呪術廻戦───黒い死神───   作:キャラメル太郎

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短編その2  努力家の少女

 

 

 

 

 私は元々普通だった。常識知らずな転生系最強主人公とか、ハーレム主人公とかの説明で9割がた使われる言葉だけど(偏見)、私の場合は本当に普通だった。

 

 

 

 普通の家に生まれ、普通の近場の小学校に入って隣の中学校に入り、これまた近くの高校に入学。頭もまあ普通だったんで、受験勉強は病んじゃうところだった。あれは苦痛だよね。あ、話逸れそうだから戻すと、学校では友達も居た。一緒にご飯食べたりとか、適当な言い訳して体育休んだりとかしてた。

 

 

 

 まあとにかく、普通に暮らして、普通に人生を楽しんでた。でもさ、そんな私にも趣味みたいなものがあった訳ですよ。それが呪術廻戦っていう漫画の二次創作を読むこと。それに出てくる、所謂最強系オリ主が、私のハートをぶち抜いたわけだ。もうね、ホント好き。好きな部分しかない。欠点が無いんだもん。仕方ないよね?

 

 

 

 だから、そんな私がポックリと死んだ後、推しの居る呪術廻戦の世界に転生したことは、生まれた中で1番の幸福だと思った。んま、推しが居ない原作側の呪術廻戦なら自殺してたけどネッ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……勉強じだぐな゙い゙よ゙ぉ゙……ッ!!!!もうやだ……某学園都市1位みたいな術式にしやがってぇ……死ぬほど頭働かせないと何もできないじゃぁん……」

 

 

 

 小学2年生にまで成長した反承司零奈(はんしょうじれいな)は現在8歳。学校で習うのは掛け算や割り算のところ、彼女は家で自主的に勉強していた。今やっているのは大学レベルの物理学。大人が読んでも意味不明な言葉の羅列にしか見えない参考書を前に、顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら必死こいて勉強していた。

 

 親の顔より先に呪霊を見た反承司は、呪術廻戦の世界であり、推しへの狂愛でこの世界が自身が生前に読んでいた二次創作の世界であると直感した(意味不明)。

 

 転生した時には推しに会えると息巻いていたが、何となく術式を自覚すると強力さを掻き消すほどの面倒臭さに泣いた。あらゆる力の向きを反転させ、性質すらも反転させられるというチート術式である代わりに、1つのものを構成する何もかもを演算しないと発動しないピーキーなものでもあった。

 

 某学園都市1位は無意識にでもスーパーコンピューター以上の演算を行える頭脳を持っていたが、反承司は持っていなかった。新しい肉体の脳味噌は出来が良く、天才という部類には入るだろうが、某学園都市1位と比べると比較にすらならないもの。つまり、この穴埋めは努力でどうにかしなければならなかった。

 

 幸い生前が高校生だったので精神的にも成熟しており、自主的に勉強するという結論には至った。至ったはいいが、元より勉強が嫌いだったのが災いし、勉強する度に泣いていた。勉強の内容も濃すぎて頭がおかしくなりそうだというのもある。

 

 

 

「べ、勉強っ……えっぐ、難しいよぉ……やりたく、ないよぉ……ひっぐ……二次創作の世界だからあの小説読めないし……推し探してもドコにも居ないしっ……」

 

 

 

 どんだけやりたくねぇんだよ……と思われても仕方ないが、演算ができないと何もできない術式のため、何もしなかったら詰む。そもそも彼女の言う推しとは、強さだけで特級呪術師に登り詰めるような傑物である。一緒に居たいならば、強くなくてはならない。

 

 勉強は嫌い。推しを見かけることができないことに吐きそうになる。何でか告白してくる同級生の男子のタマ〇ン蹴り潰したくなる。でも推しのため、彼女は深夜だというのにエナジードリンクとリポビタをキメ、頭に『♡黒圓龍已♡Love♡』のハチマキを巻きながら勉強した。泣きながら。

 

 

 

「が、頑張るぞぉ……黒圓龍已に会って、褒めてもらうため、いっぱい頑張るぞぉ……うぅ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゙ー……めんどくさ。呪霊多いんだよなァ……チッ。イライラするマジで。昨日の光学系の勉強が頭に響くし……」

 

 

 

 時は跳んで中学3年生。学校の休日に出掛けている彼女は、目を充血させていた。建物と建物の間に呪霊を見つけると、ポケットの中からドングリを取り出して親指で弾く。演算を行い、無駄な方向へ伝わろうとする力の向きを反転させて1度集め、ドングリを飛ばす方向一点に向ける。するとドングリは呪力を帯ながら弾丸よりも速く飛び、呪霊の頭を穿った。

 

 飛んでいったドングリは向こう側の建物のコンクリート壁に当たり、粉々に砕けた。破片が飛び散っても問題が無いように配慮した結界、使う道具はドングリが良いことに気がついてからは、気分転換の呪霊祓除はこの方法を主流にしていた。

 

 夜遅くまで勉強して、睡眠時間も2時間を切っている。先程までは勉強していたが、あまりにも頭が痛く、寝られる様子も無いので気分転換をしていた。等級の低い呪霊を祓い、何となくウィンドウショッピングをし、また見つけた呪霊を祓う繰り返し。しかし頭の中では勉強していた内容を思い返している。

 

 学校に友達は居ない。常に勉強をしていて話すことはないし、行事には出席しない。恋人なんて作るつもりは毛頭無く、彼女の青春は勉強と術式の練度上げに費やされていた。彩りが皆無の学生生活。しかしこれは全ていつか会う推しのためのもの。怠けることは絶対しない。

 

 

 

「……こんなとこに廃病院なんてあったっけ。あー、そういえば経営難だか医療ミスだったかで畳むとか噂してたような」

 

 

 

 適当に歩いて散策していた反承司が見つけたのは、廃棄された病院だった。建物の取り壊しは未だ行われておらず、残っているため健在。しかし廃病院というフレーズからか、元からかは判らないが呪いの気配がしている。それもかなり強力なものだ。独自の判断方法なので実際はどうか知らないが、1級相当のものだ。

 

 気分転換に散歩気分で目につく呪霊を片っ端に消し飛ばしていた手前、ここで無視するのも変である。基本推し以外の誰が死のうと興味が無い彼女にとっては、その内に『窓』が見つけるだろう程度の認識でしかないのだが、呪いの気配が強くて気になってしまったので、今回は自身で祓うことにした。

 

 進行方向を廃病院へ。子供が勝手に入っていったと誰かに連絡されるのを防ぐために、人が見ていない時を狙って忍び込む。正面玄関から堂々と入り込むと、気配を探って1番濃い呪いの気配がする階へ目指した。呪いを炙り出すための結界は、『窓』に発見されてしまうリスクを考慮してやっていない。

 

 それなりに大きな病院だったので、濃い呪いの気配があるのは3階だった。エレベーターは電気が通っていないので使えないため、階を上るのは階段を使っていく。そこまで年月が経っていないのか、中はまだ綺麗だった。かつんという靴底が床を叩く音が寂しく響く。

 

 目的の場所はもうすぐだ。3階まで階段で上がってきたので、次は廊下を進んでいくだけだ。すると、1級相当の呪霊に従っているのか、平均3級程度の呪霊が湧いてきた。それに何の感情も感じない底無し沼のような目を向ける。呪霊はスタートの合図もなく襲い掛かってくるが、総勢10体は彼女に触れることすらできない。

 

 触れる前に透明の何かに触れてしまい、攻撃が届かない。一定の距離からは反承司の術式範囲となってしまい攻撃の力の向きを反転の力で変えられている。そしてその衝撃や力の向きは全て一点に集められる。それは立てられた右手人差し指の先。そこには攻撃を受ける度に凝縮されて禍々しくなる黒点があった。やがて1分の間攻撃を受け続けた彼女は、その黒点を前方に突きつけた。

 

 

 

「ほら死ねよ。それは全部お前らが私に与えた衝撃だ。自業自得だろ」

 

 

 

 黒点が弾け、蓄積されて凝縮していた衝撃が解放された。指向性を持たせた衝撃のエネルギーは、総勢10体の呪霊を粉々に消し飛ばした。それだけの力がありながら、精密なコントロールで病院の窓ガラスは1枚も割れていない。狙ったのはあくまで呪霊だけであり、その操作技術は天才的だった。

 

 手駒として使っていた呪霊達が消されたことに怒ったのか、目当ての呪霊が姿を現した。1級相当の呪いを持つ呪霊。頭が砲の形になった長い腕が脚となっている4腕歩行の化け物だ。見るからに攻撃手段が判る反承司は、人差し指を立ててかかってこいのジェスチャーをした。

 

 頭の砲に呪いが集まる。一点に集中して指向性呪力放出を行うのだろう。1級なだけあってかなりの威力になりそうだ。しかしそれでも、反承司はその場に居るだけ。避けようともしない。やがてチャージが終わった呪いの砲撃が放たれる。当たれば肉が抉れてしまうのは目に見えているが、その呪いの砲撃すらも、彼女には届かない。

 

 

 

「──────『反転(はんてん)』」

 

 

 

 性質を反転させる、彼女の術式の真骨頂。強い呪力の攻撃を弱い呪力の攻撃へ強制的に反転させる。1級呪術師すら沈められるだけの威力を持った砲撃は、呪力でほんの少し強化しただけの掌で掻き消せるほどの威力に落とされた。何も無かったかのように攻撃が消される。

 

 呪霊からしてみれば何をしたのか解らなかった。だから第2射を撃ち込もうとチャージを開始。しかしそれが終わるよりも早く、呪霊の頭の砲は吹き飛んだ。なんてことはない。足元に落ちている小石を蹴っ飛ばしただけだ。呪いを込めただけの石は、軽く蹴っただけなのに弾丸よりも速く飛来する。

 

 廃病院であることを良いことに、蹴っ飛ばした小石は呪霊の頭を吹き飛ばした後に廊下を端まで突き進み、壁を貫通していった。小石と同じ径の穴が開いている。頭を失った呪霊は、砂が崩れ落ちるように消滅していったのだ。

 

 

 

「はー……ザッコ。本当につまんない」

 

「──────アレ1級なんだけどなぁ。そんなに弱かった?」

 

「──────ッ!!」

 

 

 

 背後、それもかなり至近距離から声が聞こえた。誰も居ないと思っていたのに、気配すらもしなかったのにここまでの接近を許してしまったことを恥じながら、反承司はその場から一気に跳躍しつつ術式を使って力の向きを操り、目にも止まらぬ速さで移動して距離を取る。

 

 体の向きを反対に向けて、誰が背後を取っていたのか見やる。そして瞠目する。反承司は超大物に出会ってしまった。彼女の背後を容易に取っていたのは、五条悟。呪術師最強と謳われる存在である。原作でも最強の存在として君臨しており、規格外の術式でダメージすら負わない。

 

 皆によく知られている黒い目隠しをしている姿ではなく、包帯を目に巻いている姿。思っていた人物とは違って困惑し、最強の呪術師である彼の存在感に息を呑む。対峙するだけで別格の強さを感じ取ってしまうのは、反承司がある程度の実力を持っているからだろうか。

 

 

 

「いやー、任務で来たんだけど、呪霊の呪いとは別の呪いがあるから何かなーって思って見てたら、居たのは女の子!しかも君、強いねー。術式の使い方は誰かに習ったの?」

 

「……目に包帯巻いてる明らかな不審者に話すと思うわけ?」

 

「ひっど!これは目が疲れるからで……ってそんなのは関係ないよ。あれ、もしかして独学?一般の出だよね?あ、僕は五条悟。よろしくねー」

 

「よろしくするつもりは無いんだけど」

 

「僕にはあるかなー?君はちょっと強すぎるからさ、是非とも僕が教師をしている呪術高専に来て欲しいんだ!そこならもっと効率の良い術式の使い方を学べるし、呪霊を祓うだけでお金も貰えるよ!他にも呪いが見える子が──────」

 

「興味ない。どうせ駒として使われるだけでしょ。なら行かない。そもそも、私にはやるべき事があるから」

 

「……へぇ。使い潰してくるって可能性を考えるんだ。君、面白いね。ますますウチに来て欲しいな。()()()()も教え甲斐のある生徒ができて嬉しいだろうし!」

 

「センパイ……?」

 

「んー?そうそう。僕の1つ上のセンパイ。めっちゃ強いんだよねー。無表情で何考えてるか分かんない時とかあるけど、良い人だよ」

 

「な……まえは……?」

 

「──────黒圓龍已っていうんだけど、気になるの?もしかして知ってる?」

 

「ぁ……あ……やっぱり……居たんだ。黒圓龍已は……実在したっ……っ!!」

 

「あ、どこかでセンパイに助けてもらってるクチか」

 

 

 

 居ると直感していただけで、実際に目撃したことはない。探しても見つけられなかった。反承司は、五条の口から実際に黒圓龍已の名前を聞いて安堵から深い溜め息を吐き出し、今までやって来たことが無駄では無かったことを悟ると、涙を流し始めた。

 

 五条は反承司の様子を見て、昔に龍已に助けられてから再会する日を夢見てこれまで頑張ってきた系の子だと認識した。でなければ、一般の出だというのに術式を使って呪霊を祓い、黒圓龍已の名前を聞いて反応するはずがないのだ。

 

 普通は考えつかないだろう、反承司が転生者という事実に辿り着かないまま、五条は勘違いしつつこれなら勧誘は結構簡単かなとほくそ笑んだ。悪くするつもりはない。将来のために聡い呪術師を育成するだけだ。泣いて感動している反承司に近づいて反転の壁を無限で破り、額に指を置いて気絶させた彼は、諸々の手続きをするために伊知地の番号に電話を掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、んん……」

 

「起きたか」

 

「……あれ……龍已先生……?」

 

 

 

 ぼんやりとした頭で白い天井を見上げている。自分が何故天井を見上げている状況になっているのか理解出来ないまま、声を掛けられたので反応する。自身はベッドで横になっており、脇に置かれた椅子に推しである龍已が腰掛けて、起きた自身のことを見下ろしている。

 

 なるほど、と納得する。つまりここは天国なわけかと。実際はまったくの現世である。勘違いも甚だしい。起き抜けに見るのが龍已であると、反承司はどこまで頭脳指数を下げていくのだろうか。天才的な頭脳で東大に入るのも余裕なのに、龍已が絡むと思考がチンパンジー以下になるのは度し難い。

 

 椅子から立ち上がってベッドの方に移り、手を伸ばして額に触れてくる。それだけでカッと体温が上がる。その温度で、何だか熱があるようだが……と勘違いを起こす龍已。慌てて平熱です。推しに触れられて体温が急上昇しただけですと、潔い曝露をする。困惑の気配を感じさせながら、熱がないならと大人しく引き下がった彼に、反承司はニッコリと笑みを浮かべた。

 

 

 

「ところで、私ってなんで医務室に?」

 

「覚えていないのか?朝少し具合が悪そうにしていたが、訓練は受けると言って甚爾に向かっていったら早々に蹴りを受けて気絶した。今はもう17時だ。授業が終わって様子を見に来たところ、ちょうど良く起きたといった具合だな」

 

「ま、マダオにまたしても……っ!!」

 

「それ以前に、また遅くまで勉強していたな?朝の体調不良は寝不足から来るモノだろう。目の下にうっすらと隈ができている」

 

「へへ……私の術式には必要なことなので……龍已先生と一緒に任務行くことが多いですし、足を引っ張りたくないし、それに……強くなったって龍已先生に褒めて欲しいですから……」

 

「残念だが、無理をして倒れるお前を褒められない。それは分かるだろう?」

 

「……はい。ごめんなさい」

 

「気をつけるんだぞ」

 

 

 

 頑張るのは良い。だが頑張りすぎるなとも言われている反承司は、体調管理を怠って今回のようなことを起こしてしまった。龍已には呆れられているだろうと思うと、自然と頭が下がって俯く。誰に何を言われても興味は無いのに、彼に怒られると絶望しかない。一気に元気が無くなる彼女にはぁ……と溜め息を溢すと、ベッドから立ち上がった。

 

 あぁ……推しに怒られて、呆れられて、どこかに行かれちゃう。もっと話をしたかったと思っても、怒られた手前引き留められない。ベッドのシーツを皺ができるほど強く握った。まあ今回は全面的に寝不足になるだけ勉強していた自分が悪いんだし、明日までゆっくりしてまた謝ろうと思っていると、龍已から出掛けようと声を掛けられた。

 

 え?と思いながら顔を上げると、高専の外に行くためなのか、いつも脚に巻いているレッグホルスターを外して武器庫呪霊のクロに呑み込ませた彼が、振り返って反承司がベッドから起き上がるのを待っていた。

 

 

 

「ど、何処に行くんですか?」

 

「甘いものでも食べに行こう。今日は甘いものの気分なんだ。それに反承司も勉強で頭が疲れているだろう。糖分でも摂って疲労を回復させるといい」

 

「でも私、倒れて……」

 

「だが眠れそうにないのだろう?近場にある店に行くし、俺が運転するから問題ない。あぁ、出掛けたことは硝子には内緒だぞ。病人を連れて行ったとバレたら怒られる」

 

「えっ……え?」

 

「デートをしよう、反承司。奢るぞ」

 

「確か龍已先生、今日任務があるって……しかも19時くらいから……」

 

「どうやら俺も少し体調が悪いらしい。甘いものを食べると治りそうだ」

 

「……ぷっ、ふふふっ。あははっ!ふふ……やったー!じゃあ行きましょう!推しからのデートだぁ!」

 

 

 

 お茶目なところを偶に見せてくれる龍已は、今日体調不良らしい。それも甘いものを食べないと治らないというのだから尚更行かないとマズいだろう。反承司に一緒に行ってもらわないと行きづらい場所と見た。ならばご相伴に預かろうじゃないか。反承司は元気を取り戻し、急いでベッドから立ち上がった。

 

 待っていた龍已の腕に抱きついて一緒に医務室を出る。廊下を進んで高専を出ると、龍已の最高級車の方へ向かった。寝不足であったが、推しである龍已と一緒に出掛けられるとなると気分が良くなる。

 

 車に乗り込んでシートベルトを締めると、龍已がそういえば……と話を切り出した。どうしたのかと首を傾げていると、気絶して寝ている反承司が魘されていたのだそう。怖い夢でも見ていたのか?と問い掛けられ、少しだけ覚えている勉強漬けの毎日を思い返した。

 

 

 

「怖いというより、龍已先生に会える前の苦痛でしかない生活を夢で見たんです」

 

「……そうか」

 

「でも、こうして会えたので良いんです。私のやって来たことが無駄ではないことが実感できてますし」

 

「反承司は良くやっている。術式の為とはいえ、学生の中で1番の努力家だろう。努力は報われている。俺はその姿も見てきた。焦ることはないんだぞ」

 

「……へへ。ありがとうございます!」

 

 

 

 反承司は報われている。会うために努力を惜しまず、怠けることはしない生活を10年以上続けていた。そして推し本人にもこうして会うことができ、努力を認められた。努力は報われたのだ。愛してやまない推しと乙女の敵である甘さの塊を食べながら、彼女は幸せそうに微笑んだ。

 

 

 

「へへへ。龍已先生ホントに好きぃ……」

 

「ありがとう」

 

「もう、推し眺めてるだけでお腹いっぱい……」

 

「そのパンケーキ6枚目だぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 






反承司零奈

小さな頃から勉強で押し潰されそうだった。常人には苦痛でしかない生活を送っていた。小学低学年の時点で大学レベルの勉強をしており、鬼気迫って勉強する娘を気味悪がった両親は祖父母に預けていた。

友達は作らず、恋人は欲さず。嫌いな勉強を続けていられたのは、単に未だ見ぬ推しへの愛。ただし、偶には気分転換が必要だったので呪霊祓除を行っていた。見つけた呪霊は等級に関係なく祓っていたので、中には特級も居たかも知れない。




黒圓龍已

完成体前。反承司が術式行使のために膨大な時間を勉強に費やしており、時々無理をしていることを知っているため、定期的にガス抜きを兼ねてデートに誘い出している。自分の言うことだけは素直に聞いて従うので、必然的に面倒を見るために任務などが一緒になりやすい。

別にアイドルでもないのに推しと言われていることに疑問を抱いているが、まあ良いかと流している。デートのあと、服についた甘い匂いで反承司を連れて行ったことが家入にバレて、優しい口調ながらド正論で説教される。




五条悟

反承司を見つけた時、スゴい子が居るなと思って戦闘を眺めていた。六眼で術式を看破した時、自分に似たものであり、相当に扱いが難しいものであることも分かっていた。しかしそれを呼吸をするように使っていたので、才能が凄まじいと感じている。

秤や乙骨と同じく、将来自身に並び立つ存在であると確信しており、是非とも高専に欲しいということで拉致した不審者。その事について後日、本人の了承を得てからにしろと、龍已と夜蛾から怒られた。


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