短編その1 死後のこと
人は死した後、初七日から三回忌まで十王による裁判を受ける。
一審『初七日』──────
二審『二七日』──────
三審『三七日』──────
四審『四七日』──────
五審『五七日』──────
六審『六七日』──────
七審『七七日』──────
八審『百ヶ日』──────
九審『一周忌』──────
十審『三周忌』──────
この過程で重要となってくるのが、遺族の供養である。何故か?その供養がいかに手厚くされていたかによって、減刑が為されたり、無罪になったりするからだ。そして、供物の量も重要な要素となる。
“地獄の沙汰も金次第”という言葉は、割と嘘ではない。
──────
「──────裁判を始める。黒怨龍已。貴様は己が犯した罪を認識しているか」
「殺人です」
「うむ。その通り。貴様は生前だけでも千以上の者達をその手で殺した。罪を犯したものであろうと、殺したことに変わりは無い。だが貴様は、罪も無い子供を殺した事があるな?」
「あります。呪術界上層部。その親戚にあたる子供です。一族一切悉くを殺し、殲滅することを誓っていたので残らず殺しました。否や嘘はありません」
「……確かに。嘘は無し。良いだろう、裁判は終わりだ。次の審査のため、三途の川へ向かえ。私は罪について嘘をつくかどうかを判断していた」
「ありがとうございました」
「経歴の濃さの割に礼儀正しいな……。んんっ、それより少し聞きたいことがある。貴様は犯した罪に対して罪の意識はあるか」
「──────あるわけがない。俺は一族を苦しめた者達を赦しはしない。何があろうと、忘れない。怨は怨で以て返す。呪詛師は死んで然るべき。殺したことに罪悪感なんぞ感じない」
「……そうか。もう行って良い」
「失礼します」
──────三途の川渡り。及び
「私は
「……六文銭どころか600万懐に入っているのは何故だ。五条の悪戯か……?」
持っててもどうせあの世では使えないし、裁判の途中でもあるので600万を奪衣婆に渡し、姿勢を低く取った。そして地面に大きな亀裂と衝撃波を生み出しながら走り出し、他の亡者が呆然と見る中
「第二の審査を司る初江王様ですね。三途の川を渡ってきました」
「いや、まあ見てたけど渡ると言うより走ってきたよね?」
「泳げとは言われていないので、取り敢えず渡ってきたのですが……泳いで渡り直しますか?」
「いや、もういいよ……次の審査へ」
「ありがとうございます」
──────
「邪淫はしていませんが、確認をお願いします」
「言う前にお願いしてきたよ、この亡者……
「全くねェ……な。真っ白なモンだぜ」
「……猫が二足歩行して喋っている……」
「俺ァ男の邪淫の有無を見抜く衆合地獄の獄卒よォ。呼び捨てはやめてくれ、気分が悪い。漢さん、または漢ちゃんでも構わないぞ」
「……死後の世界は不思議だな」
──────
「──────かくして、そなたは罪を犯した者とはいえ、他者を殺し回り、罪無き者にまで手を出したそうだな。数も凄まじい。いやホントに。これでは相当な罪の重さになるぞ」
「真実です。訂正箇所はありません」
「そうか……そなたは業の秤に乗せる必要もないな。
「はぁい。畏まりました。ほら、行くよ。まったく、アンタって子は子供まで殺しちゃって!嘘をついてたらお尻叩いてたところだよ!」
「……肝っ玉のある補佐官だな……」
──────
「……すごく……大きいな」
「なんか、
「大王、亡者の前でサボってないで仕事してください」
「ひぃっ!わ、わかったよぉ……だからその金棒をこっちに向けないでっ!んんッ……これより裁判を始める。貴殿は生前に於いて数多の人を殺し、見せしめのように晒し、拷問をし、時には罪無き子の命まで奪った。その数は全てで千を超えている。その所業は重く、筆舌に尽くしがたしッ!閻魔丁が貴殿に下す判決は
「はっ!おい行くぞっ!」
「──────鬼灯様。不喜処の件で少しお話しがあるのですが、今お時間よろしいですか?」
「不喜処ですか……何です?これからまだ裁判が続くので、急ぎでないなら後にして欲しいのですが」
「それが、少し問題になっているようなのであちらでお話しを……」
「…………………。」
「……ッ!?コイツ、まったく動かせねぇ……ッ!おい、何止まってんだッ!」
見上げるほど大きな威厳のある体格の閻魔大王と、その補佐官である鬼灯という鬼神が居た。龍已の過去が全て載っている巻物を見ながら、閻魔が沙汰を言い渡す。当然多くの人間をその手で殺してきたので天国には行けず、地獄行き。それはまあ当たり前なので納得する。相当な数殺したので、刑罰が長くなることも予想している。
しかし龍已は今、両脇から地獄の鬼に腕を取られて次の裁判へ連れて行かれようとしている。しかし動かない。見た目の割に100㎏を超え、人知を超えた筋肉を持つ彼が直立不動となっていると、生半可な力では動かせない。両脇に居る鬼はそれなりに剛力だ。というか、鬼という存在は昔から剛力と語られる。その中でも剛力の方だ。
しかし引っ張っても動かない龍已に冷や汗を流しながら、2人で引き摺ろうとする一方で、彼は別の場所に目を向けていた。額に生えた1本の角。癖知らずのストレートな黒髪。鋭い目つき。誰かを彷彿とさせる整っている顔立ちをしながらの固い無表情。赤い襦袢に黒い衣服で帯を貝の口に締め、その上から結び切りの帯飾りを付けている。襦袢の下は股引で、足元は素足に草履を履き、手には棘のついた身の丈ほどの黒い金棒。閻魔大王の第一補佐官である鬼灯である。
詳しく言うと、その鬼灯と報告のためにやって来た別の獄卒の鬼であった。急ぎの報告があるようで、獄卒は鬼灯を連れてどこかへ消えようとしている。その方角をずっと見ていた龍已は、体の向きを変えた。次の裁判へ向かうための道ではなく、鬼灯の居る方へ。
押しても引いても動かないかと思えば動き出した。しかしそれが地獄の誰もが恐れる最強の鬼神の方へ向かっている。亡者が暴れることはよくあることだが、よりにもよって鬼灯様の方へ行くのは見過ごせないと、両脇の鬼達が慌てるがそんなことは些事だった。腕を少し振るうだけで、2人はいつの間にか天井を見上げて倒れていた。次いで聞こえたのは、駆ける足音。
サッと顔色が青くなりながら、どういう原理か倒されていた鬼達が急いで起き上がり鬼灯の方を見る。そして鬼灯の名を呼び、亡者が何かするつもりだと叫んだ。場所を移そうとしていた彼は振り向くと、すぐそこに龍已が接近していた。速い。そう思いながら黒い棘付きの金棒を握る手に力を込めて、龍已を見過ごした。
「なっ──────ごはッ!?」
「
「ほ、鬼灯様っ!すみませんっ!俺達、いつの間にか倒されててっ!」
「お怪我はありませんかッ!?」
「えぇ。私は大丈夫ですよ。何もされていませんから。それよりも、あの亡者は何故あの獄卒の方に飛びついたのでしょう?面識があるとは思えませんが……あ」
「そんな悠長に観察している場合じゃ……げっ」
飛びついたかと思えば、襟を掴んで背負い投げをし、床に鬼のことを思いきり叩きつけた。背中から無理矢理倒されて嘔吐いているところに声を掛けられる。表情はまったくの無であり、心なしか獄卒や閻魔達が背筋にゾワリとする雰囲気を纏っている。鬼灯は皆が恐れに似た何かを感じ取っている中で、興味深そうに顎を手で擦りながら2人のことを眺めていた。観察と言ってもいい。
すると、返答を聞いていない龍已が左手で襟を掴んで逃げられないように拘束しつつ、右手を固く握り込んで拳を作った。そしてそのまま振り下ろす。左頬に打ちつけられた拳に左側の歯が全て折られた。宙を舞う多くの歯に、閻魔専用の椅子に座る閻魔大王がひいっ……と悲鳴を上げた。その後、6回拳を叩きつけ、床にまで罅を入れた龍已は、鬼の頭頂部を鷲掴み、頭を毟り取った。
皆が呆然と見る中で、鬼灯が目を細める。龍已は頭を胴体から取ったのではない。額から、まるで蓋を取るように頭頂部だけを千切ったのだ。中には当然脳味噌が入っており、彼は千切った頭頂部をそこら辺に捨てると、脳味噌を掴んで頭の中から引き摺り出した。白装束が鬼の血によって赤黒く染まる。その状態で、彼は鬼灯の方へやって来た。
「コレは貴方の知る者ではありません。既に殺されています。今私が持っているのは、生前に私が殺した呪詛師です。額に縫い目の傷を付けることを縛りに脳を入れ替え、体を乗っ取る術式を持っています。ちなみに、この脳が本体ですのでお渡ししておきます。お騒がせして申し訳ありませんでした」
「……いえ。見事な手際でした。飛び散った血は後で清掃を頼んでおきますのでご心配なく。それよりも、何故気づいたのです?」
「邪な気配と術式を持っている者特有の気配、それと勘によるものです。額の傷が目印というのもありますが、主にそれらです。隙を見て鬼灯様のことを襲い、確固たる地位を手に入れる可能性もあったので処理しました」
「全く気がつきませんでした。助かりましたよ。ありがとうございます」
「いえ。では、私はこれで。第六裁判がありますので」
「えぇ。また
鬼灯に毟り取った脳味噌のような、呪詛師の本体を手渡す。これは生前に彼が殺した呪詛師であり、当時は夏油傑の体を乗っ取っていた。龍已よりも先に死んだので裁判を受けて、今までの所業からまれに見る凄まじい刑罰年数で刑罰を受けている最中だったのだが、隙を見て獄卒を襲い、乗っ取ったということだろう。
死後であろうと、呪いさえあれば魂から刻まれた生得術式は起動してしまう。色々な名前がある脳味噌の呪詛師がその証。しかし龍已は力を使って暴れようとは考えていなかった。まあそもそもな話、銃を持っていないので天与呪縛が邪魔をし、術式が使えないのだが。
血塗れの脳味噌を受け取った鬼灯は、獄卒に言われなくても自分から進んで次の裁判を行う
「何を警戒しているんですか」
「い、いやぁ、なに亡者にビビってんだーって言われると思って」
「あの亡者にビビってたんですか」
「あれッ!?ワシ墓穴掘っちゃったッ!?」
「そんなことより大王。少し相談があります。……──────先程の亡者について」
龍已は再審の必要が無いくらいの悪ということで、第七審を行って焦熱地獄での刑罰が言い渡された。年数は16垓年と途方もないものではあったが、遺族は居ないものの、供養が山とあったことから刑罰の年数はいくらか緩和された。これだけ殺しをしてきたのに、これだけ多くの供えがあるのは稀だと教えられた。
結局、刑罰内容は閻魔に言い渡された
大地から業火が噴き出し、龍已の身を焼く。常人ならば悲鳴を上げて絶叫もするだろう痛みの中で無表情を貫き甘んじて受ける。そんな彼は刃の葉が生い茂る樹木の元まで歩いて向かう。その樹木の傍は業火が噴き出ていない安全地帯。だがその代わりに上から鋭い刃が落ちてきて亡者を串刺しにして殺すのだ。
彼は業火に焼かれながら、自分からその樹木に近づいた。他の亡者も炎に焼かれて絶叫していたが、安全地帯があると分かると他を押し退けてその場を占領しようとする。そこで、刃の雨が降り注いでハリネズミが出来上がる。龍已は自身より先に行った亡者の惨状を見ながらその場へ赴き、降り注ぐ刃を受け入れた。
腕や足、腹部を貫通する鋭さを持った刃。生半可な刃物では斬ることができない龍已の皮膚を易々と斬り裂き貫通した。良い切れ味だと思いながら、焼け爛れた自身の皮膚の臭いを嗅ぎ取りつつ、大量の血を吐き出してその場に膝を付く。
「ごぼ…ッ……ごぼッ……」
「助けてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!あぢいッ!ぁぢぃあああああああああああああああッ!!!!」
「痛ぇ……いてぇよお……ぉぉ………死んじまう……よぉ……」
「もうはんぜいじだッ!はんぜいじだがらだずけでぇッ!!」
「もう嫌だッ!もう死にたくねぇ!生き返りたくねぇッ!俺を殺してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!」
「3万7000年……しっかり受けないと……な……その後は……妃伽と……慧汰と……反承司で……飯でも……た……べて……──────」
少しずつ目の光が失われていく。体中に突き刺さり、貫通した刃から大量の血が滴り、焦げている白装束を赤黒くしていく。生温かい感触を味わい、業火により喉が焼けて肺を炭にされていく。熱と痛みを感じながら、龍已は刀輪処での初めての死を経験した。
亡者は既に死んだ身。それ故に死なない。死んでも復活する。真新しい肉体を得た彼等は、沙汰を言い渡された地獄で同じ苦を味わい続ける。刑罰年数が満了を迎えるその時まで。龍已は3万7000年を言い渡されたので、それまでの間身を焼かれ、斬り裂かれ、死ぬを延々と繰り返すのだ。
刑を受けて、死んで。刑を受けて、死んで。それを一体どれ程繰り返しただろうか。全く思い出せない。既に10は死んでいる筈。流石は地獄の亡者を焼く業火。凄まじい熱量だ。刃も樹木に生っているものとは思えない業物だ。他の亡者も何度も死んでいる。絶叫している。己の罪に向き合い、許しを請うている。だが刑罰は終わらない。まさに地獄。罪の清算を行う世界。
しかし……人間が千年以上掛けて作り出した最強の怨念の怪物は、その地獄の苦しみに『慣れた』。慣れてしまった。甘んじて受けていたのに、彼の超人の肉体は耐性を獲得してしまい、業火には焼けず、刃を通さない体に変化していた。見た目は変わらず、受ける刑罰を耐えるだけ。
他が苦しんでいる中で、無表情でその場に居るのだ。焼けているのは白装束のみ。必然的に全裸になってしまうが、彼にはどうしようもないこと。このまま3万7000年を過ごしていれば良いのか……と思い、困惑する。恐らく他の刑罰に回されても同じ事になるだろう。地獄なだけあって慣れるまで時間は掛かるが、最後は慣れて耐性を獲得してしまう。
自身は刑罰を受けるつもりだ。しっかりと受けて清算し、0になった後に親友達と飯を食い、これまでを語らうのだ。そのための今なのだが、彼は困惑する。これでは地獄に堕ちた意味が無い。
「──────すごいですね、色々と。刑罰を克服してしまう人は初めて見ましたよ。しかもまだ1時間しか経っていないのに」
「貴方は……」
「こんな格好で判らないですよね。私は閻魔大王の第一補佐官をしています、鬼灯と申します。あの時はご挨拶ができませんでしたからね」
「いえ。私は亡者であり罪人ですので、鬼灯様に自己紹介されるほどの者ではありません。それより、何故此処へ?私の刑罰の変更ですか?」
「本当ならそうしたいんですが、あなたは変更された刑罰にも慣れてしまうでしょう?」
「……否定はしません」
銀色の防護服を身につけて、手には裁判の時に見た黒い棘付きの金棒を持って現れた鬼灯。彼は龍已についての報告書を読んで、過去にあったことからどんな生涯を送り、果てにはどんな人物になったかを全て知っている。故に彼の肉体が特異なものであり、どんな環境にすら慣れて耐性を獲得してしまうことも知っていた。
亡者であり、裁判で沙汰を言い渡された以上刑罰は受けるのが当然。故にそのままにしていたが、放って置くつもりは元々なかった。少ししたら見に行こうと思い、サボろうとしている閻魔の頭を金棒でぶん殴って机に叩きつけてから、こうして刀輪処にまで足を運んでいた。予想は裏切らず、思っていたとおり彼は耐性を得ていた。
どんな重い刑罰も、彼は甘んじて受けるだろうが必ず耐性を獲得してしまう。それでは刑罰にならない。そこで、鬼灯は龍已の刑罰年数満了を繰り上げる事にした。これは異例であり、他に露呈すると他の亡者に示しがつかなくなるので特別措置ということにしている。
だが、このまま無罪にするのではなく、とある仕事を頼みたいのだ。1時間前に起きたような事が、起きなかったと言えばそんなことはなく、死んでからも足掻く亡者は居る。一般人ならば問題ないが、相手が術師となると話が変わってきてしまう。そう、超常的力を持つが故に、非術師よりも足掻きの処理が面倒なのだ。
刀輪処から出され、着替えの服を渡された龍已は談話室にて鬼灯と対面している。互いに無表情であり、そこに少しのシンパシーを感じながら、鬼灯は龍已に提案をする。
「地獄って基本人手不足なんですよね。人の手が足りないというのもありますし、罪人が多いんですよ。なので亡者の1人1人にそう時間を掛けていられないんです」
「なるほど」
「なのに、時々やってくる術師が地獄に来ると、中々に面倒くさいんです。術式を使って逃げようとしたり、抵抗したり。獄卒は術式を持っていませんから肉体的に解決するしかないんですが、はっきり言って超能力ばりの力出されると手出しできないことがあります。黒怨さんが見つけてくれた呪詛師も、面倒な術式でしたからね」
「つまり、刑罰の代わりに私はそういった亡者を相手にする獄卒のようなことをすれば良いということですか?」
「いえ、普通にスカウトです。あなたの底知れない怨念を買ってのね」
「スカウト……」
「要は仕事を頼みたいんですよ。地獄も数多くの部署に別れていますので、そこに堕ちた術師を相手にするには限界があります。なので、黒怨さんにはそういった抵抗する術師を適度に〆てもらって、抵抗する気力を奪って欲しいんです。その後は獄卒に任せるので。相手が術師……呪詛師ならばやる気が起きるでしょう?生前呪詛師を1度殺し尽くした最強の呪詛師殺しの黒い死神である、あなたなら」
「……えぇ。呪詛師を殺すことが仕事になるならば、私以上に適当な者は居ないと思います。刑罰も受けられませんし、私にできることならやらせてください」
「助かります。あなた
「心遣いありがとうござ……達というのは?」
「黒怨さんの他にもメンバーが居るんですよ」
あっけらかんと言う鬼灯に、龍已は首を傾げる。他にも術師を相手にできる獄卒が居るのだろうか。そんな疑問を抱く龍已を余所に、鬼灯は手を叩きながら入ってきて下さいと談話室の扉に向けて話し掛けた。一応複数人入れる楽屋のような部屋なので狭くなることはないと思うが、今顔合わせをするのかと思った。
人手不足で、早速刑罰から逃げようとする呪詛師が居たのだから顔合わせをさっさとして仕事に取りかかって欲しいのだろうと考えた。しかしその考えは入ってきた者達を見て吹き飛ぶ。扉を開けて入ってきたのは、龍已の親友である妃伽と慧汰。元生徒の反承司だった。
慧汰は和やかに笑いながら手を振り、妃伽はニヒルな笑みを浮かべてサムズアップしている。反承司は目に涙を貯めながら走り出して龍已に飛びついた。
「龍已先生居たぁあぁああああああああああッ!!うえぇえええええええええええんッ!3万7000年も刑を受けるって聞いて私も行こうとしたけど全然通してくれないから鬼共全員ぶち殺そうとして推し通ろうと思ったら音無さんと姉御様に止められて泣く泣く大人しくしてたら龍已先生連れてかれちゃって会えなくなったから寂しくてもう一回死んじゃうところでしたぁッ!!!!」
「長い長い。だが、心配してくれたのだろう。ありがとう反承司」
「……へへ。うひひ。推しの匂いがする……ふひっ」
「うん。零奈ちゃんは平常運転だね」
「おーい龍已。その鬼から話聞いたかー?私達でチームになって術師ボコせとよ。んま、これから頑張っていこうや。反承司を+αにして高専組再結成だな」
「……そうだな。本当に嬉しく思う。鬼灯様、ありがとうございます。精一杯務めさせていただきます」
「えぇ。よろしくお願いします。ちょうどその方々も対処に困っていたので。まさか同じ年数の刑罰を受けると言い出すとは思いませんでしたし、暴れるのを獄卒が止めようとしても全く歯が立たないので、それなら黒怨さんのチームに入れて一緒に働いてもらおうと思い至りまして」
「私を龍已先生から離そうなんて誰であろうと赦さないし、認めないから」
「はぁ……それは嫌というほど見せていただきましたよ」
一緒に地獄へ行ったはいいが、死んだ順番に裁判を受けるようで、巌斎が1番で次に音無。その次に反承司という順番で龍已よりも先に受けていたそうだ。それで天国行きか転生かの2択になったがどちらも拒否。龍已と同じ刑罰を受けると言い出して止まらず、暴れるので押さえようとしても鬼では相手にならなかった。
なので取り敢えず、龍已の裁判が終わるまで待ってもらっていたのだが、いざ終わると会いに行くと言って聞かなかった。慣れるのは分かりきっていたが、最初は必ず刑罰を受けてもらうつもりだったので教えなかった鬼灯なのだが、感づいた3人が詰め寄ったらしい。
龍已にだけ仕事を頼み、この3人を天国か転生かにさせようとしてもまた暴れるだろう。なので、龍已のチームに組み込んで一緒に仕事をしてもらうことにしたのだ。これなら大人しくなるし、仕事を手伝う手が増えて一石二鳥になる。
「では、これから鬼灯様直属の刑罰執行者としてやっていこう。よろしく頼む、妃伽、慧汰、反承司……いや、零奈」
「名前呼び……ッ!(尊死)」
「よろしく、龍已!」
「おうよ。んじゃ、決まったことだし結婚しようぜ」
「頼りにしてますよ、皆さん。是非、この地獄をより良い地獄にしてください」
こうして、龍已がチームのリーダーとして鬼灯直属の術師を主とする刑罰執行者という組織が組まれた。これより足掻く術師の亡者は絶望することになる。何度蘇ろうと、必ず殺して心をへし折りに来るのだから。黒い死神は、地獄に居ても必ず悪しき術師に手を伸ばすのだった。
息をするように地獄に堕ちた。
刑罰を受ける年数は驚異の16垓年。しかし供養が厚くされていたので減刑され、3万7564年で決まった。ただし、その刑罰も結局1時間で終わった。慣れてしまい刑罰にならないため。地獄初の特別措置法が適用された人物。
刑罰が効かないので、効かないものを延々とやらせるよりも、暴れる術師の相手をさせた方が良いと思った鬼灯により、鬼灯直属の刑罰執行者にスカウトされる。給料は高い。他の鬼ではできないため。
メンバーのリーダーをしており、日々往生際が悪い地獄に堕ちた術師をめちゃくちゃにぶち殺しまくる。呪詛師だった者が殆どなので、殺しているとスカッとする。最高の職業だと思っている。
鬼灯直属刑罰執行者メンバーの1人。聴く術式を持ち、亡者が何処に居るのかすぐに突き止める。術式を鍛え上げ、心の中の声を聴く事ができるようになり、知られたくない術式の内容を丸裸にする事が出来る。
鬼灯直属刑罰執行者メンバーの1人。ボコる係。どんな術式が来ても、ゴリ押しで殴り殺してシンプルに心をへし折りにいく。殺し合うと楽しくなって嗤うので、相手にトラウマを知らず知らずの内に植え付ける。
龍已が好きでたまらず、結婚して苗字を早く黒怨に変えたいが、地獄に来てまだ少しなのでもう少し待ってくれと言われている。結婚してくれることは確定なのでニマニマしている。
龍已のところへ行こうとして止めに入った鬼を240人ボコボコにした。
鬼灯直属刑罰執行者メンバーの1人。長い付き合いになるし、自分を追って死ぬくらいの元生徒であり、1人だけ苗字呼びだと変だということで、名前で呼んでもらえた子。嬉しくて立ったまま気絶する。
龍已先生姉御様と結婚かぁ……と思っているが、巻き込まれることを忘れている。2日間抱き潰されて愛が進化するまであと〇日。
龍已の元へ行こうとすると邪魔をされ、目の光が消えた状態で機械のように鬼をボコボコにした。反転呪法で触れることは不可能。最終的に集まった鬼を全部ボコした。
死後のあの世は鬼灯の冷徹かーい!!と思ったが、龍已が居るなら何でもいいので順応するのは早かった。
閻魔大王第一補佐官。実質地獄のNo.2。鬼の頂点に君臨する地獄の最強の鬼神。あらゆる者達から恐れられているワーカーホリック。
龍已の怨念の強さ。実力の高さ。生前の報連相具合からして適任だと考え、やる意味の無い刑罰を早々に切り上げさせて、自身の直属の刑罰執行者に任命した。
地獄の術師の対処に困らせられていたが、龍已達を導入してからは件数が一気に減り、しっかりと獄卒でも刑罰ができるようになったことで成功を無表情で喜んだ。
給料?出しますよ。人手不足ですけどブラックじゃないので。
周りが龍已の体から発せられる怨念に当てられて恐怖状態の中、平然としていた唯一の人物。
術師
地獄に堕とされても往生際が悪い者達。術式が使えるのでこれ幸いと抵抗するが、抵抗すると黒い死神部隊が動き、殺しに来ることが決定した。心をへし折れば良いのだが、また別の問題が浮上して……?