖が走って彼女の方へ向かった。背を向けて距離を取る虎杖に、龍已は訝しんだ。何をするつもりなのかは知らないが、明らかな隙。狙わない理由が無い。手に持つ左の『黒龍』を持ち上げて離れていく背中に向ける。

 

 引き金に指を掛けて引くとほぼ同時、銃口の目前に何かが現れた。無限を纏い直している五条が瞬間移動して龍已の前に現れたのだ。放たれた呪力弾が無限に阻まれて止まる。突如現れたことに驚きすらせず、バックステップで距離を取りながら、右手の『黒龍』で呪力弾を30発程撃ち出した。

 

 術式により曲線を描いて虎杖を狙う。五条を迂回させて飛んでいく呪力弾だが、それらは何かに引っ張られるように操作による軌道を逸れて上の方へ飛んで行ってしまった。龍已と五条の頭上に展開された術式順転の『蒼』。収束の力を持つ力が作用して呪力弾を引きつけているのだ。

 

 

 

「悠仁はやらせないよ」

 

「……展延を発動させるか否かの選択を取らせるために、お前が接近してくるのか」

 

「まあね!けど、あくまで()()()()()()。悠仁は足速いからねー。もう野薔薇のところまで着いちゃったよ」

 

「……?……っ!そういうことか……ッ!」

 

 

 

 釘崎の元へ走って寄る虎杖に、龍已が気がついた。彼の手にはあるものが握られている。特に意味は無い物に思える物でも、釘崎にとっては十分すぎる代物。藁人形を取り出した彼女に虎杖が差し出したのは、龍已の黒い髪の毛だった。黒閃の拳を打ち込む時、もう一方の手で1本だけ掠め取っていた。

 

 受け取った髪を藁人形に埋め込み、地面に落とした。左手にウエストポーチから取り出した呪力を纏う五寸釘を浮かび上がらせ、右手に持つ金鎚を構えていた。そしてその金鎚は、彼女が今まで使っていたものではない。天切虎徹製の、芻霊呪法をピンポイントで強化する特殊な呪具だった。

 

 直接打撃を打ち込んでもダメージが一切出ないことを縛りに、直接打ち込まない攻撃の威力を底上げする効果を持つ呪具である金鎚は、まさに釘崎のために造られた呪具であり、これを使った場合の釘崎の術式は……。

 

 

 

「芻霊呪法──────『共鳴(ともな)り』ッ!!」

 

 

 

「ぐッ……ッ!?」

 

 

 

 あの黒怨龍已に対する有効な手段と成り得た。打ち込まれた五寸釘により、術式が発動して龍已にダメージが遠隔で入った。そう、遠隔である。遠距離攻撃の一切の無効化を図ることができる龍已には、効かないはずの攻撃なのだ。術式反転を掛けていなかったのかと思われたが、今度はしっかりと発動している状態で2度目の釘が藁人形に打ち込まれる。

 

 途端、龍已の全身に奔る痛み。術式反転『虚儚斯譃淵(きょぼうかくえん)』は、龍已に近接だけを有効とさせる強力な技だった。しかしこれはあくまで彼を狙う遠距離からの攻撃。釘崎の芻霊呪法『共鳴り』は相手の体の一部を媒介に、本体へ()()ダメージを与える術式。つまり、遠距離攻撃であって遠距離攻撃ではないので、術式反転をすり抜けた。

 

 そして、虎徹の造った金鎚の効果により、尋常ではないダメージが龍已の体に打ち込まれた。常人ならば泡を吹いて失神していても何らおかしくはない程のダメージだった。身構えていても、肉体が反射的に硬直する。そこへ、五条の小規模に展開された『蒼』により加速した拳が迫っていた。

 

 顔を逸らし、顔面を狙った拳を避ける。『虚儚斯譃淵』を解いて術式の使用を捨て、『領域展延』を発動した。近接戦を仕掛けてくる五条は複数箇所に小規模の『蒼』を展開することで自身の拳を収束による引力で加速させる。非常に素早い行動が可能であり、それはまるで瞬間移動にも見える。

 

 だが近接戦では龍已に分がある。未だ嘗て、手合わせの数を合わせても龍已の膝を地面に付かせたことがない五条。自身の近接格闘術は並大抵の術師では対応できない練度なのは自覚しているが、それを仕込んだのは先輩であった龍已と言ってもいい。ついでに甚爾。

 

 顔を狙いながら足元を狙い長い脚を使って引っ掛けようとするが、察せられているように避けられる。足を踏んでやろうとしても足を引かれて避けられ、1歩詰められるので1歩下がる。それを殴り合いをしながら行う。

 

『領域展延』で攻撃が通ってしまうので無限を一瞬解く。何の合図も無しに東堂が手を叩いて術式を発動し『蒼』と五条の位置を入れ替えた。そこに『黒龍』を加えることでフリーにした龍已の右手が拳を作って向けられた。驚異的な反応速度だった。だが寸前で躱すことができた。頬を擦れるかどうかの距離だが、目的は殴打ではなかった。拳を開いて五条の左肩を掴む。

 

 体を捻り込んで背負い投げの姿勢に入った瞬間、五条は投げられて地面に叩き付けられるかに思われたが、龍已の体が硬直した。離れたところで釘崎が3本目の五寸釘を藁人形に打ち込んだのだ。痛みにより反射的な硬直。本当に一瞬だったが、その瞬間に東堂が呪力の纏った小石と位置を入れ替えた。

 

 離れた五条とスイッチするように接近してくる甚爾と真希。続いてやって来る乙骨と虎杖。いつでも位置を入れ替えられるように構える東堂と、いつでも接近できるようにタイミングを見計らう反承司と七海。囲まれて近接中距離遠距離から狙われる1人の龍已。入り乱れる戦場を眺めながら、恵が両腕を使って独特の構えを示した。

 

 

 

「……龍已さん。まさか()()()をあなたに使うことになるとは思いませんでしたよ。もう使おうとしないって決めたんですけど、龍已さんになら使っても良いと思い、使わせてもらいます」

 

 

 

 ──────布瑠部由良由良(ふるべゆらゆら)……。

 

 

 

 嘗ての江戸時代頃の話。当時の五条家当主と禪院家の当主が御前試合を行ったらしい。五条家の当主は今の五条悟と同じ六眼と無下限呪術の抱き合わせ。禪院家の当主は恵と同じ十種影法術。当時の彼等は相打ちのような形でその試合で命を落としたとされている。その理由が恐らく、恵が行おうとしている儀式によるものだろうと当たりをつけていた。

 

 恵が持つ禪院家の相伝の術式である十種影法術は、最初に関する『玉犬』という犬の式神を与えられ、そこから他の式神を倒して調伏することにより式神として使えるようにしていくというもの。つまり最初から全て使える訳ではないのだ。そして、この調伏の儀式は複数人で行うことができる。ただしその時は、例え勝っても調伏にはならない。あくまで1人で調伏しなければならないのだ。

 

 それを今回は敢えて恵と龍已で行う形にした。乱戦で恵の方に意識が向いていない今がチャンスであり、詠唱を行えるタイミングだった。無下限と六眼の抱き合わせと十種影法術師の2人でも、恐らく戦い敗れてしまっただろう……十種影法術最強の式神。未だ誰もこの式神を調伏出来た者は居ないという存在である。

 

 

 

「──────『八握剣異戒神将魔虚羅(やつかのつるぎいかいしんしょうまこら)』」

 

 

 

「これが魔虚羅か……僕も見るのは初めてだけど、皆下がって!危ないよッ!」

 

「気配が……っ!」

 

「なんか言葉にすんの難しいけど……アイツ強ェ」

 

 

 

「……俺と恵で調伏の儀式を成立させたのか。やってくれるではないか。調伏出来た者が居ない最強の式神の召喚……」

 

 

 

 異様な姿だった。筋肉質な人型の体に、目に当たる部分には二対の翼のようなものが生えていて、背中には法人が浮かんで付随している。右手には剣が備わっていた。体長は3メートル以上あるだろうか。呼び出された瞬間『玉犬』と同じ犬の式神が道を作るように出現し、遠吠えをしていた。

 

 巻き込まれることを警戒して五条の言葉に従って龍已から距離を取るように離れる者達。儀式の相手であり、龍已の方が近いからということでゆっくりと歩み寄ってくる魔虚羅に、正面から向かい合う龍已。感じ取る気配はとても強い。威圧感がある。対峙するだけで相当な強さがあることを理解させられる。

 

 右手を振り上げ、備えられている剣を振り下ろしてきた。龍已は『領域展延』を解いて呪力を全身に回した。薄く分厚い呪力の障壁を纏い、両手に持つ『黒龍』で剣を受け止めた。甲高い金属音が響き渡る。真上からの剣の振り下ろしを受けても傷一つ付かない『黒龍』だが、龍已は魔虚羅の一撃に反転術式を使う際に生成されるプラスのエネルギーが纏われていることに気がついた。

 

 足元の地面が一撃の重さで砕けるが、龍已はしっかりと受け止めているのでダメージは無い。もし仮に、龍已の正体が呪霊であったならば、受け止めようとした次の瞬間には跡形も無く消し飛んでいた。呪霊に特攻のある反転術式によるプラスのエネルギーは、歴とした人間である龍已には効かない。

 

 が、効かないことを解ると魔虚羅は手法を変えた。受け止められた右手の剣をそのままに、膝蹴りを入れようと脚を伸ばしてきたのだ。巨体から繰り出される膝蹴りは車が正面から迫って来ているようにも見える迫力があった。両手の『黒龍』で剣を受け止めているので無防備な腹部を守るために、脚を振り上げて膝蹴りに膝蹴りで対抗した。

 

 しかし、龍已の膝蹴りの威力よりも魔虚羅の一撃の方が重かった。ぶつかり合ったところから衝撃波が発生して周りの地面を捲り上げるのだが、少しの拮抗後に龍已が後方へ弾き飛ばされていった。剣にはプラスのエネルギーが付与されていた。だが今回の膝蹴りには呪力によるマイナスのエネルギーが纏われていたのだ。肉体の超強化による一撃が、全力ではないとはいえ、呪力で強化された龍已の一撃を上回った。

 

 宙をかっ飛ばされていく龍已は両手の『黒龍』をレッグホルスターに納め、無理矢理空中で体勢を立て直すと腕を地面に叩き込んだ。肘程まで腕は埋まり、地表を削り取りながら急激な減速をする。想像以上の攻撃力だと思いながら、首に巻き付くクロに手を向けた。

 

 追撃をしようと魔虚羅が駆け出す。いや、駆け出すというよりも爆発音を響かせてその場から消えるように移動し、龍已の元までやって来た。プラスのエネルギーではなく呪力を纏わせた右手の剣を下から掬い上げるように振るった。

 

 振り抜かれる備えられた剣。当たれば真っ二つにも思える攻撃はしかし、龍已に届かなかった。その場から消えた彼は接近してきた魔虚羅の背後にいつの間にか移動していた。両手には武器を握っている。長い柄。三日月のように歪曲した刃。死神をイメージさせる大鎌を振り抜いていた。沈みかけの夕日に当てられ、その刃を不気味に光らせる。そして、魔虚羅の首は断罪の如く刈り飛ばされた。

 

 

 

「無下限呪術と六眼の抱き合わせと十種影法術師を纏めて殺した最強の式神。大したことはなかったな。…………?」

 

 

 

「■■■■■■■■■■■……………」

 

 

 

「……俺は首を刎ね飛ばした筈だが」

 

 

 

 がこん……という音が背後から聞こえ、消えかけていた強大な気配が復活した。理由に大鎌を持ちながら振り返ると、落とした筈の首がしっかりと繋がり、魔虚羅は龍已の方に向かって歩みを進めていた。不可解なものを見たと言わんばかりの疑問が湧いてくる。殺したのに死んでいない。

 

 最強の式神と呼ばれるくらいだ、何かしらの力は持っていると思って良いだろう。そこで龍已は大鎌を持って駆け出した。後ろへ引き、渾身の力で大鎌を振った。腕諸共胴体を両断するつもりだった。その刃は、魔虚羅が容易に受け止める。備えた剣で弾いてきたのだ。先程は擦れ違い様に首を落としたが、攻撃そのものには対応できるのかと思いつつ連続で振った。

 

 しかし連撃は悉く防がれた。1歩も引かず、むしろ距離を詰めながら対応してくる。大振りにならざるを得ない大鎌の攻撃に慣れてきたのか、反撃も入れてきた。大きく弾き、左手を拳にして殴打を一つ。目前まで迫ってきた時、龍已は大鎌を手放してクロから別の武器を受け取った。

 

 手数の多さを取った双剣。殴打のために伸ばされた腕を屈んで避けると、体を回転させながら双剣を振って魔虚羅の腕を細切れに裂いた。一度も攻撃は止めず、流れる川の如く鮮やかな連撃を入れた。左腕から始まり腹、両脚、胸と範囲を移動し、脚をやられたことで前のめりに倒れてくる魔虚羅の顔をX字に深く斬った。反撃も赦さず斬り刻んで殺した。

 

 

 

「──────■■■■■■■■■■…………」

 

 

 

「……傷が癒えている。反転術式とはまた違うな。背後の法陣が回ってから傷が癒えて立ち上がるところを見ると……試してみるか」

 

 

 

 一撃で首を刎ねた大鎌を、法陣が回った後に使えば対応された。ならば、反撃すらも赦さなかった双剣による斬撃で殺した後、円環が回ってから再び斬り掛かるとどうなるのか。ある程度予想がついている龍已が斬り掛かってみると、先まで反撃すら出来なかったのに、完璧に対処をし始める魔虚羅。

 

 双剣に対する耐性を獲得し、どの様な攻撃が来るのかを知っているように攻撃を受け止めていく。そして反撃も入れてくる始末だ。これでほぼ予想通りということになった。双剣が効かなくなった以上使っていても仕方ないのでクロに呑み込ませ、別のものを受け取った。

 

 

 

「特級呪具──────『(くろ)縛鎖(ばくさ)』」

 

 

 

 吐き出されたのは黒い鎖だった。じゃらりと金属の音を立て、端をの方を円を描いて回す。先端が最早見えず、風圧で砂が巻き上がる。ヘリコプターの羽を見ているようで、回っている方向とは逆に回っているように見える。空気を切り裂いて回る鎖に一応の警戒はしつつ、やられても治るという能力があるからか真っ直ぐ突っ込んでくる魔虚羅。

 

 円を描き鎖を回す龍已に向けて備え付けられた退魔の剣を振り下ろすが、鎖の結界に触れた途端に退魔の剣が弾き飛ばされた。刃が少し欠けるほどの威力に魔虚羅が数秒観察し、またもや真っ正面から来た。が、鎖が触れる直前で方向転換をし、鎖の結界が無い背後に回り込んだ。

 

 脇腹を狙ったボディーブローが来る。当たればノーダメージとは言えない攻撃を龍已に入れられる膂力を持つ魔虚羅。その殴打のために突き出した腕に、回していた鎖を巻き付けた。何重にも重なり捕まえると、魔虚羅の股下を潜り抜けて脚を通して巻き付け、胴体にも回した。

 

 そして龍已は力技で思い切り鎖を引くと、複雑に絡んだ鎖が引っ張られて体勢を無理矢理崩され、魔虚羅は乱回転しながら宙を舞う。引き抜かれた鎖をクロが瞬時に呑み込み、違う物を吐き出す。手に取ったのは大口径狙撃銃『黒曜』だった。ボルトアクションを行い弾を装填し、スコープは覗き込まず構える。狙いは未だ空中に居て体勢を崩す魔虚羅のみ。

 

 

 

「──────『無窮(むきゅう)(ひかり)』」

 

 

 

 怨念により黒く染まった呪いが、極太の黒い光線となって放たれた。身の毛もよだつ圧倒的呪力量と呪力出力。五条や乙骨でも出せないその威力に、魔虚羅は易々と呑み込まれていった。黒い光線は直径100メートルにもなる。逃げ場は無く、逃げられる状況と体勢になかった。

 

 地を削り、海を抉った。地平線まで届くのではと思えるその光線が止んだあと、龍已は『黒曜』を左肩に担いでいた。その歩みは進められ、靴底がカツリと鳴らされる。まるで死神の足音のようで、辛うじて肉体が所々残っている魔虚羅は、目の前までやって来た彼を下から見上げた。

 

 

 

「お前のその背中にある法陣と、恵が唱えた布瑠の言葉から察するに、完全な循環と調和を体現しているのだろう?つまりあらゆる事象への適応及び耐性の獲得が能力だな。だから殺した武器に対して完璧に近い対応が出来た」

 

「■■■■……■■■■■■■■■…………」

 

「誰しもが考えるだろう。お前の倒し方は適応前に初見の技で倒すことだと。だがお前の適応後の動きは()()()()()だけで完璧ではなかった。要するに100%の適応でも耐性でもない。ならばもっと簡単にお前を殺す方法がある」

 

「■■■■■……■■■■■■……ッ!!」

 

 

 

『黒曜』を持たない右手を伸ばし、魔虚羅の巨体に見合った頭を掴んだ。万力のような力に、頭部がみしりと悲鳴を上げている。魔虚羅の背中にある法陣が錆び付いた扉を開けようとしている時のような音を出す。適応してダメージの回復を行おうとしていた。適応するのは、龍已の高い呪力出力による光線だ。対呪力と言っても良い。

 

 そんな耐性を得られてしまえば、呪術師としての戦いが圧倒的に不利になる。だが龍已は急ぐ様子を見せなかった。急がず慌てず、掴んだ頭を力技で遙か上空へ放り投げた。腕力のみで数百メートル上に打ち上げた龍已は、肩に担ぐ『黒曜』を上に向けて構えた。

 

 今度はスコープを覗き込む。空に居る魔虚羅の胸を狙い照準を合わせ、引き金に指を置く。次弾の装填は既に済ませている。あとは撃つだけ。だがその狙撃に使おうとしている呪力は、先程撃った光線の比ではなかった。例える言葉が見つからない程の呪力が、小さな弾1発に込められている。解放すれば、街が無くなるのではとすら思える。

 

 

 

「適応しようが、適応したお前を消し飛ばすだけの一撃を見舞ってやればいい。そうだな……──────()()()()呪力出力だ。欠片も残さず消えて死ね」

 

「■■■■■■■■■■■■……………ッ!!!!」

 

 

 

「──────『無窮ノ晄』」

 

 

 

 視界が黒一色に呑み込まれた。それだけの呪力出力による、太すぎる怨念の黒い光線だった。直径数百メートルでは効かない、2キロ近い直径だった。そんな光線が横向きに放たれていたらと思うと心底ゾッとした。しかもそれで2割と言うのだから恐ろしい。

 

 真上に放たれた事で五条達の方へ行くことは無かったが、龍已の足元の地面が砕けて大きく陥没する。当たり前と言えば当たり前だろう。そして真上に向けられた怨念の光線は当然の如く、魔虚羅を欠片も残さず消し飛ばした。沈みかけの夕日を覆い隠し、雲を穿ち、オゾン層を超える黒い晄。

 

 十種影法術の最強の式神、魔虚羅。それを真っ正面から堂々と、完膚無き勝利を収めた。まさに圧倒的。絶望的なまでの力。膨れ上がりすぎた怨念。本当にこんな人間に勝てる者は居るのだろうか。疑問すら湧いてしまう完成体黒怨龍已に、致命傷を入れた者が居た。

 

 

 

「芻霊呪法──────『共鳴(ともな)り』ィッ!!」

 

 

 

 

 

「────────対怨用超光高圧縮砲……発射」

 

 

 

 

 

「──────ッ!?」

 

 

 

 本体に直接ダメージを与える『共鳴り』は黒き閃光を迸らせ、遙か地平線の彼方より飛来した直径1メートル程の黄金色の光線が黒怨龍已の上半身、左半分を半円に消し飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────じゃあ、まず大前提として言わせてもらうけど、正攻法じゃ龍已には勝てないよ。こればかりは五条悟が居ようが呪いから脱却した超人が居ようが同じ。そもそも龍已に大きなダメージを与えることすらかなり難しいからね」

 

「遠距離ダメなんだよね?じゃあ皆で近接仕掛けるしかねーの?」

 

「僕は長年親友やってるけど、近接戦で誰かに膝をつけさせられてる龍已なんて見たことも聞いたこともないよ。多数で向かっても無理だね。多対一なんて龍已が得意にしてる分野だから。東堂君の術式で撹乱は出来ても、多分すぐに『慣れる』と思う。そうなったら撹乱作戦は2度と通用しないと考えた方が良い」

 

「じゃあどうすれば良いんですか。遠距離が術式反転で無効化されるから近接しかないのに、それすらダメなら方法は無いという事ですか」

 

「──────いいや。僕だけが知る遠距離無効化の穴がある。そこを突く」

 

 

 

 約1ヶ月前。高専にて虎徹が開いた作戦会議である議題が上がっていた。それは如何にして黒怨龍已にダメージを与えるかというもの。皆が呪術師である以上、術式による相性などがあるが、極論を言ってしまえばこの場に居る誰の術式も彼には通用しない。唯一聞く可能性があるのが釘崎くらいだろう。

 

 それ以外の術式は効かない。特に恵の十種影法術は出した式神を相手に嗾けるもの。つまりは中から遠距離の攻撃が主体だ。直接攻撃でない以上、術式反転の効果により式神が彼の4メートル以内に近づくことは出来ない。

 

 基本的に龍已は日常的に術式反転を鍛練と称して展開したままで居ることが多い。24時間常に展開していられるのだ。戦闘に於いてはほぼ間違いなく展開している。つまり遠距離攻撃は効かない状態にされている。加えて狂気的な鍛練により『虚儚斯譃淵』を行ったまま通常の術式の行使も行えるというクソ仕様になっている。

 

 なので龍已には近接を仕掛けるしか無いのだが、黒怨無躰流は知っての通り近接に於いて無類の力を発揮する。素手のみならず、武器による攻撃方法も多彩で、近づけば近づくだけ、周りに武器があればあるだけ黒怨龍已は強くなり、相手にする難易度が地獄レベルになる。

 

 だがその遠距離無効化の術式反転、虎徹だけが知る秘密の抜け穴がある。前世から記憶を持つ反承司すら知らない、たった1人だけが知るトップシークレット。

 

 

 

「龍已の術式反転である『虚儚斯譃淵(きょぼうかくえん)』は丸1日展開していられる低コスト高性能バリアだ。普通の攻撃は絶対に通らない。衝撃波も風も毒も物理も術式効果もね。けど、この『虚儚斯譃淵』はね、段階式になってるんだ」

 

「段階式?」

 

「そう。大きく分けて3つの段階。第1段階は通常のもの。術式を従来通り使いながら同時発動できる状態だね。次に第2段階。これは相手からの攻撃が強力だった場合だ。この段階になると『虚儚斯譃淵』の維持に意識が持っていかれるから、通常通りの術式パフォーマンスが出来なくなる。まあ攻撃の手が緩むと思えばいいよ。そして最後に第3段階。ここまで来ると相手の攻撃が死に直結するような危険なもの且つ強力だった場合だ。こうなると攻撃は出来ず、『虚儚斯譃淵』の維持に全神経を集中するから攻撃のための術式は使えなくなる」

 

「なるほど。展開さえしていれば全て無効化出来るのではなく、向けられる攻撃が強ければ強いほど展開を維持するために意識を割く必要があるという事ですか」

 

「そういうこと。けど注意が必要なのは、第3段階で出来ないのは、あくまで術式による攻撃だよ。黒怨無躰流は全然使えるから、調子に乗って近づくと頭毟られるよ」

 

「んー、センパイの術式反転にそう言う細かい操作があったのは分かったけど、これがどう穴を突く事に繋がるの?僕には結局、遠距離は全て無効化されるとしか聞こえないんだけど」

 

「まあ焦らないでよ五条君。僕の話は終わってないよ。それに言ったでしょ、大きく分けて3つって。戦っている間に知ろうと思えば今言ったことは知ることが出来る。けど、今から言う部分は多分誰も知り得ることは出来ないよ」

 

 

 

 黒怨龍已の長年の親友であり、専属呪具師である虎徹にのみ本人から明かされた最強クラスである遠距離無効化技『虚儚斯譃淵』の秘密。大きく分けて3段階。それを龍已は戦闘中に使い分けていた。特に2段階目に関しては、過去に使用した例がある。それは、五条から飛ばされた虚式『茈』である。

 

 夏油傑が呪詛師に堕ちてすぐの頃。人混みの中に身を潜めて逃げようとしたのを龍已が狙撃して殺そうとしたところ、それを止めさせるために五条が全力ではないとはいえ、強力な『茈』を放った事がある。当たれば押し出された仮想質量によって消し飛ぶので、『虚儚斯譃淵』の維持は強めに行う必要があった。

 

 そこで意識が『虚儚斯譃淵』の展開の方に持っていかれ、本来の術式パフォーマンスが落ちて夏油を逃がしてしまうという失態に繋がった。要するに、相手の攻撃が強ければ強いほど、攻撃の手が緩むということだ。そしてここに、第4の段階が存在することを虎徹が、虎徹だけが知っている。本来、誰かがこのことを知ることはなかった筈だった。虎徹か龍已が話さない限りは。

 

 

 

「遠距離攻撃に対して無敵に思える『虚儚斯譃淵』だけど、これが意思に関係無くどうしても解ける瞬間がある。それは──────龍已が()()()()()()()()()()使()()()()()だ。その時だけは、問答無用で『虚儚斯譃淵』が解除される。展開を維持しようとしても、どうしても出来ないみたいだよ」

 

 

 

『虚儚斯譃淵』の裏話。呪力出力の2割以上を使用して術式を行使した場合、展開を維持しようとする意思も関係無しに解除される。本人の口からしか報告されていないが、龍已は虎徹に嘘を絶対に言わない。故にこれは本人の口から出された真の情報と思って良い。

 

 これを他者が知ることが無いのは、単純に龍已の2割の呪力出力に耐えられる者が居ないからだ。五条悟を除いて。五条の場合は無限があるが、それならそれでまた別の戦い方があるため、『虚儚斯譃淵』の秘密に到達することは恐らくないだろう。

 

 

 

「僕の推測だと。『虚儚斯譃淵』のコストがオーバーしちゃうんだと思う」

 

「でも、天切さんは低コスト高性能って言ってなかった?」

 

「そうだね。低コストなんだ。けど、2割の呪力出力がそれを掻き消すほどの高コストなんだよ。解りやすく解説しようか」

 

 

 

 龍已の呪力総量を仮に無限とする。最高呪力出力がコスト1000。2割の呪力出力はその5分の1となるのでコスト200。『虚儚斯譃淵』は10だ。基本的に龍已が行う『無窮ノ晄』のコストは強いものでも50やそこらだ。ここに、意識を集中させるための境界が200の地点で設けられている。

 

 通常の『無窮ノ晄』と『虚儚斯譃淵』を合わせて使っても、総コストは60前後となって200には届かない。つまりは同時に扱うことが出来るということだ。しかし2割の呪力出力である『無窮ノ晄』を使用した場合、コスト限界の200に到達する。これ以上は、使用している技に意識が持っていかれるため『虚儚斯譃淵』の同時使用が出来なくなるのだ。

 

 普通の強い攻撃をする分には問題ない。だが2割以上の呪力出力を使用する場合に限り、()()()()()『虚儚斯譃淵』が解除される。攻撃が終われば再展開されるので、言うなれば龍已が埒外の攻撃をしてきている時だけどんな遠距離攻撃も通せるということ。

 

 しかしよくよく考えれば、無理に等しい訳だ。龍已の呪力出力の2割が飛んできている最中、防御も回避も考えず攻撃に出るなど。そんなことをすれば、魔虚羅のように跡形も無く消し飛ぶことになる。そして1番誤解を招きやすいことがある。

 

 

 

「忘れちゃダメだからね。龍已の呪力出力の上限は完全に理外の理にある。2割って聞くと大したことないように思えるかも知れないけど、()()()()()呪力出力2割だから。廃病院消し飛ばした『天ノ晄』で大体3分(3%)。山を消し飛ばすような『無窮ノ晄』で5分(5%)くらいだよ」

 

「……つまり、龍已さんの術式を使った今までの攻撃は、どれも全く本気ではなかったと?」

 

「そうだよ。逆算すると、2割の呪力出力で放たれる『無窮ノ晄』なんて、耐えられる人居ないんじゃないかな。()()()()()()()

 

「……そういうことか。アイツが、ンなもんぶっ放したら周りの被害がとんでもないねェから使わねーのか」

 

「うん。そういうこと。だから僕も見た事が無いんだ。けど撃つ瞬間は解る。横には撃てないから、恐らく真上に向かって撃つ。相手はそれを撃つに相応しい人じゃないとダメだから伏黒君……あ、恵君ね。君の奥の手をそこで使わせてもらうよ」

 

「……アイツですか?」

 

「そう!君の奥の手を餌に、準備しておいたものを龍已に向ける。もしかしたら第六感で回避される可能性もあるから、釘崎さんは渾身の『共鳴り』入れてくれる?君専用の呪具を造ってあげるから」

 

「えっ!?♡」

 

 

 

 計画通りだった。魔虚羅と戦わせる事で、適応された後に適応ごと消し飛ばしにかかるだろうことを予測し、尚且つ呪力出力の2割以上を使うことも予知した。真上に放つしかない『無窮ノ晄』だが、完全な無防備を晒す。もちろんそれは龍已自身も解っていた。だから何が飛んできても対処できるように警戒はしていたのだ。

 

 しかし龍已にも対処出来ない速度というものがある。普段の龍已ならば防ぐ事が出来ただろう。『虚儚斯譃淵』さえ展開していればなんてことはなかった。だが防げるからと言って避けられる事とはまた別の問題だ。虎徹が耳に付けたイヤホンと繋がっているのは、京都に居る禪院真依だった。

 

 

 

「有効射程ギリギリ──────良かった、当たって♡」

 

 

 

「……ッ……ぶッ……ごぼッ……ッ!!」

 

 

 

 ──────何だ?何が飛んできた?何にやられた?察知すら出来なかった。危機を感じ取った体が反射で回避したから左上半身で済んだものの、それが無ければ胴体が全て持っていかれていた……。傷口の消失具合と角度から計算すると……直線状に京都……京都から此処までの射程距離を持つ攻撃だと……?

 

 

 

「君のためだけに造ったレーザー兵器だよ。約1ヶ月間掛けてチャージした太陽光を凝縮して光線状に放つことが出来るんだ。1発だけだけど。さて、あと2発ぐらいなら『共鳴り』を打ち込めるかな?普通の攻撃とは勝手が違うから『慣れる』まで時間掛かるよね?じゃあ──────畳み掛けて」

 

 

 

「──────黒閃ッ!!」

 

「──────『共鳴り』ッ!!」

 

「──────『(ぬえ)』ッ!!」

 

「──────『月輪』ッ!!」

 

 

 

 国際的な標準値として定められる299792.458km/sec。毎秒約30万キロメートルの速度であるとされる光速。太陽の光を1ヶ月間掛けて充填し、貯蓄された光に指向性を与えて放つことができるというレーザー兵器である。これがあるのは京都。撃ち手は真依だった。

 

 この作戦を考えついた時、虎徹は既にこのレーザー兵器を呪具として製作していた。そしてこれは、真希に特別特級呪具を使用する際に京都に居たことに起因する。実はあの後、設置する場所を考えながら、真依に撃ってもらえないかの打診をしていたのだ。龍已を除いて狙撃技術が高いのが真依であった。

 

 超高倍率のスコープと重力計算は全て呪具がやってくれる。後は照準を定めて来たるときに撃つだけ。合図は繋がっている電話で出される。そう、本来は呪術師の戦いで電波は繋がらない。帳を降ろしてしまい、副次的効果で電波障害が発生するからだ。しかし此処は龍已が見つけた無人島。故に誰も居らず、帳を降ろす必要が無かった。

 

 

 

「──────反転術式は使わせねェ」

 

「がッ……ぁ゙あ゙……ッ!!!!」

 

 

 

 甚爾に押しつけられるスタンガンの形をした呪具。見た目とは裏腹に雷のような超電圧を叩き込む呪具により思考が儘ならない。思考能力を奪われると反転術式が使えないことを、虎徹は知っていた。遠距離ではない直接攻撃なので『虚儚斯譃淵』の効果範囲外。ぼやける頭で反撃をしようとしても、『共鳴り』が体を硬直させる。

 

 動けず、満足に動ける肉体でもなく、更には超電圧で思考能力を遮られる現状、一行が集まり龍已に攻撃を見舞った。呪力が黒く光り、膂力に任せた特級呪具『游雲』が叩き込まれ、薙刀で斬り裂かれ、7対3の割合を強制的に弱点とされ鉈を打ち込まれ、電撃を纏う鵺の翼に殴られ、反転呪法により反力をも攻撃に変える殴打を受け……大きく抉れた彼の体は死へと着実に進んでいた。

 

 片方の肺が消し飛んでいる所為で呼吸も儘ならなく、心臓すらも露見する寸前。左腕は左胴体諸共吹き飛ばされ、大量出血と電撃により頭が働かない。トップレベルの攻撃力を持つ者達の攻撃を雨のように食らい、袋叩きにされている。それを見ているしか出来ない虎徹と家入は、人知れず拳を強く握って唇を強く噛んだ。

 

 あの龍已が……あの黒怨龍已が袋叩きにされている。見る限りでも敗北が濃厚。反撃の隙も与えず、速度と手数で潰されようとしている。一撃一撃が致命傷だというのに立っている方がおかしい。でも、時間の問題だ。彼はやがて死ぬ。呆気なく、自分達呪術師の手によって。そんな状況で、彼は血を吐きながら嗤っていた。

 

 

 

「ぐぶッ……げぼッごぼッ……は……ッ……ははッ……ふふ……はは……はッ……」

 

 

 

「……何かおかしい。天切さん」

 

「うん──────何かやろうとしてる。全員一旦引いてッ!!」

 

 

 

「素晴らし……い……強く…なったな……()()………」

 

 

 

 

 

この程度ではまだ、敗けてやれんな

 

 

 

 

 

 呪術師としての黒怨龍已の奥の手が領域展開なのだとすれば、黒怨無躰流最終継承者としての彼の奥の手は、また別にあることになる。使ったことは片手で数える程度。だが練度は最も高く、黒怨無躰流を以てしても“禁忌”として扱われた唯一の技。

 

 黒怨無躰流開祖である黒怨源継でさえも十全に扱えなかったという、本当に使い熟せた者が居ない継承()()()()()()()黒怨無躰流の奥の手中の奥の手。その名は──────

 

 

 

 

 

 

「黒怨無躰流()()─────────」

 

 

 

 

 

 







特級呪具『(くろ)縛鎖(ばくさ)

見た目は黒いだけの何の変哲もない鎖。龍已の呪力を込めながら製作されたことで、龍已の呪いと良く馴染む。そのため呪いの浸透率が高く、呪いを込めれば込めるほど頑丈になる。触れている間行動力が半減する術式効果を持ち、この行動力には逃げ出そうとする行為も含まれるため、ただでさえ龍已の莫大な呪いによって強化された鎖を、半分となった抵抗力で破らなければならない。

素の頑丈さは、両端を大型旅客機に繋いで引っ張っても千切れない。

値段は推定3億円。

※試作品を龍已は呪力ありの腕力で千切ったことがある。




対怨用超光高圧縮砲

世界初のレーザー兵器。1ヶ月の光の吸収を経て、撃てるのは1発のみ。ただし、その代わりに直線上の物体は集束された光によって消し飛ばされる。呪具として生み出された、対龍已用兵器。光は光速で飛来するため、避けることは不可能。

だが、龍已は長年の戦闘の直感と第六感が働き、寸前のところで回避行動に入った。そのため、上半身の左半分のみの被弾となる。




八握剣異戒神将魔虚羅

通称、魔虚羅。十種影法術の中で最強の式神。背中にある法陣が回ると受けた傷が癒え、倒されたときの攻撃に対する耐性を得る。腕に備えられた退魔の剣は対呪霊用に特化しており、龍已が呪霊だった場合は最初の一撃で消し飛んでいたほど。

攻撃力と防御力が凄まじく、その膂力は拮抗しつつも龍已を弾き飛ばすほど。適応する能力を持っているが、完全な適応ではないため、適応した後であろうと消し飛ぶ程の高威力な攻撃を受けると死ぬ。

強すぎて調伏できた者は居ない式神。巷では愛称としてマコちゃんと呼ばれているらしい。




伏黒恵

原作でちょいちょい魔虚羅召喚しようとしていた、結構危ねー奴。龍已が消し飛ばしたので強いイメージ無いかも知れないが、過去に五条と同じ六眼無下限抱き合わせを殺している。なのでそんなものを呼んだら、相手は殺せるが自分も死ぬ自爆技になる。

龍已のことを兄が居たらこんな感じなのだろうかと、何度も思っていた。小さな頃から面倒を見てもらっていたので、彼に対して魔虚羅を呼び、調伏の儀に巻き込むこと自体心苦しかった。




釘崎野薔薇

黒怨龍已の天敵。唯一、何の小細工も無しで『虚儚斯譃淵(きょぼうかくえん)』を無視して本体に直接ダメージを与えることができる。効果が効果なだけあって『慣れる』まで時間が掛かる。

『共鳴り』は相手の部位や実力差によって効果が変わる。龍已を相手とした場合、介するのは髪の毛なのであまり繋がりは強くなく、2人の間には隔絶とした力の差があるが、特級呪具にも匹敵する金鎚の威力底上げにより、龍已にも有効なダメージを与えることに成功している。

1つ数千万は当たり前の天切虎徹製呪具を貰えて感激した。直接金鎚で殴ってダメージを与えることが出来なくなる代わりに、直接殴らない打撃に威力を上乗せする術式を持つ金鎚を貰った。感激しすぎて『カナちゃん』と命名した。柄のところにピンク色の♡に釘が刺さっているマークが入っている。

無料で貰ったが、買おうとすると2億7200万する。




天切虎徹

誰も知らなかった、龍已の『虚儚斯譃淵(きょぼうかくえん)』の秘密を知る唯一の人物だった。釘崎以上に龍已の天敵。術式に関する事や考え方など、ありとあらゆる事を彼に話しているので、龍已の事について知らないことの方が無い。

世界で初めて実用的なレーザー兵器を造り出してしまった人。他者の手に渡らないように、対怨用超光高圧縮砲を1発撃つと自壊する仕組みを作っていた。なので世界がレーザー兵器が生まれていたことを知ることは無いが、本来なら歴史に名を刻んでいた。




家入硝子

龍已がボロボロになりながら袋叩きにされるところなど初めて見たし、見たくなかった。唇を噛んだ際には血の味がした。




黒怨龍已

『虚儚斯譃淵』を大まかに分けて3段階で使用していた。相手の攻撃が強力であればあるほど、攻撃的な術式行使が出来なくなる。そのため、攻撃を入れられるのは、2割以上の呪力出力で呪いの光線ぶっ放している時だけ。

制御が完璧の癖に出力のリミッターを母親の腹の中に置いてきてしまった人。山を消し飛ばす『無窮ノ晄』で5%の出力。2割で直径2キロ近い極太の光線になる。横向きには撃てないので、真上に撃つしか無い。真横に撃つのは、全て消し飛ばそうとするときだけ。

天与呪縛の制限により高い呪力出力を得たが、実力が相当だった事もありふざけた呪力出力上限になってしまった。加えて完成したことにより、完成前とは更に比較にならない。人生で本気の『無窮ノ晄』を撃ったことが無い。




黒怨無躰流

唯一の奥義は歴代()誰も扱えた者は居ない。ただ、奥義として継承されていただけ。

しかし部分的には使うことができ、その強さから黒怨無躰流を以てしても“禁忌”の術とされていた。

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